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お風呂が運動に勝った!? 40℃・30分の入浴直後、腕の皮膚の血流が自転車こぎ30分を大きく上回った

お風呂が運動に勝った!? 40℃・30分の入浴直後、腕の皮膚の血流が自転車こぎ30分を大きく上回った

読む前に予想してみよう!

40℃のお湯に30分つかる実験で血流が増えたので、家でも30分の長湯をするのが体にいい

研究カード(どんな研究?)
対象
太りぎみの45〜70歳(平均59歳・心臓病や糖尿病のない人)
規模
25人(皮膚の血管の解析は22人)
研究の種類
ランダム化クロスオーバー試験(1回ずつ・直後の変化)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

中高年が40℃の湯に30分つかると、自転車こぎ30分より前腕の皮膚の血流がぐんと増えた。ただし1回の直後の変化で、測った腕は湯の中。運動の代わりにはならない。

ひとことで言うとお風呂のあと、腕の皮膚の血管が大きく広がった。でも運動の代わりにはならない!

もくじ
  1. 同じ人が「自転車30分」と「お湯30分」を両方やった
  2. 結果:皮膚の血管は、お風呂の圧勝
  3. どんでん返し①:測った腕は、お湯の中にあった
  4. どんでん返し②:お風呂は運動の代わりにならない
  5. 日本の湯船で「30分」を真似してはいけない
  6. まとめ

30分、自転車をこぐ。30分、40℃のお湯につかる。腕の皮膚の血管がより大きく広がったのはどっち?

答えは、なんとお風呂。しかも差はわずかではなく、自転車のほうは血流がほとんど増えなかったのです。

2026年9月末、そんな実験の結果が専門誌に載りました。ただし大事な続きがあります。「運動はやめて長風呂だ」と思った人ほど、最後まで読んでください。

01同じ人が「自転車30分」と「お湯30分」を両方やった

同じ人が両方を試すので、体質の違いで結果がぶれにくいのが強みです。参加者は運動習慣が少なく、心臓病や2型糖尿病のある人は除かれていました。

02結果:皮膚の血管は、お風呂の圧勝

画像がきれいに撮れた22人で比べると、入浴の後は4つの数値がそろって大きく伸びました。

  • 血管の太さ:入浴 +5.2マイクロメートル / 運動 −1.1
  • 血液の速さ:入浴 毎秒+22.8マイクロメートル / 運動 −1.2
  • 流れる血液の量:入浴 毎秒+68.9ピコリットル / 運動 −8.3
  • 血が流れている血管が画像に占める割合(密度):入浴 +14.1ポイント / 運動 −3.1ポイント

運動の後は、むしろわずかに減っていたのです。研究チームは、運動中は血液が脚の筋肉に回るため、動かしていない腕の皮膚には回りにくかった可能性を挙げています。

体の奥の温度(深部体温)の上がり方も入浴が上(+0.9℃ 対 +0.7℃)。血圧(25人全員で比較)も、終わった直後に測ると入浴のほうが下がっていました(上の血圧は入浴 −6・運動 +1、下の血圧は入浴 −10・運動 −2、単位はmmHg)。ただしこれも直後だけの値で、その後どれくらい続いたかは調べていません。男女で血管の反応に差は見られませんでした(ただし男女の差を調べるには人数が少なく、著者らは「男女で同じ」とは言えないとしています)。

入浴の後、前腕の皮膚の細い血管は太くなり、流れる血液も増えた(イメージ)
入浴の後、前腕の皮膚の細い血管は太くなり、流れる血液も増えた(イメージ)

03どんでん返し①:測った腕は、お湯の中にあった

実は測った前腕そのものが40℃のお湯に入っていました。皮膚を直接温めれば、その場所の血管が広がるのは当然とも言えます。

さらに、2つは「時間」をそろえただけで、「体にかかる熱の量」はそろえていません。測ったのも終わった直後の1回だけで、その変化が何時間続くのか、繰り返すと体がどう変わるのかは分かりません。

著者ら自身も、この結果を「入浴が運動より優れている」と解釈してはいけないと論文の中ではっきり書いています。

04どんでん返し②:お風呂は運動の代わりにならない

運動のよさは血管だけではありません。WHOは、定期的な運動が心臓や血管の病気・がん・糖尿病の予防や治療に役立ち、うつや不安の症状も軽くするとしています。皮膚の血流が1回増えたことで、それらが手に入るわけではないのです。

一方、「繰り返す入浴」の研究もあります。2016年の米オレゴン大学の研究では、運動習慣のない若者10人が8週間、週4〜5回、40.5℃の湯で体の奥の温度を38.5℃以上に60分保つ入浴を続けると、血管の内側の働き・動脈の硬さ・血圧が良くなりました(体温に近いぬるい湯につかった比較グループは変化なし)。同じチームの別の論文では、湯から出していた腕の皮膚の血管も、広がる力が強まっていました。

ただしこれは研究室で管理された強い加温で、家庭のお風呂とは別物です。また、2型糖尿病の14人が2週間で8〜10回、1時間ずつ入浴した2024年の研究では、血管の働きは良くならず、血圧は上の血圧だけが下がりました。

05日本の湯船で「30分」を真似してはいけない

実験は、研究者が体温・心拍・血圧を測りながら行ったものです。入浴で心拍は1分あたり平均40上がり(運動では51)、入浴での上がり方は女性が平均48と、男性の27より大きくなりました。

日本では、厚生労働省の人口動態統計で「浴槽での溺死・溺水」で亡くなった人は2024年に7,776人、そのうち65歳以上が7,363人(約95%)でした(2025年12月に消費者庁が公表)。同じ年に交通事故で亡くなった65歳以上の人(2,103人)の3倍以上です。消費者庁は2022年の資料で、42℃で10分つかると体温が38℃近くに達し、意識がぼんやりして溺れるおそれがあると注意しています。この実験でも、40℃・30分の入浴を終えたときの深部体温は平均38.1℃でした。

また、この実験では入浴の直後に血圧も下がっていました。消費者庁は、浴槽から急に立ち上がると脳に行く血液が減り、一時的に意識が遠のくことがあるとも注意しています。

06まとめ

前腕の皮膚の血管に限れば、40℃・30分の入浴は自転車こぎよりずっと大きな変化を起こしました。これは「運動がつらい人にとって、温めることが選択肢になるかもしれない」という研究の入口です。

でも今夜のお風呂は、41℃以下で10分まで。そして、歩ける人は歩く。お風呂と運動、両方を上手に使い分けましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTwenty-five adults in Perth, Australia, visited a university lab on two separate days. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Twenty-five adults in Perth, Australia, visited a university lab on two separate days. All of them were overweight, between 45 and 70 years old, and did little regular exercise. On one visit, each person cycled for 30 minutes at a moderate pace.

On the other, the same person sat in a tub of 40-degree water for half an hour, with the water up to the lower chest and both forearms under the surface. A special camera that uses light then checked tiny blood vessels in the skin of the forearm.

After the bath, the vessels were wider and carried much more blood. After cycling, they changed very little. Blood pressure also fell more right after the bath. Japan's consumer agency tells older people to soak for ten minutes at most.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

オーストラリアのパースに住む25人の大人が、別々の2日に大学の研究室を訪れた。全員が太りぎみで、年齢は45〜70歳、ふだんあまり運動をしていなかった。1回目の訪問では、各自がほどよいペースで30分自転車をこいだ。

もう1回では、同じ人が40℃のお湯の入った浴槽に30分座り、お湯は胸の下あたりまで、両方の前腕も水面の下に入れた。そのあと、光を使う特別なカメラで、前腕の皮膚の細い血管を調べた。

入浴の後、血管は太くなり、ずっと多くの血液を運んでいた。自転車の後は、ほとんど変わらなかった。入浴の直後は、血圧もより大きく下がっていた。日本の消費者庁は、高齢の人に、お湯につかるのは長くても10分までにするよう呼びかけている。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Which of the following was true of the people in the study?

Q3. Why does the writer mention the safety advice in Japan?

重要単語

  • immersionC1
    名詞(液体に)浸すこと、つかることHot water immersion raised their body temperature by almost one degree. 動詞 immerse(浸す)の名詞形。英語学習の「イマージョン教育(英語漬け)」も同じ語で、be immersed in ~ は「~に没頭する」
  • dilateC1
    動詞(血管・瞳孔などが)広がる、広げるWarm water makes the blood vessels in your skin dilate. 眼科で目薬を差して瞳を開くのも dilate。反対は constrict(縮める)。名詞は dilation
  • core temperatureB2
    名詞深部体温(体の奥の温度)Her core temperature stayed normal during the walk. core は「芯・中心」。皮膚の表面の温度は skin temperature で、区別して使う
  • moderateB1
    形容詞ほどよい、中くらいのModerate exercise, such as a brisk walk, is good for most adults. moderate exercise(中強度の運動)、moderate drinking(ほどほどの飲酒)など健康の英文で頻出。発音は「モデレト」
  • submergeB2
    動詞水中に沈める、沈むKeep the plant submerged in water for a few minutes. sub-(下に)+ merge(沈む)。submarine(潜水艦)の sub- と同じ
  • drowningB1
    名詞溺れること、溺水Bathtub drowning is a serious risk for older people in winter. drown(溺れる・溺れ死ぬ)の名詞形。be drowned は「溺死する」。発音は「ドラウン」で、crown と同じ音
  • substituteB2
    名詞代わりのものA hot bath is not a substitute for regular exercise. a substitute for ~ で「~の代わり」。動詞では substitute A for B(B の代わりに A を使う)の語順に注意。入試頻出

4コマでわかる

お風呂が運動に勝った!? 40℃・30分の入浴直後、腕の皮膚の血流が自転車こぎ30分を大きく上回ったの4コマ漫画
「40℃の湯に30分」と「自転車こぎ30分」を太りぎみの中高年で比べたら、直後の腕の皮膚の血流は入浴の圧勝。でも測った腕はお湯の中。運動の代わりにはならず、家では41℃以下・10分までが目安。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Wigati et al. (2026) Comparison between exercise and hot water immersion on skin microvascular responses in older adults with overweight and obesity, European Journal of Applied Physiologydoi.org
  2. Brunt et al. (2016) Passive heat therapy improves endothelial function, arterial stiffness and blood pressure in sedentary humans, The Journal of Physiologydoi.org
  3. Brunt et al. (2016) Passive heat therapy improves cutaneous microvascular function in sedentary humans via improved nitric oxide-dependent dilation, Journal of Applied Physiologydoi.org
  4. James et al. (2024) The effect of repeated hot water immersion on vascular function, blood pressure and central haemodynamics in individuals with type 2 diabetes mellitus, Journal of Thermal Biologydoi.org
  5. 消費者庁 (2022) 高齢者の事故に関するデータとアドバイス等caa.go.jp