運動前の「じっくりストレッチ」、実はパワーを少し下げていた? 準備運動の新常識

読む前に予想してみよう!
運動前の静的ストレッチは、どんなに短くても大きくパフォーマンスを下げる
1つの筋肉あたり60秒未満なら、影響はごく小さいという分析が多い。
- 対象
- 健康な成人・運動選手
- 規模
- 100件以上の実験
- 研究の種類
- 系統的レビュー・メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
長く伸ばし続ける静的ストレッチは、直後の筋力やジャンプ力を少し下げることがある。ただし短時間なら影響はごく小さい。
ひとことで言うと運動前は「伸ばしっぱなし」より「動きながら」ほぐすのがおすすめ!
体育の授業や部活のはじめに、ペアで座って脚をグーッと伸ばす。あの「じっくりストレッチ」、日本の準備運動の定番ですよね。
ところがスポーツ科学の世界では、2000年代ごろから「運動前の静的ストレッチは、パワーを下げるかも」という研究が次々に発表され、ちょっとした騒ぎになりました。
結局、どうなの? 最新の整理をのぞいてみましょう。
012種類のストレッチがある
まず言葉の整理から。
- 静的ストレッチ:筋肉を伸ばした姿勢でじっと止める(前屈して30秒キープ、など)
- 動的ストレッチ:体を動かしながら関節や筋肉をほぐす(腕回し、脚の振り上げ、ランジ歩きなど)
問題になったのは前者の「止めて伸ばす」タイプです。
02伸ばしすぎると、筋肉の「バネ」がゆるむ
筋肉と腱(けん)は、ゴムのバネのような働きをしています。長時間グーッと伸ばし続けると、そのバネが一時的にゆるみ、瞬間的に力を出す能力が少し落ちることがあるんです。神経から筋肉への「力を出せ」という指令が弱まる、という説もあります。
システマティックレビューは、決められたルールで論文を集めて、まとめて評価する方法。「都合のいい論文だけ集める」のを防ぐための仕組みです。

03「全部ダメ」ではなかった
2016年にカナダのベーム(Behm)さんらが『Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism』で発表した大きなレビューでは、こんな整理がされました。
- 静的ストレッチの悪影響はあっても小さいことが多い
- ストレッチの後に動的な準備運動や軽い運動を加えれば、影響はさらに目立たなくなる
- 柔軟性が大事な競技では、むしろ必要な場面もある
つまり「静的ストレッチ=悪」ではなく、長さと順番が大事ということ。
実際のスポーツの現場では、準備運動は体温を上げる→関節を大きく動かす→本番に近い動きをするという流れで組み立てることが多くなっています。冷えたゴムより温まったゴムのほうがよくのびるように、筋肉も温めてから動かすのが基本です。
ちなみに、「ストレッチをすればケガを防げる」とよく言われますが、静的ストレッチ単体のケガ予防効果ははっきりしていません。ストレッチ単体より、体を温める準備運動全体が大切だと考えられています。
04まとめ
運動前の「じっくりストレッチ」は、長すぎるとパワーを少し下げることがある。でも短めなら気にしすぎなくて大丈夫。
準備運動のキーワードは「止める」より「動かす」。部活の最初の10分、ちょっとアップデートしてみませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany students do slow, held stretches before sports.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Before sports, many students do slow stretches and hold them. This is called static stretching. Scientists found that holding a stretch for a long time can make your muscles a little weaker for a short time.
But if you stretch each muscle for less than 60 seconds, the effect is very small. Before exercise, it is good to warm up by moving your body, like swinging your arms.
68 words ・ CEFR A2
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スポーツの前に、多くの生徒はゆっくり伸ばしてその姿勢を保つストレッチをします。これは静的ストレッチと呼ばれます。科学者たちは、長い時間ストレッチを続けると、少しの間、筋肉が少し弱くなることがあるとわかりました。
でも、1つの筋肉を伸ばすのが60秒未満なら、その影響はとても小さいのです。運動の前には、腕を振るなど体を動かしながらウォーミングアップするのがよいでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
運動前のストレッチのやり方と、その影響についての文章なので B。
Q2. For how long can you stretch each muscle with only a small effect?
if you stretch each muscle for less than 60 seconds, the effect is very small とあるので A。
Q3. In this passage, "weaker" means ...
weak(弱い)の比較級で「より弱い」=力が少し落ちる、なので C。
Many students do slow, held stretches before sports. This kind of stretching is called static stretching. Since the 2000s, studies have suggested that it may reduce power right after stretching. Muscles and tendons work like springs, and holding a stretch for a long time may make them loose for a while.
However, a 2012 review found that stretching each muscle for less than 60 seconds had almost no negative effect on strength, while longer stretches did. A 2016 review added that the effect becomes even smaller when a dynamic warm-up follows. So the length and order of stretching are what matter. Long, slow stretches are better after exercise or a bath.
111 words ・ CEFR B1
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多くの生徒は、スポーツの前にゆっくり伸ばして保つストレッチをします。この種類のストレッチは静的ストレッチと呼ばれます。2000年代以降、静的ストレッチはその直後のパワーを下げるかもしれないと示す研究が出てきました。筋肉と腱はバネのように働き、長い時間伸ばし続けると、しばらくの間ゆるんでしまうことがあるのです。
しかし2012年のレビューでは、1つの筋肉あたり60秒未満のストレッチなら筋力への悪影響はほとんどなく、それより長いと悪影響が見られました。2016年のレビューはさらに、その後に動的なウォーミングアップをすれば、影響はもっと小さくなると付け加えました。つまり、大切なのはストレッチの長さと順番なのです。ゆっくり長く伸ばすストレッチは、運動の後やお風呂上がりのほうが向いています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
長い静的ストレッチはパワーを下げうるが、60秒未満なら影響はほとんどない、という内容なので C。
Q2. According to the 2016 review, what makes the effect even smaller?
the effect becomes even smaller when a dynamic warm-up follows とあるので B。
Q3. When would a long, slow stretch be most suitable?
最終文 Long, slow stretches are better after exercise or a bath. から A。
Holding a long, static stretch before exercise is a familiar routine in Japanese schools. From the 2000s onward, though, studies suggested that it might temporarily reduce strength and power. One proposed mechanism treats the muscle and tendon as a single spring. Prolonged stretching makes the spring less stiff, and the nervous system may also send weaker signals to the muscles.
Many of these experiments measured performance immediately after stretching, in a laboratory, which may exaggerate the effect compared with a full warm-up before real sport. A 2012 systematic review by Kay and Blazevich sorted out the evidence. Static stretches of less than 60 seconds per muscle had little negative effect on maximal strength, while longer stretches caused clearer declines.
A broader 2016 review by Behm and colleagues reached a similar conclusion. It added that the effect largely fades when stretching is followed by a dynamic warm-up, and that activities requiring flexibility may still need static stretching. Nor is there firm support for the claim that static stretching prevents injury. A sensible warm-up raises body temperature, includes dynamic movement, and keeps any static stretching brief.
184 words ・ CEFR B2
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運動前にじっくり静的ストレッチをするのは、日本の学校でおなじみの習慣です。しかし2000年代以降、それが一時的に筋力やパワーを下げるかもしれないとする研究が出てきました。提案されている仕組みのひとつは、筋肉と腱をひとつのバネとみなすものです。長く伸ばすとバネのかたさが減り、さらに神経から筋肉への信号も弱まるかもしれません。
こうした実験の多くは、ストレッチの直後に能力を測っていたため、実際のスポーツの前に準備運動をひととおり行う場合と比べて、影響を大きく見せている可能性があります。2012年、ケイさんとブレイゼビッチさんのシステマティックレビューが証拠を整理しました。1つの筋肉あたり60秒未満の静的ストレッチは最大筋力への悪影響がほとんどなく、それより長いストレッチではよりはっきりした低下が見られました。
2016年のベームさんらによる、より広いレビューも同じような結論に達しました。さらに、ストレッチの後に動的なウォーミングアップをすれば影響はほぼ消えること、そして柔軟性が必要な活動では、静的ストレッチがなお必要な場合もあることを付け加えました。また、静的ストレッチでケガを防げるという主張にも、しっかりした裏づけはありません。理にかなった準備運動とは、体温を上げ、動きのある運動を取り入れ、静的ストレッチをするなら短めにするものです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2012 review find?
Static stretches of less than 60 seconds per muscle had little negative effect on maximal strength とあるので A。
Q2. Why might many of these experiments exaggerate the effect of static stretching?
Many of these experiments measured performance immediately after stretching, which may exaggerate the effect とあるので C。研究方法の限界の指摘。
Q3. Which advice would the author most likely give?
最終文 A sensible warm-up raises body temperature, includes dynamic movement, and keeps any static stretching brief から D。
重要単語
- static stretchingB2名詞(句)静的ストレッチStatic stretching means holding one position.
static は「静止した」。static electricity「静電気」と同じ語。 - dynamic stretchingB2名詞(句)動的ストレッチArm circles are a kind of dynamic stretching.
dynamic は「動的な・活発な」。dynamite(ダイナマイト)と同語源で「力」が原義。static と対で覚える。 - warm-upB1名詞準備運動A good warm-up raises your body temperature.
動詞は warm up(2語)。名詞・形容詞はハイフンでつなぐ。cool-down(整理運動)も覚えておこう。 - flexibilityB2名詞柔軟性Gymnasts need a lot of flexibility.
flexible(柔軟な)の名詞。仕事の flexible working hours「フレックスタイム」のように考え方の柔軟さにも使う。 - tendonC1名詞腱Tendons connect muscles to bones.
Achilles tendon「アキレス腱」が有名。ligament(靭帯:骨と骨をつなぐ)との違いに注意。 - stiffB2形容詞かたい、こわばったMy shoulders feel stiff after studying.
a stiff neck「首のこり」。名詞 stiffness。bored stiff「ひどく退屈して」という口語表現もある。
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運動前にじっくり伸ばすストレッチ、長くやりすぎると直後の筋力やジャンプ力がちょっと落ちることがあるらしい。ただ1か所60秒未満ならほぼ気にしなくていいという分析も。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Kay & Blazevich (2012) Effect of Acute Static Stretch on Maximal Muscle Performance: A Systematic Review, Medicine & Science in Sports & Exercisedoi.org
- Behm et al. (2016) Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review, Applied Physiology, Nutrition, and Metabolismdoi.org
- Simic, Sarabon & Markovic (2013) Does pre-exercise static stretching inhibit maximal muscular performance? A meta-analytical review, Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sportsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











