中学校学習指導要領(外国語・英語)を超かみ砕く ― 目標・5領域・語数・文法・「授業は英語で」
中学校の英語で「何を」「どこまで」「どう」教えるのか。告示本文と解説(外国語編)を1行ずつ読み、5領域の目標、言語活動の例、1,600〜1,800語と追加された文法事項、指導計画の配慮事項を、授業の具体例つきで整理しました。
エビデンスの強さ:国の教育課程の基準(告示)とその公式解説・国研の評価資料を整理したページ。効果を測る対象ではない。条文の位置と解説のページは校閲記録に記録した。

- 目標は「5領域×ア・イ・ウ」の15個。 3年間を通した目標なので、学年ごとの目標(CAN-DO)は各学校が決めます。
- 語数は「下限1,600・目安1,800」。 全部を話せる・書けるようにする数ではなく、受容語彙と発信語彙を分けて考えます。
- 「やり取り」「即興」「英語で授業」の3つが授業づくりの柱。 ただし最初から流暢さと正確さを求めすぎないこと、日本語の補助的な使用も認められていることが解説に書かれています。
中学校の学習指導要領ってなに?
ひとことで言うと、中学校の3年間で英語の「聞く・読む・話す(やり取り・発表)・書く」の5つの力をどこまで育てるかを、国が15個の目標で示した基準です。
学習指導要領は、全国どこでも一定の水準の教育ができるように国が定めた基準です。中学校の外国語は「第2章 第9節 外国語」に数ページだけ書かれていて(これが告示本文)、その意味を150ページほどかけて説明したのが解説(外国語編)です。このページは、両方を開いて確かめた内容をまとめています。小・中・高の全体像は 学習指導要領を超かみ砕く にあるので、ここでは中学校だけを細かく見ます。
| 項目 | 中学校(平成29年告示) |
|---|---|
| 全面実施 | 2021年度(令和3年度) |
| 授業時数 | 各学年 年140単位時間(1単位時間は50分) |
| 領域 | 聞くこと・読むこと・話すこと[やり取り]・話すこと[発表]・書くこと |
| 新しく学ぶ語 | 小学校の語に加えて1,600〜1,800語程度 |
| 授業の言語 | 授業は英語で行うことを基本とする(中学校では新規) |
(実施時期は 1、授業時数は同書付録の学校教育法施行規則 1、領域・語数・英語での授業は 1 で確認。)
告示本文は「料理のレシピの材料と完成写真」、解説は「プロの料理人のコメントつき手順書」です。材料表(言語材料)だけ見ても、完成写真(5領域の目標)だけ見ても、おいしい料理にはなりません。解説には「この火加減で」「ここは焦がさないで」にあたる注意が、ページの端までぎっしり書かれています。
告示本文・解説・CAN-DOのちがい
| 何が書いてある? | 量・決める人 | |
|---|---|---|
| 告示本文 | 目標(5領域×ア・イ・ウの15個)、言語材料、指導計画の作成と内容の取扱い | 数ページ。国が定める |
| 解説(外国語編) | 告示本文の言葉の意味と、授業での注意 | 150ページほど。国が出す |
| 学年ごとの目標(CAN-DO) | 3年間の目標を、学年ごとに具体化したもの | 各学校が決める |
授業に生かす3ステップ
- 15個の目標から1〜2個を選ぶ:たとえば「話すこと[やり取り]イ」と「書くことイ」。単元の目標の文に、その言葉を入れる。
- 単元末の課題を先に決める:目的・場面・相手が見える課題にする。
- 毎時間に「即興」の5分を入れる:1分チャットを相手を替えて2回。単元末のテストは、使う文法を指定しない課題にする。
目標を読む:3つの柱と「簡単な」
教科の目標は、「簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力」を育てることです。解説はこれを理解する・表現する・伝え合うの3つに分け、一方向だけでなく双方向の「伝え合う」も重視すると説明しています 1。
その下に、3つの柱ごとの目標があります。
| 柱 | 目標の要点(自分の言葉で) |
|---|---|
| 知識及び技能 | 音声・語彙・表現・文法・言語の働きを理解し、実際のコミュニケーションで使える技能にする |
| 思考力,判断力,表現力等 | 目的や場面、状況に応じて、日常的な話題・社会的な話題について理解し、表現し、伝え合う |
| 学びに向かう力,人間性等 | 外国語の背景にある文化を理解し、聞き手・読み手・話し手・書き手に配慮しながら、主体的にコミュニケーションを図ろうとする |
(1)
解説で押さえておきたい言葉が3つあります。
- 日常的な話題/社会的な話題:日常的な話題は生徒の日々の生活に関わる話題、社会的な話題は社会で起こっている出来事や問題に関わる話題です 1。
- 学習過程の4段階:①目的や場面・状況を理解する → ②見通しを立てる → ③実際にコミュニケーションをする → ④言語面・内容面で振り返る、という流れが示されています 1。単元計画の骨組みにそのまま使えます。
- 「主体的に」:改訂前の「積極的に」から変わり、授業の中だけでなく、学校の外でも生涯にわたって学び続けようとする態度まで含む、と説明されています 1。
5領域の目標を1枚にする
中学校の英語の目標は、5つの領域ごとにア・イ・ウの3つずつ、計15個です(告示本文は 1 の付録で確認)。かみ砕くと、こうなります。
| 領域 | ア | イ | ウ |
|---|---|---|---|
| 聞くこと | 日常的な話題で必要な情報を聞き取る | 日常的な話題で話の概要を捉える | 社会的な話題で短い説明の要点を捉える |
| 読むこと | 日常的な話題で必要な情報を読み取る | 日常的な話題で短い文章の概要を捉える | 社会的な話題で短い文章の要点を捉える |
| 話す[やり取り] | 関心のある事柄について即興で伝え合う | 日常的な話題で、整理して伝え、質問に答える | 社会的な話題について、聞いたり読んだりしたことをもとに述べ合う |
| 話す[発表] | 関心のある事柄について即興で話す | 日常的な話題で、整理してまとまりのある内容を話す | 社会的な話題について、聞いたり読んだりしたことをもとに考えと理由を話す |
| 書くこと | 関心のある事柄について正確に書く | 日常的な話題で、整理してまとまりのある文章を書く | 社会的な話題について、聞いたり読んだりしたことをもとに考えと理由を書く |
表を横に読むと、話す・書くではア=関心のある事柄、イ=日常的な話題、ウ=社会的な話題と広がります。聞く・読むでは、アとイはどちらも日常的な話題で、捉えるもの(必要な情報か、概要か)が違います。話す・書くのウはすべて「聞いたり読んだりしたことについて」なので、複数の領域を組み合わせる活動になります。解説も、中学校では複数の領域を関連付ける統合的な言語活動を視野に入れた目標にしていると述べています 1。
「話すこと」が2つに分かれたのは、何人かで交互に話す場合と、1人が続けて話す場合で性質が違うからです 1。
領域ごとに「つまり授業でどうする?」
聞くこと:「ゆっくり」が消えた
小学校の目標は「ゆっくりはっきりと話されれば」でしたが、中学校は「はっきりと話されれば」です。解説は、音のつながりなども聞き取れるよう、過度に遅くない、自然な速度に近い音声を目指すと説明しています 1。言語活動の例でも、先生が極端に遅く話すのではなく、初めからできるだけ自然な口調の英語を使うよう求めています 1。
「必要な情報」は全部を聞き取ることではなく、目的から判断して必要なところをつかむこと、「概要」は全体のあらまし、「要点」は話し手が最も伝えたいことです 1。
- ア(必要な情報):駅のアナウンス風の音声を聞かせ、「あなたは東京行きに乗りたい。何番線に何時?」とだけ聞く。全部わからなくてよいと最初に伝えます。
- イ(概要):ALT が「お気に入りの日本食」を1分話す → 「話を3つのキーワードで言うと?」とペアで確認。
- ウ(要点):「プラスチックごみ」についての1分半の説明を聞き、「話し手がいちばん言いたいことは?」を3つの選択肢から選び、理由も言う。
読むこと:目的を先に渡す
読むことも聞くことと同じ「必要な情報/概要/要点」の3段です。「必要な情報」の教材として、広告・パンフレット・予定表・手紙・電子メールなどが言語活動の例に挙がっています 1。概要は物語なら登場人物の行動や心情の変化、要点は説明文で最も重要な情報を判断すること、と区別されています 1。
- ア:本文の前に「この町の夏祭りのチラシ」を自作して配り、「土曜に行けるのは何時から?」を30秒で探させる。
- イ:物語の本文で「主人公の気持ちが変わった文に線を引こう」。一語一語の訳ではなく、気持ちの流れをつかむ問いにします。
- ウ:説明文の段落ごとに見出しをつけ、「筆者がいちばん言いたい段落はどれ?」と選ばせる。最後に「あなたは賛成?」と1文で書く(言語活動の例に、要点を把握したうえで賛否や自分の考えを述べる活動があります 1)。
話すこと[やり取り]:「即興」の意味を正しく
「話すこと[やり取り]」は今回新しく設けられた領域です。解説は「即興で伝え合う」を、原稿を用意して覚えたり練習したりする準備時間をとらずに、不適切な間を置かずに伝え合うこと、と説明しています。相手の発話に応じ、関連する質問や意見で対話を続け、発展させることも求めています 1。
言語活動の例には、相手の質問にその場で答えたり関連する質問をしたりして会話を続ける活動、自分で作ったメモを使って伝え合う活動、社会的な話題について読み取ったことや考えたことを伝えたうえで質問に答えたり質問し返したりする活動が並んでいます 1。
- 話題をくじで決める(週末・部活・好きな動画など「関心のある事柄」)。
- ペアで1分間、英語だけで会話。沈黙したら "Well..." "Let me see." でつなぐ。
- 相手を替えて同じ話題でもう1回。2回目は「質問を1つ増やす」を目標に。
- 最後に「使いたかったけど言えなかった表現」をクラスで集め、先生が英語で言い方を示す。
解説は、即興で話す力は一度の授業で身に付くものではなく、1年生から継続的に取り組ませる必要があると述べています 1。
話すこと[発表]:即興とまとまり
発表のアも「即興で」です。小学校では「伝えようとする内容を整理した上で」話していたのに対し、中学校では事前の原稿を暗唱するのではなく、その場で話せるようにすることが求められています。メモやキーワードを頼りにした即興の発表なら、多少の誤りやたどたどしさがあるのは当然だという認識で指導する、とも書かれています 1。イの「まとまりのある内容」は、1つのテーマに沿った一貫したスピーチなどを指します 1。
- 中1:「My favorite thing」を、カードに書いた3語だけを見て30秒話す。
- 中2:「行ってみたい国」を、理由2つを入れてまとまりのある1分スピーチに(イ)。
- 中3:教科書で読んだ環境の話題について、自分の考えと理由を1分で話す(ウ)。読んだ英文から使えそうな表現を3つ選んでおくのがコツです。
書くこと:「正確に」と「まとまり」
書くことのアには「正確に」が入っています。解説は、文構造や文法事項を正しく使い、正しい語順で文を作ることなどを示し、文字言語では音声言語以上に正確さが重視されるため、と説明しています 1。イの「まとまりのある文章」では、「導入-本論-結論」などの構成を意識すること 1、ウでは I think、because、first などで意見と理由の関係を明確にすることが例示されています 1。
- ア:「自分の好きなもの」を3文で。友だちとプリントを交換して、語順と大文字・ピリオドを確認し合う。
- イ:ALT への手紙「私の町の自慢」を、はじめ・中・おわりの3段落構成で。
- ウ:教科書の「食品ロス」の文章を読んで、"I think ... because ..." を使って自分の意見を5文以上で。
言語材料:語数・文構造・文法事項
語数は「1,600〜1,800語程度」
3年間に新しく扱う語は、小学校で学んだ語に加えて1,600〜1,800語程度です(改訂前は1,200語程度)。解説は、1,600語を新たに指導する語数の下限、1,800語を一定の目安とし、1,800語を上限とする趣旨ではないと明記しています。また、全部を発信できるようにすることを求めているわけではなく、聞いたり読んだりしてわかればよい受容語彙と、話したり書いたりして使える発信語彙を区別するよう述べています 1。
語数の数え方にも決まりがあり、綴りが同じ語は品詞に関係なく1語、規則変化する活用形や複数形などは辞書の見出し語で1語とみなせます 1。
新しく加わった文法事項
| 追加された主な事項 | 例(解説の例文を参考に作成) |
|---|---|
| 感嘆文のうち基本的なもの | How beautiful! / What a long bridge! |
| 主語+動詞+間接目的語+that節・what などの節 | She told me that she was busy. |
| 主語+動詞+目的語+原形不定詞 | My mother let me use her bike. |
| 主語+be動詞+形容詞+that節 | I'm happy that you came. |
| 現在完了進行形 | I have been waiting for an hour. |
| 仮定法のうち基本的なもの | If I were a bird, I would fly to you. / I wish I had more time. |
(1)
接続詞・助動詞・前置詞も、新設の文法事項として扱うことになりました 1。仮定法を入れた理由について解説は、現実にない仮定を直説法の条件文で表すと、実際には持っていないのか、手元にないだけなのかが正しく伝わらないという例を挙げています 1。
文法の扱い方も示されています。文法はコミュニケーションを支えるものであり、必要性や有用性を実感させたうえで使わせる、用語や用法の区別の指導が中心にならないようにする、語順や修飾関係で日本語との違いに留意する、などです(告示の「3 指導計画の作成と内容の取扱い」(2)エ。1)。
指導計画の作成と内容の取扱い:先生が押さえる5つ
告示の「3 指導計画の作成と内容の取扱い」は、授業の進め方に直接関わる部分です。
- 学年ごとの目標は学校が決める。 3年間を通して目標を実現するよう、学年ごとの目標を適切に定めます。解説は、これを各学校の「学習到達目標」として具体的に設定する効果(生徒・保護者との共有、教師間の共通理解、パフォーマンス評価など)を挙げています 1。
- 練習は「必要に応じて」行う。 言語活動を行う際は、言語材料を理解したり練習したりする指導を必要に応じて行うこと、小学校で扱った語句や表現を繰り返し指導することが書かれています。ただし、練習が目的化しないよう、目的や場面を意識させることも求めています 1。
- 授業は英語で行うことを基本とする。 ねらいは「英語に触れる機会」と「授業を実際のコミュニケーションの場面にすること」。生徒の理解の程度に応じた英語を使い、言い換え・繰り返し・具体例で工夫します。その趣旨の授業展開であれば、必要に応じて補助的に日本語を使うことも考えられる、とされています 1。
- やり取りから発表へ、発表からやり取りへ。 これまでの授業は「発表」形式が強調されがちだったため、「やり取り」の領域が加わった意義は大きいとし、最初から流暢で正確な応答を求めるべきではないとしています 1。
- ペア・グループ、ICT、題材。 ペア・ワーク等の工夫、視聴覚教材やコンピュータの活用、他教科で学んだことを生かす題材選びが示されています 1。
旧学習指導要領(平成20年告示)との違い
| 項目 | 旧(平成20年告示) | 新(平成29年告示) |
|---|---|---|
| 目標の書き方 | 言語や文化の理解・積極的な態度・4技能のコミュニケーション能力の基礎 | 3つの柱で整理し、5領域別の目標を設定 |
| 話すこと | 1つ | [やり取り]と[発表]に分割、「即興で」が入る |
| 小学校との関係 | 小5・6の外国語活動(聞く・話す中心) | 小3・4外国語活動+小5・6外国語科(読む・書くも) |
| 新しく学ぶ語 | 1,200語程度 | 小学校の語+1,600〜1,800語程度 |
| 文法 | 文法事項を一覧で示す | 感嘆文・現在完了進行形・仮定法の基本などを追加 |
| 授業の言語 | 規定なし | 授業は英語で行うことを基本とする |
| 態度 | 積極的に | 主体的に(生涯にわたる学習も含む) |
評価の3観点とのつながり
国立教育政策研究所の参考資料は、中学校外国語の評価規準を作るときの「内容のまとまり」を、5つの領域としています。ほかの多くの教科は「2 内容」の項目からまとまりを作りますが、外国語は「1 目標」の5領域が単位になる、という点が独特です 3。
観点ごとのポイントで、実務に直結するのは次の点です。
- 知識・技能の「技能」は、単元で扱った言語材料が示された状況で話せる・書けるかではなく、使う言語材料が示されない状況でも、事実や考えを話したり書いたりできるかを評価する 3。
- 思考・判断・表現は、目的や場面、状況などに応じて表現したり、必要な情報・概要・要点を捉えたりしているかを評価する。
- 主体的に学習に取り組む態度は、相手に配慮しながら伝えようとしている状況に加えて、見通しを立てたり振り返ったりして自らの学習を自覚的に捉えている状況を、年間を通じて評価する 3。
つまり、「今日習った現在完了を使って書きなさい」という課題だけでは、技能の評価としては不十分になりやすいということです。単元末のパフォーマンステストは、使う文法を指定しない課題にしておくと、この趣旨に合います。評価規準の書き方は 目標・評価規準・CAN-DOリストの書き方 を参照してください。
明日の授業でこうする
- 15個の目標から1〜2個を選ぶ。 たとえば「話すこと[やり取り]イ」と「書くことイ」。単元の目標の文に、その言葉を入れます。
- 単元末の課題を先に決める。 「ALT に週末の過ごし方をすすめる手紙を書き、そのあと質問に答える」のように、目的・場面・相手が見える課題にします。
- 毎時間に「即興」の5分を入れる。 1分チャットを相手を替えて2回行い、2回目は質問を1つ増やします。残りの時間で、言えなかった表現をクラスで確かめます。
- 単元末のテストは「言語材料を指定しない」。 問題文で使う文法を指定せず、新出文法を使う必然性のある目的・場面・状況を設定します。新出文法を使わなかった生徒も「思考・判断・表現」など評価できる観点は評価しますが、その文法の「知識・技能」を身につけた根拠にはしません。
- 「即興」を「準備なしで放り出すこと」と誤解する:解説の例では、メモを使う活動や、同じタスクを相手や役割を変えて繰り返す学び方も示されています 1。即興の前に、使えそうな表現をクラスで集めておくのは指導の範囲です。
- 1,800語を全部書けるようにしようとする:受容語彙と発信語彙を分けるのが解説の立場です 1。単語テストで全語の綴りを求める前に、どの語を発信語彙にするかを学年で決めましょう。
- 「英語で授業」を「日本語ゼロ」にする:補助的な日本語は認められています 1。逆に、英語の直後に毎回日本語訳を添えるだけの授業は、趣旨から外れます。
- 評価が「読むこと」と「書くこと(の文法)」に偏る:5領域が評価のまとまりです 3。年間計画で、やり取りと発表の評価場面を確保しましょう。
❓ よくある質問
Q. 中学校の英語の目標は、いくつありますか?
聞くこと・読むこと・話すこと[やり取り]・話すこと[発表]・書くことの5つの領域ごとに、ア・イ・ウの3つずつ、計15個です 1。3年間を通した目標なので、学年ごとの目標は各学校が「学習到達目標」として定めます 1。
Q. 中学校の1,600〜1,800語は、全部覚える必要がありますか?
いいえ。小学校の語に加えて1,600〜1,800語程度で、1,600語は下限、1,800語は目安で上限ではありません。解説は、全部を発信できるようにすることは求めておらず、聞いたり読んだりしてわかればよい受容語彙と、話したり書いたりして使える発信語彙を区別するよう述べています 1。
Q. 「即興で伝え合う」とは、どういう意味ですか?
原稿を用意して覚えたり練習したりする準備時間をとらずに、不適切な間を置かずに伝え合うことです。相手の発話に応じて関連する質問や意見で対話を続け、発展させることも求められています 1。メモを使う活動や、同じタスクを相手や役割を変えて繰り返す学び方も解説で示されています 1。
Q. 今の学習指導要領で、中学校に加わった文法は何ですか?
感嘆文のうち基本的なもの、現在完了進行形、仮定法のうち基本的なもの、主語+動詞+目的語+原形不定詞などが加わりました 1。文法はコミュニケーションを支えるものとして扱い、用語や用法の区別の指導が中心にならないようにします 1。
Q. 中学校の英語の評価で、「知識・技能」の技能は何を見ますか?
国立教育政策研究所の参考資料では、単元で扱った言語材料が示された状況で話せる・書けるかではなく、使う言語材料が示されない状況でも、事実や考えを話したり書いたりできるかを評価するとされています 3。単元末のパフォーマンステストは、使う文法を指定しない課題にすると、この趣旨に合います。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モード「授業は英語で」と母語使用の実証研究
中学校の規定は「英語に触れる機会の最大化」と「実際のコミュニケーションの場面」を根拠にしています 1。一方、第二言語習得研究では、どの場面で母語(L1)を使うと学習が促されるかを実験で確かめる研究が出ています。
教室での母語使用を長く研究してきた応用言語学者の Ernesto Macaro 氏は、共同研究者と、母語での説明の効果を実験で確かめています。Lili Tian 氏との研究(Tian & Macaro, 2012)は、中国の大学1年生80人を習熟度で層化して無作為に分け、リスニング活動中の語彙のフォーカス・オン・フォームで、教師が母語で短く説明する条件と英語だけで説明する条件を比べました。母語を交える条件の方が語彙習得で有利になりうる初期の証拠が得られています 4。Ting Zhao 氏との研究(Zhao & Macaro, 2016)も、中国語話者の成人で、具体語・抽象語のどちらについても母語での説明が直後と遅延の再生で有利な傾向を報告しました 5。Jang Ho Lee 氏との研究(Lee & Macaro, 2013)は、韓国の小学生443人と大学生286人を比べ、どちらも母語との結びつけから利益を得たが、年少の学習者ほど利益が大きかったとしています 6。
これらは語彙学習という限られた側面の、主に成人や他国の学習者の研究で、授業全体の英語使用量を減らせばよいという結論にはなりません。ただ、「英語に触れる量」と「意味の確実な理解」をどう両立させるかは、学習指導要領が「補助的に日本語を用いることも考えられる」とした部分 1 を、実証的に詰めていく論点だといえます。くわしくは 英語の授業は英語で? で扱っています。
🎓院生モード1,600〜1,800語は多いのか少ないのか
語彙研究の基準で見ると、学習指導要領の語数は「最終到達点」ではなく「入口」です。語彙研究で知られる Paul Nation 氏(Nation, 2006)は、テキストの98%の語を知っていることを補助なしの理解の条件とすると、書かれた英語には8,000〜9,000語族、話された英語には6,000〜7,000語族が必要だと推定しました 7。中学校修了時までに学ぶ語は小学校と合わせて2,200〜2,500語程度で 8、しかも数え方は語族(派生語までまとめた単位)ではありません 1。つまり、教科書外の生の英語を補助なしで読めるようになる段階ではありません。
もう一つの論点は、語を「扱った」ことと「知っている」ことの違いです。語彙習得を研究する Stuart Webb 氏(Webb, 2007)は、日本人学習者121人を対象に、文脈の中で未知語に出会う回数(1・3・7・10回)を操作し、回数が増えるほど語の知識の何らかの側面が伸びたものの、10回でも語の知識の全側面がそろうには足りない可能性を示しました 9。解説が、発信語彙は単元・学年を超えて繰り返し提示・練習する工夫を求めている 1 のは、この研究の方向と合っています。
🎓院生モード「即興」とタスクの反復
解説は、伝える内容の整理を「いつも十分な準備をしてから」と考えるのではなく、メモを使いながら即興で話し、フィードバックを受け、同じタスクを相手や役割を変えて複数回繰り返して学びを深めることも重要だとしています 1。これはタスク反復(task repetition)研究の関心と重なります。タスクにもとづく言語教育の研究者 Martin Bygate 氏が編んだ論文集(Bygate, 2018)は、同じ内容・同じ目的のタスクに繰り返し取り組むことを主題にした初の単行本で、反復のたびにパフォーマンスがどう変わるか、実際の授業でどう使われているかの研究を集めています 10。
教室への含意は、「1回目でできなくてよい設計」にすることです。1分チャットの2回目・3回目で何が変わったか(質問の数、沈黙の長さ、使った接続詞)を生徒自身に記録させれば、主体的に学習に取り組む態度の評価で国研の資料が挙げる「見通しと振り返り」 3 の材料にもなります。
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📑 出典(10件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語科の目標(5領域)・言語材料(語数・文法事項)・指導計画の作成(授業は英語で行うことを基本とする等)を説明した公式の解説
- 文部科学省 (2017). 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済小学校の外国語活動(3・4年)と外国語科(5・6年)の目標・内容・語数・文字の扱いを説明した公式の解説
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2020). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語の3観点の評価規準の作り方・単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- Tian, L., & Macaro, E. (2012). Comparing the effect of teacher codeswitching with English-only explanations on the vocabulary acquisition of Chinese university students: A Lexical Focus-on-Form study. Language Teaching Research, 16(3), 367-391. doi:10.1177/1362168812436909 ✔ DOI照合済中国の大学生で、単語の説明を母語で短くはさむ方が英語だけより語彙習得で有利な傾向を示した研究
- Zhao, T., & Macaro, E. (2016). What works better for the learning of concrete and abstract words: Teachers' L1 use or L2-only explanations?. International Journal of Applied Linguistics, 26(1), 75-98. doi:10.1111/ijal.12080 ✔ DOI照合済中国の大学生で、単語の説明に母語を使った方が、英語だけの説明より覚えた語が多かった
- Lee, J. H., & Macaro, E. (2013). Investigating age in the use of L1 or English-only instruction: Vocabulary acquisition by Korean EFL learners. The Modern Language Journal, 97(4), 887-901. doi:10.1111/j.1540-4781.2013.12044.x ✔ DOI照合済韓国の小学生と大学生で、単語の説明に母語を使うと英語だけより語彙がよく残り、とくに子どもで効果が大きかった研究
- Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening?. The Canadian Modern Language Review, 63(1), 59-82. doi:10.3138/cmlr.63.1.59 ✔ DOI照合済書かれた英語の理解に8,000〜9,000語族、話し言葉に6,000〜7,000語族が必要と推定した論文
- 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 公式ページ ✔ リンク確認済高校の科目構成(英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ・論理・表現Ⅰ〜Ⅲ)、「支援」の考え方、語数、授業は英語での趣旨を説明した公式の解説
- Webb, S. (2007). The effects of repetition on vocabulary knowledge. Applied Linguistics, 28(1), 46-65. doi:10.1093/applin/aml048 ✔ DOI照合済日本人学習者121人の実験。文脈で出会う回数(1・3・7・10回)が増えるほど語の知識が伸び、10回でも十分ではない側面があった
- Bygate, M. (2018). Learning Language through Task Repetition. John Benjamins doi:10.1075/tblt.11 ✔ DOI照合済タスクの反復(同じ内容・目的のタスクにくり返し取り組むこと)を初めて1冊にまとめた論文集(Bygate 編)
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら










