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脳と心理ビミョー

熱があると、頭の中の「1分」が短くなる? きっかけは科学者の妻の看病だった

熱があると、頭の中の「1分」が短くなる? きっかけは科学者の妻の看病だった

読む前に予想してみよう!

体温が上がると、時間の感覚が速く進み、実際より短い時間を「もう1分たった」と感じやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
発熱した1人の観察〜健康な成人の実験
規模
1人〜数十人
研究の種類
症例観察・実験研究
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

体温が上がると、頭の中の時計が速く進むらしく、実際より短い時間を「1分」と感じやすい。90年前の看病中の観察から、温水に浸かる実験まで続く研究。

ひとことで言うと体が熱いと、頭の中の時計がちょっと早送りになるらしい!

もくじ
  1. インフルエンザの妻に「60まで数えて」
  2. 実はもっと前にも
  3. 2019年、温水に浸かる実験で確かめた
  4. まとめ

楽しい時間はあっという間、退屈な授業は長い——時間の感じ方が変わることは、誰でも経験しています。

でも、体温でも時間の感覚が変わるとしたら? その研究のきっかけは、なんとある科学者の「妻の看病」でした。

01インフルエンザの妻に「60まで数えて」

すると、熱が高いときほど、妻は速く数えていました。つまり彼女の頭の中の「1分」は、実際の1分より短かったのです。

化学反応は、温度が上がると速く進みます。ホーグランドさんは、脳の中にも同じように温度で速さが変わる「化学時計」があるのではないか、と考えました。1933年に発表されたこの報告は、時間の心理学の古典になっています。

02実はもっと前にも

ホーグランドさんより少し前の1927年、フランスの研究者フランソワ(François)さんも、似た結果を報告していました。体温を上げる実験をしたのです。2019年には、イギリスの時間心理学者ウェアデン(Wearden)さんがこの論文を英訳し、「体温と時間」の研究の歴史を整理しています。

体温が上がると、頭の中の時計が速く進む?
体温が上がると、頭の中の時計が速く進む?

032019年、温水に浸かる実験で確かめた

「病気の妻1人の観察」では、さすがに科学的な証拠としては弱い。そこで現代の研究者も、この仮説を確かめています。

2019年、オランダの研究チーム(ファン・マーネン van Maanen さんら)の実験です。参加者に38℃のお湯に首まで浸かってもらい、体温を上げました。そして、前もって覚えた長さの時間を、ボタンを押して再現してもらいました。

すると、体温が上がるにつれて、再現する時間が短くなりました。頭の中の時計が速く進むと、「もう覚えた長さだけ時間がたった」と早めに感じます。だから早めにボタンを押してしまう。「時計が速くなる」という考えと合う結果です。

この実験では、制限時間のある選択問題も解いてもらいました。体温が上がると、答えるのがより速くなりました。また、覚えた時間を短く再現した人ほど、選択の間違いも多くなりました。まるで時間に追われているかのような答え方です。体温が上がりやすい職場で働く人の判断にも影響するかもしれない、と研究チームは指摘しています。

04まとめ

熱があるとき、頭の中の時計は早送りになっているのかもしれません。始まりは、病気の妻を思いやる1人の科学者の観察でした。

次にかぜをひいて「時間がたつのが遅い……」と感じたら、脳の時計が少し速く進んでいるせいかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWe all know that time seems to fly when we are having fun. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

We all know that time seems to fly when we are having fun. But can body temperature also change our sense of time? In the 1930s, an American physiologist named Hoagland noticed something while caring for his wife, who had the flu. He asked her to count to 60 at a rate of one per second and recorded her temperature each time.

The higher her fever, the faster she counted. He suggested that the brain has a "chemical clock" that runs faster when it is warmer. In 2019, researchers tested this idea by raising people's body temperature in warm water. The participants then reproduced remembered time intervals as shorter, which matches the idea of a faster internal clock.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

楽しいときは時間がたつのが速く感じることは、誰もが知っています。では、体温も時間の感覚を変えるのでしょうか。1930年代、アメリカの生理学者ホーグランドは、インフルエンザにかかった妻を看病しているときにあることに気づきました。彼は妻に1秒に1つのペースで60まで数えるよう頼み、そのたびに体温を記録しました。

熱が高いほど、妻は速く数えていました。彼は、脳には温かいほど速く進む「化学時計」があるのではないかと考えました。2019年、研究者たちは、温かいお湯で人の体温を上げてこの考えを検証しました。すると参加者は、覚えた時間の長さを再現するとき、短く再現するようになり、これは頭の中の時計が速くなるという考えと一致しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Hoagland find?

Q2. How did the 2019 researchers raise body temperature?

Q3. Why does reproducing intervals as shorter match the idea of a faster internal clock?

重要単語

  • feverA2
    名詞発熱、熱She had a high fever last night. have a fever / run a fever「熱がある」。比喩で「熱狂」の意味も(World Cup fever)。
  • estimateB1
    動詞見積もるTry to estimate one minute without a clock. 名詞も同形。rough estimate「大まかな見積もり」。
  • internal clockB2
    名詞(句)体内時計、頭の中の時計Heat may speed up our internal clock. internal(内部の)⇔ external(外部の)。biological clock とも言う。
  • underestimateB2
    動詞過小評価する、少なく見積もるPeople often underestimate how long a task will take. under-(不足して)+estimate。反対は overestimate。Don't underestimate ~「~を甘く見るな」。
  • intervalB2
    名詞(時間の)間隔The interval between the two sounds was short. at regular intervals「一定の間隔で」。劇場の「休憩時間」の意味も(英)。
  • physiologistC1
    名詞生理学者The physiologist measured his wife's temperature. physiology(生理学)+-ist。physics(物理)、physician(内科医)と混同しないこと。
1930年代、ある科学者がインフルエンザで熱を出した妻に「1秒ずつ60まで数えて」と頼んだ。熱が高いときほど数えるのが速かった。体温が上がると、頭の中の時計が早送りになるらしい。2019年の温水実験でも似た結果が出た。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Hoagland (1933) The physiological control of judgments of duration: evidence for a chemical clock, The Journal of General Psychologydoi.org
  2. van Maanen et al. (2019) Core body temperature speeds up temporal processing and choice behavior under deadlines, Scientific Reportsdoi.org
  3. Wearden (2019) Body temperature and the sense of time: a translation of François (1927) with a commentary, Timing & Time Perceptiondoi.org