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昼ごはんのあとに眠くなるのは「血液が胃に集まるから」…ではないかもしれない

昼ごはんのあとに眠くなるのは「血液が胃に集まるから」…ではないかもしれない

読む前に予想してみよう!

昼食を食べなければ、午後に眠くなることはまったくない

研究カード(どんな研究?)
対象
マウスの脳細胞/ショウジョウバエ/人の時間生物学研究
規模
実験室の研究が中心
研究の種類
動物実験・レビュー
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

食後の眠気は、食事そのものに加えて、昼過ぎに眠気が強まる体内時計のリズムも大きく関わる。「血液が胃に集まる説」は根拠が弱い。

ひとことで言うと午後の眠気は、ごはんだけじゃなく「体内時計」のせいでもある!

もくじ
  1. 「血液が胃に集まる説」の弱点
  2. 犯人その1:体内時計の「昼過ぎの谷」
  3. 犯人その2:「起きていろ」スイッチが弱まる
  4. 何を食べるかでもちがう?
  5. まとめ

昼ごはんを食べたあとの5時間目の授業や、午後イチの会議。まぶたが重くて、どうしようもなく眠い……。

「食べると血液が胃に集まって、脳に血が回らなくなるから眠くなるんだよ」。こう説明されることが多いですよね。

でも実はこの説、科学的な根拠はそれほど強くないんです。では、本当の理由は何なのでしょう?

01「血液が胃に集まる説」の弱点

たしかに、食事のあとは胃や腸への血流が増えます。でも、脳は体の中でも特別あつかいされていて、脳への血流はできるだけ一定に保たれる仕組みがあります。

ふつうの量の食事で、脳が酸欠になるほど血流が減るとは考えにくい、というのが多くの専門家の見方です。

02犯人その1:体内時計の「昼過ぎの谷」

まず大きいのが、体内時計のリズムです。

人の眠気は、夜中にいちばん強くなるだけでなく、昼過ぎ(午後2時前後)にも小さな山があることが知られています。英語では「ポスト・ランチ・ディップ(昼食後の落ちこみ)」と呼ばれます。

体内時計は、脳の中にある1日約24時間でひと回りする時計のようなもの。眠気や体温、ホルモンの量などを、時間に合わせて上げたり下げたりしています。その時計の針が「昼過ぎ」を指すと、眠気のレベルが少し上がるようにできているわけです。

おもしろいのは、この眠気が昼食を食べなくても起こること。つまり、午後の眠気の一部は、ごはんとは関係なく、もともと体にセットされたリズムなんです。昼寝(シエスタ)の文化がある国があるのも、うなずけますね。

体内時計には、夜中だけでなく「昼過ぎ」にも覚醒度の小さな谷がある
体内時計には、夜中だけでなく「昼過ぎ」にも覚醒度の小さな谷がある

03犯人その2:「起きていろ」スイッチが弱まる

食事そのものも、眠気に関わっていると考えられています。

オレキシンは、脳を「起きているモード」に保つ物質。いわば脳の“起床スイッチ”です。オレキシンがうまく働かない病気(ナルコレプシー)では、日中に強い眠気が起こることが知られています。

食事で血糖が上がると、このスイッチが少し弱まり、眠気につながるのかもしれません。ただし、これがどれくらい人の食後の眠気に影響しているかは、まだ研究途中です。

04何を食べるかでもちがう?

2016年には、ショウジョウバエの研究で、タンパク質や塩分の多い食事のあとに眠りやすくなるという報告も出ています。人でも、量の多い食事や、炭水化物・脂質の多い食事のあとに眠くなりやすいと感じる人は多いですが、結果は研究によってまちまちです。

05まとめ

食後の眠気は「血液が胃に集まるから」というより、体内時計の昼過ぎの谷と、食事による“起床スイッチ”の変化などが重なって起こると考えられています。

午後の眠気は、あなたの気合い不足ではありません。体のリズムを味方につけて、上手に付き合いましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAt around two in the afternoon, many of us start fighting to keep our eyes open. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

At around two in the afternoon, many of us start fighting to keep our eyes open. A common explanation is that blood moves to the stomach after lunch, so less of it reaches the brain.

But the brain has a system that keeps its blood flow fairly steady, so this idea is weak. The body clock seems to matter more. Our sleepiness rises at night, and it rises again in the early afternoon. This is called the post-lunch dip, and it can happen even if we skip lunch.

Food may play a part too, although the evidence so far comes from animals. In 2006, researchers found in mouse brain cells that glucose can reduce the activity of orexin neurons. These neurons help keep us awake.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

午後2時ごろになると、多くの人が目を開けておくのに苦労し始めます。よくある説明は、昼食後に血液が胃に移動し、脳に届く量が減るから、というものです。

しかし、脳には血流をかなり一定に保つしくみがあるので、この考えは弱いのです。体内時計のほうが大きく関わっているようです。眠気は夜に高まり、午後の早い時間にもう一度高まります。これは「ポスト・ランチ・ディップ(昼食後の落ちこみ)」と呼ばれ、昼食を抜いても起こることがあります。

食事も関係しているかもしれませんが、今のところ証拠は動物実験から得られたものです。2006年、研究者たちはマウスの脳細胞で、ブドウ糖がオレキシン神経の働きを弱めうることを発見しました。この神経は、私たちが起きているのを助けています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Why is the "blood goes to the stomach" explanation weak?

Q3. What would probably happen if a person's orexin neurons did not work well?

重要単語

  • drowsyB2
    形容詞眠い、うとうとしたI always feel drowsy after lunch. sleepy より「ぼんやり眠気がある」感じ。薬の注意書き May cause drowsiness.「眠気を起こすことがあります」でおなじみ。
  • circadian rhythmC1
    名詞(句)概日リズム(体内時計)Our circadian rhythm controls when we feel sleepy. circa(約)+dies(日)で「約1日」。body clock の専門的な言い方。
  • post-lunch dipC1
    名詞(句)昼食後の覚醒度の落ちこみThe post-lunch dip can happen even without lunch. post-(後の)+lunch+dip(一時的な低下)。dip は「ちょっと浸す・下がる」の意味。
  • blood sugarB1
    名詞(句)血糖A big meal raises your blood sugar. 専門的には blood glucose。blood sugar level「血糖値」の形で使うことが多い。
  • alertnessB2
    名詞覚醒度、注意力A short walk can improve alertness. alert(油断のない)+-ness。stay alert「注意を保つ」も頻出。
  • suppressC1
    動詞抑える、抑制するGlucose may suppress the neurons that keep us awake. sup-(下に)+press(押す)。suppress anger「怒りを抑える」、suppress a rebellion「反乱を鎮圧する」。
昼ごはんのあとに眠くなるのは「血液が胃に集まって脳が酸欠になるから」とよく言われるけど、根拠はあまり強くないらしい。実は体内時計にも、昼過ぎに眠気が強まるリズムがあって、昼食を抜いても眠くなることがあるとか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Monk (2005) The post-lunch dip in performance, Clinics in Sports Medicinedoi.org
  2. Burdakov et al. (2006) Tandem-Pore K+ Channels Mediate Inhibition of Orexin Neurons by Glucose, Neurondoi.org
  3. Murphy et al. (2016) Postprandial sleep mechanics in Drosophila, eLifedoi.org
  4. Wells, Read & Craig (1997) Influences of Fat and Carbohydrate on Postprandial Sleepiness, Mood, and Hormones, Physiology & Behaviordoi.org