なぜ大人になると1年があっという間なのか?「ジャネーの法則」だけでは説明できなかった

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調査をすると、お年寄りほど「この1週間は速く過ぎた」と答える傾向がはっきり出る
週や月の単位では、年齢による差はほとんど見られなかったという調査がある。
- 対象
- 10代〜90代の一般の人
- 規模
- 約500〜1,900人規模の調査3件+実験室実験
- 研究の種類
- 質問紙調査(横断)+実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
「1年の長さは年齢に反比例して感じる」ジャネーの法則は有名だが、調査での裏付けは意外と弱い。忙しさや「新しい体験・思い出の数」などが候補だ。
ひとことで言うと新しいことが少ないと、思い出の数がへって1年が短く感じるのかも!
子どものころの夏休みは、永遠に続くかと思うほど長かった。なのに大人になると、「え、もう年末?」。
この感覚の説明としてよく出てくるのが、ジャネーの法則です。「10歳の子にとって1年は人生の10分の1だが、50歳にとっては50分の1。だから年を取るほど1年が短く感じる」。分かりやすくて、つい納得してしまいますよね。
でも実は、この法則、科学的な裏付けは意外と弱いのです。
01ジャネーの法則は「実験」ではなかった
ジャネーの法則は、19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネが唱えた考え方として知られています。ただしこれは、データを集めて確かめた結果ではなく、思考から生まれたアイデアでした。
そして実際に人々に聞いてみると、話はそう単純ではなかったのです。
米オーバリン大のフリードマンらが2か国の16〜80歳、約1,900人を調べた研究(Acta Psychologica, 2010)でも、どの年齢の人も「時間は速く過ぎる」と感じていて、年齢による差は「この10年」を尋ねたとき以外はごく小さいという結果でした。しかもこの研究で、時間を速く感じることと最もよく結びついていたのは、年齢ではなく「忙しさ(時間に追われている感覚)」だったのです。つまり、「年を取るほど、毎日がどんどん速く感じる」というほどシンプルではなかったのです。
02「振り返ったとき」の長さは、思い出の数で決まる
では、なぜ「あっという間だった」と感じるのでしょう。注目されているのが、時間の感じ方には2種類あるということです。
- 今まさに感じている時間:退屈な授業は長く、楽しいゲームは一瞬
- あとで振り返ったときの時間:思い出がたくさん詰まった期間ほど長く感じる
面白いのは、この2つがしばしば逆になること。楽しい旅行はその場では一瞬で終わるのに、あとから振り返ると「すごく長く濃い時間だった」と感じますよね。

03大人の1年は「新しいこと」が少ない
子どものころは、毎日が初めての連続です。初めての学校、初めての友だち、初めての遠足。脳はそのたびに新しい記憶を刻みます。
一方、大人になると、同じ通勤路、同じ仕事、同じ週末――似たような日々が増えがちです。脳は、似た出来事を一つひとつ細かく記憶しません。すると1年を振り返ったとき、取り出せる思い出の数が少なく、「何もなかった=短かった」と感じてしまう、という考え方です。振り返って時間の長さを判断するときは、その間の出来事の変化が多いほど長く感じる、という傾向は、多くの実験をまとめたメタ分析でも確認されています(Psychonomic Bulletin & Review, 1997)。
ただし、この「思い出の数」説が、年齢による感じ方の違いをどこまで説明できるかは、まだはっきりしていません。先ほどの調査では「忙しさ」のほうがよく当てはまりました。ヤンセンとフリードマンらによる約870人の別の調査でも、短い期間では年齢差がなく、今忙しい人ほど最近の時間を速く感じていました。さらに人は10年前の忙しさを実際より少なく思い出しがちで、この記憶のクセが「年々時間が加速している」という感覚を生むのではないか、と提案されています(Time & Society, 2013)。いくつもの要因が重なっている、と考えるのが今のところ妥当そうです。
実験でも、繰り返し見せられる画像の中に一つだけ新しい画像がまざると、その画像が表示されていた時間を、実際より長く感じることが報告されています(Perception & Psychophysics, 2004)。ただしこれは1秒にも満たない短い時間の感じ方で、「1年」の感覚とそのまま結びつけるのは飛躍があります。新しいものは、脳の中で時間を「引き伸ばす」のかもしれません。
04まとめ
「大人の1年が短い」のは、年齢の分数のせいというより、忙しさや、新しい体験が減って思い出のアルバムが薄くなることなどが重なった結果なのかもしれません。
ということは、1年を長くする方法もありそうです。今年の残り、どんな「初めて」を入れてみますか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany adults feel that the years pass faster as they get older.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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この研究を英語で読もう
Many adults say that a year goes by very fast. A popular idea says this is because one year is a smaller part of a long life.
But scientists asked hundreds of people, and older people did not feel weeks or months pass much faster. One reason may be busy lives. Another reason may be that adults have fewer new experiences, so they have fewer memories when they look back.
70 words ・ CEFR A2
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多くの大人は、1年がとても速く過ぎると言います。よく知られた考え方では、長い人生の中で1年が占める割合が小さくなるからだとされています。
しかし科学者たちが何百人もの人に尋ねたところ、高齢者が週や月を特に速く感じているわけではありませんでした。理由の一つは、忙しい生活かもしれません。もう一つの理由は、大人は新しい体験が少ないので、振り返ったときの思い出も少ないということかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
大人にとって1年が短く感じる理由を考える文章なので A。
Q2. What did the scientists find about older people?
older people did not feel weeks or months pass much faster とあるので C。
Q3. In this passage, "look back" means ...
look back は「振り返る」。ここでは過去の1年を思い出すことを指しているので D。
Many adults feel that the years pass faster as they get older. A well-known explanation, Janet's law, says that one year feels shorter because it is a smaller fraction of a longer life. However, this idea came from thinking, not from data. When German psychologist Marc Wittmann asked about 500 people aged 14 to 94, age made only a small difference to how fast a week, a month, or a year seemed to pass.
A clear age effect appeared only when people looked back on the past ten years. Another large survey found that feeling busy was more closely linked to fast time than age was. Having fewer new experiences may also make a year seem short when we remember it.
121 words ・ CEFR B1
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多くの大人は、年をとるにつれて1年が速く過ぎると感じています。よく知られた説明である「ジャネーの法則」は、長くなった人生の中で1年の占める割合が小さくなるので、1年が短く感じると説明します。しかし、この考えはデータではなく思考から生まれたものでした。ドイツの心理学者マルク・ヴィットマンが14歳から94歳の約500人に尋ねたところ、1週間、1か月、1年がどれくらい速く過ぎたと感じるかに、年齢はわずかな違いしか生みませんでした。
はっきりした年齢の影響が現れたのは、過去10年を振り返ったときだけでした。別の大規模な調査では、年齢よりも「忙しいと感じること」のほうが、時間を速く感じることと強く結びついていました。新しい体験が少ないことも、思い出したときに1年を短く感じさせるのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
年齢の影響は小さく、忙しさや新しい体験の少なさも関わる、という内容なので B。
Q2. When did a clear age effect appear in Wittmann's survey?
A clear age effect appeared only when people looked back on the past ten years. とあるので D。
Q3. What does the writer suggest about Janet's law?
this idea came from thinking, not from data とあり、調査でも年齢差は小さかった。分かりやすいが証拠が弱いということなので A。
According to Janet's law, a year feels shorter as we age because it makes up a smaller fraction of our lives. For a five-year-old, a year is a fifth of a lifetime. For a fifty-year-old, it is a fiftieth. The logic is neat, but the evidence is surprisingly weak. Surveys of roughly 500 people in Germany and Austria and about 1,900 people in two countries found only tiny age differences in how fast weeks, months or single years seemed to pass.
A consistent age effect appeared only when people judged the past decade, and because each survey compared age groups at a single point in time, even that gap could reflect generation as well as age. The strongest predictor of time seeming to fly was time pressure. Another popular explanation is about novelty. Looking back, periods packed with varied events feel longer, a pattern confirmed by a 1997 meta-analysis.
However, those experiments measured spans of seconds or minutes, and direct evidence tying memory density to age is scarce. A third survey, of around 870 people, pointed elsewhere. We tend to underestimate how busy we were ten years ago, and that memory bias may make the years seem to speed up.
200 words ・ CEFR B2
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ジャネーの法則によれば、年をとると1年が短く感じられるのは、1年が人生の中で占める割合が小さくなるからです。5歳の子どもにとって1年は人生の5分の1ですが、50歳の人にとっては50分の1にすぎません。筋の通った理屈ですが、証拠は驚くほど弱いのです。ドイツとオーストリアの約500人、そして2か国の約1,900人を対象にした調査では、週・月・1年が過ぎる速さの感じ方に、年齢による差はごくわずかしか見られませんでした。一貫した年齢の影響が現れたのは過去10年について判断したときだけで、しかもどの調査も一時点で年齢層を比べたものだったため、その差でさえ年齢だけでなく世代の違いを反映している可能性があります。
時間があっという間に過ぎると感じることを最もよく予測したのは、時間的な切迫感(忙しさ)でした。もう一つのよく知られた説明は、新しさに注目するものです。振り返ってみると、さまざまな出来事が詰まった期間ほど長く感じられ、この傾向は1997年のメタ分析で確認されています。
しかし、その実験が測ったのは秒や分の長さで、思い出の密度と年齢を直接結びつける証拠は乏しいのです。約870人を対象にした別の調査は、別の方向を指していました。私たちは10年前の自分の忙しさを実際より少なく見積もりがちで、この記憶の偏りが、年月が速まっていくように感じさせているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ジャネーの法則の裏付けは弱く、忙しさ・記憶の偏り・新しさなど複数の要因を検討しているので C。
Q2. According to the passage, what was the strongest predictor of time seeming to pass quickly?
The strongest predictor of time seeming to fly was time pressure とあるので A。
Q3. Why does the author treat the novelty explanation with caution?
those experiments measured spans of seconds or minutes, and direct evidence tying memory density to age is scarce とあるので B。
重要単語
- perceptionB2名詞知覚、感じ方Our perception of time changes with our mood.
動詞は perceive。per-(完全に)+ceive(つかむ)。receive、conceive と同じ仲間。 - retrospectiveC1形容詞振り返っての、回顧的なRetrospective judgments depend on memory.
retro-(後ろへ)+spect(見る)。in retrospect「振り返ってみると」は長文頻出。反対は prospective(予期的な)。 - noveltyB2名詞新しさ、目新しさNovelty makes experiences easier to remember.
novel(目新しい)の名詞形。名詞 novel「小説」も「新しい物語」が原義。 - time pressureB2名詞(句)時間的な切迫感、忙しさTime pressure can make days feel short.
under time pressure「時間に追われて」の形でよく使う。 - routineB1名詞決まった日課A daily routine can make weeks blur together.
route(道筋)と同語源。daily routine「日課」。形容詞で「型どおりの」の意味もある。 - fractionB2名詞割合、一部分;分数One year is only a small fraction of a long life.
fract は「壊す」(fracture=骨折)。a fraction of ~「~のほんの一部」は入試頻出。
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「大人になると1年が早い」の説明でよく出る「ジャネーの法則」、実は実験的な裏付けは意外と弱いらしい。それより効いてそうなのが「新しい体験の少なさ」。思い出が少ない年ほど、振り返ると短く感じるんだとか。
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- Wittmann & Lehnhoff (2005) Age effects in perception of time, Psychological Reportsdoi.org
- Friedman & Janssen (2010) Aging and the speed of time, Acta Psychologicadoi.org
- Janssen, Naka & Friedman (2013) Why does life appear to speed up as people get older?, Time & Societydoi.org
- Block & Zakay (1997) Prospective and retrospective duration judgments: a meta-analytic review, Psychonomic Bulletin & Reviewdoi.org
- Tse et al. (2004) Attention and the subjective expansion of time, Perception & Psychophysicsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











