第8章|リーディング8-6ニュース・ウェブ記事で読む英語ニュースは「日本語で知っている話題」から読むと、急に読めるようになる

Two Climbers Rescued on Mount Fuji. この見出しを「登山者2人が富士山で救助した」と読むと、意味が逆になります。英語ニュースの見出しには、ふつうの文とは違う決まりがあるからです。しかも、ネイティブ向けの英文を辞書なしで読むには8,000〜9,000語族の語彙が要る、という見積もりもあります。英字新聞は、やはり遠い存在なのか。どこから読み始めれば、本物の記事にたどり着けるのでしょうか。
01ニュースは「同じ話題」がくり返し出てくる
ニュースが読む練習に向いている最大の理由は、同じ話題が何日も、何本もの記事でくり返されることです。
選挙、台風、新しい技術、スポーツの大会。ひとつの出来事が続くあいだ、関係する単語や言い回しは毎日のように出てきます。たとえば台風のニュースなら、次のような語が何度も登場します。
- The storm is expected to make landfall on Friday.(嵐は金曜日に上陸する見込みだ)
- Thousands of residents were told to evacuate.(数千人の住民に避難の指示が出た)
多読の節で見たように、Waring & Takaki(2003)の研究では、本の中で8回未満しか出会わなかった語は3か月後に意味を思い出せませんでした。新しい語を身につけるには、何度も出会うことが欠かせません。同じテーマの記事を続けて読むと、この「何度も出会う」が自然に起こります。同じテーマを読み重ねるこの方法は、ナロー・リーディングとも呼ばれます。
もうひとつの強みは、日本語ですでに知っている話題を選べることです。内容をおおよそ知っていれば、知らない語が出てきても前後から意味を推測しやすくなります。日本のニュースを英語で読むと、背景知識があるぶん、同じ難しさの英文でもぐっと読みやすく感じられます。
02本物のニュースへの3段階
いきなり英語圏の新聞サイトを開くと、たいてい挫折します。Schmitt ほか(2011)が紹介しているように、Paul Nation はネイティブ向けの英文を辞書なしで読むには8,000〜9,000語族が必要だと見積もりました。学校で習う語彙との差はかなり大きいので、段階を踏んで近づきます。
| 段階 | 素材の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1. やさしい版 | News in Levels、Breaking News English、News for Kids | 学習者や子ども向けに、短く、やさしく書き直したニュース |
| 2. 背景を知っている話題 | NHK WORLD-JAPAN(日本のニュースを英語で)、Engoo Daily News | 学習者向け、または日本の話題で背景知識が使える |
| 3. 本物 | The Conversation、英語圏の新聞・放送局のサイト | ネイティブ向け。語彙も話題も制限なし |
段階1の主な素材を、公式サイトで確かめた内容で紹介します。
- Breaking News English:Sean Banville さんが2004年から続けている無料のサイト。やさしいニュースは Level 0〜3、難しめのニュースは Level 4〜6 で書き分けられ、Level 0 は約120語。音声、読む速さの練習、ディクテーションなどの活動もついています
- News in Levels:同じ話題を3つのレベルで読めるサイト。レベル1は知っている語が1〜1,000語、レベル2は1,000〜2,000語、レベル3は2,000〜3,000語の人向けです。音声つきで、毎日の記事を読む使い方を勧めています
- News for Kids:子どもや学生向けに書かれたニュースサイト。記事には対象年齢の目安がついています
段階3の入口として扱いやすいのが The Conversation です。大学などの研究者が、編集者と一緒に一般の読者向けに書く解説記事で、無料で読めます。研究者が専門分野について書くので、話題が整理されていて論理を追いやすいのが特長です。
03見出しの文法を知る
英語ニュースで最初につまずくのが見出しです。見出しには、ふつうの文とは違う決まりがあります。代表的なものを、自作の例で見てみます。
1. 過去の出来事も現在形
- Mayor Visits Flood-Hit Town(市長が洪水被害の町を訪問)
→ 実際には「訪問した」という過去の出来事。見出しでは臨場感を出すために現在形を使います。
2. 未来は to+動詞
- City to Open New Library in Spring(市が春に新しい図書館を開館へ)
→ is to open の is が省かれた形で、「〜する予定」を表します。
3. 受け身は過去分詞だけ
- Two Climbers Rescued on Mount Fuji(富士山で登山者2人が救助される)
→ were rescued の were が省かれています。過去形と見間違えやすいので注意。
4. 冠詞や be動詞を省く
- Rain Delays Final Match(雨で決勝戦が延期)
→ The rain delays the final match. から a / the を省いた形です。
5. 言いかえの記号
コロン(:)は「〜が言った」、カンマは and の代わりに使われることがあります。
この5つを知っているだけで、見出しの「意味がわからない」はかなり減ります。
04記事は「大事なことから」書かれている
ニュース記事の多くは、いちばん大事な情報を最初に書き、後ろへ行くほど細かい情報になる組み立てで書かれています。逆三角形の形と呼ばれる書き方です。
最初の段落(リードと呼ばれます)には、たいてい「だれが・何を・いつ・どこで」がまとまっています。
- A high school team from Osaka won the national robot contest in Tokyo on Sunday.(大阪の高校のチームが、日曜日に東京で開かれた全国ロボットコンテストで優勝した)
この1文だけで、ニュースの骨組みはわかります。2段落目以降は、どうやって勝ったか、関係者のコメント、背景などが続きます。
この組み立てを知っていると、読み方を工夫できます。
- 見出しと最初の段落だけ読む:これでニュースの中心がわかる
- 続きを読むか決める:興味があれば全文、なければ次の記事へ
- 引用の部分に注目する:said や according to のあとには、関係者の意見や見方が入る。事実と意見を分けて読む練習になる
すべての記事を最後まで精読する必要はありません。毎日たくさんの見出しとリードにふれるだけでも、時事の語彙は確実に増えていきます。
051日15分のニュース読みメニュー
毎日続けやすい形を紹介します。
- 話題を選ぶ(1分):今日、日本語のニュースで見た話題を1つ選ぶ
- やさしい版で読む(5分):その話題が学習者向けのサイトにあれば、まずそこで読む。なければ日本の話題を英語で伝えるニュースで探す
- 見出しとリードを確かめる(2分):見出しの文法を意識し、最初の段落で「だれが何を」をつかむ
- フレーズを3つ集める(4分):記事から使えそうな言い回しを3つだけ選び、例文ごとノートや単語アプリに入れる
- 一言でまとめる(3分):記事の内容を英語1〜2文で書く。言えなかった語は次の日に探す
慣れてきたら、同じ話題をレベルの違う2つのサイトで読み比べてみましょう。やさしい版で内容をつかんでから本物の記事を読むと、難しい記事でも意外なほど読めることに気づきます。
ニュースを読むときの注意も2つ書いておきます。ひとつは、事実と意見を分けることです。とくに解説記事やコラムは、書き手の見方が入ります。もうひとつは、翻訳機能に頼りすぎないことです。英文の下に日本語訳を出す便利なツールもありますが、最初から訳を見ると英語を読む練習になりません。まず英語で読み、確かめたいところだけ訳を見る順番にしましょう。中高生は、ニュースの感想をSNSに投稿するより、ノートや英語日記に書くほうが安心です。
やさしい版→学習者向け→本物の順に、知っている話題から読む
今日からのやり方
- 日本語のニュースで知った話題を1つ選ぶ
- 学習者向けのレベル別ニュースで、その話題をやさしい版で読む
- 見出しの文法を確かめ、最初の段落で「だれが何をしたか」をつかむ
- 使えそうな言い回しを3つ選び、例文ごと記録する
- 記事の内容を英語1〜2文でまとめる
レベル別:あなたならこうする
News in Levels のレベル1や Breaking News English のやさしいレベルから。見出しと最初の数文だけでよいので、毎日1本読んで音声も聞く。
同じ話題をやさしい版と学習者向けの記事で読み比べる。日本のニュースを英語で読み、見出しの文法と時事の語彙を集める。
The Conversation や英語圏のニュースサイトで、同じテーマの記事を数日続けて読む。事実と意見を分け、記事の要点を英語で要約する。
よくある失敗と対策
語彙の差が大きく、辞書を引くだけで終わりがちです。まずレベル別のニュースで読み慣れ、段階を踏んで本物へ移りましょう。
背景知識がないと、英語力以上に難しく感じます。日本語ですでに知っている話題から読むと、推測が効いて読み進めやすくなります。
訳を先に見ると、英語を読む練習になりません。まず英語で読み、どうしてもわからない部分だけ訳で確かめる順番にしてください。
1 MIN
今日見たニュースの話題を、News in Levels か Breaking News English で探す
友だちに出したい、この節の3問
タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。
8-6英字新聞の見出しは、なぜ過去のことも現在形?
見出しには、終わった出来事も現在形で書き、未来の予定は to+動詞で表し、冠詞や be動詞は省くという独特の書き方があります。短く、今起きているように伝えるためです。
8-6ネイティブ向けの英語ニュースを辞書なしで読むには、何語必要?
Paul Nation は、ネイティブ向けの英文を辞書なしで読むには8,000〜9,000語族が必要だと見積もりました。学習者向けのニュースサイトがあるのは、この差を埋めるためです。
8-6同じ英語ニュースをレベル違いで読めるサイトはある?
Breaking News English は、ひとつのニュースを複数のやさしさで書き分け、音声やクイズもつけています。News in Levels は、知っている語の数に合わせた3つのレベルで同じ話題を読めます。
PRACTICE KIT
この節の実践キット
このサイトで練習する
原田英語のサイトで練習する
使えるサイト・アプリ
動画で学ぶ
もっと詳しく(コラム)
この節の根拠(研究・公式情報)
既知語の割合と理解はほぼ直線的な関係と報告。序論で、ネイティブ向けの英文には8,000〜9,000語族が必要という Nation の見積もりを紹介。
Schmitt, N., Jiang, X., & Grabe, W. (2011). The percentage of words known in a text and reading comprehension. The Modern Language Journal, 95(1), 26–43.出典を開く ↗本1冊の多読で、8回未満しか出会わなかった語は3か月後に意味を思い出せなかった。同じ語に何度も出会う必要があることを示した。
Waring, R., & Takaki, M. (2003). At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader? Reading in a Foreign Language, 15(2), 130–163.出典を開く ↗Breaking News English はやさしいニュースを Level 0〜3、難しめを Level 4〜6 で提供し、音声やクイズなどの活動もつける無料サイト(公式情報)。
Breaking News English(Sean Banville)公式サイト出典を開く ↗News in Levels は知っている語が1〜1,000語、1,000〜2,000語、2,000〜3,000語の3レベルで同じ話題を読めるサイト(公式情報)。
News in Levels 公式サイト出典を開く ↗よくある質問
VOA Learning English は使えますか?
ゆっくりした英語のニュースとして長く使われてきましたが、更新が止まっているため、英語大全では最新ニュースの素材としてはすすめていません。過去の記事は読み物として使えます。
英字新聞を紙で取るべきですか?
必須ではありません。無料のウェブサイトで、レベル別のニュースから本物の記事まで十分に読めます。紙の新聞は、毎日決まった量を読む習慣づくりに役立つと感じる人向けの選択肢です。
ニュースの単語は試験に役立ちますか?
英検やTOEIC、大学入試の長文には社会や科学の話題がよく出るので、時事の語彙は役立ちます。ただ、試験対策の単語学習の代わりにはならないので、両方を組み合わせてください。




