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脳と心理ホント

最初は微妙だった曲が、いつの間にか好きに。「何度も見聞きするだけで好きになる」脳のクセ

最初は微妙だった曲が、いつの間にか好きに。「何度も見聞きするだけで好きになる」脳のクセ

読む前に予想してみよう!

人は、ふつうの写真の自分の顔より、鏡に映ったのと同じ左右反対の顔のほうを好む傾向がある

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生など
規模
200以上の実験をまとめたメタ分析あり
研究の種類
実験研究+メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

何度も見聞きするだけで、人はそれを好きになりやすい「単純接触効果」。ただし回数を重ねすぎると効果は頭打ちになり、元が嫌いなものには効きにくい。

ひとことで言うと何回も見るだけで、なんとなく好きになっちゃう脳の不思議!

もくじ
  1. 意味不明な「謎の単語」まで好きになった
  2. 覚えていなくても、好きになる
  3. 教室にいるだけで「好感度」が上がった
  4. 何事も「ほどほど」が大事
  5. まとめ

最初に聞いたときは「ふーん」だったCMソング。なのに何週間か経つと、気づけば口ずさんでいて、なんならちょっと好きになっている。

これは偶然ではありません。心理学では単純接触効果と呼ばれ、何度も確かめられてきた現象です。ただ何度も見たり聞いたりするだけで、人はそれを好きになりやすい。説得も宣伝文句もいらない、「回数」の力です。

01意味不明な「謎の単語」まで好きになった

中身を知らない単語でさえ、何度も目にしたほうが「いい意味っぽい」と感じたのです。評価を上げたのは中身ではなく、目にした回数でした。

02覚えていなくても、好きになる

この効果は、見たことを覚えていなくても出ます。

1980年にScience誌に報告された実験では、図形をほんの一瞬(1ミリ秒)だけ見せました。本人は「見たかどうか」を当てられません。それなのに「どちらが好きか」を選ばせると、見せられた図形のほうを好んだのです。

なぜでしょう。有力な説明の一つが処理の流暢さです。かみ砕くと「脳が楽に処理できるものは、心地よく感じる」ということ。一度見たものは、二度目には少しスムーズに認識できます。その「スルッと分かる感じ」を、脳が「なんか好き」と取り違えるわけです。

何度も通った道ほど歩きやすい。一度見たものは、脳も楽に処理できる
何度も通った道ほど歩きやすい。一度見たものは、脳も楽に処理できる

03教室にいるだけで「好感度」が上がった

人間関係でも効果が確かめられています。

米ピッツバーグ大の研究では、4人の女性に、学生にまじって大学の大きな講義に出てもらいました。出席の回数は、人によって0回、5回、10回、15回と変えました。彼女たちは誰とも話しません。学期末、学生たちに4人の写真を見せました。すると、出席回数が多い女性ほど、魅力的で親しみやすいと評価されたのです(Journal of Experimental Social Psychology, 1992)。

もう一つ有名なのが「鏡の顔」の実験です(Journal of Personality and Social Psychology, 1977)。女子学生の顔写真を、ふつうの向きと左右反対の向きで用意しました。本人は、鏡に映ったのと同じ左右反対の顔のほうを好む傾向がありました。一方、友人や恋人は、ふつうの向きの写真を好みました。本人が見慣れているのは鏡の中の自分の顔。友人が見慣れているのは、向かい合って見る本当の向きの顔です。どちらも、見慣れた向きを「好き」と感じたわけです。単純接触効果のきれいな証拠です。

04何事も「ほどほど」が大事

ただし万能ではありません。1968〜87年に行われた200以上の実験の結果を、まとめて分析し直した研究(メタ分析)があります(Psychological Bulletin, 1989)。効果は全体として確かにありました。ただ、接触が10〜20回を超えるあたりから頭打ちになりました。また、意識できないほど短く見せたほうが、効果はむしろ強く出ました。

2017年のメタ分析では、好意が「逆U字」を描くことが示されました(Psychological Bulletin, 2017)。接触とともに上がったあと、くり返しすぎると下がる形です。ただし、この逆U字がはっきり見えたのは目で見る刺激でした。音の刺激では、同じ形は確認されませんでした。「CMソングがいつの間にか好きに」は身近な例です。でも音楽の好みには、曲の複雑さなど別の要因も絡んでいそうです。

05まとめ

「好き」は、思っているより慣れでできていました。CMが同じ曲を何度も流すのも、このクセを利用しているのかもしれません。近所のお店になんとなく親しみがわくのも、同じクセのしわざかもしれません。

あなたが今好きなものの中にも、「何度も見たから好きになった」ものが、きっと混ざっているはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe mere exposure effect means that people tend to like things more simply because they have seen or heard… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The mere exposure effect means that people tend to like things more simply because they have seen or heard them many times. In a 1968 study, participants were shown meaningless words and unfamiliar faces between zero and 25 times. The more often they saw something, the more positively they rated it.

The effect can occur even when people do not remember seeing something. One explanation is that familiar things are easier for the brain to process, and this smoothness feels pleasant. In a classroom study, students rated women who had attended the lectures more often as more attractive, even though the women never spoke to anyone. However, too many exposures can make people bored.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

単純接触効果とは、人は何かを何度も見たり聞いたりしたというだけで、それをより好きになりやすいということです。1968年の研究では、参加者が意味のない単語や知らない人の顔を、0回から25回まで見せられました。何かを見る回数が多いほど、参加者はそれを好意的に評価しました。

この効果は、見たことを覚えていない場合でも起こりえます。一つの説明は、なじみのあるものは脳にとって処理しやすく、そのなめらかさが心地よく感じられるというものです。ある教室での研究では、女性たちは誰とも話さなかったにもかかわらず、学生たちは講義によく出席していた女性ほど魅力的だと評価しました。しかし、接触が多すぎると、人は飽きてしまうことがあります。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. In the classroom study, what was surprising?

Q3. According to the passage, why might familiar things feel pleasant?

重要単語

  • mere exposure effectC1
    名詞(句)単純接触効果The mere exposure effect explains why catchy songs grow on us. mere は「単なる」。exposure は「さらされること・接触」。grow on ~「だんだん~に好かれる」もセットで。
  • familiarityB2
    名詞なじみ、親しみFamiliarity often leads to liking. ことわざ Familiarity breeds contempt.(慣れすぎると軽んじられる)は逆の意味なので面白い対比。
  • fluencyB2
    名詞(処理の)流暢さ、なめらかさProcessing fluency makes things feel pleasant. 語学では「流暢さ」。fluent English「流暢な英語」の名詞形。
  • repeatedB1
    形容詞繰り返されたRepeated exposure can change our feelings. repeat の過去分詞が形容詞化。repeatedly(繰り返し)も頻出。
  • inverted UC1
    名詞(句)逆U字(増えてから減る形)Liking followed an inverted U as exposures increased. invert は「逆さにする」。「ほどほどが最適」という関係を表す図で、心理学・経済の長文に出る。
  • misattributeC1
    動詞(原因を)取り違えるThe brain may misattribute ease of processing to liking. attribute A to B「AをBのせいにする」に mis-(誤って)がついた形。
最初はピンと来なかった曲が、CMで何度も聞いてるうちに好きになってた…これ「単純接触効果」っていうらしい。しかも人は鏡に映った自分の顔のほうが好きな傾向まであるとか。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Zajonc (1968) Attitudinal effects of mere exposure, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Kunst-Wilson & Zajonc (1980) Affective discrimination of stimuli that cannot be recognized, Sciencedoi.org
  3. Bornstein (1989) Exposure and affect: overview and meta-analysis of research, 1968-1987, Psychological Bulletindoi.org
  4. Moreland & Beach (1992) Exposure effects in the classroom: the development of affinity among students, Journal of Experimental Social Psychologydoi.org
  5. Mita, Dermer & Knight (1977) Reversed facial images and the mere-exposure hypothesis, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  6. Montoya et al. (2017) A re-examination of the mere exposure effect: the influence of repeated exposure on recognition, familiarity, and liking, Psychological Bulletindoi.org