「森林浴」は日本生まれの言葉。森を歩くと体に何が起きるのか、科学の現在地

読む前に予想してみよう!
「森林浴」という言葉は、海外から輸入された言葉を日本語に訳したものだ
1980年代に日本の林野庁が提唱した言葉で、英語でも「Shinrin-yoku」として使われている。
- 対象
- 日本の若い男性
- 規模
- 24か所の森で計約280人
- 研究の種類
- 野外での比較実験(クロスオーバー)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
森を歩くと、都市を歩くより、ストレスに関わるホルモンや脈拍が下がる傾向が報告されている。ただし研究の規模は小さめで、効果の大きさはまだ議論中。
ひとことで言うと森を歩くと体がリラックスするかも。でも「病気が治る」ではない!
森の中を歩くと、なんだか気持ちが落ち着く。深呼吸したくなる。多くの人が感じたことがあるはずです。
この「森林浴」という言葉、実は日本生まれだって知っていましたか? 1982年ごろ、当時の林野庁が「森の空気を浴びて心身を健やかに」という意味で提唱したとされています。
今では英語の論文でも「Shinrin-yoku(シンリンヨク)」とそのまま使われるほど。では、森を歩くと体に本当に何か起きているのでしょうか?
01森と都市を歩き比べた実験
コルチゾールは、ストレスを感じたときに増えるホルモン。体を「戦闘モード」にする役割があり、いわば体の中の緊張メーターです。

森の効果は「目」だけではありません。研究チームは、木の香り、鳥の声や小川の音、木にさわったときの感触など、五感それぞれへの刺激がリラックスに関わるかどうかも調べています。たとえば、木の香りなど嗅覚への刺激でも、リラックスに関わる生理指標が変わったという実験報告があります。
02免疫細胞が元気になる?
日本医科大学の李卿(Li)さんらは、2000年代後半に、森の中で数日過ごしたあと、体を守る免疫細胞の一種(NK細胞)の働きが高まったという研究を発表しました。
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、ウイルスに感染した細胞などを見つけて攻撃する、体のパトロール隊のような存在です。
研究チームは、木が出す香りの成分(フィトンチッド)が関係している可能性を調べています。
03でも、まだ「研究途中」の部分も多い
ここで冷静に見ておきたいポイントがあります。
- 多くの研究は参加者が数十人程度と小規模
- 参加者の多くは健康な若い男性など、かたよりがある
- 森に行くと仕事から離れる・歩く・景色が変わるなど、いろいろな要素が同時に変わる
2017年に発表されたシステマティックレビュー(ルールに沿って研究を集めて評価したもの)でも、森林浴の効果を示す研究は見つかっているものの、評価対象の6件のランダム化比較試験はすべてバイアスのリスクが高く、証拠は十分とは言えないと指摘されています。
つまり、「森でリラックスしやすい」という傾向は報告されている一方、「どれくらい健康に効くのか」はまだはっきりしていません。
遠くの森まで行かなくても、近くの公園や並木道を歩くだけでも、緑にふれる時間はつくれます。スマホをしまって、音・におい・木漏れ日に意識を向けてみるのがおすすめです。
04まとめ
「森林浴」は日本生まれの言葉で、森を歩くとストレスに関わるホルモンや脈拍が下がる傾向が報告されています。ただし研究はまだ発展途中。
効果を期待しすぎず、「気持ちいいから行く」くらいでちょうどいい。次の休日、近くの緑の多い場所を少し歩いてみませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"Shinrin-yoku," or forest bathing, is a Japanese term created in the 1980s.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
The word "shinrin-yoku," or forest bathing, was born in Japan in the 1980s. It means walking in a forest and enjoying the air. Japanese scientists studied young men in 24 forests. On forest days, their stress hormone, pulse, and blood pressure were lower than on city days.
But most studies are small. So we know forests can help us relax, but we do not know if they cure diseases.
69 words ・ CEFR A2
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「森林浴」という言葉は、1980年代に日本で生まれました。森の中を歩き、その空気を楽しむという意味です。日本の科学者たちは、24か所の森で若い男性を調べました。森の日には、都市の日よりも、ストレスホルモン、脈拍、血圧が低くなりました。
でも、ほとんどの研究は小規模です。だから、森がリラックスに役立つことはわかっても、病気を治すかどうかはわかっていないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
森林浴という言葉と、それが体に与える影響の研究がテーマなので C。
Q2. Where was the word "shinrin-yoku" born?
was born in Japan in the 1980s とあるので D。
Q3. In this passage, "relax" means ...
relax は「くつろぐ・落ち着く」。ストレスホルモンが下がる話と合うので A。
"Shinrin-yoku," or forest bathing, is a Japanese term created in the 1980s. Today it is used even in English research papers. But does spending time in a forest really affect the body? In 2010, a research team from Chiba University tested this in 24 forests across Japan.
Young men walked in or looked at a forest on some days and did the same in a city on other days. On forest days, the men had lower levels of cortisol, a stress hormone.
Their pulse rates and blood pressure were lower, too. Many studies on forest bathing are small, so nobody knows yet how much it helps long-term health. For feeling calmer on the day itself, though, a walk among trees seems to help.
123 words ・ CEFR B1
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「森林浴」は1980年代に作られた日本の言葉です。今では英語の研究論文でも使われています。では、森で過ごすことは本当に体に影響するのでしょうか?2010年、千葉大学の研究チームが、日本各地の24か所の森でこれを調べました。
若い男性たちは、ある日は森の中を歩いたり眺めたりし、別の日には都市で同じことをしました。森の日には、男性たちのストレスホルモンであるコルチゾールの値が低くなっていました。
脈拍や血圧も低くなりました。森林浴の研究の多くは小規模なので、長期的な健康にどれくらい役立つのかは、まだだれにもわかりません。それでも、その日のうちに気持ちを落ち着けるには、木々の間を歩くのが役立ちそうです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
森が体に与える影響の研究と、まだわからない点を述べているので A。
Q2. What is cortisol?
cortisol, a stress hormone と同格で説明されているので C。
Q3. What can we infer about forest bathing?
ストレスホルモンなどが下がる一方、nobody knows yet how much it helps long-term health とあるので B。
The term "Shinrin-yoku," or forest bathing, was coined in Japan in the early 1980s and now appears untranslated in international research. To test its effects, a team at Chiba University ran field experiments in 24 forests across Japan, published in 2010. Young male participants walked in and viewed either a forest or a city area on different days.
On forest days they showed lower salivary cortisol, pulse rate and blood pressure, along with greater activity of the nerves linked to relaxation. Other Japanese work reported that a few days in a forest boosted the activity of natural killer cells, which attack infected cells, possibly because of scents released by trees. Most of these studies involved only a few dozen people, often healthy young men.
A forest trip also changes many things at once, including physical activity, scenery and distance from work, so it is hard to say which one matters. A 2017 systematic review of six randomized trials rated every one at high risk of bias, so the evidence is not yet strong enough for clinical guidelines. So far, the strongest evidence is for what happens over a single visit: lower cortisol, a slower pulse and lower blood pressure.
199 words ・ CEFR B2
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「森林浴」という言葉は1980年代初めに日本で作られ、今では国際的な研究でも訳されないまま使われています。その効果を確かめるため、千葉大学のチームは日本各地の24か所の森で野外実験を行い、2010年に発表しました。若い男性の参加者は、日を変えて森か都市のどちらかを歩いたり眺めたりしました。
森の日には、だ液中のコルチゾール、脈拍、血圧が低く、リラックスに関わる神経の働きも高まっていました。日本の別の研究では、森で数日過ごすと、感染した細胞を攻撃するNK細胞の働きが高まったと報告されており、木が出す香りが関係している可能性があります。こうした研究のほとんどは参加者が数十人程度で、健康な若い男性であることが多いものでした。
また、森に行くと、体を動かすこと、景色、仕事から離れることなど、多くのことが同時に変わるので、どれが効いているのかを言うのは困難です。2017年のシステマティックレビューは、6件のランダム化比較試験のすべてでバイアスのリスクが高いと評価し、臨床指針を作れるほど証拠は強くないとしています。今のところ最も強い証拠があるのは、1回の訪問で起こる変化、つまりコルチゾールの低下、脈拍がゆっくりになること、血圧の低下です。
4択リーディングクイズ
Q1. Which of the following is true about the 2010 experiments?
on forest days they showed lower salivary cortisol, pulse rate and blood pressure とあるので D。森は24か所、参加者は若い男性。
Q2. Why is it difficult to identify what causes the benefits of forest bathing?
A forest trip also changes many things at once, including physical activity, scenery and distance from work とあるので A。原因を1つに絞れないという研究の限界。
Q3. What is the author's overall conclusion?
the evidence is not yet strong enough for clinical guidelines とあり、最終文で the strongest evidence is for what happens over a single visit(1回の訪問で起こる変化)と述べているので C。
重要単語
- forest bathingB1名詞(句)森林浴Forest bathing started as a Japanese idea.
日本語「森林浴」の直訳。英語でも Shinrin-yoku のまま使われることがある。sunbathing(日光浴)と同じ発想。 - cortisolC1名詞コルチゾール(ストレスホルモン)Cortisol levels were lower in the forest.
副腎皮質(cortex)から出るホルモン。ストレス研究の長文で「ストレスの指標」として登場する。 - stressA2名詞・動詞ストレス/強調するA walk in nature may reduce stress.
動詞の stress は「強調する」。The author stresses that ... は読解問題の定番表現。 - natural killer cellC1名詞(句)NK細胞Natural killer cells attack infected cells.
免疫細胞の一種。「生まれつきの殺し屋」という名前のとおり、感染細胞やがん細胞を見つけて攻撃する。 - relaxationB2名詞リラックス、くつろぎThe sound of birds can help relaxation.
relax の名詞形。relaxation techniques「リラックス法」のように使う。 - coinC1動詞(新語を)作り出すThe term was coined in the 1980s.
名詞は「硬貨」。硬貨を鋳造する→言葉を作る、と広がった。coin a term / phrase の形で入試頻出。 - intriguingC1形容詞興味をそそるThe results are intriguing but not conclusive.
動詞 intrigue(興味をそそる)から。interesting より「なぞめいて気になる」ニュアンス。
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「森林浴(Shinrin-yoku)」は1980年代に日本で生まれた言葉で、今は海外の研究者も使っているらしい。森を歩くとストレスに関わるホルモンや脈拍が下がる傾向があるけど、研究はまだ小規模なものが多いとのこと。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Park et al. (2010) The physiological effects of Shinrin-yoku (taking in the forest atmosphere or forest bathing): evidence from field experiments in 24 forests across Japan, Environmental Health and Preventive Medicinedoi.org
- Li et al. (2008) Visiting a Forest, but Not a City, Increases Human Natural Killer Activity and Expression of Anti-Cancer Proteins, International Journal of Immunopathology and Pharmacologydoi.org
- Oh et al. (2017) Health and well-being benefits of spending time in forests: systematic review, Environmental Health and Preventive Medicinedoi.org
- Wen et al. (2019) Medical empirical research on forest bathing (Shinrin-yoku): a systematic review, Environmental Health and Preventive Medicinedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













