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🛠️ 技能別の指導メソッド★★☆エビデンスあり中学校高校📖 約17分

パラグラフとエッセイの指導 ― 高校「論理・表現」で1段落から複数段落へ育てる手順

「英作文は書けるけど、段落になっていない」。トピック・センテンス、支持文、結論文の型は、教えれば身につきます。ただし「日本人は起承転結だから苦手」は研究ではあまり支持されていません。論理・表現Ⅰ〜Ⅲの段階に沿って、1段落から説得力のある複数段落の文章へ育てる手順をまとめます。

エビデンスの強さ:作文指導全般のメタ分析(方略指導・手本・仲間との協力など)は一貫しているが、外国語として英語を書く中高生でパラグラフ指導の効果を比べた実験は少ない。日本人の構成の研究は大学生が中心。

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パラグラフとエッセイの指導 ― 高校「論理・表現」で1段落から複数段落へ育てる手順のイメージ
💡3行まとめ
  • Ⅰは1段落、Ⅱは複数段落、Ⅲは読み手を説得する複数段落。 論理・表現の「書くこと」は、学習指導要領がはっきり段階を示しています。
  • 「起承転結のせい」ではない。 日本の大学生の研究では、両方の言語で似た構成を使う学生が多く、構成には書く経験や受けた指導も関わっていました。
  • 型は手本から見つけさせ、1段落1主張を徹底。 つなぎ言葉を増やすより、主張と根拠の中身を具体的にします。

パラグラフ・エッセイってなに?

ひとことで言うと、パラグラフは「1つの段落で言いたいことは1つ」という約束で書く英語の段落、エッセイはそのパラグラフをいくつか並べて「序論・本論・結論」に組み立てた文章です。

英語のパラグラフ(paragraph)は、日本語の「段落」より少しきびしい約束ごとをもった文のまとまりです。基本は1つの段落で1つの主題。高校の学習指導要領の解説は、説明文や論証文の段落には、その段落の主題を述べるトピック・センテンスと、それを支える支持文(サポーティング・センテンス)が含まれるのが一般的だと説明しています 1。意見を述べる一つの段落なら、トピック・センテンスによる導入、支持文による展開、主題と展開をまとめる結論、という構成が考えられるとも書かれています 1。つまり、生徒が練習する基本の形としては、段落の最初の1文を読めば、その段落で何を言うかがわかるように書き、残りの文はすべてその1文を支えるために使う、ということです。

いくつかの段落が集まったものがエッセイ(essay)です。説明文や論証文は、序論・本論・結論の構成で書かれていることが多く、複数の段落からなる論証文では、全体のテーマや要点を述べる主題が重要な位置を占めます 1。

🎈たとえるなら

パラグラフは本棚の1段です。1段に1ジャンル。「料理の本の段」にマンガが1冊まじっていると、探す人は混乱します。トピック・センテンスは段の見出しラベル、支持文は並んでいる本、結論文は「この段はここまで」という仕切り板。エッセイは本棚全体で、序論は「この本棚には何があるか」の案内板です。英語のパラグラフは、ラベルどおりの本だけを並べるのが基本です。

似たものとのちがい

日本語の「段落」 英語のパラグラフ エッセイ
何のまとまり? 文のまとまり 1つの主題についての文のまとまり 複数のパラグラフ
約束ごと パラグラフより、ゆるやか トピック・センテンス+支持文(+結論文) 序論・本論・結論
論理・表現では ― Ⅰの基本は一つの段落 Ⅱ・Ⅲで複数の段落

なお、「日本語の起承転結のせいで英語の構成が苦手になる」とはよく言われますが、日本の学習者の研究は、それより書く経験や受けた指導が関わっていることを示しています 23(くわしくは下の「研究ではどうなってる?」)。

やり方を3ステップで

  1. 手本から型を見つける:ペアで意見を言い合ったあと、手本の段落をトピック・センテンス・理由・例・結論に色分けする。
  2. 書く前に計画する:文ではなく、主張・理由2つ・例2つをメモの形でアウトラインにする。
  3. 書いて、読み合って、直す:7〜9文で下書きする。ペアで交換して、相手のトピック・センテンスに線を引き、質問を1つ書く。返ってきたら、その質問に答える文を書き足す。

論理・表現Ⅰ〜Ⅲの「書くこと」の段階

高校の「論理・表現」は、話すこと[やり取り]・話すこと[発表]・書くことの3つの領域で発信力を育てる科目です。書くことの目標と言語活動は、科目が上がるにつれて次のように変わります 4。

科目 支援 書く文章 言語活動の例(要点)
論理・表現Ⅰ 多くの支援を活用すれば 論理の構成や展開を工夫して文章を書く(解説では「一つの段落」が基本) 適切な理由や根拠とともに段落を書く。発想から推敲まで段階的な手順を踏む
論理・表現Ⅱ 一定の支援を活用すれば 複数の段落から成る文章で詳しく書く 複数の段落を用いて詳しく書く
論理・表現Ⅲ 支援をほとんど活用しなくても 読み手を説得できるよう、複数の段落から成る文章で詳しく書く 効果的な理由や根拠とともに複数の段落で書く。ニュースや新聞記事などの複数の資料を活用して書く活動もある

解説は、論理・表現Ⅰの「文章を書いて伝える」とは一つの段落で文章を書くことで、必要に応じて複数の段落で書くことも考えられる、と説明しています 1。どの科目でも、書いた内容を読み合い、質疑応答をしたり意見や感想を伝え合ったりする活動がセットになっている点も見落とせません 4。

また、文章の種類として、叙述文(物語や描写)・説明文・論証文を目的や場面に応じて使い分けることや、叙述文では一人称が、説明文や論証文では客観性を重んじるため三人称が好まれる傾向があることにも触れています 1。

研究ではどうなってる?

「起承転結だから苦手」は本当?

「日本語の文章は結論が最後に来る。だから日本人の英作文は結論があいまいになる」。英語の先生ならどこかで聞いたことがあると思います。1980年代の研究は、日本語の起承転結のうち、「転」(話題が急に変わるように見える部分)と「結」(英語の conclusion とは意味が違う)が、英語の読み手には問題になりうると論じました 5。

ところが、日本の学習者が実際に書いた文章を調べると、話はもっと複雑です。

🔬研究ではこう
  • 同じ日本の大学生46人が日本語と英語で作文を書いた研究では、約半数が両方の言語で似た構成を使い、日本語の作文の構成点と英語の作文の構成点には正の相関がありました。日本特有の構成が英語に悪影響を与える「負の転移」は見られず、英語の作文の質には日本語で書く力・英語力・英語で書いた経験が影響していると考察されています 2。
  • 日本語と英語の母語話者の作文を比べた研究では、結論が最後に来る帰納型は日本語に多かったものの、どちらの言語でも帰納型の作文は評価が平均〜低め、演繹型は平均〜高めでした。良い文章の特徴には言語をこえた共通点がある、と結論づけています 6。
  • 日本の大学生の意見文を日本語と英語で比べた研究では、多くの学生がどちらの言語でも主張を先に書く演繹型で書いていました。ただし英語の構成点は日本語の構成点と相関せず、両方の言語で構成に問題を抱える学生もいました 7。
  • 日本人470人をふくむ640本の意見文を分析した研究では、構成の型を決めていたのは文化の転移よりも、どんな問いに答える文章か(問いの性質)でした 8。
  • 日本の大学1年生28人の研究では、高校での入試向けの小論文・英作文の集中指導が、日本語と英語の作文の書き方(立場を最初に示すかなど)に影響していました 3。

ポイント:英語の構成がうまくいかない原因を「日本語の文化」に求めるより、英語で(あるいは日本語でも)論理的な文章を書く経験と指導をどれだけ受けてきたかを見る方が、研究に合っています 23。逆に言えば、パラグラフの型は「日本人だから無理」なものではなく、教えれば身につくものです。

つなぎ言葉を増やせば良い文章になる?

🔬研究ではこう
  • 第二言語の学習者の作文を分析した研究では、評価の高い書き手の文章は、つなぎ言葉などの結束性の手がかりが多いわけではなく、語彙の多様さや語の頻度など言語の洗練度が高い文章でした 9。

First, Second, In addition, Moreover を文頭にずらりと並べても、それだけで評価が上がるわけではありません。つなぎ言葉は「道路標識」であって、道そのもの(主張と根拠のつながり)ができていなければ役に立ちません。

作文指導全般の研究から

🔬研究ではこう
  • 4〜12年生の作文指導のメタ分析(154の効果量)では、作文の質への効果は、書く方略の指導 0.82、要約 0.82、仲間との協力 0.75、作品の目標設定 0.70、文の結合 0.50、書く前の活動 0.32、プロセス・アプローチ 0.32、手本の研究 0.25、文法の単独指導 −0.32 でした 10。
  • 日本人の英作文の書き方を観察した研究では、上手な書き手は書き始める前に全体の構成をじっくり計画していました 11。
  • 日本の大学生が自分で書いてから手本と比べると、主に語彙に気づき、書き直しに取り入れました 12。
  • 日本の大学生70人が、目的と読み手に応じたメールを書くジャンル中心の課題に15週取り組んだ研究では、ジャンルへの意識が高まり、それが実際に書いたメールの変化にも表れていました 13。

ここで注意したいのは、最初のメタ分析は学校での作文指導(4〜12年生)の研究をまとめたもので、外国語として英語を書く生徒を対象にしたものではないことです 10。また、0.82 と 0.25 は別々の研究群の平均で、同じ生徒で直接比べた結果ではありません。それでも、手本を調べてまねる指導(0.25)より、計画のしかたや見直し方を方略として教える指導(0.82)で大きな平均効果が報告されたことは、パラグラフ指導を「型の暗記」で終わらせないための重要なヒントになります。

明日の授業でこうする

手本の段落(色分けして見せる)

まず、生徒が分析できる手本を用意します。以下は先生が書いたオリジナルの例です(論理・表現Ⅰレベル、約80語)。

🏫手本パラグラフ(高校1年向け)

Topic sentence:High school students should have a part-time job during summer vacation.

Supporting sentence 1(理由1):First, they can learn how to work with adults. (例) For example, at a restaurant, they have to listen carefully to the manager and help other staff.

Supporting sentence 2(理由2):Second, they can understand the value of money. (例) If you work for three hours to buy one book, you will think twice before you spend money.

Concluding sentence:For these reasons, I believe a summer job is a valuable experience for high school students.

学習指導要領の解説も、トピック・センテンスやサポーティング・センテンスの働きを、モデルとなる段落の文章例を使って生徒自身が分析しながら学ぶことが大事だとしています 1。型を先生が説明して覚えさせるのではなく、色分けや線引きで「見つけさせる」のがポイントです。

✏️1段落を書く6ステップ(論理・表現Ⅰ/2時間)
  1. 話してから書く(10分):テーマについてペアで1分ずつ意見を言い合います。解説も、ペアやグループで考えを話して伝えたあとに書く活動を例に挙げています 1。
  2. 手本を分析する(10分):上の手本をトピック・センテンス(赤)、理由(青)、例(緑)、結論(黄)に色分けさせます。「理由と例の違いは?」をペアで説明させます。
  3. アウトラインを書く(10分):文ではなく、主張・理由2つ・例2つをメモの形で書きます。上手な書き手ほど書く前の計画に時間をかけています 11。
  4. 下書き(15分):アウトラインを見ながら7〜9文で書きます。英語でどう言うかわからない部分は、止まらずに日本語のまま( )に入れて書き進めます。
  5. 読み合う(15分):ペアで交換し、①トピック・センテンスに線を引く、②理由と例に印をつける、③「もっと知りたいこと」を1つ質問する、の3つだけを行います。
  6. 推敲・清書(宿題可):質問への答えを書き足し、( )の部分を辞書や先生の手本で英語にします。自分で書いてから手本と比べると、足りなかった表現に気づきやすくなります 12。

この6ステップは、解説が示す「発想から推敲まで段階的な手順」(ブレインストーミング→手本でアウトラインの練習→表現を学ぶ→書いた後に読み返し・読み合い・修正)1 を、2時間の授業に当てはめたものです。

良いトピック・センテンスの3条件

条件 だめな例 良い例
① 主題がはっきりしている I will write about smartphones. Smartphones can help students study better.
② 広すぎない Technology is important. Online dictionaries save time for students.
③ 支持文で支えられる(事実だけで終わらない) Our school has 800 students. Our school should have more club activities.

単文の羅列から抜け出す

1段落の中で "I like ... . It is ... . I think ... ." と単文が続くと、論理のつながりが見えにくくなります。解説は、単文だけで書かれた段落の例を使い、どの文を接続詞でつなぐとよいか、どの文を複文にすると意味がわかりやすくなるかを生徒が分析してから、接続詞を使って文を作る練習をする指導を挙げています 1。

単文の羅列 つないだ例
I was tired. I finished my homework. Although I was tired, I finished my homework.
The bus was late. I was late for school. Because the bus was late, I was late for school.
Some people like cats. Others like dogs. Some people like cats, while others like dogs.

1段落から複数段落へ(論理・表現Ⅱ・Ⅲ)

複数段落のエッセイは、「1段落の型を、段落の単位に拡大する」と考えると生徒にも見通しがもてます。

1段落のとき エッセイのとき
トピック・センテンス 序論の段落(全体の主張 thesis statement をふくむ)
理由1+例 本論の段落1(その段落のトピック・センテンスから始める)
理由2+例 本論の段落2
結論文 結論の段落(主張を言いかえてまとめる)

論理・表現Ⅲの書くことには、ニュースや新聞記事などの複数の資料を活用して書く目標・言語活動(イ)があります。解説は、主張を支える根拠として情報を効果的に引用すること、直接引用するときは出典を示すこと、言い換えるときは原文の趣旨からそれないようにすること、そして自分の意見を、得られた情報や事実と区別して書くことを指導するよう求めています 1。資料の選び方と論証の組み立て方は 論理・表現:意見を論理的に伝える力 で扱います。

🗣️先生の英語(そのまま使える)
TLook at the model paragraph. Find the topic sentence. Underline it in red.
THow many reasons does the writer give? Where are the examples?
TA paragraph has one main idea. Does every sentence talk about the main idea?
SBoth reasons support the main idea: students should have a summer job.
TExactly. Working with adults and learning about money both support that idea.
TBefore you write, make an outline. Just key words, not sentences.
TRead your partner's paragraph. Ask one question: "Can you give me an example?"
TNow add one sentence to answer your partner's question.
🏫校種・学年別の実例

中学3年:「3文パラグラフ」から始めます。I like ... の主張文+理由1文+例1文。中学校の段階では、まとまりのある文章を書くことの入り口として、型より「主張と理由をつなぐ」体験を重視します(ライティング指導)。

高校1年(論理・表現Ⅰ):上の6ステップで1段落の意見文を学期に3〜4回。テーマは「部活動」「スマートフォン」など、生徒が自分の経験で理由を書けるものから。読み合いで確かめる点は、1回ごとに1つずつ増やします(例:1回目はトピック・センテンスだけ、2回目は理由と例も)。

高校2年(論理・表現Ⅱ):序論・本論2段落・結論の4段落エッセイ。各本論の段落にトピック・センテンスがあるかを、ペアで確認するのを習慣にします。

高校3年(論理・表現Ⅲ):新聞記事やグラフなど2つ以上の資料を読み、根拠として引用しながら読み手を説得するエッセイ。引用部分と自分の意見に別の色の線を引かせ、区別できているかを確認します 1。入試の自由英作文の練習としても使えます。

評価のポイント

ルーブリックは「内容(主張と根拠)」「構成(段落の型)」「言語(語彙・文法)」を分けて作ります。解説は、書いたものへのフィードバックが文法事項などの訂正に偏らないよう注意し、伝えたい内容を整理できているか、読み手に伝わる書き方になっているかという観点からフィードバックするよう求めています 1。

観点 3(よくできた) 2(できた) 1(もう少し)
構成 トピック・センテンス・支持文・結論文がそろい、すべての文が主題に関係している 型はあるが、主題と関係の薄い文がある 主題がはっきりしない
内容 理由が2つ以上あり、それぞれに具体的な例や事実がある 理由はあるが、例が一般的 理由がない、または主張をくり返しているだけ
言語 接続詞や複文で文のつながりがわかりやすい 単文が多いが、意味は通じる 誤りが多く、意味が通じにくい部分がある

ルーブリックの作り方は パフォーマンステストとルーブリック、添削の方法は 英作文の添削・フィードバック を参照してください。

⚠️よくある失敗
  • 型を暗記させて終わり:「First, Second, In conclusion を入れれば合格」になると、中身のない段落が量産されます。型は手本の分析から見つけさせます 1。
  • つなぎ言葉を増やすほど良いと教える:評価の高い作文は結束性の手がかりが多いわけではありませんでした 9。
  • 1段落に2つの主張:「部活は大切。でも勉強も大切」と主題が2つになったら、段落を分けるか、トピック・センテンスを書き直します。
  • 「日本語の起承転結のせい」で片づける:日本の大学生の研究では、構成の問題は日本語の文化より書く経験や指導と関係していました 27。
  • 赤ペンが文法だけ:まず内容と構成について1〜2行コメントを書き、文法の直しはそのあとにします。文法の訂正に偏らないことは学習指導要領の解説も求めています 1。
  • 書いて終わり:読み合い・質問・書き直しまでがセットです 4。

❓ よくある質問

Q. 英語のパラグラフの基本の形は、どうなっていますか?

基本は1つの段落で1つの主題です。高校の学習指導要領の解説は、段落の主題を述べるトピック・センテンスと、それを支える支持文が含まれるのが一般的だとしています 1。意見を述べる段落なら、導入・展開・結論という構成が考えられるとも書かれています 1。

Q. 論理・表現Ⅰ〜Ⅲでは、どんな文章を書かせるのですか?

論理・表現Ⅰは多くの支援を活用して一つの段落を書くのが基本、Ⅱは一定の支援で複数の段落から成る文章を詳しく書く、Ⅲは支援をほとんど活用せずに、複数の資料を使って読み手を説得する文章を書く、という段階です 41。

Q. 日本人の英作文の構成が弱いのは、起承転結のせいですか?

そう単純ではありません。日本の大学生の研究では、約半数が日本語と英語で似た構成を使い、両言語の構成点には正の相関があり、負の転移は見られませんでした 2。構成の力には、書く経験と指導の影響が大きいと考えられます 3。

Q. つなぎ言葉をたくさん使えば、良い英作文になりますか?

そうとは限りません。第二言語の学習者の作文を分析した研究では、評価の高い作文は、つなぎ言葉などの結束性の手がかりが多いわけではなく、語彙の多様さなど言語の洗練度が高い文章でした 9。主張と根拠のつながりの中身を具体的にします。

Q. パラグラフの型は、どう教えればいいですか?

先生が説明して覚えさせるより、手本の段落をトピック・センテンス・理由・例・結論に色分けさせ、生徒自身に分析させます。解説も、モデルの段落例を使って生徒が分析しながら学ぶことが大事だとしています 1。書く前にアウトラインを作る時間もとります。

🎓 もう一歩深く(大学院レベル)

🎓院生モード対照修辞学の論争 ― 「文化の型」から「書き手の経験」へ

文章構成の文化差を論じる対照修辞学(contrastive rhetoric)は、言語ごとに好まれる論理の展開のしかたがあり、それが第二言語の作文に持ちこまれる、という考え方から出発しました。日本語の起承転結の「転」と「結」が英語の読み手にとって問題になりうるという1980年代の議論は、その代表です 5。

しかし、日本の学習者のデータを使った研究は、この見方を大きく修正しました。同じ書き手の日本語と英語の作文で構成が似ており、構成の質は言語をこえて相関していたこと 2、日本語でも帰納型より演繹型の方が高く評価されていたこと 6、多くの学生が両言語で演繹型を使っていたこと 7、構成の型は問いの性質で変わること 8、高校での入試対策の指導が書き方を形づくっていたこと 3 は、いずれも「文化の型が転移する」という単純な図式に合いません。

さらに、従来の対照修辞学は英語と他言語の違いを固定的な二項対立としてとらえ、学習者を「文化的に欠けた存在」として見てきたと批判され、多様な書き方と学習者のアイデンティティを認める批判的対照修辞学が提案されています 14。日本人学生の英語の論証文に「批判的思考が足りない」とされる問題をめぐっても、教育観・修辞の違い・教員側の誤解など複数の説明が議論されています 15。

学習指導要領の解説も、国語科との連携の中で、日本語と英語の論理の展開の違いや共通点に目を向けることは言語的感性を養ううえで有効だとしつつ、それを単なる知識として学習させるものではないと注意しています 1。「英語はこう、日本語はこう」と対比を教えるより、目的と読み手に応じて構成を選ぶ力を、両方の言語で育てるという方向です。

🎓院生モードパラグラフの「型」はどこまで教えるべきか

作文指導のメタ分析で、手本の研究(0.25)より方略の指導(0.82)や作品の目標設定(0.70)で大きな平均効果が報告されたことは(別々の研究群の平均値です) 10、型の提示だけでは不十分で、計画・下書き・見直しのしかたを明示的に教え、目標を具体的に示すことが重要だと示唆します。手本は「先に見せる」だけでなく、自分で書いてつまずいたあとに比べる使い方でも、学習者は自分に必要な表現に気づきます 12。

一方で、型を固定的な規則として教えることには批判もあります 14。ジャンル・アプローチの研究は、型を「暗記するフォーマット」ではなく、目的・読み手・場面に応じて言語資源を選ぶ判断として教える方向を示しており、日本の大学生でもジャンルへの意識と実際の文章の両方に変化が見られました 13(ジャンル・アプローチ)。

結束性の研究も、この見方を支えます。評価の高い第二言語の作文は、つなぎ言葉などの結束性の手がかりが多いのではなく、語彙の洗練度が高い文章でした 9。パラグラフ指導の目標は「型どおりの見た目」ではなく、読み手が迷わずに主張と根拠をたどれる文章です。その意味で、段落の型は入り口であり、ゴールではありません。

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📑 出典(15件)

本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。

  1. 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 公式ページ ✔ リンク確認済高校の科目構成(英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ・論理・表現Ⅰ〜Ⅲ)、「支援」の考え方、語数、授業は英語での趣旨を説明した公式の解説
  2. Kubota, R. (1998). An investigation of L1–L2 transfer in writing among Japanese university students: Implications for contrastive rhetoric. Journal of Second Language Writing, 7(1), 69-100. doi:10.1016/S1060-3743(98)90006-6 ✔ DOI照合済日本の大学生46人が日本語と英語で書いた作文を比較。約半数が両言語で同じ構成を使い、日本語の構成力と英語の構成力は正の相関。「日本的な構成の負の転移」は見られなかった
  3. Kobayashi, H., & Rinnert, C. (2008). Task response and text construction across L1 and L2 writing. Journal of Second Language Writing, 17(1), 7-29. doi:10.1016/j.jslw.2007.08.004 ✔ DOI照合済高校で受けた入試小論文・英作文の集中指導が、日本の大学1年生28人の日本語・英語の作文の書き方に影響していた
  4. 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示) 公式ページ ✔ リンク確認済高等学校の学習指導要領。総則の標準単位数・必履修科目(英語コミュニケーションⅠ)と、外国語科の各科目の目標・内容を示している
  5. Hinds, J. (1983). Contrastive rhetoric: Japanese and English. Text, 3(2). doi:10.1515/text.1.1983.3.2.183 ✔ DOI照合済日本語の「起承転結」を分析し、「転」と「結」が英語の読み手にとって問題になりうると論じた古典的論文
  6. Kubota, R. (1998). An investigation of Japanese and English L1 essay organization: Differences and similarities. The Canadian Modern Language Review, 54(4), 475-508. doi:10.3138/cmlr.54.4.475 ✔ DOI照合済日本語と英語の母語話者の作文の構成を比較。結論が最後に来る帰納型は日本語に多いが、どちらの言語でも帰納型は評価が低め、演繹型は高めだった
  7. Hirose, K. (2003). Comparing L1 and L2 organizational patterns in the argumentative writing of Japanese EFL students. Journal of Second Language Writing, 12(2), 181-209. doi:10.1016/S1060-3743(03)00015-8 ✔ DOI照合済日本の大学生の意見文。多くが日本語でも英語でも主張を先に書く演繹型だったが、日本語の構成点と英語の構成点は相関しなかった
  8. Kamimura, N. (2011). A study of EFL argumentative strategies: Factors that affect the choice of organizational pattern. Asian Englishes, 14(2), 56-73. doi:10.1080/13488678.2011.10801307 ✔ DOI照合済日本人470人を含む640本の意見文を分析。構成の型を左右したのは文化の転移より「問いの性質」だった
  9. Crossley, S. A., & McNamara, D. S. (2012). Predicting second language writing proficiency: The roles of cohesion and linguistic sophistication. Journal of Research in Reading, 35(2), 115-135. doi:10.1111/j.1467-9817.2010.01449.x ✔ DOI照合済第二言語の作文で、評価の高い書き手はつなぎ言葉などの結束性が多いのではなく、語彙の多様さなど言語の洗練度が高かった
  10. Graham, S., & Perin, D. (2007). A meta-analysis of writing instruction for adolescent students. Journal of Educational Psychology, 99(3), 445-476. doi:10.1037/0022-0663.99.3.445 ✔ DOI照合済4〜12年生の作文指導のメタ分析。文の結合(sentence combining)は 0.50、文法の単独指導は -0.32
  11. Sasaki, M. (2000). Toward an empirical model of EFL writing processes: An exploratory study. Journal of Second Language Writing, 9(3), 259-291. doi:10.1016/S1060-3743(00)00028-X ✔ DOI照合済日本人の英作文の書き方を観察。上手な書き手は書く前に全体の構成をじっくり計画していた
  12. Hanaoka, O. (2007). Output, noticing, and learning: An investigation into the role of spontaneous attention to form in a four-stage writing task. Language Teaching Research, 11(4), 459-479. doi:10.1177/1362168807080963 ✔ DOI照合済日本の大学生。自分で書いた後にモデル文と比べると、主に語彙に気づき、書き直しに取り入れた
  13. Yasuda, S. (2011). Genre-based tasks in foreign language writing: Developing writers' genre awareness, linguistic knowledge, and writing competence. Journal of Second Language Writing, 20(2), 111-133. doi:10.1016/j.jslw.2011.03.001 ✔ DOI照合済日本の大学生70人。メールを書くジャンル・タスクの15週の授業で、ジャンルの意識と実際のメールの書き方が伸びた
  14. Kubota, R., & Lehner, A. (2004). Toward critical contrastive rhetoric. Journal of Second Language Writing, 13(1), 7-27. doi:10.1016/j.jslw.2004.04.003 ✔ DOI照合済言語ごとの「文章構成の文化差」を固定的にとらえる従来の対照修辞学を批判し、多様な書き方と学習者のアイデンティティを認める「批判的対照修辞学」を提案
  15. McKinley, J. (2013). Displaying critical thinking in EFL academic writing: A discussion of Japanese to English contrastive rhetoric. RELC Journal, 44(2), 195-208. doi:10.1177/0033688213488386 ✔ DOI照合済日本の大学生が英語の論証文で批判的思考を示すのに苦労する理由(儒教的な教育観・読み手責任の修辞・西洋の教員の誤解など)をめぐる議論を整理したレビュー

最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら