高校学習指導要領(外国語)を超かみ砕く ― 英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ・論理・表現Ⅰ〜Ⅲと「支援」の段階
必履修は原則として英語コミュニケーションⅠだけ。Ⅰ→Ⅲで減っていく「支援」、論理・表現の3領域、語数400〜600語、すべての文法事項をⅠで扱うという規定。高校の告示本文と解説を開いて、科目ごとに何をどこまでやるのかを整理しました。
エビデンスの強さ:国の教育課程の基準(告示)とその公式解説・国研の評価資料・文科省の全国調査を整理したページ。効果を測る対象ではない。条文の位置と解説のページは校閲記録に記録した。

- 原則として全員が学ぶのは英語コミュニケーションⅠだけ。 英語以外の外国語を履修する場合は、その外国語の学校設定科目になります。標準3単位で、ほかの5科目は選択です。Ⅰの中で、中学校の学び直しと、高校のすべての文法事項の扱いを済ませる設計になっています。
- 科目の段階を分ける大きな軸は「支援の量」。 同じ「日常的な話題」でも、Ⅰは多くの支援つき、Ⅲはほとんど支援なしでできることを目指します。使う語句や文の多様さ、内容の詳しさも段階的に上がります。
- 論理・表現は「話す・書く」の発信に特化。 スピーチ、プレゼン、ディベート、ディスカッション、段落→複数段落の文章を、論理の構成と展開を工夫して扱います。
高校の学習指導要領ってなに?
ひとことで言うと、高校の英語の科目ごとに「どんな支援があれば、何ができるようになるか」を国が示した基準で、原則として全員が学ぶのは英語コミュニケーションⅠだけです。
高校の外国語は、告示の「第2章 第8節 外国語」に科目ごとの目標と内容が書かれ、その説明が解説(外国語編 英語編)です。小・中・高の流れは 学習指導要領を超かみ砕く にまとめてあるので、このページでは高校の科目ごとの中身を細かく見ます。中学校の目標と語数は 中学校学習指導要領(英語) を参照してください。
改訂の背景として、解説は高校の授業の課題を3つ挙げています。「話すこと」「書くこと」の言語活動が適切に行われていない、「やり取り」や「即興性」を意識した言語活動が十分でない、読んだことについて意見を述べ合うなど複数の領域を結び付けた言語活動が適切に行われていない、の3つです 1。新しい科目構成は、この3つへの答えとして読むとわかりやすくなります。
英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲは「自転車の補助輪を少しずつ外していく3段階」、論理・表現Ⅰ〜Ⅲは「同じ自転車で、坂道や長距離の走り方を専門に練習するコース」です。補助輪(支援)を外す順番は決まっていますが、何歳で外すかは、生徒を見ている先生と学校が決めます。
英語コミュニケーションと論理・表現のちがい
| 英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ | 論理・表現Ⅰ〜Ⅲ | |
|---|---|---|
| 扱う領域 | 5領域を統合的に | 話す[やり取り]・話す[発表]・書くの3領域 |
| 必履修? | Ⅰだけが必履修(英語を履修する場合) | すべて選択 |
| 段階の上がり方 | Ⅰ→Ⅱ→Ⅲと「支援」が減り、より詳しく伝える | 1つの段落→複数の段落→聞き手・読み手を説得する |
授業に生かす3ステップ
- 担当科目の目標の「支援」に線を引く:Ⅰなら「多くの支援」。年度の前半と後半で、どの支援を減らしていくか(例:モデル文+表現リスト→表現リストだけ)を決める。Ⅰでは、支援をゼロにすることを終着点にしない。
- 教科書の各課を、ほかの領域につなげて終える:読んだあとに必ず「話す」か「書く」で伝え合う活動を1つ入れる。
- 評価課題に「支援の条件」を書く:「準備5分・表現リストあり」のように、目標の条件と評価の条件をそろえる。
科目の構成と単位数
| 科目 | 標準単位数 | 位置づけ | 領域 |
|---|---|---|---|
| 英語コミュニケーションⅠ | 3 | 必履修(英語を履修する場合) | 5領域 |
| 英語コミュニケーションⅡ | 4 | 選択(原則Ⅰのあと) | 5領域 |
| 英語コミュニケーションⅢ | 4 | 選択(原則Ⅱのあと) | 5領域 |
| 論理・表現Ⅰ | 2 | 選択 | [やり取り][発表]書く |
| 論理・表現Ⅱ | 2 | 選択(原則Ⅰのあと) | [やり取り][発表]書く |
| 論理・表現Ⅲ | 2 | 選択(原則Ⅱのあと) | [やり取り][発表]書く |
(標準単位数は告示 第1章総則 第2款3(1) 2、履修の順序は外国語 第3款1(2)(3) 2、科目の性格は 1。)
必履修について、告示の総則は外国語の必履修科目を「英語コミュニケーションⅠ」とし(英語以外の外国語を履修する場合は学校設定科目として設ける1科目で標準3単位)、生徒の実態や専門学科の特色などから特に必要がある場合は、数学Ⅰとともに2単位とすることができると定めています 2。
科目のねらいを解説の言葉からかみ砕くと、次のようになります 1。
- 英語コミュニケーションⅠ:中学校の学習の確実な定着を図りながら、5領域を統合的に指導する。聞いたり読んだりしたことの概要・要点を捉え、やり取りを続け、論理性に注意して話したり書いたりする。
- Ⅱ:概要・要点に加えて詳細も捉え、多様な語句や文で、論理性に注意して詳しく話したり書いたりする。
- Ⅲ:生涯にわたる自律的な学習につながるように、目的や場面に応じて適切に、論理的に詳しく伝え合う。
- 論理・表現Ⅰ:スピーチ、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッション、1つの段落を書くことなどを通して、論理の構成や展開を工夫して伝える。
- 論理・表現Ⅱ:同様の活動で、複数の段落から成る文章などを通して詳しく伝える。
- 論理・表現Ⅲ:聞き手や読み手を説得できるよう、論理の構成や展開を工夫して詳しく伝える。
目標を読む:「的確に」「適切に」「自律的に」
外国語科の目標は、中学校の「簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったり」から、「情報や考えなどを的確に理解したり適切に表現したり伝え合ったり」に上がります。解説によれば、「的確に」「適切に」は、目的や場面・状況を踏まえて理解し、話題や内容に応じた語彙・表現・論理性に留意して表現することを示します 1。
もう2つ、中学校との違いがあります。
- 統合的な言語活動を一層重視。 高校の目標には「これらを結び付けた統合的な言語活動」という言葉が加わり、中学校よりも統合を重視した目標設定になっています 1。
- 「主体的、自律的に」。 学びに向かう力の目標に「自律的に」が加わりました。解説は、自分にどんな力が足りないか、どんな学習が必要かを自ら考え、授業外でも努力を続けようとする態度が一層求められるため、と説明しています 1。
高校のキーワード「支援」
小・中学校の目標には「ゆっくりはっきりと話されれば」「はっきりと話されれば」のような条件がついていました。高校では、科目ごとに求める水準が違うことを踏まえて、こうした配慮を「支援」と総称することにしました。支援とは、たとえば聞き手に合わせて話す速さや情報量を調整すること、話し手に使う語句や話し方を示すこと、書き手に有用な語彙や表現を与えることなどです 1。
| 科目 | 目標の条件 | 使う語句や文 |
|---|---|---|
| 英語コミュニケーションⅠ・論理・表現Ⅰ | 多くの支援を活用すれば | 基本的な語句や文 |
| 英語コミュニケーションⅡ・論理・表現Ⅱ | 一定の支援を活用すれば | 多様な語句や文 |
| 英語コミュニケーションⅢ・論理・表現Ⅲ | 支援をほとんど活用しなくても | 多様な語句や文を目的や場面、状況などに応じて適切に |
(1)
解説は、授業での配慮の例として、話す速度を落とす・情報を分けて伝える(聞く)、難しい語彙を簡単なものに書き換える(読む)、教師が実際のやり取りを見せる(やり取り)、グループで話し合わせたりアウトラインを書かせたりする(発表)、有用な語彙や表現を示す(書く)を挙げています 1。とくに「多くの支援」の段階の初期は、中学校からの円滑な移行のために様々な配慮が必要だとしています 1。
英語コミュニケーションⅠの5領域を「つまり授業でどうする?」
告示の目標と言語活動の例を、授業の形に言いかえます(告示本文は 2 で確認)。
聞くこと・読むこと
目標は、日常的な話題で「必要な情報を聞き取り(読み取り)、話し手(書き手)の意図を把握する」、社会的な話題で「必要な情報を捉え、概要や要点を目的に応じて捉える」です。言語活動の例には、話される速さが調整されたり、基本的な語句や文での言い換えを十分に聞いたりしながら聞く活動、文章の背景の説明を聞いたり読んだりしながら説明文や論証文を読む活動が並び、どれも「聞き取った(読み取った)内容を話したり書いたりして伝え合う活動」とセットです 2。
- 読む前に、先生が英語で背景を2分話す(背景の説明=支援)。
- 1回目は「筆者の主張はどの文?」だけを探して黙読(要点)。
- 2回目は段落ごとに「主張を支える理由・例」をメモ(詳細)。
- ペアで "The writer says ... because ..." と要点を英語で伝え合う(読む→話す)。
- 最後に「あなたは賛成?」を3文で書く(読む→書く)。
話すこと[やり取り]・[発表]
やり取りの言語活動は、使用する語句や文、やり取りの具体的な進め方が十分に示される状況で、日常的な話題について即興で伝え合う活動、社会的な話題について賛成や反対の立場から理由や根拠とともに伝え合う活動です。発表は、発話例が十分に示されたり、準備のための多くの時間が確保されたりする状況で、理由や根拠とともに話す活動です 2。
- 黒板に「質問→答え+1文→質問し返す」の流れと、使える表現("Why do you think so?" "For example, ..." "That's a good point, but ...")を示す(=進め方の支援)。
- 話題「高校生にアルバイトは必要?」で、ペアの片方が賛成、片方が反対を担当して2分。
- 相手を替えて立場を入れ替え、もう1回。終わったら、出てきた理由をクラスで黒板に集める。
書くこと
Ⅰの書く活動は「段落を書いて伝える活動」です。文章例が十分に示されたり、準備の時間が確保されたりする状況で、理由や根拠とともに段落を書き、書いた内容を読み合い、質疑応答や感想を伝え合います 2。
- 先生が「スマホの授業での使用に賛成」の8文のモデル段落を配り、主題文・理由・例・結論文に色分けで線を引かせる(文章例の支援)。
- 生徒は同じ型で「反対」の段落を書く。
- 3人で回し読みし、"Your reason is clear. Can you give an example?" のように1つずつ質問を書き添える。
論理・表現Ⅰ〜Ⅲ:何を、どの順で?
論理・表現は、話すこと[やり取り]・[発表]・書くことの3領域で目標を立てる科目です。Ⅰのやり取りの目標には「ディベートやディスカッションなどの活動を通して」、発表には「スピーチやプレゼンテーションなどの活動を通して」が入り、どれも「論理の構成や展開を工夫して」伝えることを求めています 2。内容には「目的や場面、状況などに応じた論理の構成や展開」と「情報や考えなどを効果的に伝える表現」が含まれます 2。
| 段階 | やり取り | 発表 | 書くこと |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | 優れている点や改善点を伝え合う、ディベート・ディスカッション | 短いスピーチやプレゼンテーション | 段落を書く(発想から推敲まで段階的に) |
| Ⅱ | 立場や状況が異なる相手と交渉する、課題の解決策を伝え合う | 詳しく話して伝える | 複数の段落から成る文章 |
| Ⅲ | 効果的な理由や根拠とともに、ディベート・ディスカッション | 聞き手を説得できるよう、複数の資料を活用したまとまりのある長さのスピーチやプレゼンテーション | 読み手を説得できるよう、複数の資料を活用して複数の段落で |
(Ⅰの言語活動 2、Ⅱの目標 2、Ⅲの言語活動 2 をもとに要約。)
段落やエッセイの具体的な指導は パラグラフとエッセイの指導 と 論理・表現:意見を論理的に伝える力の育て方 で扱っています。
言語材料:語数と文法
語数
| 科目 | 新しく加える語 | 累計の目安(解説の数字を足し算) |
|---|---|---|
| 中学校修了まで | ― | 2,200〜2,500語程度 |
| 英語コミュニケーションⅠ | 400〜600語程度 | 2,600〜3,100語程度 |
| 英語コミュニケーションⅡ | 700〜950語程度 | 3,300〜4,050語程度 |
| 英語コミュニケーションⅢ | 700〜950語程度 | 4,000〜5,000語程度 |
中学校と同じく、400語は下限、600語は目安で上限ではありません。改訂前のコミュニケーション英語Ⅰは「中学校で学習した語に400語程度」でした。また解説は、全部を発信できるようにする必要はないとしたうえで、中学校までに学習した2,500語程度をできるだけ発信語彙として使う機会を豊富に提供することが重要だと述べています 1。新しい語を増やすより、すでに知っている語を「使える語」にすることが高校の語彙指導の中心だ、という読み方ができます。
文法事項
英語コミュニケーションⅠの文法事項は、不定詞・関係代名詞・関係副詞・接続詞・助動詞・前置詞・動詞の時制及び相など・仮定法の用法で、これらすべてをⅠで適切に扱うと告示に書かれています 2。Ⅱ・Ⅲでは、その中から5領域の目標を達成するのにふさわしいものを扱います 21。文法事項として新たに「接続詞の用法」と「前置詞の用法」が加わったことも解説に示されています 1。
文法の扱い方は、告示の第3款がはっきり書いています。単に英語を日本語に、日本語を英語に置き換えるような指導にしない、文法はコミュニケーションを支えるものであり、過度に文法的な正しさだけを強調したり用語や用法の区別が中心になったりしないようにする、教材も文法事項などを中心とした構成にしない、の3点です 2。
指導計画の作成と内容の取扱い:高校ならではの5つ
- 年次ごと・科目ごとの目標を学校が定める。 多様な生徒の実態に応じて、学習負担に配慮しながら、卒業までの指導計画で段階を踏みます 2。
- Ⅰの初期は中学校の整理から。 英語コミュニケーションⅠの内容の取扱いには、学習の初期の段階で中学校の基礎的な学習内容を整理して指導し、定着を図ることが書かれています 2。
- 授業は英語で行うことを基本とする。 高校では平成21年の改訂から続く規定です 1。解説は、必要に応じた補助的な日本語の使用を認める一方、教師が英語の発話の直後に日本語の意味を付け加えるような安易な日本語使用は、生徒から英語に触れる機会と実際のコミュニケーションの場面を奪い、自律的な学習者としての成長を阻む原因になりうると注意しています 1。
- 国語科と連携する。 日本語と英語の語彙・表現・論理の展開の違いや共通点に気付かせる工夫が求められています 2。
- キーボード入力も。 英語で情報を発信することに慣れさせるため、キーボードで英文を入力する活動を効果的に取り入れることが書かれています 2。
旧学習指導要領(平成21年告示)との違い
| 項目 | 旧(平成21年告示) | 新(平成30年告示) |
|---|---|---|
| 科目 | コミュニケーション英語基礎・Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、英語表現Ⅰ・Ⅱ、英語会話 | 英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・Ⅲ、論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ |
| 必履修 | コミュニケーション英語Ⅰ(3単位) | 英語コミュニケーションⅠ(3単位) |
| 発信の科目 | 英語表現Ⅰ(2)・Ⅱ(4)、英語会話(2) | 論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ(各2) |
| 領域 | 4技能 | 5領域(やり取りを新設) |
| Ⅰの新語 | 中学校の語に400語程度 | 小・中の語に400〜600語程度 |
| 目標の条件 | ― | 「支援」の量で科目を段階づけ |
| 態度 | 積極的に | 主体的、自律的に |
(科目と単位は解説の新旧対照表 1、領域 1、語数 1、支援 1、態度 1。)
評価の3観点とのつながり
国立教育政策研究所の参考資料は、高校外国語の評価規準の「内容のまとまり」を、英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲでは5つの領域、論理・表現Ⅰ〜Ⅲでは3つの領域としています 3。つまり、評価規準は「科目×領域」で作ります。目標に「多くの支援を活用すれば」とある以上、パフォーマンステストでも、どんな支援(語句の提示、準備時間、モデル)を与えた条件での評価なのかを課題文に書いておくと、評価の根拠がはっきりします。
明日の授業でこうする
- 担当科目の目標の「支援」の部分に線を引く。 Ⅰなら「多くの支援」。年度の前半と後半で、どの支援を減らしていくか(例:モデル文+表現リスト→表現リストだけ)を決めます。Ⅰでは、支援をゼロにすることを終着点にしません。
- 教科書の各課を、ほかの領域につなげて終える。 読んだあとに必ず「話す」か「書く」で伝え合う活動を1つ入れます。
- 既習語を「使う」短い活動を毎時間入れる。 中学校の2,500語程度を発信語彙にするため、毎時間1〜2分、既習語だけで説明するゲーム(例:単語を言わずに英語で説明して当てさせる)を入れます。
- 評価課題に「支援の条件」を書く。 「準備5分・表現リストあり」のように、目標の条件と評価の条件をそろえます。
❓ よくある質問
Q. 高校の英語で、必履修の科目は何ですか?
英語を履修する場合、全員が学ぶのは英語コミュニケーションⅠ(標準3単位)だけです。生徒の実態などから特に必要がある場合は2単位にできます 2。英語コミュニケーションⅡ・Ⅲと論理・表現Ⅰ〜Ⅲは選択科目で、Ⅱを付した科目は原則としてⅠのあとに履修します 2。
Q. 「多くの支援を活用すれば」とは、どういう意味ですか?
高校では、話す速さや情報量の調整、使う語句や話し方の提示、有用な語彙や表現を与えることなどを「支援」と総称しています。英語コミュニケーションⅠ・論理・表現Ⅰは「多くの支援を活用すれば」、Ⅱは「一定の支援を活用すれば」、Ⅲは「支援をほとんど活用しなくても」と、科目の段階を支援の量で示しています 1。
Q. 英語コミュニケーションと論理・表現は、何が違いますか?
英語コミュニケーションは5領域を統合的に扱う科目です。論理・表現は話すこと[やり取り]・[発表]・書くことの3領域で、スピーチ、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッション、段落を書く活動などを通して、論理の構成や展開を工夫して伝える科目です 1。
Q. 高校で新しく学ぶ英単語は何語ですか?
英語コミュニケーションⅠで400〜600語程度、Ⅱ・Ⅲでそれぞれ700〜950語程度を加えます。400語は下限、600語は目安で上限ではありません。解説は、中学校までに学習した2,500語程度をできるだけ発信語彙として使う機会を豊富に提供することが重要だとしています 1。
Q. 高校の英語の文法事項は、いつ扱いますか?
英語コミュニケーションⅠの文法事項(不定詞・関係代名詞・関係副詞・接続詞・助動詞・前置詞・動詞の時制及び相など・仮定法の用法)は、すべてⅠで適切に扱うと告示に書かれています 2。Ⅱ・Ⅲでは、その中から5領域の目標を達成するのにふさわしいものを扱います 2。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モード「支援」という発想 ― 条件つき能力記述の利点と難しさ
高校の目標は、能力を「〜の支援を活用すれば〜できる」という条件つきの文で書いています。解説は、生徒の力が上がるにつれて必要な前提条件は少なくなるため、Ⅰ→Ⅲで活用できる支援が限定されても目標を達成できることを明示した、と説明し、教師が段階的に指導上の配慮を調整することを求めています 1。これは、同じ課題でも与える足場の量で難易度を調整し、徐々に足場を外していくという考え方を、国の基準の書き方そのものに組みこんだものと読めます。
利点は、目標と授業の配慮が同じ言葉でつながることです。ある生徒が「表現リストがあれば1分話せるが、なしでは話せない」という状態を、失敗ではなく「Ⅰの目標の水準に達しつつある」と位置づけられます。難しさは評価にあります。支援の量は連続的で、「多く」「一定」「ほとんど〜しなくても」の境界は告示では数値化されていません。国研の資料が科目×領域を評価のまとまりとしている 3 以上、学校ごとに支援の条件を具体的に定めないと、同じ「B」でも学校間で中身が大きく違うことになりえます。CAN-DO形式の学習到達目標に支援の条件まで書きこむことは、この比較可能性の問題への一つの対処になると筆者は考えます。
🎓院生モード「授業は英語で」15年 ― 政策と教室のあいだ
高校で「授業は英語で行うことを基本とする」が導入されたのは平成21年告示からで、平成30年告示でも引き継がれました 1。それでも、文部科学省の令和7年度の調査では、公立高校(特別支援学校高等部を含む)で英語の教師が授業中の発話の半分以上を英語で行っている割合は全体で36.9%でした。科目別では英語コミュニケーションが41.2%、論理・表現が27.5%で、発信力を高める科目群の方が英語による発話の割合が少ない傾向が示されています 4。
この規定には批判的な研究もあります。言語政策を研究する Mamiko Noda 氏と John P. O'Regan 氏(Noda & O'Regan, 2020)は、2009年と2018年の学習指導要領が、伝統的な訳読(yakudoku)を生徒の英語力が伸びない原因として暗に位置づけ、「英語のみ」の授業に置きかえるよう示したと分析し、関係者への3か月の民族誌的調査と批判的談話分析から、日本語の教室使用を周縁化する言説だと論じています 5。また、英語教師の教室実践を研究する Simon Humphries 氏と Anne Burns 氏(Humphries & Burns, 2015)は、日本の高専でコミュニカティブな新教科書を導入した事例で、4人の日本人英語教師に教え方への不安と専門的な支援の不足が広がり、変化を妨げていたと報告しています 6。
規定の文言自体は、生徒の理解の程度に応じた英語の使用と補助的な日本語の使用を認めています 1。政策が目指す「英語に触れる機会」と、教室の現実(入試、学力差、教師の負担と研修)のあいだをどう埋めるかは、論理・表現の数字が示すように、とくに発信の授業で残っている課題です。
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📑 出典(6件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 公式ページ ✔ リンク確認済高校の科目構成(英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ・論理・表現Ⅰ〜Ⅲ)、「支援」の考え方、語数、授業は英語での趣旨を説明した公式の解説
- 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示) 公式ページ ✔ リンク確認済高等学校の学習指導要領。総則の標準単位数・必履修科目(英語コミュニケーションⅠ)と、外国語科の各科目の目標・内容を示している
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2021). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 高等学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済高校外国語の評価規準と単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- 文部科学省 (2026). 令和7年度「英語教育実施状況調査」(概要) 公式ページ ✔ リンク確認済公立中学・高校の英語教育の国の調査(令和7年度)。高校で教師が発話の半分以上を英語で行う割合(全体36.9%)などを示す
- Noda, M., & O'Regan, J. P. (2020). L1 marginalisation in Japan: Monolingual instrumentalism and the discursive shift against yakudoku in the Japanese government's Course of Study. Current Issues in Language Planning, 21(2), 135-152. doi:10.1080/14664208.2019.1647998 ✔ DOI照合済2009年の学習指導要領の「英語で授業」方針が、訳読と日本語使用をどう位置づけたかを分析した論文
- Humphries, S., & Burns, A. (2015). 'In reality it's almost impossible': CLT-oriented curriculum change. ELT Journal, 69(3), 239-248. doi:10.1093/elt/ccu081 ✔ DOI照合済日本の高専でコミュニカティブな新教科書を導入した事例。先生たちの教え方への不安と支援不足が変化をはばんでいた
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら










