学習指導要領(外国語・英語)を超かみ砕く ― 小・中・高で何を目指すのか
5つの領域、3つの柱、語数、高校の新科目、「授業は英語で」。分厚い学習指導要領と解説から、英語の先生が押さえておきたい要点を、小・中・高の流れでまとめました。
エビデンスの強さ:国の教育課程の基準とその公式解説を整理したページ。効果を測る対象ではない。数字や規定は文部科学省の解説で確認した。

- 領域の目標で、小・中・高がつながっている。 小3・4は3領域、小5〜高校は聞く・読む・話す[やり取り]・話す[発表]・書くの5領域で、目標が段階的に高くなるよう設計されています。
- 語数は「上限」ではなく「目安」。 中学校の1,600〜1,800語の「1,800」は、ここまでで止めろという意味ではありません。
- 「授業は英語で」は「日本語禁止」ではない。 英語にふれる機会と、本物のコミュニケーションの場にすることが目的です。
学習指導要領ってなに?
ひとことで言うと、学習指導要領は「英語の授業で、どんな力を、どの段階まで育てるか」を国(文部科学省)が示した、全国共通の基準です。
学習指導要領は、全国どこの学校でも一定の水準の教育が受けられるように、国(文部科学省)が教科ごとの目標や内容を示した基準です。本体は短く、それをくわしく説明した解説(外国語編など)が別に出ています。この記事は、おもに解説で確かめた内容です。
| 校種 | 告示 | 全面実施 | 英語の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 小学校 | 2017年3月 | 2020年度 | 3・4年「外国語活動」、5・6年「外国語」(教科) |
| 中学校 | 2017年3月 | 2021年度 | 「外国語」(英語) |
| 高等学校 | 2018年3月 | 2022年度の入学生から学年進行 | 英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ、論理・表現Ⅰ〜Ⅲ |
学習指導要領は「登山の地図」です。山頂(高校卒業時の姿)と、途中の山小屋(小学校・中学校の到達点)は決まっていますが、どの道を、どのペースで登るか(教科書・授業の方法)は、学校と先生にまかされています。解説は、地図についている「歩き方ガイド」にあたります。
似たものとのちがい
| 何が書いてある? | 誰が決める? | |
|---|---|---|
| 学習指導要領 | 教科の目標と内容(英語なら5領域の目標など)。本体は短い | 国(文部科学省) |
| 解説(外国語編など) | 学習指導要領の一つ一つの言葉の意味を、くわしく説明したもの | 国(文部科学省) |
| 教科書・授業の方法 | どの道を、どのペースで登るか | 教科書会社・学校・先生 |
| CAN-DO形式の学習到達目標 | 学年ごとの目標(たとえば中学校の学習指導要領の目標は3年間を通したもので、学年ごとには書かれていない) | 各学校 |
このページでわかること3つ
- 3つのキーワード:3つの柱(資質・能力)、5つの領域、小・中・高で一貫した目標。
- 校種ごとのポイント:小学校・中学校・高校の授業時数、語数、科目の構成。
- よく誤解される3つのこと:「授業は英語で」は日本語禁止ではない、文法は必要に応じて教える、学年ごとの目標は学校が決める。
いちばん大事な3つのキーワード
1. 3つの柱(資質・能力)
すべての教科の目標が、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱で整理されました。外国語では、語彙や文法をどれだけ覚えたかだけでなく、それを実際のコミュニケーションで使い、考えて表現することをくり返す中で力が育つ、という考え方です 3。評価の3観点(知識・技能/思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度)は、この3つの柱を踏まえて整理されています 456。ただし「学びに向かう力、人間性等」のすべてを評定するわけではありません。観点別評価で評価できる部分が「主体的に学習に取り組む態度」で、感性や思いやりのように観点別評価になじまない部分は、個人内評価(その生徒自身のよさや進歩を見る評価)で評価します 5。
2. 5つの領域
英語の目標は、国際的な基準であるCEFR(ヨーロッパ共通参照枠)を参考に、聞くこと・読むこと・話すこと[やり取り]・話すこと[発表]・書くことの5領域で示されています 3。「話すこと」が2つに分かれたのは、何人かで交互に話す場合と、1人で続けて話す場合では性質が違うからです 3。
解説は、これまでの英語の授業は「発表」の形が強調されがちだったとして、「やり取り」の領域ができた意義は大きいと述べています 3。
3. 小・中・高で一貫した目標
目標の中心にある言葉を並べると、段階が見えてきます。
| 段階 | 目標の中心 |
|---|---|
| 小3・4(外国語活動) | コミュニケーションを図る素地となる資質・能力(聞く・話す[やり取り]・話す[発表]の3領域) |
| 小5・6(外国語) | コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力(5領域) |
| 中学校 | 簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりする資質・能力 |
| 高等学校 | 情報や考えなどを的確に理解したり適切に表現したり伝え合ったりする資質・能力 |
校種ごとのポイント
小学校
- 3・4年の外国語活動は2年間で計70単位時間、5・6年の外国語は2年間で計140単位時間、合わせて210単位時間です 1。
- 5・6年で扱う語は、3・4年で扱った語を含めて600〜700語程度です。これは覚えて使いこなす語(発信語彙)と、聞いたり読んだりしてわかればよい語(受容語彙)の両方を含んだ数です 1。
- 読むこと・書くことは、音声で十分に慣れ親しんだ語句や表現が対象です 1。中学校のように初見の英文を読み書きさせるわけではありません。
中学校
- 標準授業時数は各学年140単位時間です(50分を1単位時間として算定し、年35週で割るとおおむね週4時間)3。実際の授業1回の長さは、年間の授業時数を確保したうえで各学校が適切に定めることになっています 7。
- 新しく学ぶ語は、小学校の語に加えて1,600〜1,800語程度(改訂前は1,200語程度)。「1,600」は下限、「1,800」は指導で扱う目安で、1,800語を上限とする趣旨ではないと明記されています 3。
- 文法では、感嘆文のうち基本的なもの、現在完了進行形、仮定法のうち基本的なものなどが加わりました 3。
- 中学校でも「授業は英語で行うことを基本とする」が新しく規定されました(高校は2009年改訂から)3。
高等学校
科目の構成が大きく変わりました 2。
| 科目 | 標準単位数 | どんな科目? |
|---|---|---|
| 英語コミュニケーションⅠ | 3 | 英語を履修する全員が学ぶ必履修科目。5領域を統合的に |
| 英語コミュニケーションⅡ | 4 | Ⅰのあと選択。5領域を発展的に |
| 英語コミュニケーションⅢ | 4 | Ⅱのあと選択。生涯の自律的な学習につながるように |
| 論理・表現Ⅰ | 2 | 話す[やり取り]・話す[発表]・書くを中心に、スピーチ・ディベート・1段落を書くなど |
| 論理・表現Ⅱ | 2 | 複数の段落の文章など |
| 論理・表現Ⅲ | 2 | 聞き手・読み手を説得できるよう論理を工夫 |
語数は、英語コミュニケーションⅠで小・中の語に400〜600語程度、Ⅱでさらに700〜950語程度、Ⅲでさらに700〜950語程度を加えます。中学校修了までに2,200〜2,500語程度を学んでいる計算になる、と解説は説明しています 2。
| 段階 | 新しく加える語 | 累計の目安 |
|---|---|---|
| 小学校 | 600〜700語程度 | 600〜700語 |
| 中学校 | 1,600〜1,800語程度 | 2,200〜2,500語 |
| 英語コミュニケーションⅠ | 400〜600語程度 | 2,600〜3,100語 |
| 英語コミュニケーションⅡ | 700〜950語程度 | 3,300〜4,050語 |
| 英語コミュニケーションⅢ | 700〜950語程度 | 4,000〜5,000語 |
| 累計は解説の数字を足し算したものです 2。Ⅱ・Ⅲは選択科目なので、全員がこの数に達するわけではありません。 |
よく誤解される3つのこと
誤解1:「授業は英語で」=日本語禁止
解説は、ねらいを「生徒が英語にふれる機会を最大限に確保すること」と「授業を実際のコミュニケーションの場面とすること」と説明し、その趣旨の授業展開であれば、必要に応じて補助的に日本語を用いることも考えられるとしています 3。一方で、単に指導言語を日本語から英語に置きかえれば済むという誤解も戒めています 3。くわしくは 英語の授業は英語で? を参照してください。
誤解2:「文法は教えなくていい」
中学校の指導計画の配慮事項には、言語活動を行う際、言語材料について理解したり練習したりするための指導を必要に応じて行うことが書かれています 3。ただし、練習そのものが目的にならないよう、目的や場面を意識させることも求めています。
誤解3:「学年ごとの目標が書いてある」
中学校の英語の目標は、3年間を通した5領域の目標で、学年ごとには示されていません。学年ごとの目標は各学校が決めることになっていて、それがCAN-DO形式の学習到達目標です 35。作り方は 目標・評価規準・CAN-DOリストの書き方 で解説しています。
明日の授業でこうする
- 自分の校種の「5領域の目標」を1枚にする。 中学校なら各領域ア・イ・ウの3つ、計15個です。話すこと・書くことの3領域は、ア=関心のある事柄(話すことでは「即興で」)、イ=日常的な話題、ウ=社会的な話題、という並びになっているので、表にすると流れが見えます 3。
- 今の単元が、どの領域のどの目標につながるかを書く。 指導案の「単元の目標」に、その言葉を入れます。
- 1学期に1回、5領域のバランスを点検する。 評価が「読むこと」と「書くこと」(の一部)だけに偏っていないか、年間の評価計画で確かめます。
目標は、ア「日常的な話題について、必要な情報を読み取る」、イ「日常的な話題について、概要を捉える」、ウ「社会的な話題について、要点を捉える」の3つです 3。読む目的だけでなく、話題(日常的か社会的か)もちがいます。
- ア:ポスターを読んで「何時にどこへ行けばいい?」(必要な情報)
- イ:物語を読んで「この話を3文でまとめると?」(概要)
- ウ:環境問題など社会的な話題の説明文を読んで「筆者がいちばん言いたいことは?」(要点)
どの目標をねらうかによって、発問だけでなく、教材の話題も合わせて選ぶのがポイントです。
❓ よくある質問
Q. 英語の5領域とは何ですか?
聞くこと・読むこと・話すこと[やり取り]・話すこと[発表]・書くことの5つです。CEFRを参考に設定され、「話すこと」は交互に話す場合と1人で続けて話す場合で性質が違うため2つに分かれています 3。小3・4の外国語活動は、聞くこと・話すこと[やり取り]・話すこと[発表]の3領域です。
Q. 中学校で学ぶ単語は何語ですか?
小学校の語に加えて1,600〜1,800語程度です。「1,600」は下限、「1,800」は指導で扱う目安で、1,800語を上限とする趣旨ではありません 3。小学校は600〜700語程度で、中学校修了までに2,200〜2,500語程度を学ぶ計算です 2。
Q. 「授業は英語で行うことを基本とする」は日本語禁止ですか?
いいえ。解説はねらいを、生徒が英語にふれる機会を最大限に確保することと、授業を実際のコミュニケーションの場面とすることと説明し、その趣旨の授業であれば必要に応じて補助的に日本語を用いることも考えられるとしています 3。
Q. 高校の英語の科目はどうなっていますか?
英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲと論理・表現Ⅰ〜Ⅲです。英語コミュニケーションⅠ(標準3単位)は英語を履修する全員が学ぶ必履修科目で、5領域を統合的に扱います。論理・表現は話すこと[やり取り]・[発表]・書くことが中心で、スピーチやディベート、段落を書く活動などを行います 2。
Q. 中学校の学年ごとの目標は学習指導要領に書いてありますか?
書いてありません。中学校の英語の目標は3年間を通した5領域の目標で、学年ごとの目標は各学校が決めることになっています。それがCAN-DO形式の学習到達目標です 35。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モードCEFR の「参照」と日本の5領域
解説は、CEFR を「言語を用いて何ができるか」を示す国際的な基準として紹介し、受容・やり取り・産出という活動の区分を参照して5領域を設定したと説明しています 3。ただし、日本の学習指導要領は CEFR の6段階の能力記述をそのまま採用したわけではありません。領域別の目標は「日常的な話題/社会的な話題」「必要な情報/概要/要点」といった軸で段階づけられ、各学校のCAN-DO形式の学習到達目標を通じて具体化される構造です 3。
この構造は、国の基準を抽象度の高い目標にとどめ、具体的な到達目標を学校レベルにゆだねる「分権的」な設計とも言えます。その反面、学校間で到達目標の水準がばらつくおそれもあり、評価の妥当性・比較可能性をどう担保するかは研究上も実践上も課題として残ります。
🎓院生モード「資質・能力」と観点別評価の接続
2017・2018年の改訂は、目標を3つの柱で書き、評価の3観点をそれを踏まえて整理することで(「学びに向かう力、人間性等」のうち観点別評価になじまない部分は個人内評価に回す 5)、「目標→指導→評価」を制度として一体化しようとしたものです。国研の参考資料は、外国語科では学年ごとの目標を5領域ごとに1文の能力記述文で示し、それに対応する評価規準は3観点で書くという二重の構造を示しています 5。
国研の資料は、「主体的に学習に取り組む態度」を、粘り強さと学習の自己調整という2つの側面で評価するとしています 5。これは自己調整学習の理論に近い考え方ですが、それを教師の観察やワークシートの記述でどこまで妥当に評価できるかは、実践と研究の両面で検討を続ける必要がある課題だと筆者は考えます。
🎁 玉手箱で使えるツール
原田英語の「英語の先生の玉手箱」の無料ツール。登録なしで授業にそのまま使えます。
📑 出典(7件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2017). 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済小学校の外国語活動(3・4年)と外国語科(5・6年)の目標・内容・語数・文字の扱いを説明した公式の解説
- 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 公式ページ ✔ リンク確認済高校の科目構成(英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ・論理・表現Ⅰ〜Ⅲ)、「支援」の考え方、語数、授業は英語での趣旨を説明した公式の解説
- 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語科の目標(5領域)・言語材料(語数・文法事項)・指導計画の作成(授業は英語で行うことを基本とする等)を説明した公式の解説
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2020). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校 外国語・外国語活動 公式ページ ✔ リンク確認済小学校外国語・外国語活動の評価規準と評価事例を示した国研の参考資料
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2020). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語の3観点の評価規準の作り方・単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2021). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 高等学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済高校外国語の評価規準と単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示) 公式ページ ✔ リンク確認済中学校の学習指導要領。外国語科の目標(5領域)・言語材料・指導計画の作成と内容の取扱いを示している
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら








