体と健康・食ビミョー

早食いの人ほど太りやすい? 糖尿病の日本人約6万人のデータが示した「食べるスピード」の話

早食いの人ほど太りやすい? 糖尿病の日本人約6万人のデータが示した「食べるスピード」の話

読む前に予想してみよう!

「おなかいっぱい」の信号は、食べ始めた瞬間に脳へ届く

研究カード(どんな研究?)
対象
日本の2型糖尿病の人
規模
約6万人
研究の種類
健診・保険データの縦断的観察研究
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

日本の糖尿病患者約6万人のデータで、ゆっくり食べる人は肥満が少ない傾向。満腹ホルモンが出るまで時間がかかるのが一因と考えられる。

ひとことで言うと「おなかいっぱい」の合図は遅れて届く。ゆっくり食べると気づきやすい!

もくじ
  1. 日本人約6万人の健診データでわかったこと
  2. 「満腹の手紙」は遅れて届く
  3. でも「ゆっくり食べればやせる」とは言い切れない
  4. 「よく噛む」もセットで考えよう
  5. 「ながら食べ」にも要注意
  6. まとめ

ランチを5分でかきこんで、気づいたら食べすぎて苦しい……。そんな経験、ありませんか?

昔から「よく噛んで、ゆっくり食べなさい」と言われてきました。おばあちゃんの知恵っぽいこの言葉、実は大規模なデータでもそれっぽい傾向が出ているんです。

ただし、話はそんなに単純ではありません。研究の中身をのぞいてみましょう。

01日本人約6万人の健診データでわかったこと

参加者は、自分の食べる速さを「速い」「ふつう」「遅い」で答えました。すると、ゆっくり食べる人ほど、肥満の割合が低い傾向がはっきり出ました。

さらに、食べるスピードを「遅く」変えた人は、BMIや腹囲が小さくなる方向だったことも報告されています。

02「満腹の手紙」は遅れて届く

なぜ速さが関係するのでしょう? カギは満腹ホルモンです。

食べ物が腸に届くと、腸から「もう十分ですよ」という合図のホルモン(PYYやGLP-1など)が出て、血液に乗って脳へ届きます。いわば腸から脳への「満腹の手紙」。

この手紙は郵便のように、届くまで時間がかかります。早食いだと、手紙が届く前に食べ終わってしまい、つい食べすぎてしまうのではないか、と考えられています。

2010年にギリシャの研究チームが『Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism』で報告した実験では、同じ量のアイスクリームを5分で食べるより30分かけて食べたほうが、満腹ホルモンの増え方が大きかったとされています。

「おなかいっぱい」の手紙は、腸から脳へ時間をかけて届く
「おなかいっぱい」の手紙は、腸から脳へ時間をかけて届く

03でも「ゆっくり食べればやせる」とは言い切れない

ここで冷静に。上の大規模研究は観察研究で、対象も糖尿病の人たちでした。ゆっくり食べる人は、もともと生活リズムが整っていたり、間食が少なかったりする可能性もあります。

また、「自分は早食いだ」という自己申告なので、本当の速さを正確に測ったわけでもありません。

つまり、早食いと肥満には関連がある。でも、速さだけが原因とは断定できない、というのが正直なところです。

04「よく噛む」もセットで考えよう

ゆっくり食べようとすると、自然と噛む回数も増えます。よく噛むと、食べ物が細かくなって消化を助けるだけでなく、だ液がたくさん出る、食事にかかる時間がのびるなど、いいことが重なります。

逆に、やわらかい物ばかりだと、あまり噛まずに飲みこめてしまい、スピードが上がりがち。食べ物の「かたさ」も、食べる速さを左右するポイントです。

05「ながら食べ」にも要注意

スマホやテレビを見ながら食べると、食べたことへの注意がそれて、どれだけ食べたかを感じにくくなるという研究もあります。食べる速さと同じくらい、「今、食べている」と意識することも大事なのかもしれません。

06まとめ

「ゆっくり食べる」は、お金もかからず、副作用もほぼない小さな習慣。満腹の手紙がちゃんと届くまで、ちょっとだけ待ってあげましょう。

次のごはん、最初の一口だけでも、いつもより10回多く噛んでみませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany of us have been told to chew well and eat slowly. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many of us have been told to chew well and eat slowly. A 2018 study in Japan suggests this advice may be useful. Researchers used health check-up data from about 60,000 people with type 2 diabetes. Participants described their own eating speed as fast, normal, or slow. Those who ate slowly were less likely to be obese, and people who changed to eating more slowly tended to improve their BMI.

One possible reason is that fullness hormones, such as PYY and GLP-1, are released from the gut and take time to reach the brain. However, this was an observational study, and eating speed was self-reported, so it cannot prove that eating fast causes weight gain.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

私たちの多くは、よく噛んでゆっくり食べなさいと言われてきました。2018年の日本の研究は、この助言が役に立つかもしれないことを示しています。研究者たちは、2型糖尿病の人約6万人の健康診断のデータを使いました。参加者は自分の食べる速さを「速い」「ふつう」「遅い」で答えました。ゆっくり食べる人は肥満になりにくく、よりゆっくり食べるように変えた人はBMIが改善する傾向がありました。

理由のひとつとして考えられるのは、PYYやGLP-1などの満腹ホルモンが腸から出て、脳に届くまで時間がかかることです。しかし、これは観察研究であり、食べる速さは自己申告だったので、速く食べることが体重増加の原因だとは証明できません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. How was eating speed measured in the study?

Q3. Why might fast eaters eat too much?

重要単語

  • eating speedB1
    名詞(句)食べる速さEating speed was linked to obesity. eating rate とも言う。eat slowly / eat quickly の形で英作文にも使える。
  • obesityC1
    名詞肥満Obesity raises the risk of many diseases. 形容詞は obese(肥満の)。overweight より医学的で深刻な響き。健康テーマの長文で最頻出レベル。
  • satietyC1
    名詞満腹感Satiety hormones tell the brain you are full. 発音は /səˈtaɪəti/(サタイエティ)。satisfy(満足させる)と同語源の「満ちた」状態。
  • hormoneB2
    名詞ホルモンGLP-1 is a hormone released by the gut. 発音は /ˈhɔːrmoʊn/(ホーモウン)。ギリシャ語で「刺激するもの」。release a hormone「ホルモンを分泌する」。
  • chewB1
    動詞噛むTry to chew each bite more slowly. chewing gum の chew。bite(かじる)、swallow(飲み込む)とセットで覚える。
  • plausibleC1
    形容詞もっともらしい、妥当なThat is a plausible explanation. a plausible explanation / reason の形で頻出。反対は implausible(ありそうもない)。
  • gutB2
    名詞腸、消化管The gut sends signals to the brain. 口語では guts で「根性」。gut feeling は「直感」。腸内細菌は gut bacteria。

動画でもっと知る

日本の2型糖尿病の人約6万人の健診データを調べたら、早食いの人ほど肥満が多い傾向があったらしい。「満腹です」の合図が脳に届く前に食べ終わっちゃうのが一因かも。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Hurst & Fukuda (2018) Effects of changes in eating speed on obesity in patients with diabetes: a secondary analysis of longitudinal health check-up data, BMJ Opendoi.org
  2. Kokkinos et al. (2010) Eating Slowly Increases the Postprandial Response of the Anorexigenic Gut Hormones, Peptide YY and Glucagon-Like Peptide-1, Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismdoi.org
  3. Ohkuma et al. (2015) Association between eating rate and obesity: a systematic review and meta-analysis, International Journal of Obesitydoi.org