
Thanksgiving
感謝祭(サンクスギビング)の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? 感謝祭(サンクスギビング)の本当の話を、確かな資料でたどります。
1感謝祭の由来:1621年の3日間、テーブルにいたのは誰?
1621年の秋、今のアメリカ・マサチューセッツ州にある小さな村プリマス。収穫を終えたイギリス人入植者のもとに、約90人のワンパノアグの男たちがやってきました。率いていたのは、指導者ウサメクィン(Ousamequin)。英語の記録では「マサソイト」と呼ばれますが、これは名前ではなく「偉大な首長」という意味の称号です。宴は3日間続き、ワンパノアグの人々は5頭のシカをしとめて持ちこみました。
入植者の側から見てみましょう。彼らは前年の1620年、102人でメイフラワー号に乗ってイギリスを出ました。ところが最初の冬は病気と寒さがひどく、春までに生き残った乗客は53人。ほぼ半分が亡くなったのです。1621年の秋は、ようやく迎えた初めての収穫でした。
ワンパノアグの側から見ると、景色はまったく違います。1616〜1619年ごろ、ヨーロッパの船が持ちこんだとみられる病気が広がり、地域によっては人口の9割が亡くなったとも推定されています。プリマスの土地には、もともとパタクセットという村がありましたが、この病気で消えていました。弱った人々は、敵対する別の部族ナラガンセットに攻められやすい立場にありました。ウサメクィンは1621年3月22日(当時の暦。今の暦では4月1日)、入植者と同盟を結びます。お互いを守るための、したたかな外交でした。
通訳をしたのは、パタクセット出身のティスクァンタム(スクァント)です。彼は1614年にイギリス人の船長にさらわれ、スペインで売られ、ロンドンで暮らしたあと、1619年にふるさとへ帰ってきました。村はすでに病で消えていました。英語を話せた彼は、入植者に魚を肥料にしてトウモロコシを育てる方法を教えます。
なぜワンパノアグの人々が宴に加わったのか、はっきりした記録はありません。プリマスの博物館も「確かなことはわからない」と説明しています。宴の正確な日付も、9月21日から11月9日の間としかわかっていません。

2感謝祭の歴史:『メリーさんのひつじ』の作者が祝日を作った
17世紀の入植者にとって、「サンクスギビング(thanksgiving)」とは、教会に集まって神に感謝の祈りをささげる宗教的な日のことでした。1621年の宴は、当時の記録では「収穫の祝い」として書かれています。この宴が「最初の感謝祭」としてアメリカ人の記憶に定着したのは、19世紀になってからです。
1789年10月3日、初代大統領ジョージ・ワシントンは、同じ年の11月26日(木)を国全体の感謝の日とする布告を出しました。ただし、毎年の祝日にはなりませんでした。
ここで登場するのが、サラ・ジョセファ・ヘイル。1830年に詩『メリーさんのひつじ(Mary Had a Little Lamb)』を発表した作家で、のちに40年にわたって人気女性雑誌の編集長をつとめた人物です。彼女は1846年から、感謝祭を全国共通の祝日にしようと呼びかけ始めました。テイラー、フィルモア、ピアース、ブキャナン、そしてリンカーン。5人の大統領に手紙を送り続けること17年。
1863年10月3日、南北戦争のまっただなかで、リンカーン大統領はついに「11月の最後の木曜日」を感謝の日とする布告を出しました。国が2つに割れていた時代に、全員が同じ日に感謝する祝日が生まれたのです。
その後、日付をめぐって大さわぎが起きます。1939年、大不況のさなかに、フランクリン・ルーズベルト大統領は、クリスマス商戦を長くするため、感謝祭を1週間早めました。反対派はこれを「フランクスギビング」とからかい、元の11月30日を「共和党の感謝祭」と呼びました。州によって祝う日が分かれる大さわぎになったのです。結局、1941年12月26日、ルーズベルトは「11月の第4木曜日」と定める法律に署名し、今の日付が決まりました。
🕰️ 感謝祭(サンクスギビング)の年表
- 1578年フロビッシャーの一行がカナダ北部で感謝の礼拝を行う(カナダで起源とされることが多い)。
- 1614年ティスクァンタム(スクァント)がイギリス人の船長にさらわれ、スペインで売られる。
- 1616〜1619年ごろ病気の大流行で、ワンパノアグなどニューイングランドの先住民の人口が激減する。
- 1620年102人を乗せたメイフラワー号がイギリスを出航。最初の冬にほぼ半数が死亡。
- 1621年3月22日(当時の暦)ウサメクィン(マサソイト)とプリマスの入植者が同盟を結ぶ。
- 1621年秋プリマスで3日間の収穫の祝い。約90人のワンパノアグの男たちが加わる。
- 1789年ワシントン大統領が11月26日を国全体の感謝の日とする布告を出す。
- 1846年作家サラ・ジョセファ・ヘイルが、感謝祭を全国の祝日にする運動を始める。
- 1863年リンカーン大統領が「11月の最後の木曜日」を感謝の日とする布告。
- 1924年ニューヨークでメイシーズの感謝祭パレードが始まる。
- 1941年感謝祭を「11月の第4木曜日」とする法律が成立。
- 1957年カナダで感謝祭が「10月の第2月曜日」に決まる。
- 1970年プリマスで先住民による最初の「全米追悼の日」が開かれる。
3「Thanksgiving」と「turkey」の意味:七面鳥は「トルコの鳥」?
Thanksgiving は thanks(感謝)+ giving(ささげること)。「感謝をささげること」という、そのままの意味です。アメリカでは親しみをこめて Turkey Day(七面鳥の日)とも呼ばれます。
では、その七面鳥、英語ではなぜ turkey(トルコ)なのでしょうか。実は、もともと turkey は、アフリカ原産の別の鳥ホロホロチョウを指す言葉でした。ホロホロチョウは、トルコ人のオスマン帝国を通ってヨーロッパに入ってきたので「トルコの鳥」と呼ばれたのです。のちにイギリス人がアメリカ大陸に植民地をつくり、北米の大きな鳥を見たとき、その名前がこちらに移ってしまいました。
おもしろいことに、ほかの国も「どこか遠くの鳥」と思っていたようです。フランス語では最初「インドのニワトリ(poule d'Inde)」と呼ばれ、今は dinde。トルコ語ではなんと hindi(インド)。ノルウェー語やスウェーデン語では、インドの港町カリカットにちなんだ名前です。七面鳥の本当のふるさとはメキシコで、少なくとも紀元前800年ごろから先住民に飼われていました。
日本語の「七面鳥」は、興奮すると顔や首の色が赤や青に変わることから「顔が7つある鳥」と名づけられたと言われます。
感謝祭の翌日の金曜日は Black Friday(ブラックフライデー)。20世紀の終わりの20年ほどで、この呼び名が広まりました。アメリカで1年でいちばん買い物客が多い日の1つと言われます。
4アメリカの感謝祭の過ごし方:1年でいちばん道が混む週末
11月の第4木曜日の朝、アメリカの台所ではオーブンがフル稼働しています。中には、何時間もかけて焼く丸ごとの七面鳥。テーブルには、マッシュポテトとグレービーソース、パンを詰めたスタッフィング、甘ずっぱいクランベリーソース、そしてデザートのパンプキンパイが並びます。
この日のために、人々は国じゅうを移動します。アメリカ自動車協会(AAA)の予想では、2025年の感謝祭の期間に家から50マイル(約80キロ)以上移動する人は8180万人。そのうち約7300万人が車、約600万人が国内線の飛行機と見こまれました。
朝のテレビは、ニューヨークの「メイシーズ・サンクスギビング・デー・パレード」。1924年に始まり、1927年からは見上げるほど巨大な風船が名物です。テレビで見る人は毎年4400万人以上と言われます。午後はアメリカンフットボール。デトロイト・ライオンズは1934年から感謝祭の試合を続けています(1939〜1944年をのぞく)。
ホワイトハウスでは、大統領が七面鳥を「恩赦」する式があります。七面鳥を大統領に贈る行事は1947年に始まりましたが、トルーマン大統領はもらった七面鳥を食べていました。1963年、ケネディ大統領が「この子は大きくしてやろう」と1羽を農場に返し、1989年にブッシュ大統領が恩赦を毎年の決まりにしました。2025年に助けられたのは、ゴブルとワドルという名前の2羽です。
そして、食事の前に1人ずつ「今年感謝していること」を話す家庭も多くあります。照れくさそうに家族の名前を言う子ども、去年亡くなった人を思い出すおばあちゃん。七面鳥より、この時間がいちばんのごちそうだという人も少なくありません。
🎁 シンボルと小物
感謝祭の主役。2019年の感謝祭には約4000万羽が食べられたとされる。原産はメキシコなど北米。
ティスクァンタムが入植者に育て方を教えた作物。色とりどりのトウモロコシは秋の飾りの定番。
パンプキンパイは感謝祭のデザートの王様。1621年の宴の記録には出てこない。
角の形のかごから果物や野菜があふれる飾り。「実りの豊かさ」のシンボル。
1620年に102人を乗せてイギリスからやってきた船。約10週間の航海だった。
メイシーズのパレードの名物。1927年の「フィリックス・ザ・キャット」が最初。
感謝祭の午後はテレビでフットボール。デトロイト・ライオンズの試合は1934年から。
🍽️ この日の食べ物
七面鳥の丸焼き。大きいものは焼くのに何時間もかかる。2024年には約2億7600万人のアメリカ人が七面鳥を食べる見込みとされた。
スパイスのきいたかぼちゃのパイ。ホイップクリームをのせて食べる。
パンや野菜、ハーブを混ぜて七面鳥に詰めて焼く(または別に焼く)料理。地域によって dressing とも呼ぶ。
北米原産の赤い実で作る甘ずっぱいソース。七面鳥にかけて食べる。
つぶしたじゃがいもに、肉汁のソースをかける。アメリカでもカナダでも定番。
5カナダの感謝祭はいつ?10月の第2月曜日
カナダにも感謝祭があります。ただし日付は10月の第2月曜日で、アメリカより1か月以上早くやってきます。2026年は10月12日、2027年は10月11日、2028年は10月9日です。
カナダの人々がよく紹介する起源は、アメリカのプリマスより40年以上も前の話です。1578年、北西航路を探していたイギリスの探検家マーティン・フロビッシャーの一行が、今のカナダ北部、バフィン島の湾で、氷と嵐を切り抜けて無事にいられることを神に感謝する礼拝を行いました。ただし、これを「北米最初の感謝祭」とみるかどうかは、研究者の間でも意見が分かれます。
カナダで感謝祭が毎年の国の祝日になったのは1879年。最初の日付は11月6日で、その後もしばらく日付は動きました。1957年1月31日、総督の布告によって「10月の第2月曜日」に決まり、「カナダがめぐまれた豊かな収穫を神に感謝する日」とされました。
過ごし方はアメリカとよく似ていて、七面鳥、マッシュポテト、パンプキンパイが定番です。ただし祝日が月曜なので、家族のごちそうは3連休のどの日でもよく、日曜日に集まる家庭がいちばん多いと言われます。プロのカナディアンフットボールリーグには、感謝祭の月曜の午後に行う「サンクスギビング・デー・クラシック」があります。
オンタリオ州のキッチナー・ウォータールーでは、この時期にドイツ系移民の伝統を受けつぐオクトーバーフェストが開かれ、山車やマーチングバンドのパレードが町をにぎわせます。七面鳥とビール祭りが同じ週末にやってくるのも、カナダらしい秋の風景です。
6日本の勤労感謝の日と感謝祭:似ているようで違う
日本にも、11月に「感謝」の名前がつく祝日があります。11月23日の勤労感謝の日です。
勤労感謝の日のもとになったのは、宮中で古くから行われてきた新嘗祭(にいなめさい)。天皇がその年に収穫された新しい穀物を神にそなえ、自らも食べる儀式です。戦後、アメリカなどの占領下で祝日が見直され、1948年から「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日として今の名前になりました。収穫に感謝するという根っこは、アメリカやカナダの感謝祭と通じています。
でも、過ごし方はかなり違います。日本の勤労感謝の日には、決まったごちそうも、家族が遠くから集まる習慣もあまりありません。英語で説明するときは、Labor Thanksgiving Day is a national holiday in Japan. People thank each other for their work. のように、「働く人への感謝」が中心だと伝えるとわかりやすいでしょう。
逆に、日本人がアメリカの感謝祭を体験するとおどろくのは、その規模です。お正月の帰省ラッシュのように、何千万人もが家族のもとへ移動する。七面鳥は1羽5〜10キロほどもあり、残りものは週末じゅうサンドイッチになります。家族が集まり、食べ、ふだんは言わない感謝を口にする。そう考えると、アメリカの感謝祭は、日本のお正月にいちばん近い祝日かもしれません。
7感謝祭のよくある誤解とホントのところ
誤解1:1621年の宴が「最初の感謝祭」
当時の記録では「収穫の祝い」です。バージニア州のバークレー・ハンドレッドでは、1619年12月4日に到着を神に感謝する日が開かれていて、こちらを「最初」とする人もいます。そもそも先住民は、ずっと前から収穫を感謝する儀式を持っていました。
誤解2:入植者と先住民は、その後ずっと仲良く暮らした
同盟は数十年続きましたが、入植者が増えて土地をめぐる対立が深まり、1675年、ウサメクィンの息子メタコムのもとで「フィリップ王戦争」が起きます。ニューイングランドの歴史で最も激しい戦いの1つでした。
誤解3:1621年も七面鳥とパンプキンパイを食べた
宴の記録にあるのは「鳥(fowl)」とシカだけです。野生の七面鳥がいた可能性はありますが、何の鳥だったかは書かれていません。パンプキンパイは記録に出てきません。
誤解4:フランクリンは七面鳥を国の鳥にしようと提案した
1784年に娘への手紙でハクトウワシの悪口を書いたのは本当ですが、七面鳥を国の鳥に推したという証拠はありません。
誤解5:感謝祭はずっと第4木曜日だった
1863年からは「11月の最後の木曜日」が基本でした。1939年にルーズベルトが1週間早めて大混乱になり、1941年の法律で「第4木曜日」に決まりました(1942年から)。
誤解6:アメリカ人はみんな感謝祭を祝う
1970年から、ニューイングランドの先住民団体が感謝祭の日にプリマスで「全米追悼の日」を開いています。一方で、感謝祭を先住民の収穫の儀式と重ねて祝う先住民もいます。受け止め方は1つではありません。
💡Fun Facts感謝祭(サンクスギビング)の豆知識 10連発
感謝祭を全国の祝日にした立役者サラ・ジョセファ・ヘイルは、童謡『メリーさんのひつじ』の作者。1846年から17年間、5人の大統領に手紙を書き続けた。
Sarah Josepha Hale wrote Mary Had a Little Lamb. She also wrote letters to five presidents to make Thanksgiving a holiday.
1924年の最初のメイシーズのパレードには、セントラルパーク動物園から借りた本物の動物が登場した。1927年に風船のフィリックス・ザ・キャットが動物に代わった。
The first Macy's parade in 1924 had real animals from a zoo. Giant balloons came later.
1928年から数年間、メイシーズはパレードの後に風船を空へ放ち、見つけた人に賞金を出した。1931年の青いカバの風船は、とうとう見つからなかった。
Long ago, Macy's let the parade balloons fly away into the sky. A blue hippo balloon was never found.
1963年、ケネディ大統領は暗殺の3日前に、贈られた七面鳥を「この子は大きくしてやろう」と農場に返した。七面鳥の首には「おいしく食べてね、大統領」の札がかかっていた。
In 1963, President Kennedy did not eat his Thanksgiving turkey. He said, Let's let this one grow.
1939年、ルーズベルト大統領が感謝祭を1週間早めると、反対派は「フランクスギビング」とからかった。その年は、州によって感謝祭の日が2つあった。
In 1939, President Roosevelt moved Thanksgiving one week earlier. Some people called it Franksgiving.
ウサメクィンを指す「マサソイト」は名前ではなく、「偉大な首長」という意味の称号。入植者の記録では、まるで名前のように使われている。
Massasoit was not a name. It was a title that meant Great Sachem, or great leader.
ティスクァンタム(スクァント)は、ピルグリムに会う前にスペインとロンドンで暮らしていた。だから英語が話せた。
Squanto lived in Spain and London before he met the Pilgrims. That is why he could speak English.
七面鳥のふるさとはメキシコ。先住民が少なくとも紀元前800年ごろから飼っていた。英語の turkey(トルコ)は、ヨーロッパ人のかんちがいから生まれた名前。
Turkeys first came from Mexico. People there kept them more than 2,800 years ago.
アメリカで最初の「ベジタリアン用の七面鳥」のレシピが出版されたのは1891年。肉を使わない感謝祭料理の歴史は、意外と古い。
The first recipe for a vegetarian turkey was printed in the United States in 1891.
ワンパノアグの言葉は一時話し手がいなくなったが、1993年に始まった復興プロジェクトで、100年以上ぶりに話し手が生まれた。
The Wampanoag language almost disappeared. But since 1993, people have worked hard to bring it back.
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▶️Videos & Links感謝祭(サンクスギビング)の動画とリンク集
The First Thanksgiving: What Really HappenedUncivil History
Kids History: The First Thanksgiving | HistoryHISTORY
The Real Story Of Thanksgiving | Thanksgiving 2022 | The Dr Binocs Show | Peekaboo KidzPeekaboo Kidz
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Thanksgiving (United States) - Wikipedia英語版ウィキペディア。1621年の記録、ヘイル、リンカーン、1941年の法律まで詳しい。
Thanksgiving (Canada) - Wikipediaカナダの感謝祭の歴史と、州ごとの休日の扱い。
感謝祭 - Wikipedia日本語版ウィキペディア。アメリカとカナダの感謝祭を日本語で確認できる。
Thanksgiving History - Plimoth Patuxet Museumsプリマスの歴史博物館の学生向け解説。1621年の宴の記録と、わからないこと。
National Day of Mourning - Wikipedia1970年から続く先住民の「全米追悼の日」について。
Wampanoag - Wikipediaワンパノアグの歴史、病気による人口減少、言葉の復興プロジェクト。
AAA Thanksgiving Travel Forecast 2025アメリカ自動車協会の感謝祭の移動予測(8180万人)。
