地球・歴史・物理ホント

ピラミッドを造ったのは奴隷じゃなかった? 発掘された「労働者の村」の食卓

ピラミッドを造ったのは奴隷じゃなかった? 発掘された「労働者の村」の食卓

読む前に予想してみよう!

ピラミッドの近くでは、建設に関わった人たちのお墓が見つかっている

研究カード(どんな研究?)
対象
ギザの労働者の町・墓地とワディ・エル・ジャルフのパピルス
規模
発掘された集落跡・墓・文書
研究の種類
考古学的発掘調査
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

ギザでは労働者の村や墓が見つかり、肉を食べ、ケガの治療も受けていた跡が。「ムチで打たれる奴隷」像は、今の考古学ではほぼ否定されている。

ひとことで言うとピラミッドを作ったのは、ごはんと手当てをもらえる国の作業チームだった!

もくじ
  1. 「奴隷説」はどこから来た?
  2. 砂の下から出てきた「労働者の村」
  3. お墓に刻まれた「誇り」
  4. 4500年前の「仕事の日誌」
  5. じゃあ自由なボランティアだったの?
  6. まとめ

ピラミッドの建設と聞いて、どんな場面を想像しますか?

灼熱の砂漠で、鎖につながれた大勢の奴隷が、ムチで打たれながら巨大な石を引っぱる――。映画やマンガで何度も見てきたイメージですよね。

ところが、ここ数十年の発掘で、この「奴隷が造った説」はほぼ否定されています。見つかったのは、ちゃんとごはんを食べ、ケガをすれば治療を受けていた「働く人たちの村」だったのです。

01「奴隷説」はどこから来た?

奴隷のイメージが広まったきっかけの1つが、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの記録です。彼はピラミッドが完成してから約2000年後(紀元前5世紀)にエジプトを旅し、「10万人が3か月交代で働かされた」といった話を書き残しました。

ただし、ヘロドトスは建設を見たわけではなく、ずっと後の時代の伝え聞きを書いています。さらに後の時代の映画などが、そのイメージをふくらませていきました。

02砂の下から出てきた「労働者の村」

転機になったのが、ギザの大ピラミッドの南側で進められた発掘です。アメリカの考古学者マーク・レーナーらのチーム(古代エジプト研究協会・AERA)は、1980年代末から、ピラミッド建設者たちが暮らしていた町の跡(アラビア語で「カラスの壁」を意味するヘイト・エル=グラブ遺跡)を掘り進めてきました。

そこから見つかったのは、こんなものです。

  • 大量のパンを焼いたと考えられるパン工房の跡
  • 牛・羊・ヤギの骨が大量に(かなりの量の肉が食べられていた)
  • 寝泊まりするための長屋のような建物
  • 魚の骨や、ビールづくりに関わる道具の跡

奴隷を最低限だけ生かしておく、という暮らしぶりとはかなり違います。むしろ、国が大量の食料を用意して、働き手をしっかり食べさせていたと考えられています。

労働者の村からは、大規模なパン工房の跡が見つかっている
労働者の村からは、大規模なパン工房の跡が見つかっている

03お墓に刻まれた「誇り」

1990年には、ピラミッドのそばで労働者たちのお墓も見つかりました(エジプトの考古学者ザヒ・ハワスらが調査)。王のピラミッドの近くに葬られること自体、名誉なことだったと考えられています。

お墓の中には、「ピラミッドの○○側の監督」といった仕事の肩書きが記されたものもありました。さらに、骨を調べると、骨折がきれいに治った跡や、治療を受けたと思われる跡も見つかっています。ケガをしたら手当てを受けられたのです。一方で、背骨や関節には重い物を運び続けたことによる負担の跡も多く、仕事が過酷だったことも骨は語っています。

044500年前の「仕事の日誌」

もっと直接的な証拠もあります。

日誌からは、作業員が組織だったチームとして動き、食料などの支給を受けながら、計画的に仕事を進めていた様子が読み取れます。

05じゃあ自由なボランティアだったの?

ここは少し注意が必要です。

つまり、現代の会社員のような自由な働き方ではないけれど、ムチで追い立てられる奴隷とも違う。国家プロジェクトに参加する、食事と手当てつきの働き手、というのが今の考古学が描く姿です。

ただし、「奴隷か、そうでないか」という区別自体が、古代エジプトの社会には当てはめにくいという指摘もあります。当時は、国に労働を差し出すことが税の一種でもあり、現代の「自由な労働」とも「奴隷労働」とも違う、その中間のような立場だったと考えられています。

06まとめ

  • 「奴隷がムチで打たれて造った」イメージは、のちの時代の伝聞や映画の影響が大きい
  • ギザの労働者の村からは、パン工房や大量の家畜の骨が見つかった
  • 労働者の墓には肩書きが刻まれ、ケガの治療跡もあった
  • 最古級のパピルス「メレルの日誌」が、組織的な石の運搬を記録していた

巨大な石の山の裏側には、パンを焼き、肉を分け合い、仲間のケガを手当てしていた人たちの暮らしがありました。ピラミッドは「誰が」造ったのか――その答えは、少しずつ人間らしい姿になってきています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe image of slaves building the pyramids comes partly from Herodotus, a Greek historian who visited Egypt… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The image of slaves building the pyramids comes partly from Herodotus, a Greek historian who visited Egypt about 2,000 years after they were finished. Since the late 1980s, however, archaeologists led by Mark Lehner have excavated a town south of the Great Pyramid where the builders lived. They found large bakeries, places to sleep, and huge numbers of cattle, sheep, and goat bones, which show that workers were well fed.

In 1990, workers' tombs were also discovered near the pyramids, and some skeletons showed broken bones that had been treated. Most researchers now think the builders were organized teams, including skilled workers and farmers who took turns working for the state.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

奴隷がピラミッドを建てたというイメージは、ピラミッドの完成から約2000年後にエジプトを訪れたギリシャの歴史家ヘロドトスに一部由来しています。しかし1980年代の終わりから、マーク・レーナーが率いる考古学者たちは、大ピラミッドの南で、建設者たちが暮らしていた町を発掘してきました。彼らは、大きなパン工房や寝る場所、そして大量の牛・羊・ヤギの骨を見つけました。これらは、労働者たちが十分に食べていたことを示しています。

1990年にはピラミッドの近くで労働者の墓も見つかり、一部の骨格には治療された骨折の跡がありました。現在ほとんどの研究者は、建設者たちは熟練した職人と、交代で国のために働く農民などからなる組織されたチームだったと考えています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Why is Herodotus's account not fully reliable?

Q3. What do the treated broken bones suggest?

重要単語

  • excavationC1
    名詞発掘The excavation revealed a whole town. ex-(外へ)+cavate(掘る)。cave(洞窟)と同語源。動詞 excavate。
  • laborerB2
    名詞労働者Thousands of laborers worked on the pyramid. labor(労働)+-er。英つづりは labourer。manual labor「肉体労働」。
  • papyrusC1
    名詞パピルス(古代の紙)Some of the oldest papyrus documents were found at an ancient port. paper(紙)の語源。複数形は papyri。
  • cemeteryB2
    名詞墓地Workers were buried in a cemetery near the pyramid. つづりは -tery(-tary ではない)に注意。tomb は「(一つの)墓」。
  • corvéeC1
    名詞賦役(国に課される労働)Farmers may have served in a corvée system. フランス語由来。発音は /kɔːrˈveɪ/。税の代わりに労働を納めるしくみ。
  • hearsayC1
    名詞伝聞、うわさHis account was based on hearsay. hear+say で「人が言うのを聞いたこと」。法律では「伝聞証拠」の意味。

動画でもっと知る

ピラミッドって奴隷がムチで打たれて作ったイメージだったけど、労働者の村からは牛肉を食べた跡や骨折を治療した跡が見つかってるらしい。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Tallet & Marouard (2014) The Harbor of Khufu on the Red Sea Coast at Wadi al-Jarf, Egypt, Near Eastern Archaeologydoi.org
  2. Tavares (2011) Village, town and barracks: a fourth-dynasty settlement at Heit el-Ghurab, Giza, Old Kingdom, New Perspectives(Oxbow Books)doi.org
  3. Mahmoud, Eissa & Taylor (2015) Bread and Bakeries at the Heit el-Ghurab Site, Settlement and Cemetery at Giza(Oxbow Books)doi.org