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向き不向きはある?適性・性格・不安英語の得意・不得意を分けるのは才能より「不安」だった。97の研究の結論

原田英語6分で読める研究・公式情報 5件第2章の7/7節

向き不向きはある?適性・性格・不安のイメージ

「準備なしで話さなければならないとパニックになる」。スペイン語の入門クラスの大学生75人に聞くと、49%がこの文に当てはまると答えました。英語の授業で当てられそうになると、心臓がどきどきする。それを「英語に向いていない」証拠だと思いこんでいる人もいるはずです。けれど、23か国、約2万人分のデータをまとめた分析が示したのは、別の見方でした。向き不向きを分けているのは、本当に生まれつきの才能なのか。

この節の目次(5項目)
  1. 「向き不向き」を分解する
  2. 言語適性:才能はある。でもそれだけではない
  3. 外国語不安:3つの「こわい」
  4. WTC:話せるかどうかより「話そうとするか」
  5. 日本の学習者は明日から何をするか

01「向き不向き」を分解する

「英語に向いていない」という言葉には、いくつもの意味がまざっています。研究では、学習者の個人差を、たとえば次のように分けて考えます。

個人差中身変えられるか
言語適性言葉を学ぶ速さに関わる力の組み合わせ変えにくい面もある
外国語不安英語を使う場面での緊張・心配経験や工夫で変えられる
話す意欲(WTC)その場で英語を話そうとする気持ち場面によって大きく変わる
動機づけ学ぶ理由と、続ける気持ち目標の立て方で変えられる

このうち「才能」に近いのは言語適性ですが、それ以外の多くは、状況や工夫で変えられるものです。そして、変えられる要因が、英語の伸びに大きく関わっています。

02言語適性:才能はある。でもそれだけではない

言語適性とは、外国語を学ぶ速さや得意さに関わる力のことです。音を聞き分けて覚える力、文の仕組みに気づく力、記憶する力など、いくつかの力の組み合わせとして考えられています。

Li(2016)は、言語適性についての66の研究(109のサンプル、1万3,035人)をまとめるメタ分析を行いました。分かったことは、

  • 適性は、知能とある程度重なるが、知能とは区別できる別の力だった
  • 適性は、動機づけ(やる気)とは別もので、不安とはマイナスの関係にあった
  • 全体的な適性テストは、英語の総合的な力をよく予測した。一方で、語彙の学習や書く力については予測する力が低かった
  • 適性の中のそれぞれの要素は、学習のちがう面を予測していた

というものでした。

つまり、言語適性という個人差は実際にあり、英語の伸びに関係しています。ただし、それは「適性が低い人は学べない」という意味ではありません。適性は主に学ぶ速さや得意な分野のちがいに関わるものです。語彙の学習のように、適性とあまり関係しない分野もあります。自分が苦手な面を知り、そこを補う方法を選べば、適性の差は小さくできます。

03外国語不安:3つの「こわい」

英語の授業で手に汗をかく、当てられそうになると心臓がどきどきする。こうした気持ちに名前をつけたのが、アメリカの研究者エレイン・ホーウィッツです。

Horwitz, Horwitz & Cope(1986)は、外国語の教室で感じる不安を「外国語教室不安」として、ほかの不安とは別のものと考えました。そして、それに関係する3つの不安を挙げています。

  1. コミュニケーション不安:人と話すこと自体への緊張
  2. テスト不安:失敗や評価をこわがる気持ち
  3. 否定的な評価への恐れ:「下手だと思われたくない」という気持ち

3人は、33項目の質問紙(FLCAS)を作り、スペイン語の入門クラスの大学生75人に答えてもらいました。「準備なしで話さなければならないとパニックになる」に49%が当てはまると答え、不安の強い学生は、必要以上に勉強しすぎたり、逆に授業を休んだりすることもあると報告しています。

その後、多くの研究が積み重なりました。Teimouri, Goetze & Plonsky(2019)は、23か国、約2万人(1万9,933人)分のデータをまとめ、外国語の不安と成績のあいだに中くらいのマイナスの関係(r = −.36)があることを示しました。

−.36 という数字をかみくだくと、「不安が強い人ほど成績が低めに出やすいが、不安が強くても成績のよい人も、不安が弱くても成績が伸びない人もいる」くらいの関係です。不安は成績を決める大きな要因の1つですが、それだけですべてが決まるわけではありません。

ただし、これは「関係がある」ということで、どちらが原因かまでは、この数字だけでは決まりません。不安だから伸びないのか、伸びないから不安になるのか。おそらく両方が、ぐるぐると影響しあっています。だからこそ、不安を下げる工夫と、小さな成功を積む工夫を同時に行うのが効果的です。

04WTC:話せるかどうかより「話そうとするか」

カナダの研究者ピーター・マッキンタイアたちは、英語の力があっても話さない人、力は少なくてもどんどん話す人がいることに注目しました。MacIntyre ほか(1998)は、外国語で「その場で話そうとする気持ち」を WTC(Willingness to Communicate:コミュニケーションへの意欲) と呼び、それを左右する要因を整理したモデルを示しました。

このモデルのポイントは、WTCは性格だけで決まる固定したものではなく、時と場面によって大きく変わるという点です。同じ人でも、仲のいい友だちの前と、大勢の前とでは、話そうとする気持ちが違う。マッキンタイアたちは、WTCを高めること自体を、外国語教育の大きな目標にすべきだと提案しています。

日本の学習者についての研究もあります。八島(Yashima, 2002)は、日本人大学生297人を調べ、次のような関係を示しました。

  • 海外や国際的なことへの関心(「国際的志向性」)が高い人ほど、学ぶ意欲が高い
  • 学ぶ意欲は英語の力につながり、さらに英語で話すことへの自信を高める
  • その自信が、話す意欲(WTC)につながる
  • 国際的志向性は、WTCにも直接つながっていた

つまり、「英語で何をしたいか」「どんな人とつながりたいか」という関心が、学ぶ意欲と話す意欲の両方を支えているのです。

この結果は、日本の学習者にとって大きなヒントになります。「英語の成績を上げるため」だけでは、話す意欲はなかなか育ちません。海外のスポーツ選手のインタビューを聞きたい、好きなゲームの海外の話題を読みたい、いつか外国から来た人を案内したい。こうした英語の先にある目的を1つ持つことが、遠回りに見えて、話す意欲への近道になります。

試してみよう:英語の先にあるものを書き出す

ノートに次の3つを書いてみてください。

  1. 英語ができたら、だれと話してみたいか
  2. 英語で読んだり見たりしたいものは何か
  3. 5年後、英語を使っている自分はどこで何をしているか

書いた答えに関係する英語の素材を1つ選び、毎日の学習に入れます。

05日本の学習者は明日から何をするか

不安を下げる5つの工夫

  1. 準備してから話す:言いたいことを3文だけ書いてから話す。「準備なし」が不安の大きな原因でした
  2. 小さな場面から:一人で録音 → 家族の前 → 先生と1対1 → グループ、と段階を上げる
  3. 評価されない練習を増やす:独り言や日記など、だれにも採点されない練習で量をこなす
  4. 伝わったかどうかで判断する:「文法が完璧だったか」ではなく「意味が伝わったか」を基準にする
  5. うまくいったことを記録する:「今日は1回質問できた」など、小さな成功を書き残す

話す意欲(WTC)を上げる工夫

  • 話したい内容を持つ:好きなこと、得意なことについて英語で話せる「持ちネタ」を3つ作る
  • 英語の先にあるものを見る:海外のニュース、好きな作品、将来の夢など、英語でつながりたいものをはっきりさせる
  • 話しやすい相手と場面を選ぶ:安心できる先生、少人数のクラスなどから始める

考える時間をかせぐフレーズ

頭が真っ白になりそうなときは、すぐに答えなくてもかまいません。次のような「つなぎ」を使えば、考える時間がつくれます。

  • Let me think for a second.(ちょっと考えさせてください)
  • That's a good question.(いい質問ですね)
  • How can I put it ...?(どう言えばいいかな…)
  • Could you give me a moment?(少し時間をもらえますか)

決まったフレーズを持っておくだけで、「黙ってしまったらどうしよう」という不安が小さくなります。

適性の差を補う工夫

  • 音の聞き分けが苦手なら、ディクテーションや発音練習を多めに
  • 文法に気づくのが苦手なら、説明つきの教材を使う
  • 記憶が苦手なら、間隔をあけたくり返し(間隔反復)を使う

なお、中高生が見知らぬ外国人と話すためにSNSや言語交換アプリを使うのは、年齢制限があり、トラブルの心配もあります。話す相手は、学校の先生や ALT、保護者が確認した教室など、安心できるところから選んでください。

この節の答え

向き不向きは「変えられない才能」より「変えられる状態」が大きい

今日からのやり方

  1. 英語を使う場面で、自分がいちばん不安になる場面を1つ書き出す
  2. その場面で言いたいことを、前もって英語で3文書いておく
  3. 一人で録音→家族の前→先生と1対1の順に、話す場面を少しずつ広げる
  4. 好きなことについて英語で話せる「持ちネタ」を3つ作る
  5. うまくいったことを毎日1行記録し、週末に読み返す

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

話す前に言うことを書いておくだけで、不安はぐっと下がります。まずは一人で録音する、教科書の文を家族の前で読む、など評価されない場面で声を出す回数を増やしましょう。

中級 B1

自分の不安が「話すこと」「テスト」「人の評価」のどれに近いかを見きわめ、それに合った対策を。好きな話題の持ちネタを作り、少人数の場面で使ってみます。

上級 B2〜

力はあるのに話さない、という状態なら WTC の問題かもしれません。完璧を求めず「伝わったか」を基準に。意見を述べる場面を自分から週1回つくりましょう。

よくある失敗と対策

「向いていない」と決めつけてやめる

適性は学ぶ速さや得意分野の差に関わるもので、学べるかどうかを決めるものではありません。苦手な面を補う方法を選べば差は小さくできます。

準備なしでいきなり大勢の前で話そうとする

準備なしで話す場面は、不安を強めやすい場面です。言うことを書いておく、小さな場面から始めるなど、段階をつけましょう。

文法の正確さだけで自分を評価する

完璧さだけを基準にすると、否定的な評価への恐れが強まります。「意味が伝わったか」を基準にすると、話す意欲を保ちやすくなります。

TODAY
1 MIN

明日英語で言いたいことを3文、今のうちにノートに書いておく

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

2-7英語の授業で不安を感じるのは、少数派?

Horwitz ほか(1986)が大学生75人に調べると、「準備なしで話さなければならないとパニックになる」に49%が当てはまると答えました。英語の不安は、ごく一部の人の問題ではありません。

X で出題する

2-7不安と英語の成績は、どのくらい関係している?

約2万人分のデータをまとめた Teimouri ほか(2019)では、外国語の不安と成績のあいだに中くらいのマイナスの相関(r = −.36)がありました。不安が高い人ほど、成績が低い傾向です。

X で出題する

2-7英語が上手でも、話したがらない人がいる?

MacIntyre ほか(1998)は、言語の力が高いのに話すのを避ける人もいれば、少ない知識でどんどん話す人もいると指摘しました。話す意欲(WTC)は、力とは別のものとして考える必要があります。

X で出題する

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PRACTICE KIT

この節の実践キット

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使えるサイト・アプリ

動画で学ぶ

内向型の人が持つ静かな力TED|The power of introverts | Susan Cain | TED
本番で落ち着くためのコツTED-Ed|How to stay calm under pressure - Noa Kageyama and Pen-Pen Chen
自信を持って英語を話すテクニックOxford Online English|5 Techniques to Speak English with Confidence - Speak English Confidently

もっと詳しく(コラム)

この節の根拠(研究・公式情報)

外国語教室不安を独自の不安として示し、コミュニケーション不安・テスト不安・否定的評価への恐れとの関係を整理。33項目のFLCASを作り、大学生75人では49%が準備なしの発話でパニックになると答えた。

Horwitz, E. K., Horwitz, M. B., & Cope, J. (1986). Foreign language classroom anxiety. The Modern Language Journal, 70(2), 125–132.出典を開く ↗

23か国・105サンプル・1万9,933人をまとめ、外国語の不安と成績の相関は平均 r = −.36。測り方、教育段階、言語などで関係の強さは変わった。

Teimouri, Y., Goetze, J., & Plonsky, L. (2019). Second language anxiety and achievement: A meta-analysis. Studies in Second Language Acquisition, 41(2), 363–387.出典を開く ↗

外国語で話そうとする意欲(WTC)を左右する要因をモデル化。力があっても話さない人がいること、WTCは時や場面で変わることを示し、WTCを教育の目標にすべきと提案した。

MacIntyre, P. D., Clément, R., Dörnyei, Z., & Noels, K. A. (1998). Conceptualizing willingness to communicate in a L2: A situational model of L2 confidence and affiliation. The Modern Language Journal, 82(4), 545–562.出典を開く ↗

日本人大学生297人の分析で、国際的志向性が動機づけを通じて英語力に、動機づけが英語で話す自信を通じてWTCにつながった。国際的志向性からWTCへの直接の経路もあった。

Yashima, T. (2002). Willingness to communicate in a second language: The Japanese EFL context. The Modern Language Journal, 86(1), 54–66.出典を開く ↗

66研究・1万3,035人をまとめ、言語適性は知能と重なるが区別でき、動機づけとは別もので、総合的な英語力をよく予測した。語彙学習や書く力への予測力は低かった。

Li, S. (2016). The construct validity of language aptitude: A meta-analysis. Studies in Second Language Acquisition, 38(4), 801–842.出典を開く ↗

よくある質問

内向的な性格だと英語は伸びにくいですか?

性格だけで英語の伸びが決まるという確かな根拠はありません。話す意欲(WTC)は場面で大きく変わるので、少人数や1対1、書く・録音するなど、自分が力を出しやすい場面を選んで練習すれば十分に伸ばせます。

英語の授業で当てられるのが怖いです。

多くの人が同じ不安を感じています。授業の前に、答えそうなことを英語で1〜2文書いておくだけでも、気持ちが楽になります。先生に「少し考える時間がほしい」と伝えるのも一つの方法です。

自分の言語適性を調べる方法はありますか?

研究用の適性テストはありますが、一般の学習者が受ける必要はあまりありません。それより、音・文法・記憶のどこでつまずきやすいかを自分で観察し、苦手な面を補う練習を選ぶほうが役に立ちます。