
Mid-Autumn Festival
中秋節・チュソク(アジアのお月見)の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? 中秋節・チュソク(アジアのお月見)の本当の話を、確かな資料でたどります。
1中秋節の由来:月にお供えをした古代中国の秋
秋の夜、いちばん明るい月にごちそうを供える。中秋節の根っこにあるのは、とてもシンプルな気持ちです。中国では、秋の満月を祝う習わしは殷(商)の時代、つまり3000年以上前にさかのぼると言われます。作物の取り入れが終わるころ、大地と月に感謝したのが始まりと考えられています。
古い礼法の本『周礼』には、すでに「中秋」という言葉が出てきます。また『礼記』には、天子(天下を治める王)が春に太陽を、秋に月をまつったと書かれています。月を祭るのは、もともと国の儀式だったのです。
そこに物語が加わります。いちばん有名なのが嫦娥(じょうが)の伝説です。昔、空に太陽が10個も出て、地上が焼けそうになりました。弓の名人・后羿(こうげい)が9個を射落とし、ごほうびに不老不死の薬をもらいます。ところが、その薬を飲んだのは妻の嫦娥でした。体がふわりと浮き、彼女は月まで飛んでいってしまった、というお話です。薬を奪おうとした弟子から守るために飲んだ、という版もあれば、ひどい王になった夫が永遠に生きないように飲んだ、という版もあります。
月には嫦娥のほかに、玉兎(ぎょくと)という白いうさぎがいるとされます。中国の古い詩集『楚辞(そじ)』には、すでに月のうさぎ(もとは野うさぎ)が登場します。中国では、このうさぎは仙人のための薬をついていると言われてきました。日本で「うさぎが餅つき」と言うのと、ついている物が違うのです。
ほかにも、月で桂の木を切り続ける呉剛(ごごう)という男の言い伝えがあります。切っても切っても、傷がすぐにふさがってしまうのです。秋の月を見上げるたびに、人々はこうした物語を思い出してきました。

2中秋節の歴史:唐で祭りに、月餅が主役になったのは明の時代
月を祭る国の儀式が、普通の人たちの楽しい祭りになったのは、唐の時代(618〜907年)だとされます。詩人たちが月を詠み、人々は夜通し月見を楽しむようになりました。
ここで意外な事実があります。月餅は、最初から中秋節のお菓子だったわけではありません。「月餅」という言葉が記録に初めて出てくるのは、南宋(なんそう)の時代の『夢粱録(むりょうろく)』という本です。そこでは、芙蓉餅や梅花餅などと並ぶ「1年中いつでもある、市場のおやつ」として紹介されています。北宋(ほくそう)の詩人・蘇軾(蘇東坡(そとうば))も「小さな餅は月をかむよう、中には酥(バターのようなもの)と飴」という詩を残していますが、これも中秋節の歌ではありません。
月餅が中秋節と強く結びつくのは、明の時代(1368〜1644年)です。明の田汝成(でんじょせい)の本には「八月十五日を中秋という。人々は月餅を贈り合い、団円(家族がまるく集まること)の意味をこめる」と書かれています。丸い月と丸い月餅が、「家族がそろう」しるしになったのです。
その蘇軾は、1076年の中秋の夜に、離れて暮らす弟を思って有名な詞『水調歌頭』を書きました。最後の一節は「人が長く生きて、千里離れていても同じ美しい月を共にながめられますように」という意味です。今でも中秋節のころになると、中国語圏のテレビやSNSでよく引用されます。
中華人民共和国では長いあいだ、中秋節は休みの日ではありませんでした。それが変わったのは2008年です。祝日の大改革で、清明節・端午節とともに中秋節が国の祝日に加わりました。休みは1日ですが、土日や国慶節(10月1日)とつなげて長い連休になることもあります。2025年は中秋節が10月6日で、国慶節と合わせて10月1日から8日までの8連休になりました。
🕰️ 中秋節・チュソク(アジアのお月見)の年表
- 殷(商)の時代(3000年以上前)秋の満月を祝う習わしがあったとされる。
- 周の時代『周礼』に「中秋」という言葉が出てくる。天子が秋に月をまつる儀式があった。
- 唐の時代(618〜907年)中秋の月見が人々の楽しみとして広まる。
- 859年日本で島田忠臣が八月十五夜の宴の詩を残す。
- 1076年蘇軾が中秋の夜に詞『水調歌頭』を書く。
- 1135年日本の日記『中右記』に、九月十三夜を名月とする記述。
- 南宋の時代(1127〜1279年)『夢粱録』に「月餅」の名が1年中ある市場のおやつとして登場。
- 明の時代(1368〜1644年)中秋節に月餅を贈り合い、団らんを願う習慣が記録される。
- 1880年香港・大坑で火龍舞が始まったとされる。
- 1969年アポロ11号の交信で、管制官が嫦娥とうさぎの話をする。
- 2008年中秋節が中国本土の国の祝日になる。
- 2013年中国の月面探査車「玉兎」が月に着陸。名前はネット投票で決まった。
3「中秋」の意味:秋のまん中の、そのまたまん中
「中秋」は、文字どおり「秋のまん中」です。旧暦では7月・8月・9月が秋。そのまん中の8月の、さらにまん中の15日が「中秋」です。日本語では、8月全体を「仲秋」、15日だけを「中秋」と書き分けることもあります。
英語では Mid-Autumn Festival が一般的です。ほかに Moon Festival(月の祭り)、Mooncake Festival(月餅の祭り)とも呼ばれます。月餅は英語で mooncake。1語で書くことが多いので、つづりに注意しましょう。
国によって名前も変わります。
韓国:추석(チュソク/秋夕) 「秋の夕べ」という意味です。もう1つの呼び名「ハンガウィ」は、古い朝鮮語で「(秋の)大きなまん中」という意味だとされます。新羅の時代、女性たちが2組に分かれて1か月間はたおりを競い、負けた組が勝った組にごちそうした「嘉俳(カベ)」という行事が、その始まりだと伝えられています。
ベトナム:Tết Trung Thu(テト・チュン・トゥ) Trung Thu は「中秋」をベトナム語で読んだもの。Tết は「節(お祭りの日)」で、お正月の「テト」と同じ言葉です。「子どものテト(Tết Thiếu nhi)」「団らんのテト(Tết Đoàn Viên)」という呼び名もあります。
日本:十五夜・中秋の名月 8月15日の夜なので「十五夜」。里芋の収穫どきなので「芋名月」と呼ぶ地方もあります。
名前を並べるだけで、それぞれの国が何を大切にしているかが見えてきます。中国は「団らん」、韓国は「収穫と先祖」、ベトナムは「子ども」、日本は「月をめでること」です。
4中国・台湾・香港の中秋節の過ごし方:月餅、ちょうちん、火の龍
中秋節が近づくと、中国語圏のお店には豪華な箱入りの月餅がずらりと並びます。月餅は自分で食べるだけでなく、家族や会社の取引先に贈る物でもあるのです。
定番の広東式は、つやつやの皮の中に、ハスの実あんや小豆あん。まん中に塩漬けのアヒルの卵の黄身が入っていることもあります。黄色くて丸い黄身は、まさに満月。4つ入りの豪華版は、月の満ち欠けを表すとも言われます。蘇州式は、パイのようにさくさくした皮で、中に豚肉を入れたしょっぱい月餅もあります。月餅を13個ピラミッドのように積んで、うるう月のある年の13か月を表す飾り方もあります。
夜は家族で食卓を囲み、果物や月餅を供えて月を見上げます。子どもたちはちょうちんを持って歩き、ちょうちんに書かれたなぞなぞを解いて遊ぶ地域もあります。
台湾では、中秋節といえば外でバーベキュー。1980年代半ばごろから広まった新しい習慣で、しょうゆメーカーのテレビCMがきっかけだったという説がよく語られます。大きな柑橘の文旦(ブンタン)を食べ、その厚い皮を子どもの頭にかぶせて帽子にする遊びもあります。
香港では、ビクトリア公園などに巨大なちょうちんが飾られます。特に迫力があるのは、大坑(タイハン)地区の火龍舞。わらで作った長さ約67mの龍に、火をつけた線香を何本もさし、煙をあげながら3晩にわたって町を練り歩きます。1880年に始まったとされ、台風と疫病に苦しんだ村人が、占い師のすすめで3日3晩火の龍を踊らせたら災いがおさまった、という言い伝えがあります。
中国本土では、中秋節は「大移動」の季節でもあります。遠くで働く人たちが故郷へ帰り、家族と同じ月を見るためです。
🎁 シンボルと小物
丸い月は「家族がまるく集まる=団円」のしるし。遠く離れた家族も同じ月を見ている。
中国では薬を、日本と韓国では餅をつく。中国の月面探査車の名前にもなった。
不老不死の薬を飲んで月へ昇った女性。中国の月探査機の名前にも使われている。
子どもたちが持って歩く。なぞなぞを書いて解き合う遊びも。
ベトナムの子どもたちの定番。5つの角がある星形で、中にろうそくや電球を入れる。
香港・大坑の、線香をさした長さ約67mのわらの龍。3晩、町を練り歩く。
ベトナムでは太鼓に合わせて子どもたちの前で踊り、祭りを盛り上げる。
🍽️ この日の食べ物
ハスの実あんや小豆あん、塩漬け卵の黄身入りなど。丸い形は団らんのしるし。明の時代から中秋節の贈り物に。
韓国のチュソクの半月形の餅。ゴマや豆を包み、松の葉といっしょに蒸す。
日本の十五夜のお供え。江戸時代に広まり、江戸と上方で形が違った。
台湾やベトナムで食べる大きな柑橘。台湾では皮を子どもの帽子にし、ベトナムでは月見のごちそうの飾りにも使う。
日本では十五夜に供える地方が多く、「芋名月」の名の由来になった。
5韓国のチュソクとベトナムの中秋節:同じ月、まったく違う夜
韓国のチュソクは、中国の中秋節よりも、日本のお盆に近い行事です。チュソクの前後を合わせた3日間は連休になり、多くの人が都会から故郷へ帰ります。高速道路は大渋滞になり、駅や空港も人であふれます。
朝、家族は先祖に料理を供える「茶礼(チャレ)」を行います。そのあとは「省墓(ソンミョ)」といって、お墓参りに出かけます。お墓のまわりの草を刈る「伐草(ポルチョ)」は、チュソクの前の大事な仕事です。
チュソクの食べ物といえばソンピョン。米粉の生地にゴマや豆、はちみつなどを包んだ半月形の餅で、松の葉といっしょに蒸します。だから、ほんのり松の香りがします。半月形の理由には、「百済は満月、新羅は半月(これから満ちていく)」と書かれたカメの言い伝えが関係している、という話があります。
夜、女性たちが満月の下で手をつないで輪になって踊る「カンガンスルレ」や、韓国相撲の「シルム」もチュソクの風物詩です。最近はチュソク前にギフトセットを贈り合う習慣がすっかり定着しました。果物や化粧品に並んで、缶詰のハム「スパム」のセットが定番の贈り物になっているのは、日本人には驚きかもしれません。
ベトナムのテト・チュン・トゥは、まるで「子どもの日」です。子どもたちは星の形のちょうちん(đèn ông sao)を手に、夜の町を行列します。通りでは獅子舞(múa lân)が太鼓に合わせて跳ねまわり、米粉で作るカラフルな人形「トーヘー(tò he)」の屋台も出ます。
ベトナムの月には、嫦娥にあたる「ハンガー(Hằng Nga)」のほかに、もう1人住人がいます。ガジュマルの木ごと月まで飛ばされた男「クオイ(Chú Cuội)」です。ベトナムの子どもたちは、月の黒い影を「木の下に座るクオイ」だと教わります。夜には月餅や果物を並べたごちそうを、月が昇ったころにみんなで「くずして」分け合います。
6日本のお月見と中秋節:1000年以上前に伝わり、日本流に育った
日本の十五夜も、もとは中国から伝わった行事です。記録に残る早い例は859年。漢詩人の島田忠臣が、八月十五夜の宴の詩を残しています。平安時代の貴族たちは、池に舟を浮かべ、水面に映る月をながめて歌を詠みました。
ところが日本では、中秋節がそのままの形では根づきませんでした。代わりに独自の工夫が生まれます。
1つめは十三夜です。旧暦9月13日の月も「後の月」として愛でる習慣で、中国にはない日本独自のものとされます。1135年の日記『中右記』には、すでに九月十三夜を名月とする記述があります。十五夜だけ見て十三夜を見ないのは「片見月」で縁起が悪い、という言い方まで生まれました。もっともこれは、江戸の遊郭で客に2度来てもらうための口実だった、とも言われています。
2つめはお供え物。月見団子が広まったのは江戸時代で、江戸と京・大坂では団子の形が違ったと記録されています。里芋を供える地方が多いことから、十五夜は「芋名月」とも呼ばれます。中国の月餅に当たる場所に、日本では団子と芋がいるのです。
3つめはススキ。稲穂に似たススキを飾る習慣は、江戸時代には関東から東北に見られ、明治以降に全国に広まりました。
そして、月のうさぎ。中国のうさぎは不老不死の薬をつきますが、日本と韓国のうさぎは餅をつきます。日本の『今昔物語集』には、何も差し出せる物がなかったうさぎが、自分の身を火に投じ、その姿が月に残されたという話があります。もとはインドの仏教説話です。
ちなみに日本の中華街では、月餅は1年中売られていて、中身は小豆あんが多いのが特徴です。月餅が「1年中のおやつ」だった南宋時代に、少し似ているかもしれません。日本のお月見について詳しくは、「お月見(十五夜)」のページも見てください。
7中秋節のよくある誤解とホントのところ
誤解1:中秋の名月は必ず満月
ホント:中秋節は「旧暦8月15日」という暦の日付で決まります。満月は月の動きで決まるので、1〜2日ずれる年がよくあります。たとえば2025年の中秋節は10月6日でしたが、満月は翌日の7日でした。
誤解2:月餅に秘密の手紙を隠して、モンゴルの元王朝を倒した
ホント:元の末期、反乱軍が月餅の中に「八月十五日に立ち上がれ」というメモを隠した、という話はとても有名です。でも、これは歴史の記録で確かめられた話ではなく、民間の言い伝えとして語られているものです。
誤解3:月餅は大昔から中秋節のお菓子
ホント:「月餅」という言葉が初めて記録に出る南宋の時代には、1年中売られているおやつでした。中秋節に月餅を贈り合う習慣がはっきり記録されるのは、明の時代です。
誤解4:中秋節とチュソクと十五夜は、名前が違うだけで同じ行事
ホント:日付は同じでも中身はかなり違います。中国は家族の団らん、韓国は先祖をまつりお墓参りをする収穫祭、ベトナムは子どもが主役、日本は月をめでる行事で祝日でもありません。
誤解5:月のうさぎは、どこの国でも餅をついている
ホント:餅つきは日本と韓国の見方です。中国では不老不死の薬をついていると言われます。
誤解6:中秋節は昔からずっと中国の祝日
ホント:中国本土で国の祝日になったのは2008年です。それまでは、休みの日ではなく、仕事の後に家族で祝う行事でした。
💡Fun Facts中秋節・チュソク(アジアのお月見)の豆知識 10連発
1969年、アポロ11号の交信で、地上の管制官が「月にいるうさぎを連れた美しい娘(嫦娥)に気をつけて」と冗談を言い、乗組員が「うさぎの娘をよく見張っておくよ」と返した。
In 1969, Houston told the Apollo 11 crew to look for a girl with a rabbit on the moon. It was a joke about Chang'e.
2013年12月、中国の月面探査車「玉兎(Yutu)」が月に着陸した。名前はネット投票で選ばれた。
In 2013, a Chinese moon rover landed on the moon. Its name, Jade Rabbit, came from an online vote.
「月餅」という言葉が初めて記録に出てくる南宋の本では、月餅は1年中売られている市場のおやつだった。
Long ago, people ate mooncakes all year. They were not only for the festival.
月餅の中の塩漬け卵の黄身は満月を表す。黄身が4つ入った豪華な月餅は、月の満ち欠けを表すとも言われる。
The egg yolk inside a mooncake looks like a full moon. Some cakes have four yolks.
月餅を13個ピラミッドのように積んで、うるう月のある年の13か月を表す飾り方がある。
Some families stack 13 mooncakes. They stand for the 13 months of a long lunar year.
香港・大坑の火龍舞は1880年に始まったとされ、わらの龍の長さは約67m。体じゅうに火のついた線香がさしてある。
In Hong Kong, a fire dragon about 67 meters long dances with burning incense sticks.
韓国ではチュソクの贈り物として、果物や化粧品と並んで、缶詰のハム「スパム」のギフトセットが人気。
In Korea, canned ham gift sets are a popular Chuseok present.
ベトナムの月には、ガジュマルの木ごと月に飛ばされた男「クオイ」が座っているとされる。
In Vietnam, children say a man named Cuoi sits under a big tree on the moon.
台湾の中秋節バーベキューは1980年代半ばからの新しい習慣。しょうゆメーカーのCMがきっかけという説がある。
In Taiwan, the Mid-Autumn barbecue is a new custom. It started in the 1980s.
日本の十三夜は中国にない日本独自の月見とされ、1135年の日記にすでに記録がある。
Japan has a second moon-viewing night. China does not have it.
▶️Videos & Links中秋節・チュソク(アジアのお月見)の動画とリンク集
Chinese Fairy Tale about Chang'e | Happy Mid-autumn Festival | Animation For Babies | BabyBusBabyBus - Preschool Songs & Learning Cartoons
Mid Autumn Festival story and how Chinese celebrate itchinahighlights
🌞legend of Mid Autumn festival 🌙(animation)Chinu Meenu
▶ YouTubeで「Mid-Autumn Festival for kids」をもっと見る
Mid-Autumn Festival - Wikipedia英語版ウィキペディア。伝説、各国の祝い方、日付の一覧。
中秋節 - Wikipedia日本語版ウィキペディア。各地の祝い方の概要。
Chuseok - Wikipedia韓国のチュソクの習慣・食べ物・遊び。2028年までの日付。
Mooncake - Wikipedia月餅の種類や地域ごとの違いが詳しい。
Moon rabbit - Wikipedia月のうさぎの伝説の国ごとの違いと、アポロ11号の交信。
月見 - Wikipedia日本のお月見の歴史。十三夜や芋名月の記録。
Tai Hang Fire Dragon Dance - Wikipedia香港・大坑の火龍舞の由来。