「猫背は体に悪い」は思い込み? 姿勢と腰痛・首の痛みの研究を調べたら意外な答え

読む前に予想してみよう!
猫背の人は、背筋がまっすぐな人より必ず腰痛や首の痛みになりやすい
姿勢と痛みの関係を調べた研究では、はっきりした因果関係は確認されていない。
- 対象
- 17歳の若者ほか
- 規模
- 1,108人+41件のレビューの統合
- 研究の種類
- 横断研究+アンブレラレビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
17歳約1100人の調査で、猫背の子に首の痛みが多いわけではなかった。腰痛と姿勢の関係も因果ははっきりしない。カギは「同じ姿勢を続けないこと」。
ひとことで言うと「正しい姿勢」はひとつじゃない。いちばん大事なのは、ときどき動くこと!
「背中が丸まってるよ! 姿勢を正しなさい」。家でも学校でも、何度も言われてきた言葉です。
猫背は見た目が悪いだけでなく、腰痛や肩こり、首の痛みの原因になる——多くの人がそう信じています。
ところが、姿勢と痛みの関係を調べた研究をたどってみると、「猫背=痛みの原因」とはっきり言える証拠は、意外なほど少ないことがわかってきました。
011100人の17歳の姿勢を写真で分析
分析の結果、座り姿勢は次の4つのタイプに分かれました。
- まっすぐタイプ
- 中間タイプ
- 胸が丸まり頭が前に出るタイプ(いわゆる猫背)
- 胸は起きているが頭が前に出るタイプ
ところが、どのタイプでも、首の痛みや頭痛のある割合に、はっきりした差はありませんでした。
一方で、猫背タイプの子は気分の落ち込み(うつ症状)が強い傾向があり、まっすぐタイプの子は運動をよくしている傾向がありました。姿勢は、痛みよりも、心の状態や生活習慣を映しているのかもしれません。
02腰痛と姿勢:41のレビューをまとめても「はっきりしない」
腰痛についてはどうでしょう。
2020年に発表された研究では、姿勢や体の使い方と腰痛の関係を調べた41件の系統的レビューをさらにまとめる「レビューのレビュー」が行われました。
その結論は、タイトルどおり「因果関係についての合意はない」。座りっぱなし、立ちっぱなし、前かがみ、ひねる動作など、どれも「関係がある」とする研究と「関係がない」とする研究があり、それが腰痛の原因だと言えるだけの証拠はそろっていないというものでした。

03「正しい姿勢」はひとつじゃない
2019年、理学療法の専門誌には「『背筋を伸ばせ』を見直す時だ」という論説が載りました。著者たちは、ひとつの「正しい姿勢」を目指すより、楽な姿勢をいろいろ使い分け、ときどき変えることの方が大切だと述べています。
背筋をピンと伸ばし続けるのが、いつも楽とは限りません。どんな姿勢でも、同じ姿勢を長時間続けると、体はこわばってきます。
04でも、姿勢が「気分」に関係する可能性はある
ただし、姿勢が無意味というわけではありません。
2015年のニュージーランドの実験では、74人の参加者を、テープで背筋を伸ばした姿勢か猫背の姿勢に固定してスピーチ課題に取り組んでもらいました。すると、背筋を伸ばしたグループは、自尊心が高く、気分も良く、恐れが少なかったと報告されています。
とはいえ、姿勢と気分の研究は、再現性が議論されている分野でもあります。「姿勢を正せば自信がつく」と言い切るのは、まだ早いでしょう。
05まとめ
「猫背は体に悪い」は、少なくとも「痛みの原因」という意味では、はっきり証明された話ではありませんでした。
大切なのは、ひとつの姿勢を守ることより、こまめに動くこと。背中を丸めて本を読むのも、ときどき伸びをすれば、きっと大丈夫です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMost people believe that slouching is bad for the body and causes back or neck pain.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many of us hear, "Sit up straight!" People believe that slouching causes back pain and neck pain. But is it true? In Australia, researchers took photos of 1,108 teenagers while they were sitting.
Teenagers who slouched did not have more neck pain than others. Studies about back pain also found no clear answer. Experts now say you should change your position often and move your body.
66 words ・ CEFR A2
和訳を見る
多くの人が「背筋を伸ばして座りなさい」と言われます。猫背は腰痛や首の痛みの原因になると信じられています。でも、それは本当でしょうか。オーストラリアで、研究者たちは1,108人の10代の若者が座っているところを写真に撮りました。
猫背の若者に、ほかの若者より首の痛みが多いわけではありませんでした。腰痛に関する研究でも、はっきりした答えは見つかりませんでした。専門家は今、姿勢をこまめに変え、体を動かすことが大切だと言っています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
猫背が痛みの原因かどうかを調べた研究の話なので A。
Q2. How many teenagers did the Australian researchers take photos of?
took photos of 1,108 teenagers とあるので D。
Q3. In this passage, "slouching" means ...
Sit up straight! と対比されているので、slouch は「背中を丸めて座る・立つ」こと。正解は B。
Most people believe that slouching is bad for the body and causes back or neck pain. But research does not clearly support this idea. In a 2016 Australian study, researchers photographed 1,108 seventeen-year-olds while they were sitting and divided their postures into four types. There was no clear difference in neck pain or headaches between the types.
However, slouched teenagers tended to have more depressive symptoms, and upright teenagers tended to exercise more. A 2020 study that combined 41 reviews also found no agreement that posture causes low back pain. Experts now suggest that there is no single correct posture. Instead, changing your position often may matter more than sitting perfectly straight.
112 words ・ CEFR B1
和訳を見る
ほとんどの人は、猫背は体に悪く、腰や首の痛みの原因になると信じています。しかし、研究はこの考えをはっきりとは支持していません。2016年のオーストラリアの研究で、研究者たちは17歳の若者1,108人が座っているところを撮影し、その姿勢を4つのタイプに分けました。タイプの間で、首の痛みや頭痛にはっきりした違いはありませんでした。
ただし、猫背の若者はうつ症状が強い傾向があり、背筋が伸びた若者はよく運動している傾向がありました。41のレビューをまとめた2020年の研究でも、姿勢が腰痛の原因だという合意は見つかりませんでした。専門家は今、正しい姿勢はひとつではないと言っています。それよりも、完璧にまっすぐ座ることより、姿勢をこまめに変えることのほうが大事かもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
第2文 research does not clearly support this idea が主旨で、2つの研究でそれを裏づけているので C。
Q2. What did the Australian study find about slouched teenagers?
slouched teenagers tended to have more depressive symptoms とあるので B。よく運動していたのは背筋が伸びた若者。
Q3. What does the writer suggest at the end?
最終文 changing your position often may matter more than sitting perfectly straight とあるので D。C は気分や運動との関連が述べられているので誤り。
"Sit up straight" is advice almost everyone has received, based on the belief that slouching leads to back and neck pain. The research, however, is far less certain. In a 2016 Australian study, investigators photographed 1,108 seventeen-year-olds from the side, measured the angles of the head, neck and chest, and identified four sitting-posture clusters. None of the clusters showed a clear difference in rates of neck pain or headache.
Instead, slouched adolescents reported more depressive symptoms, while upright ones exercised more. So posture may reflect mood and lifestyle more than it causes pain. Because the study was cross-sectional, it could not test causation in either direction. For low back pain, a 2020 "review of reviews" covering 41 systematic reviews concluded that there was no consensus on causality: for sitting, standing, bending and twisting, some reviews found associations and others did not.
Consequently, physiotherapy researchers have argued that it is time to re-evaluate the idea of one correct posture, since holding any position, even an upright one, for too long can stiffen the body. A 2015 New Zealand experiment did find that upright posture improved self-esteem and mood, but research on posture and emotion faces questions about reproducibility.
197 words ・ CEFR B2
和訳を見る
「背筋を伸ばして座りなさい」は、ほとんど誰もが受けたことのあるアドバイスで、猫背は腰や首の痛みにつながるという考えに基づいています。しかし、研究ははるかに不確かです。2016年のオーストラリアの研究では、研究者たちが17歳の若者1,108人を横から撮影し、頭・首・胸の角度を測って、座り姿勢の4つのタイプを特定しました。どのタイプでも、首の痛みや頭痛の割合にはっきりした違いは見られませんでした。
その代わり、猫背の若者はうつ症状が多く、背筋の伸びた若者はよく運動していました。つまり、姿勢は痛みの原因というより気分や生活習慣を反映しているのかもしれません。この研究は横断研究だったため、どちらの方向の因果関係も検証できませんでした。腰痛については、41件の系統的レビューを対象とした2020年の「レビューのレビュー」が、因果関係についての合意はないと結論づけました。座る、立つ、かがむ、ひねるのいずれについても、関連を見いだしたレビューもあれば、見いださなかったレビューもあったのです。
そのため理学療法の研究者たちは、たとえ背筋を伸ばした姿勢でも、どんな姿勢でも長く続けすぎると体がこわばるので、ひとつの正しい姿勢という考えを見直す時だと主張しています。2015年のニュージーランドの実験では、背筋を伸ばした姿勢が自尊心と気分を高めることがわかりましたが、姿勢と感情の研究は再現性の点で疑問を抱えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main argument of the passage?
猫背と痛みの因果を示す証拠が弱く、ひとつの正しい姿勢という考えを見直すべきだという主張なので A。
Q2. What did the 2020 review of reviews conclude?
concluded that there was no consensus on causality とあり、関連あり・なしのレビューが混在していたので C。D は本文と矛盾。
Q3. Why does the author mention reproducibility at the end?
姿勢と感情の研究は reproducibility(再現性)に疑問があると述べ、ニュージーランドの結果をうのみにしないよう注意しているので B。
重要単語
- postureB2名詞姿勢Good posture does not mean being stiff.
position(位置)と同じ pos(置く)が語源。「(物事への)態度・姿勢」の意味でも使う。 - slouchC1動詞猫背になる、前かがみに座るTry not to slouch for hours at your desk.
be no slouch at ~ で「~がなかなか上手だ」という口語表現になる。 - low back painB2名詞(句)腰痛Low back pain is very common worldwide.
英語では「腰」を lower back と言うことが多い。waist はウエスト(胴のくびれ)で別物。 - uprightB2形容詞まっすぐな、直立したShe sat upright during the interview.
「正直な・高潔な」の意味もある。an upright person=誠実な人。 - causalityC1名詞因果関係The review found no clear causality.
causation とほぼ同義。correlation(相関)と区別するのが研究を読むときの基本。 - consensusC1名詞(意見の)一致、合意There is no consensus among experts.
reach a consensus「合意に達する」。scientific consensus「科学的合意」は論説文の頻出表現。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
このネタ、誰かに教えたくなった?
「猫背は首や腰に悪い」と思いきや、17歳約1100人の姿勢を写真で分析したら、猫背タイプの子に首の痛みが多いわけではなかったらしい。腰痛と姿勢の関係も、因果ははっきりしないという結論が多いとか。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(4件)タップで表示
- Richards KV et al. (2016) Neck Posture Clusters and Their Association With Biopsychosocial Factors and Neck Pain in Australian Adolescents, Physical Therapydoi.org
- Swain CTV et al. (2020) No consensus on causality of spine postures or physical exposure and low back pain: A systematic review of systematic reviews, Journal of Biomechanicsdoi.org
- Slater D et al. (2019) "Sit Up Straight": Time to Re-evaluate, Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapydoi.org
- Nair S et al. (2015) Do slumped and upright postures affect stress responses? A randomized trial, Health Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













