指ポキポキの「ポキッ」の正体、MRIで撮影したら泡が“生まれる”瞬間だった

読む前に予想してみよう!
指をポキポキ鳴らし続けると、関節炎になりやすいことがはっきり証明されている
関節炎との関連は見つからなかったという研究が多い。ただし痛みがあるなら別問題。
- 対象
- 健康な成人の指の関節
- 規模
- 1人(MRI撮影)/約200人(関節炎の調査)
- 研究の種類
- 画像による実験研究・症例対照研究・横断研究
- 確かさ
- ★★☆☆☆
指を鳴らす音は関節液の中の泡が関係する。MRI撮影で泡ができる瞬間に音が出たと報告されたが、泡がつぶれる音説もあり論争中。
ひとことで言うとポキッの正体は関節の中の「泡」。何十年も研究者がもめている!
授業中、仕事中、ついやってしまう「指ポキポキ」。気持ちいいけど、まわりからは「関節が太くなるよ」なんて言われたりします。
ところで、あの「ポキッ」という音、何の音か知っていますか?
骨と骨がぶつかる音……ではありません。実はこれ、関節の中の「泡」が関係していて、しかも科学者たちが数十年にわたって論争しているテーマなんです。
01関節の中は「液体で満たされたカプセル」
指の関節は、骨と骨のすき間を関節包というカプセルが包み、その中は関節液(滑液)というとろっとした液体で満たされています。潤滑油のような役割ですね。
指を引っぱったり反らしたりすると、カプセルの中の圧力が急に下がります。すると液体に溶けていたガスが、泡(空洞)となって現れます。炭酸飲料のフタを開けたとき、急に泡が出てくるのと似た仕組みです。
02論争:泡が「できる音」か「つぶれる音」か
1970年代には、「泡がつぶれるときの音」という説が有力でした。
ところが2015年、注目を集める映像が撮影されます。
この研究は「音は泡ができる瞬間に出る」という説を後押ししました。
ところが2018年、別の研究チームが『Scientific Reports』で、関節の形と泡の動きを計算した数理モデルを発表。「泡が一部つぶれるときの圧力変化で、実際の音を説明できる」と反論したのです。
決着はまだついていません。身近な音なのに、最新の科学でもまだ議論中というのがおもしろいところ。

03すぐにもう一回鳴らせない理由
一度鳴らした関節は、しばらく鳴らせません。これは、できた泡(ガス)が液体に溶け戻るまで時間がかかるため、と考えられています。
0460年間、片手だけ鳴らし続けた医師
「指ポキは関節炎の原因になる」という話を確かめるため、アメリカの医師アンガー(Unger)さんは、約60年間、左手だけ毎日指を鳴らし、右手は鳴らさないという“ひとり実験”を続けました。
1998年にその結果を医学誌に報告。どちらの手にも関節炎はなく、違いも見られなかったそうです。この研究は2009年にイグノーベル賞を受賞しました。
もちろん1人だけの記録なので証拠としては弱いですが、その後の多人数(約200人)を調べた研究でも、指ポキと手の関節炎に関連は見つからなかったと報告されています。
ただし、1990年には約300人を調べて、よく指を鳴らす人は手の腫れや握力の低下が多かったとする報告もあります。こちらも一時点の調査で、原因と結果ははっきりしませんが、「完全に無害と証明された」わけでもない、と覚えておきましょう。
05まとめ
指ポキの「ポキッ」は、関節の液体の中の泡が関係する音。でも「できる音」か「つぶれる音」かは、いまも研究者が議論中です。
身近すぎて気にも留めなかった音に、まだ解けていない謎がある。科学のおもしろさって、こういうところにあるのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCracking your knuckles makes a popping sound, but what causes it?
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people crack their knuckles. What makes the "pop" sound? It is not bones hitting each other. Inside the joint, there is liquid.
When you pull your finger, a bubble appears in the liquid. In 2015, scientists took MRI pictures and saw a bubble form at the moment of the sound.
But other scientists think the sound comes when a bubble breaks. They still disagree. Cracking your knuckles has not been clearly linked to arthritis.
75 words ・ CEFR A2
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多くの人が指の関節をポキッと鳴らします。あの「ポキッ」という音は何から出ているのでしょうか?骨と骨がぶつかる音ではありません。関節の中には液体があります。
指を引っぱると、その液体の中に泡が現れます。2015年、科学者たちはMRIで撮影し、音が鳴った瞬間に泡ができるのを見ました。
しかし、ほかの科学者たちは、泡がつぶれるときに音が出ると考えています。彼らの意見はまだ分かれています。指を鳴らすことと関節炎との間には、はっきりした関係は見つかっていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
指を鳴らしたときの音の正体についての文章なので B。
Q2. What did scientists see in the MRI pictures in 2015?
saw a bubble form at the moment of the sound とあるので D。
Q3. In this passage, "disagree" means ...
dis-(反対)+agree(同意する)で「意見が合わない」。泡ができる音か、つぶれる音かで意見が分かれているので A。
Cracking your knuckles makes a popping sound, but what causes it? A finger joint is surrounded by a capsule filled with fluid. When you pull or bend the finger, the pressure inside drops, and gas dissolved in the fluid forms a bubble, much like the bubbles that appear when you open a soda. In 2015, Canadian researchers filmed a finger with real-time MRI and saw a cavity form at the exact moment of the crack.
However, in 2018 another team used a mathematical model and argued that the sound comes from a bubble partly collapsing. As for health, one doctor cracked the knuckles of only one hand for about 60 years and found no arthritis in either hand.
118 words ・ CEFR B1
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指の関節を鳴らすとポキッと音がしますが、その原因は何でしょうか?指の関節は、液体で満たされたカプセルに包まれています。指を引っぱったり曲げたりすると、中の圧力が下がり、液体に溶けていたガスが泡になります。炭酸飲料のふたを開けたときに泡が出てくるのとよく似ています。2015年、カナダの研究者たちはリアルタイムMRIで指を撮影し、ポキッと鳴ったちょうどその瞬間に空洞ができるのを確認しました。
しかし2018年、別のチームが数理モデルを使い、音は泡が一部つぶれるときに出ると主張しました。健康面については、ある医師が約60年間片手だけ指を鳴らし続けましたが、どちらの手にも関節炎は見られませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
音の原因について、泡ができる説とつぶれる説が対立していることが中心なので C。
Q2. What did the 2018 study argue?
argued that the sound comes from a bubble partly collapsing とあるので B。
Q3. What does the comparison with opening a soda help explain?
圧力が下がると溶けていたガスが泡になる、という仕組みを炭酸飲料にたとえているので A。
The popping sound of cracked knuckles has puzzled scientists for decades. Each finger joint is enclosed in a capsule filled with synovial fluid, and when the joint is pulled apart, pressure inside falls and dissolved gas comes out of solution, forming a cavity. Since the 1970s, many believed the sound was produced when such a bubble collapsed. In 2015, however, Kawchuk and colleagues used real-time MRI to film a finger being slowly pulled and observed a cavity forming at the very instant of the crack, supporting the view that the sound marks bubble formation.
Their evidence, though, came from a single participant. Three years later, a mathematical model suggested that pressure changes from a partial collapse of the bubble could reproduce the actual sound, so the debate continues, and both processes may be involved. Health effects are also uncertain. A doctor who cracked only his left hand for about 60 years found no arthritis in either hand, and a study of about 200 people found no link with arthritis, but a 1990 survey reported more hand swelling and weaker grip among habitual crackers.
183 words ・ CEFR B2
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指を鳴らしたときのポキッという音は、何十年もの間、科学者を悩ませてきました。指の関節はそれぞれ滑液で満たされたカプセルに包まれていて、関節が引き離されると中の圧力が下がり、溶けていたガスが出てきて空洞ができます。1970年代以降、多くの人はこの泡がつぶれるときに音が出ると考えていました。しかし2015年、カウチュクさんらはリアルタイムMRIを使って、ゆっくり引っぱられる指を撮影し、ポキッと鳴ったまさにその瞬間に空洞ができるのを観察しました。これは、音が泡のでき始めを示しているという見方を支持するものでした。ただし、その証拠は参加者1人から得られたものでした。
3年後、ある数理モデルは、泡が一部つぶれるときの圧力変化で実際の音を再現できると示しました。そのため論争は続いており、両方の過程が関わっている可能性もあります。健康への影響もはっきりしていません。約60年間左手だけを鳴らし続けた医師は、どちらの手にも関節炎がなく、約200人を調べた研究でも関節炎との関連は見つかりませんでした。しかし1990年の調査では、習慣的に指を鳴らす人に手の腫れや握力の低下が多かったと報告されています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2015 MRI study support?
observed a cavity forming at the very instant of the crack, supporting the view that the sound marks bubble formation とあるので D。
Q2. Which statement about the evidence is true?
Their evidence, though, came from a single participant. とあるので C。参加者1人という点は研究の限界。
Q3. What can be concluded about the health effects of knuckle cracking?
関節炎との関連は見つからなかった研究がある一方、1990年の調査では腫れや握力低下が報告されており、結果は一致していないので A。
重要単語
- jointB1名詞・形容詞関節/共同のYour fingers have several small joints.
形容詞では「共同の」。a joint project「共同プロジェクト」も頻出。join(つなぐ)と同語源。 - cavityC1名詞空洞/虫歯の穴A cavity formed inside the joint fluid.
cave(ほら穴)と同語源。歯医者の話では「虫歯」の意味になる。 - bubbleA2名詞泡The sound may come from a bubble.
the bubble economy「バブル経済」のように「実体のない膨張」の比喩にも使う。burst a bubble「泡をはじけさせる」。 - arthritisC1名詞関節炎Knuckle cracking was not linked to arthritis.
arthr-(関節)+-itis(炎症)。-itis は bronchitis(気管支炎)など病名に共通する語尾。 - debateB2名詞・動詞論争(する)Scientists still debate the cause of the sound.
be under debate「議論中である」。discuss より「賛否が分かれて争う」ニュアンスが強い。 - collapseB2動詞・名詞つぶれる、崩壊する/崩壊The bubble partly collapsed.
建物の倒壊、経済の崩壊、人が倒れることにも使う多義語。the collapse of the empire「帝国の崩壊」。 - habitualC1形容詞習慣的なHe is a habitual knuckle cracker.
habit(習慣)の形容詞。a habitual smoker「常習的な喫煙者」の形でよく出る。
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指をポキッと鳴らす音の正体、関節の中で泡が“できる”瞬間の音だという研究と、泡が“つぶれる”音だという研究がいまも対立中らしい。ちなみに60年片手だけ鳴らし続けた医師はイグノーベル賞を受賞。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Kawchuk et al. (2015) Real-Time Visualization of Joint Cavitation, PLoS ONEdoi.org
- Chandran Suja & Barakat (2018) A Mathematical Model for the Sounds Produced by Knuckle Cracking, Scientific Reportsdoi.org
- Unger (1998) Does knuckle cracking lead to arthritis of the fingers?, Arthritis & Rheumatismdoi.org
- deWeber, Olszewski & Ortolano (2011) Knuckle Cracking and Hand Osteoarthritis, Journal of the American Board of Family Medicinedoi.org
- Castellanos & Axelrod (1990) Effect of habitual knuckle cracking on hand function, Annals of the Rheumatic Diseasesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











