Hispanic Heritage Month

ヒスパニック文化継承月間の由来と歴史(詳しく)

いつから?なぜ?名前の意味は? ヒスパニック文化継承月間の本当の話を、確かな資料でたどります。

1ヒスパニック文化継承月間の由来:なぜ9月15日という「月の途中」から?

アメリカの記念月間は、普通1日に始まって月末に終わります。ところがヒスパニック文化継承月間だけは、9月15日に始まり、10月15日に終わります。カレンダーの2か月にまたがる、ちょっと変わった1か月です。

理由は、この時期に中南米の国々の「誕生日」が集中しているからです。1821年9月15日、グアテマラシティで中央アメリカの独立宣言が署名されました。今のコスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアの5か国は、そろってこの日を独立記念日として祝います。

翌16日はメキシコの独立記念日です。1810年9月16日の午前2時半ごろ、ドロレスという町でミゲル・イダルゴ神父が教会の鐘を鳴らし、人々に立ち上がるよう呼びかけました。「ドロレスの叫び」と呼ばれるこの出来事から、独立戦争が始まります。今でも前夜の15日には、大統領が首都の国立宮殿のバルコニーで同じ鐘を鳴らし、「ビバ・メヒコ!」と3回叫びます。18日には、チリも建国を祝う「祖国の祭り」を迎えます。

そして期間の終わり近くの10月12日は、1492年にコロンブスがアメリカ大陸に着いた日。中南米では長く「ディア・デ・ラ・ラサ(民族の日)」と呼ばれてきました。始まりにも終わりにも、意味のある日が入っているのです。

ヒスパニック文化継承月間(Hispanic Heritage Month)のイラスト

2ヒスパニック文化継承月間の歴史:1968年の「1週間」から1988年の「1か月」へ

始まりは1968年、たった1週間でした。ロサンゼルス東部の多くを選挙区とする下院議員ジョージ・ブラウンが、6月11日に「全国ヒスパニック文化継承週間」をつくる決議案を出します。共同提案者として名を連ねた議員は19人。のちに大統領になるジョージ・H・W・ブッシュもその1人でした。最初の案には「スペイン系の名字をもつ人々は、名誉勲章を受けた人の割合がいちばん高い」という一文もありました。でも、こうした理由を並べた前置きは、短くまとめるためにまるごと削られました。9月17日、ジョンソン大統領が署名し、9月15日と16日を含む1週間が記念の週になりました。

20年後、1週間では足りないという声が上がります。下院議員エステバン・トーレスの法案は委員会で止まりましたが、上院議員ポール・シモンが出し直した法案が通り、1988年8月17日にレーガン大統領が署名しました。この法律の文は「9月15日に始まり10月15日に終わる31日間」です。

翌1989年9月14日、ブッシュ大統領が初めて「月間」を宣言しました。1968年に決議案に名を連ねた議員が、21年後に大統領として月間を始めたことになります。それから毎年、大統領が宣言を出しています。

🕰️ ヒスパニック文化継承月間の年表

  1. 1810年9月16日メキシコのドロレスで、イダルゴ神父が教会の鐘を鳴らして独立を呼びかける(ドロレスの叫び)。
  2. 1821年9月15日グアテマラシティで中央アメリカの独立宣言が署名される。今の5か国の独立記念日。
  3. 1968年9月17日ジョンソン大統領が署名し、9月15日と16日を含む「全国ヒスパニック文化継承週間」ができる。
  4. 1988年8月17日レーガン大統領が署名し、9月15日〜10月15日の31日間の「月間」に広がる。
  5. 1989年9月14日ブッシュ大統領が初めて「月間」を宣言する。
  6. 2025年7月アメリカのヒスパニック人口が約7,010万人、全人口の21%になる(国勢調査局の推計)。

3「ヒスパニック」と「ラティーノ」の違いは?言葉の意味

ニュースではほぼ同じ意味で使われる「ヒスパニック」と「ラティーノ」。でも、もとの意味は少しずれています。

ヒスパニックは、ローマ時代にイベリア半島を呼んだ「ヒスパニア」から来た言葉で、スペイン語圏につながる人を指します。アメリカ政府の定義は「キューバ、メキシコ、プエルトリコ、中南米、そのほかスペインの文化や出身をもつ人。人種は問わない」。つまり人種ではなく、ルーツを表す言葉です。政府の分類として広まったのは1970年代でした。

ラティーノは「ラテンアメリカの人」を短くした言葉で、言葉の上ではポルトガル語のブラジルも入ります。そこで「ブラジル系の人はラティーノだがヒスパニックではない」「スペイン出身の人はヒスパニックだがラティーノではない」という整理がよく使われます。

ただし、この線引きは人によって揺れます。政府の統計は2つをまとめて「Hispanic or Latino」と呼び、ブラジル系はふつうどちらにも数えません。一方で、アメリカに住むブラジル系の人の中には、自分をヒスパニックやラティーノだと答える人も少なくありません。

近年は、男女の区別をなくした「ラティンクス(Latinx)」という言い方も生まれました。でもピュー・リサーチ・センターの2023年の調査では、この言葉を聞いたことがある人は47%、自分を表すのに使う人はわずか4%。81%は「ヒスパニック」か「ラティーノ」を好むと答えました。どの言葉がいいかは人によって違います。迷ったら、相手に聞くのがいちばんです。

4アメリカでの過ごし方:タマーレス、ププサ、そしてサルサ

国勢調査局によると、2025年7月時点でアメリカに住むヒスパニックは約7,010万人。全人口の21%で、100万人以上が住む州は16あります。いちばん多いのはメキシコ系で全体の57%(約4,000万人、2024年)、次がプエルトリコ系です。プエルトリコの人々は1917年からアメリカ市民なので、本土へ移っても「移民」にはあたりません。ヒスパニック全体でも、移民は3人に1人ほどです。

月間の教室では、1993年にスペースシャトルで宇宙へ行った初のヒスパニック女性エレン・オチョアや、2009年に初のヒスパニック系最高裁判事になったソニア・ソトマイヨールについて学びます。

街ではフェスティバルが開かれ、屋台にはメキシコのタマーレス、エルサルバドルのププサ、ベネズエラやコロンビアのアレパが並びます。ステージで鳴るのは、マリアッチのトランペットや、1970年代のニューヨークでプエルトリコ系やキューバ系の音楽家が広めたサルサ。2026年2月8日の第60回スーパーボウルでは、プエルトリコ出身のバッド・バニーがハーフタイムショーの主役をつとめ、ほぼスペイン語だけで歌いきって大きな話題になりました。

🎁 シンボルと小物

🔔ドロレスの鐘the bell of Dolores

1810年にイダルゴ神父が鳴らした鐘。今もメキシコ大統領が独立記念日の前夜に鳴らす。

🎺マリアッチmariachi

トランペットやバイオリン、ギターで演奏するメキシコの楽団。フェスティバルの定番。

💃サルサsalsa

キューバの音楽をルーツに、1970年代のニューヨークで広まった音楽とダンス。

🌎南北アメリカ大陸the Americas

スペイン語を公用語とする国は、スペインと中南米を中心に約20。月間には各国の国旗が並ぶことも多い。

5日本との関係:メキシコは、アジアの外で初めての「対等な条約」の相手

日本と中南米のつながりは、意外なほど古いものです。1888年11月30日、日本はワシントンでメキシコと修好通商条約を結びました。アジア以外の国と結んだ条約で、治外法権がなく関税も自分で決められる、日本初の対等な条約です。

1899年4月3日には、790人の日本人を乗せた佐倉丸がペルーのカヤオ港に着きました。1908年には781人を乗せた笠戸丸がブラジルのサントス港へ。こうして中南米に日系社会が生まれ、1990年にはペルーで、熊本県出身の両親をもつ日系2世のアルベルト・フジモリが大統領になりました。

同じ1990年、流れは逆向きにもなります。入管法が改正され、日系3世までが、仕事の制限がない「定住者」の資格を得られるようになりました。多くの日系人が、働くために日本へやって来ました。出入国在留管理庁によると、2025年末に日本に住むブラジル国籍の人は約21万人、ペルー国籍の人は約4万9千人です。静岡県浜松市や愛知県豊田市には「ブラジリアンタウン」と呼ばれる地域もあります。スペイン語のペルー、ポルトガル語のブラジル。アメリカの月間で語られる「中南米ルーツ」の物語は、日本の町にもあるのです。

💡Fun Factsヒスパニック文化継承月間の豆知識 6連発

No.1

1988年の法律の文は「31日間」なのに、米国議会図書館などが運営する公式サイトは「30日間」と書いています。9月15日から10月15日までを両端ふくめて数えると、31日です。

The 1988 law says 31 days. But the official website says 30 days.

No.2

1968年の決議案に名を連ねた19人の議員の中に、のちの大統領ジョージ・H・W・ブッシュがいました。1989年、彼は大統領として初めて「月間」を宣言します。

George H. W. Bush supported the week in 1968. In 1989, he was the first president to announce the month.

No.3

最初の決議案には「スペイン系の名字の人々は名誉勲章を受けた割合がいちばん高い」という一文がありました。でも、理由を並べた前置きは、文を短くするためにまるごと削られました。

The first plan had a line about Medal of Honor winners. Later, Congress cut it to make the text short.

No.4

メキシコ大統領が毎年鳴らす鐘は、1810年にイダルゴ神父が鳴らした本物の鐘です。

The bell from 1810 still rings every year in Mexico City.

No.5

2026年2月のスーパーボウルで、プエルトリコ出身のバッド・バニーがハーフタイムショーをほぼスペイン語だけで歌いました。ほぼ全編スペイン語のハーフタイムショーは、これが初めてです。

In 2026, Bad Bunny sang at the Super Bowl almost only in Spanish. It was the first halftime show like that.

No.6

「ラティンクス(Latinx)」を自分を表すのに使うヒスパニックは、2023年の調査でわずか4%でした。

Only 4 percent of Hispanic adults use the word Latinx for themselves.

📚Special Featureもっと深く:ピニャータ特集

▶️Videos & Linksヒスパニック文化継承月間の動画とリンク集

Understanding Hispanic HeritageNBCU Academy

Hispanic Heritage Month | PBS LearningMediaPBS LearningMedia™

What is National Hispanic Heritage Month?Britannica Education

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