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脳と心理ビミョー

ジャグリングを3か月練習したら脳の一部が大きくなった。でも、やめたら縮んでいった

ジャグリングを3か月練習したら脳の一部が大きくなった。でも、やめたら縮んでいった

読む前に予想してみよう!

ジャグリングの練習でMRI上の灰白質が増えたのは、神経細胞の数が増えたからだと確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な大人
規模
24人(最初の研究)
研究の種類
介入研究(MRIで前後比較)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

3個のボールのジャグリングを覚えた人の脳で、動きを見る領域の灰白質が増えた。ただし練習をやめると減り、中身が何なのかも謎が残る。

ひとことで言うと新しい技を練習すると、脳の見た目が少し変わる。でもサボると戻る!

もくじ
  1. 3か月の練習で、脳の一部が"大きく"なった
  2. そして、やめたら減っていった
  3. 60歳でも、7日でも変わった
  4. でも「脳細胞が増えた」とは言えない
  5. まとめ

「大人になったら、脳はもう変わらない」——昔はそう考えられていました。

その常識を揺さぶった実験のひとつが、なんとジャグリングです。ボールを3個投げ続ける、あの大道芸。これを練習しただけで、脳の見た目がMRIで変わったというのです。

013か月の練習で、脳の一部が"大きく"なった

その結果、練習した人だけ、動くものを見るときに働く領域などで灰白質が増えていました。hMT/V5と呼ばれる、側頭葉と後頭葉の境目あたりの場所です。

灰白質は、神経細胞の本体が多く集まる、脳の表面の"グレーの層"です。

02そして、やめたら減っていった

ところが、練習をやめて3か月たつと、増えていた灰白質は減って、元の状態に近づいていました。

使うと増え、使わないと減る。まるで筋肉のような変化でした。

練習前 → 練習後(増える) → やめて3か月後(減る)
練習前 → 練習後(増える) → やめて3か月後(減る)

0360歳でも、7日でも変わった

その後も、ジャグリングを使った研究が続きました。

  • 60歳前後の人でも、同じ領域で灰白質が増えた。ただし、上達ぶりは若い人ほどではなかった(2008年)
  • 練習を始めてわずか7日で変化が出ることもあった(2008年)。研究チームは、覚えた技を繰り返すより「新しく覚える」ことのほうが、脳の変化には大事だと考えた
  • 神経どうしをつなぐ"配線"にあたる白質でも、6週間の練習で変化が見られた(イギリス、2009年)

04でも「脳細胞が増えた」とは言えない

ここで注意したいことがあります。

MRIで分かるのは、「その場所の灰白質が増えたように見える」ということだけ。それが——

  • 神経細胞の数が増えたのか
  • 神経細胞の枝(樹状突起)が増えたのか
  • 神経を支えるグリア細胞や血管が増えたのか
  • 単に水分や血流が変わったのか

——は区別できません。

2013年のレビュー(研究のまとめ)は、別の問題も指摘しています。この種の研究の多くは、実験の組み方や統計の手法に弱点がある。そのため、報告された変化の多くは、本当の変化ではなく見かけだけのものかもしれない、というのです。

05まとめ

ジャグリングの練習で、脳の見た目は1週間〜数か月で変わりうる。でも、それは「脳細胞が増えた」という単純な話ではありません。中身はまだ研究中です。

大人の脳も、新しいことを覚えるときに形を変えうる。そう示す報告は今も続いています。今日、何かひとつ新しいことを始めてみませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPeople long thought the adult brain could not change its structure. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

People long thought the adult brain could not change its structure. A study published in 2004 challenged this idea. Researchers divided 24 adults who had never juggled into two groups, and 12 of them practiced three-ball juggling for three months. Brain scans showed that the jugglers gained gray matter in an area that processes visual motion.

But an MRI scan only shows that a region looks bigger. It cannot tell whether the change comes from new cells, more branches, or blood flow. Three months after the jugglers stopped practicing, the increase had become smaller.

Later studies found similar changes in people around 60, and even after just seven days of training. In the seven-day study, learning something new seemed to matter more than repeating a known skill.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

長い間、人々は大人の脳は構造を変えることができないと考えていました。2004年に発表された研究は、この考えに疑問を投げかけました。研究者たちは、ジャグリングをしたことのない大人24人を2つのグループに分け、そのうち12人が3か月間、3個のボールのジャグリングを練習しました。脳の画像からは、練習した人たちは視覚的な動きを処理する領域で灰白質が増えたことがわかりました。

ただし、MRIでわかるのは、ある領域が大きく見えるということだけです。その変化が新しい細胞によるのか、枝の増加によるのか、血流によるのかは判断できません。練習をやめて3か月たつと、その増加は小さくなっていました。

その後の研究では、60歳前後の人でも、さらにはわずか7日間の練習でも、同様の変化が見られました。7日間の研究では、すでに知っている技を繰り返すより、新しいことを覚えることのほうが大切なようでした。

4択リーディングクイズ

Q1. How many people practiced juggling in the 2004 study?

Q2. According to later studies, which statement is true?

Q3. What can an MRI scan NOT tell us, according to the passage?

重要単語

  • juggleB2
    動詞ジャグリングする、(複数のことを)同時にこなすShe can juggle three balls for a minute. juggle work and family「仕事と家庭を両立させる」の比喩用法が長文で頻出。
  • gray matterC1
    名詞(句)灰白質Gray matter contains many nerve cell bodies. white matter(白質=神経の配線)と対で覚える。
  • temporaryB1
    形容詞一時的なThe change in the brain was only temporary. tempo(時)と同語源。反意語は permanent。類義語 transient はより硬い表現。
  • acquireB2
    動詞習得する、身につけるIt takes time to acquire a new skill. 名詞 acquisition。language acquisition「言語習得」は入試頻出。
  • scanB1
    名詞(MRIなどの)撮影、画像The brain scan showed a small difference. 動詞では「ざっと目を通す」の意味も。scan a page for a word「単語を探して流し読みする」。
  • transientC1
    形容詞一時的な、つかの間のThe increase in gray matter was transient. trans-(越えて)+ire(行く)=「過ぎ去る」。temporary より学術的。
ボール3個のジャグリングを3か月練習した人の脳をMRIで撮ったら、動きを見る場所の灰白質が増えていた。60歳前後の人でも変化があったらしい。ただし練習をやめたら減っていった。脳も筋肉みたい?

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Draganski et al. (2004) Neuroplasticity: changes in grey matter induced by training, Naturedoi.org
  2. Boyke et al. (2008) Training-induced brain structure changes in the elderly, Journal of Neurosciencedoi.org
  3. Driemeyer et al. (2008) Changes in gray matter induced by learning—revisited, PLoS ONEdoi.org
  4. Scholz et al. (2009) Training induces changes in white-matter architecture, Nature Neurosciencedoi.org
  5. Thomas & Baker (2013) Teaching an adult brain new tricks: a critical review of evidence for training-dependent structural plasticity in humans, NeuroImagedoi.org