NEW別館「マジか!?ことば」英語と日本語の「えっ、マジか!?」を辞書と論文でウラ取りのぞいてみる →
人間関係・お金・日常ビミョー

孤独は「1日15本のタバコ」並み? 30万人のデータが示した、人づきあいと寿命の関係

孤独は「1日15本のタバコ」並み? 30万人のデータが示した、人づきあいと寿命の関係

読む前に予想してみよう!

2010年に多くの研究をまとめた分析では、人とのつながりが強い人ほど、調査期間中に生存している可能性が高かった

研究カード(どんな研究?)
対象
世界各国の成人
規模
148研究・約30万人(2023年の分析は約220万人)
研究の種類
観察研究のメタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

148の研究・約30万人を分析すると、人とのつながりが強い人は、弱い人より生存の可能性が約50%高かった。「タバコ15本」はわかりやすくするための比較で、正確な換算ではない。

ひとことで言うと人とのつながりは、体の健康にも関係しているらしい!

もくじ
  1. 148の研究、約30万人をまとめて分析
  2. 「1日15本」はどこから来た?
  3. 「孤独」と「孤立」はちょっと違う
  4. なぜ体にまで影響するの?
  5. まとめ

「孤独は1日15本のタバコを吸うのと同じくらい体に悪い」

ネットやニュースで、こんなフレーズを見たことがあるかもしれません。ちょっと大げさに聞こえますよね。

この話の元をたどると、30万人分のデータをまとめた大規模な研究に行きつきます。そして「15本」という数字には、知っておくべきウラ話もありました。

01148の研究、約30万人をまとめて分析

この分野を大きく動かしたのが、アメリカのブリガム・ヤング大学の心理学者ジュリアン・ホルト=ランスタッドらの研究です。

さらに研究チームは、この影響の大きさが、喫煙や飲酒など、よく知られた健康リスクと同じくらいの大きさになると指摘しました。

02「1日15本」はどこから来た?

ここで、例の「15本」です。

出どころは、2010年の論文そのものにあるグラフです。研究チームは、人とのつながりの影響の大きさを、ほかの研究で分かっている「1日15本未満の喫煙」や「大量の飲酒」などの影響の大きさと、1つのグラフに並べて比べました。2023年には、アメリカの公衆衛生のトップ(公衆衛生局長官)が出した報告書でも「1日最大15本の喫煙に匹敵する」と紹介され、一気に広まりました。

ただ、グラフをよく見ると、148の研究全体でのつながりの影響は、「15本未満の喫煙」の棒より少し短いのです。それより長くなったのは、つながりを家族・友人・地域活動など多くの面から細かく測った研究や、支えてくれる人が多い人と少ない人をはっきり分けて比べた研究に絞ったときでした。

そして、「孤独を1日感じると、タバコ15本と同じダメージが体に入る」という意味ではありません。あくまで、統計上の影響の大きさを身近なものと並べた比較なのです。

同じ建物にいても、つながりの強さは人それぞれ
同じ建物にいても、つながりの強さは人それぞれ

03「孤独」と「孤立」はちょっと違う

研究の世界では、似た言葉を区別して考えます。

  • 社会的孤立:実際に人との接触が少ない状態(一人暮らし、会う人が少ない など)
  • 孤独感:人とのつながりが足りないと主観的に感じる状態

たくさんの人に囲まれていても孤独を感じる人もいれば、一人の時間が多くても満たされている人もいます。2015年の続編の研究では、孤立・孤独感・一人暮らしのどれもが、死亡リスクが約3割高いことと関連していたと報告されています。このときは、孤立と孤独感の間に、はっきりした差は見られませんでした。

さらに2023年には、約220万人を含む90のコホート研究(同じ人たちを長年追いかける研究)をまとめた分析も発表されました。それによると、死亡リスクは社会的孤立で約1.3倍、孤独感で約1.1倍と、どちらも高い方向に関連していました。この分析では、「実際に人との接触が少ないこと」の方が関連が強く出ました。

04なぜ体にまで影響するの?

はっきりした仕組みはまだ研究中ですが、いくつかの説があります。

  • 孤独な状態が続くと、ストレス反応が高まりやすい
  • 睡眠や食事、運動などの生活習慣が乱れやすい
  • 体調の変化に気づいて病院をすすめてくれる人がいない

なお、これらの研究の多くは観察研究(実験ではなく、ある時点の状態とその後の健康を追いかけた研究)です。「孤独が原因で寿命が縮む」と断定するには、まだ慎重さが必要です。2024年には、イギリスの大規模なデータに遺伝子の情報も組み合わせた研究が発表されました。孤独感と多くの病気との関係は、収入などの暮らしの条件や生活習慣、もともとの気分の落ち込みなどで、かなり説明できるという結果でした。

05まとめ

人とのつながりは、気分だけでなく体の健康とも深く関係している可能性が高い。そのことを、30万人のデータが教えてくれました。

「15本」という比較は少し大げさ。でも、誰かと話す時間が自分を守ってくれるかもしれない、というメッセージは覚えておく価値がありそうです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe phrase "loneliness is as harmful as smoking 15 cigarettes a day" is often repeated, but what is it… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The phrase "loneliness is as harmful as smoking 15 cigarettes a day" is often repeated, but what is it based on? In 2010, psychologist Julianne Holt-Lunstad and her colleagues analyzed 148 studies covering about 300,000 people. They found that people with strong social relationships were about 50 percent more likely to survive during the study periods than those with weak relationships. The researchers said this effect was comparable to well-known risks such as smoking.

However, "15 cigarettes" is just a way of explaining the size of the effect. Researchers also separate social isolation, which means actually having few contacts, from loneliness, which is the feeling of not being connected enough. Both have been linked to higher risk of death.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「孤独は1日15本のタバコを吸うのと同じくらい有害だ」というフレーズはよく繰り返されますが、何にもとづいているのでしょうか。2010年、心理学者ジュリアン・ホルト=ランスタッドらは、約30万人を対象とした148の研究を分析しました。その結果、社会的な関係が強い人は、弱い人に比べて調査期間中に生存している可能性が約50%高いことがわかりました。研究者たちは、この影響は喫煙のようなよく知られたリスクに匹敵すると述べました。

しかし、「15本」は効果の大きさを説明するための一つの方法にすぎません。研究者たちはまた、実際に人との接触が少ないことを意味する社会的孤立と、つながりが足りないと感じる孤独感とを区別しています。どちらも死亡リスクの高さと関連しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Holt-Lunstad's team find?

Q2. What is the difference between social isolation and loneliness?

Q3. What does the author suggest about the "15 cigarettes" phrase?

重要単語

  • lonelinessB1
    名詞孤独感Loneliness is a feeling, not a fact. lonely は「寂しい」という感情、alone は「一人で」という状態。この違いは頻出。
  • isolationB2
    名詞孤立Social isolation means having few contacts. 動詞 isolate。ラテン語 insula(島)から来ていて「島のように切り離された」イメージ。
  • mortalityC1
    名詞死亡率Strong ties are linked to lower mortality. mortal(死すべき運命の)の名詞形。反対語 immortal「不死の」。mortality rate「死亡率」。
  • observationalC1
    形容詞観察によるObservational studies cannot prove cause. observational study(観察研究)は experiment(実験)と対比される。因果を断定できない点が入試で問われる。
  • comparableB2
    形容詞匹敵する、比べられるThe risk was comparable to smoking. be comparable to ~「~に匹敵する」。アクセントは頭の COM-parable。
  • confoundingC1
    形容詞交絡の(結果をゆがめる)Confounding factors can make a link look stronger. confound は「混同させる」。confounding factor「交絡因子」は統計系長文の必修語。
  • reverse causationC1
    名詞(句)逆の因果関係Poor health may cause isolation, which is reverse causation. causation は「因果関係」。cause(原因)と effect(結果)が逆かもしれない、という指摘。

動画でもっと知る

4コマでわかる

孤独は「1日15本のタバコ」並み? 30万人のデータが示した、人づきあいと寿命の関係の4コマ漫画
148の研究、約30万人分のデータをまとめたら、人とのつながりが強い人ほど長生きする傾向が見えたらしい。その影響の大きさは「喫煙に匹敵する」とも。よく聞く「1日15本」は影響の大きさを比べた表現で、同じ害という意味ではないので注意。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Holt-Lunstad, Smith & Layton (2010) Social relationships and mortality risk: A meta-analytic review, PLoS Medicinedoi.org
  2. Holt-Lunstad et al. (2015) Loneliness and social isolation as risk factors for mortality: A meta-analytic review, Perspectives on Psychological Sciencedoi.org
  3. Liang et al. (2024) Observational and genetic evidence disagree on the association between loneliness and risk of multiple diseases, Nature Human Behaviourdoi.org
  4. Wang et al. (2023) A systematic review and meta-analysis of 90 cohort studies of social isolation, loneliness and mortality, Nature Human Behaviourdoi.org