人間関係・お金・日常ホント

ガチャがやめられないのは意志が弱いからじゃない。ハトの実験が暴いた「変動比率」のワナ

ガチャがやめられないのは意志が弱いからじゃない。ハトの実験が暴いた「変動比率」のワナ

読む前に予想してみよう!

ごほうびが「毎回必ずもらえる」方が、「いつもらえるか分からない」より、行動がやめにくくなる

研究カード(どんな研究?)
対象
動物実験(ハト・サル)+ゲーマー調査
規模
数匹〜約7,400人
研究の種類
動物実験・神経記録・横断調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「いつ当たるか分からない」ごほうびは、行動を強く、長く続けさせやすい。動物実験で知られる「変動比率スケジュール」が、ガチャの仕組みとそっくりだった。

ひとことで言うと「次こそ当たるかも」が、脳をいちばん夢中にさせる!

もくじ
  1. ごほうびの「出し方」で行動が変わる
  2. 脳は「予想外の当たり」に燃える
  3. 「ガチャ」と「ギャンブル」の近さ
  4. まとめ

「あと1回だけ……」

そう言いながら、気づけば10連ガチャを何度も回していた。そんな経験はありませんか?

「自分は意志が弱い」と落ち込む必要はありません。ガチャには、脳を夢中にさせる仕組みが組み込まれているのです。そのヒントは、70年近く前のハトなどの動物実験にありました。

01ごほうびの「出し方」で行動が変わる

アメリカの心理学者B・F・スキナーらは、動物がボタンやレバーを押すとエサが出る装置を使い、ごほうびの出し方(スケジュール)によって行動がどう変わるかを調べました。

ここでいう「強化」とは、ごほうびによって行動が繰り返されやすくなること。

  • 毎回ごほうび:すぐ覚えるけれど、ごほうびが止まるとすぐやめる
  • 変動比率:次で当たるかもしれないので、押し続けてしまう

まさに、ガチャやくじ引きと同じ構造ですよね。

02脳は「予想外の当たり」に燃える

では、脳の中では何が起きているのでしょう?

カギになるのが、脳の報酬系(気持ちよさややる気に関わる回路)で働くドーパミンという物質です。

1997年、神経科学者のウォルフラム・シュルツらは、サルでの一連の研究をまとめた論文で、ドーパミンを出す神経細胞が「予想より良い結果」が来たときに強く反応することを報告しました。逆に、予想どおりのごほうびには、あまり反応しなくなっていくのです。

さらに2003年の研究では、当たるか外れるか五分五分のような、結果が一番読めない状況で、ドーパミン神経細胞に、結果の不確かさに応じて高まる持続的な活動が見られることも示されました。

毎回必ずもらえるごほうびより、「当たるかも、外れるかも」の方が脳を熱くさせる。ガチャのドキドキの正体は、ここにありそうです。

「どれが当たりか分からない」状態こそ、脳をいちばん引きつける
「どれが当たりか分からない」状態こそ、脳をいちばん引きつける

03「ガチャ」と「ギャンブル」の近さ

海外では、ゲームの有料くじ(ルートボックス)とギャンブルの関係が研究されています。

2018年、イギリスの研究者ザンドルとケアンズが7,000人以上のゲーマーを調査したところ、ルートボックスにお金を多く使う人ほど、ギャンブルの問題を抱えている傾向が見られました。翌2019年に同じチームが別のサンプルで行った追試でも、同じような関連が確認されています。ただし、これは「関連がある」という結果で、どちらが原因かまではわかっていません。

日本でも2012年、特定の組み合わせをそろえると景品がもらえる「コンプリートガチャ」が問題になり、消費者庁が景品表示法の規制対象とする見解を示しました。

04まとめ

ガチャがやめられないのは、動物実験の時代から知られている「変動比率」の仕組みと、脳の報酬系が関わっていると考えられるから。

仕組みを知ることは、立派な防具になります。「今、脳が燃えてるな」と気づけたら、それだけで一歩引いて考えられるはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you have ever thought "just one more try" while playing a gacha game, you are not alone. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If you have ever thought "just one more try" while playing a gacha game, you are not alone. In 1957, psychologists Charles Ferster and B. F. Skinner described how different reward schedules change animal behavior. Pigeons that were rewarded after an unpredictable number of responses, called a variable ratio schedule, pressed very fast and kept going even when the rewards stopped.

Gacha and lotteries have the same structure. Brain research helps explain why. In 1997, Wolfram Schultz and his colleagues reviewed monkey studies showing that dopamine neurons reacted strongly to rewards that were better than expected. A 2018 survey of over 7,000 gamers also found that people who spent more on loot boxes tended to have more gambling problems.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ガチャのゲームをしていて「あと1回だけ」と思ったことがあるなら、それはあなただけではありません。1957年、心理学者のチャールズ・ファースターとB・F・スキナーは、ごほうびの出し方の違いが動物の行動をどう変えるかを記述しました。予測できない回数の反応のあとにごほうびをもらえるハト(これは変動比率スケジュールと呼ばれます)は、とても速く押し、ごほうびが止まっても押し続けました。

ガチャやくじも同じ構造をしています。脳の研究がその理由の説明に役立ちます。1997年、ウォルフラム・シュルツらは、サルでの研究をまとめ、ドーパミン神経細胞が、予想より良いごほうびに強く反応することを示しました。7,000人以上のゲーマーを対象にした2018年の調査でも、ルートボックスに多くお金を使う人ほど、ギャンブルの問題を抱える傾向があることがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is a variable ratio schedule?

Q2. According to Schultz's research, dopamine neurons react strongly to ...

Q3. Why does the author mention the pigeon experiment?

重要単語

  • reinforcementC1
    名詞強化Reinforcement makes a behavior more likely. 動詞 reinforce「強化する」=re-+in-+force(力)。心理学では「行動を増やすこと」。
  • rewardB1
    名詞ごほうび、報酬The brain loves an unexpected reward. reward A for B「AにBのほうびを与える」。rewarding「やりがいのある」も頻出。
  • unpredictableB2
    形容詞予測できないUnpredictable prizes keep players hooked. un-+pre-(前に)+dict(言う)+-able。「前もって言えない」と分解して覚える。
  • addictionB2
    名詞依存(症)Addiction is not simply a lack of willpower. be addicted to ~「~に依存している」。to の後は名詞・動名詞。
  • gamblingB2
    名詞ギャンブル、賭け事Loot boxes have been compared to gambling. 動詞 gamble。「一か八かやってみる」という比喩的な意味でも使う。
  • persistC1
    動詞続ける、持続するThe pigeons persisted even after the food stopped. persist in ~「~に固執する」。形容詞 persistent「しつこい、持続的な」。
  • uncertaintyB2
    名詞不確かさUncertainty itself can be exciting. certain(確かな)の名詞形 certainty に un- が付いた形。研究の限界の説明でも頻出。

動画でもっと知る

4コマでわかる

ガチャがやめられないのは意志が弱いからじゃない。ハトの実験が暴いた「変動比率」のワナの4コマ漫画
ガチャがやめられないのは、意志が弱いからだけじゃない。「何回目で当たるか分からない」ごほうびは、動物実験でも行動をしつこく続けさせやすい仕組みだったらしい。脳の報酬系は「予想外の当たり」に強く反応する。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Schultz, Dayan & Montague (1997) A neural substrate of prediction and reward, Sciencedoi.org
  2. Fiorillo, Tobler & Schultz (2003) Discrete coding of reward probability and uncertainty by dopamine neurons, Sciencedoi.org
  3. Zendle & Cairns (2018) Video game loot boxes are linked to problem gambling: Results of a large-scale survey, PLOS ONEdoi.org
  4. Zendle & Cairns (2019) Loot boxes are again linked to problem gambling: Results of a replication study, PLOS ONEdoi.org