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体と健康・食

同じパンでも、1人より恋人と一緒に食べたほうが血糖値の上がり方が小さかった。若い108人の実験

同じパンでも、1人より恋人と一緒に食べたほうが血糖値の上がり方が小さかった。若い108人の実験

読む前に予想してみよう!

食後の血糖値の上がり方は食べた物だけで決まり、誰と一緒かは関係しない

研究カード(どんな研究?)
対象
イスラエルのヘブライ大学が集めた、健康な若い恋人どうし(18〜37歳)と、赤ちゃんとお母さん
規模
4つの実験。血糖値の実験108人、寒い部屋の実験116人、軽い電気ショックの実験115人、赤ちゃんの実験56人
研究の種類
実験(同じ人が「1人のとき」と「親しい人がそばにいるとき」の両方を受けて比べた。大人の3つの実験は、調べ方を先に公開してから行った=事前登録)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

同じ白いパンを、1人のときと恋人と一緒のときの2回、食べ比べた。一緒のときのほうが、食後の血糖値(血液の中の糖の量)の上がり方が小さく、早く元に戻った。健康な若い大人108人の実験。ただし個人差は大きい。

ひとことで言うと恋人と一緒に食べると、同じパンでも血糖値の上がり方が小さかった!

もくじ
  1. 同じ白いパンを、「1人で」と「恋人と」の2回食べる
  2. 恋人と一緒の回は、血糖値の「山」が小さかった
  3. 寒い部屋や赤ちゃんの実験でも、そばに親しい人がいると差が出た
  4. 血糖値の差は「安心」でも「触れ合い」でも説明できない
  5. 「恋人と食べれば血糖値対策になる」とまでは言えない
  6. まとめ

血糖値は、血液の中にある糖の量です。ごはんやパンを食べると上がり、しばらくすると下がります。上がり方は、何をどれだけ食べたかで決まる。普通はそう考えます。ところが、同じパンを同じ量だけ食べても、差が出た実験があります。恋人と一緒に食べたときのほうが、1人で食べたときより、血糖値の上がり方が小さく、早く元に戻っていたのです。

確かめたのは、イスラエルのヘブライ大学のアツィル(Atzil)さん、マサルハ(Masalha)さんらのチームです。健康な若い大人108人で実験し、2026年9月に米国の科学誌『Science Advances』に発表しました。

ただし、差は平均すると控えめです。人によるばらつきも大きく、恋人と一緒のほうがかえって結果が悪かった人もいました。調べたのは、1回の食事のあとの2時間だけです。「恋人と食べれば血糖値の対策になる」とまでは言えません。

私たちの体は、血糖値や体温が上がりすぎたら下げ、下がりすぎたら上げています。この「立て直し」を、休みなく続けているのです。この働きは普通、一人ひとりの体の中だけで完結していると考えられてきました。チームが確かめたかったのは、そばに親しい人がいると、この立て直しが楽になるのかという問いです。

01同じ白いパンを、「1人で」と「恋人と」の2回食べる

血糖値の実験に参加したのは、男女の恋人どうし54組、合わせて108人です。どの組も、付き合って9か月以上たっていました。全員が18〜37歳の健康な大人です。糖尿病の人は、事前の聞き取りで参加者から外しました。糖尿病の一歩手前の人も、血液検査で外しています。

一人ひとりが、同じ日に2回、白い小麦のパンを102グラム食べました。6枚切りの食パンなら、2枚に少し足りないくらいの重さです。このパンには、炭水化物(体の中で糖に変わる成分)が50グラム入っています。

1回は、部屋で1人で食べました。もう1回は、恋人と同じ部屋で、2人同時に食べました。恋人と一緒の回は、話すのも、体に触れるのも自由でした。部屋はソファのある、居心地のよい作りです。

この実験には、結果を公平に見るための工夫が3つあります。

  • 同じ人の2回を比べる:同じ人が「1人」と「恋人と」の両方を食べます。だから、体の大きさや体質の違いに左右されずに比べられます
  • 順番はくじ引きのように偶然で決める:どちらの回を先にするかを、偶然に任せました。いつも「1人」が先だと、差が順番のせいなのか分からなくなるからです。2回のあいだは4時間以上あけました
  • 調べ方を先に公開しておく(事前登録):データを集める前に、「何を調べ、どう分析するか」を公開の場に登録しました。結果を見てから、都合のよい調べ方を選び直すことができなくなります。大人の3つの実験(血糖値・寒さ・軽い電気ショック)は、どれもこの登録をしてから行いました

血糖値は、食べる前と、食べてから2時間のあいだに、合わせて7回測りました。指先から少しだけ血を採って測る方法です。

02恋人と一緒の回は、血糖値の「山」が小さかった

食べる前の血糖値は、どちらの回もほぼ同じでした。差が出たのは食べたあとです。食後45分から2時間までの測定では、平均すると、どの時点でも恋人と一緒の回のほうが低くなっていました。

差の大きさは、次のように比べました。

横に時間、縦に血糖値を取ってグラフを描くと、食後の血糖値は山の形になります。食べると上がり、てっぺんを過ぎると下がってくるからです。チームは、この山のうち、血糖値が100を超えている部分の広さ(面積)を求めました。100(単位はmg/dL)は、おなかがすいているときの正常な値の上限の目安です。

面積は、「100よりどれだけ高いか」と「それが何分続いたか」をかけ合わせて、食後2時間ぶんを足したものです。たとえば、血糖値が120(100より20高い)の状態が30分続くと、その分は20×30で600と数えます。山が高いほど、また高い状態が長く続くほど、面積は大きくなります。面積が小さいほど、血糖値の乱れが小さく、短く済んだということです。

同じ人の2回を比べると、恋人と一緒の回は、この面積が平均で約15%小さくなりました。1人のときの面積が100なら、85くらいになる計算です。

「約15%」と「約24%」は、比べ方が違う

ニュースなどで見かける「約24%」は、同じ実験から出た、別の比べ方の数字です。

同じ人が2回食べると、2回目は1回目の影響を受けているかもしれません。そこでチームは、2回目を使わない比べ方もしました。一人ひとりの1回目だけを取り出し、次の2つのグループを比べたのです。

  • 1回目を恋人と一緒に食べた54人
  • 1回目を1人で食べた54人

この比べ方では、恋人と一緒のグループのほうが、面積が約24%小さくなりました。まとめると、こうなります。

  • 約15%:同じ人の「1人の回」と「恋人と一緒の回」を比べた数字
  • 約24%:1回目だけを使い、別々の人のグループどうしを比べた数字

比べる相手が違うので、数字も同じにはなりません。ただ、どちらの比べ方でも、恋人と一緒のほうが面積は小さいという向きは同じでした。

恋人と同じ部屋で、同じパンを同時に食べる。話すのも触れるのも自由だった(イメージ)
恋人と同じ部屋で、同じパンを同時に食べる。話すのも触れるのも自由だった(イメージ)

03寒い部屋や赤ちゃんの実験でも、そばに親しい人がいると差が出た

チームは、血糖値のほかの「立て直し」でも調べました。ここでは「緊張したときの汗の反応」がよく出てきます。人は緊張すると、皮膚にうっすら汗がにじみます。その汗で、皮膚に電気が通りやすくなります。この変化を測ると、体がどれだけ緊張したかの目安になります。

  • 寒い部屋(116人):12℃の部屋に5分入り、そのあと25℃の部屋で15分休みました。手首の皮膚の温度は、恋人と一緒のほうが下がり方が小さく、元に戻るのも早くなっていました。下がった分は、血糖値と同じ「山の面積」のやり方で比べました。恋人と一緒のほうが、同じ人の2回の比較で約7%、1回目どうしの比較で約16%小さくなっていました
  • 軽い電気ショック(115人):腕に短い電気の刺激を2回受け、そのときの汗の反応を測りました。1回目どうしの比較では、恋人と一緒のほうが約6%小さくなりました。ただし、同じ人の2回の比較では差が約2%でした。この差は、たまたま出ただけの差とはっきり区別できるほどではありませんでした
  • 赤ちゃん(56人):生後2か月半〜13か月の赤ちゃんに、自宅で、金属のパイプが落ちる大きな音(2秒)を聞かせました。お母さんがそばにいる(抱っこしてもよい)ときは、お母さんが別の部屋にいるときより、汗の反応が小さくなりました(約3〜4%)。この実験は最初に試しに行ったもので、事前登録はしていません

チームはこの考えを「ソーシャル・フィジオロジー」と呼んでいます。人とのつながりの中で見た体の働き、という意味です。親しい人のそばでは、体の立て直しが少ない手間で済む、という考えです。

04血糖値の差は「安心」でも「触れ合い」でも説明できない

恋人がいると安心するから、血糖値も上がりにくかった。そう考えたくなります。そこでチームは、パンの実験の2時間、緊張の目安になる汗の反応もずっと測っていました。ところがこの値は、1人のときと恋人といるときで、はっきりした違いがありませんでした。

さらに、緊張の分の影響を計算で取り除いてみました。もし差が緊張のせいだけなら、取り除けば差は消えるはずです。それでも、血糖値の差は残りました。

体に触れた量も、録画から数えました。触れた量と血糖値の差には、関係が見られませんでした。触れた分を計算で取り除いても、差は残りました(寒さの実験では、よく触れていた人ほど、皮膚の温度の下がり方が小さくなっていました)。

ほかにも、どちらの回を先にしたか、体格、2人の仲への満足度などを計算に入れて確かめました。それでも、恋人と一緒のほうがよいという結果は残りました。

では、何が効いているのか。論文は3つの候補を挙げています。

  1. 体どうしが直接影響し合う:体から出る熱や、触れ合いを通じて伝わるという考えです。ただ、上のとおり、触れた量では説明しきれませんでした
  2. 怖いときの反応が和らぐ:親しい人がそばにいると、危ない目にあいそうなときの体の反応が和らぐ、という働きです。2006年の実験では、結婚している女性16人が、電気ショックが来るかもしれない状態で夫の手を握りました。すると、危険に反応する脳の働きが、広い範囲で弱まりました(ハグと風邪の記事でも紹介)。ただし今回のパンの実験では、緊張の目安に差がありませんでした。そのため論文は、効果はこの働きだけではないかもしれない、としています
  3. 脳の先回りを助ける:脳は、体にこれから起きることを予測して、前もって準備しています。そばにいる人が、その予測の手がかりになる、という考えです

どれが正しいかは、まだ分かっていません。

05「恋人と食べれば血糖値対策になる」とまでは言えない

  • 1回の食事のあと、2時間だけの実験です。続けたときに健康がどう変わるかは調べていません。論文も、病気の予防のような長い目で見た効果は、この研究からは言えないとしています
  • 参加者は、糖尿病のない若く健康な大人です。糖尿病の人で同じことが起きるかは分かりません
  • 個人差が大きくありました。恋人がいると大きく得をした人、少しだけの人がいました。そして、恋人がいると、かえって1人のときより立て直しがうまくいかなかった人もいました
  • 相手は交際中の恋人(赤ちゃんはお母さん)だけです。友達や初対面の人とではどうなるか、調べていません。論文も、どんな関係・場面でも効くとは言えないとしています
  • 平均の差は控えめです。論文自身も、同じ人の2回で比べた差の大きさは「控えめ」、1回目どうしで比べた差も「中くらい」としています

人付き合いと健康の関係は、これまで主に「たくさんの人を観察して、傾向を見る研究」で示されてきました。2010年の分析は、148の研究、合わせて約30万人のデータをまとめたものです。人とのつながりが強い人は、弱い人より、生存の可能性が約50%高くなっていました(孤独と寿命の記事)。英国では、平均65歳の約4,100人を追いかけて調べた研究があります。孤独を感じていた人ほど、ほかの条件をそろえて比べても、2型糖尿病(糖尿病のうち、一番多いタイプ)になりやすい傾向がありました。

ただ、観察するだけの研究では、どちらが原因でどちらが結果かを見分けにくいのが弱点です。今回の研究は、人とのつながりが健康に結びつく途中で起きているかもしれない「その場の体の変化」を、実験で確かめようとしました。ここが新しい点です。

06まとめ

同じパンを食べても、恋人がそばにいるかどうかで、食後の血糖値の山の大きさが変わっていました。体の立て直しは、自分1人の仕事ではないのかもしれません。そばにいる人にも左右されている可能性があります。

ただし、なぜそうなるのかは、まだ分かっていません。続けると体にどう効くのか、恋人以外の相手でも同じなのかも、分かっていません。チームは測ったデータを公開しています。ほかの研究室が確かめ直すこともできます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerScientists at the Hebrew University of Jerusalem asked 54 young couples to eat 102 grams of white bread… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Scientists at the Hebrew University of Jerusalem asked 54 young couples to eat 102 grams of white bread twice on the same day. Each person ate once alone and once with their partner in a comfortable room, where the two could talk and touch as they liked. Fingertip blood was checked seven times, from just before the meal to two hours later.

On average, the rise in blood sugar was about 15% smaller when people ate with their partner, and it fell back sooner. The team also put people in a cold room and gave them mild electric shocks, and played a loud noise to babies. Having someone close seemed to help there too. Even so, the effect was modest, and some people did worse with their partner.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

エルサレムのヘブライ大学の科学者たちは、若いカップル54組に、同じ日に白いパン102グラムを2回食べてもらった。一人ひとりが、1回は1人で、もう1回は恋人と一緒に、居心地のよい部屋で食べた。その部屋では2人は自由に話したり触れ合ったりできた。

食べる直前から食後2時間までに、指先の血を7回調べた。平均すると、恋人と一緒に食べたときのほうが血糖値の上がり方が約15%小さく、早く下がった。チームは人を寒い部屋に入れたり、軽い電気ショックを与えたりもし、赤ちゃんには大きな音を聞かせた。そこでも、親しい人がそばにいるとよい方向に働いたようだった。それでも効果は控えめで、恋人と一緒だとかえって悪くなった人もいた。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How much smaller was the rise in blood sugar with a partner, on average?

Q3. What does the writer suggest by saying "some people did worse with their partner"?

重要単語

  • blood sugarB1
    名詞血糖値(血液中の糖の量)My blood sugar goes up after I eat rice or bread. 医学の言い方は blood glucose。blood sugar level(血糖値)の形もよく使う
  • carbohydrateB2
    名詞炭水化物Bread and rice are rich in carbohydrates. carbo-(炭素)+ hydrate(水と結びついたもの)。会話では carbs と短くすることが多い
  • partnerA2
    名詞恋人、配偶者、相手She came to the lab with her partner. 男女を問わず恋人や結婚相手を指せる。仕事の「共同経営者」の意味もある
  • presenceB2
    名詞(人が)そばにいること、存在His presence made the room feel calm. 形容詞は present(その場にいる)。in the presence of ~(~のいる前で)は入試頻出
  • regulateB2
    動詞調整する、一定に保つThe body regulates its temperature all day. rule(決まり)と同じ語源。名詞は regulation(規則・調整)
  • varyB1
    動詞人によって違う、ばらつくThe results varied a lot from person to person. vary from A to A(Aによって異なる)の形でよく使う。名詞は variety、形容詞は various
  • modestB2
    形容詞(量や効果が)控えめな、それほど大きくないThe change in blood sugar was modest. 人について使うと「謙虚な」。数や効果について使うと「ほどほどの」

4コマでわかる

同じパンでも、1人より恋人と一緒に食べたほうが血糖値の上がり方が小さかった。若い108人の実験の4コマ漫画
同じ白いパンを1人で食べたときと恋人と一緒に食べたときで比べたら、一緒のほうが食後の血糖値の上がり方が小さく、早く戻った(健康な若い大人108人の実験)。寒い部屋や赤ちゃんの実験でも似た傾向。ただし個人差は大きく、恋人と一緒のほうが逆に結果が悪かった人もいた。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Masalha et al. (2026) Social Physiology: Human homeostasis is more efficient in social proximity, Science Advancesdoi.org
  2. Coan, Schaefer & Davidson (2006) Lending a hand: Social regulation of the neural response to threat, Psychological Sciencedoi.org
  3. Holt-Lunstad, Smith & Layton (2010) Social relationships and mortality risk: A meta-analytic review, PLoS Medicinedoi.org
  4. Hackett, Hudson & Chilcot (2020) Loneliness and type 2 diabetes incidence: findings from the English Longitudinal Study of Ageing, Diabetologiadoi.org