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🛠️ 技能別の指導メソッド★★★エビデンス強め小学校中学校高校📖 約10分

口頭の誤り訂正 ― リキャストとプロンプト、どう使い分ける?

生徒が "I go to Kyoto yesterday." と言ったら、あなたはどう返しますか? 言い直してあげる? 気づかせる? 研究でわかった「効く直し方」と「使い分け」を、教室のセリフつきで紹介します。

エビデンスの強さ:口頭の誤り訂正に中〜大の効果があることは複数のメタ分析で一貫。リキャストとプロンプトのどちらが有効かは、教室か実験室か、学習者の習熟度、授業の性格によって結果が分かれる。

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口頭の誤り訂正 ― リキャストとプロンプト、どう使い分ける?のイメージ
💡3行まとめ
  • 口頭の誤り訂正は効きます。 複数のメタ分析で、中〜大の効果が持続することがわかっています。
  • 先生は「言い直してあげる」リキャストに頼りがち。でも教室では、生徒に自分で直させるプロンプトの方が効果が大きい傾向です。
  • 生徒は訂正されたいと思っています。目的に合わせて、短く・はっきり直しましょう。

口頭の誤り訂正ってなに? ― 6つの直し方

ひとことで言うと、口頭の誤り訂正とは、生徒が話した英語のまちがいに、先生がその場で(または活動のあとで)気づかせたり直したりする返し方のことです。

フランス語イマージョン(教科をフランス語で学ぶ)の小学校の授業を分析した有名な研究は、先生の口頭の誤り訂正(corrective feedback)を6種類に分けました 1。生徒が "I go to Kyoto yesterday." と言ったときの返し方で見てみましょう。

種類 先生の返し方の例 生徒が自分で直す?
リキャスト(recast) Oh, you went to Kyoto yesterday. 直さなくても会話は続く
明示的訂正(explicit correction) Not "go." You should say "went." 正解を言われる
明確化要求(clarification request) Sorry? / Pardon? 自分で言い直す
メタ言語的フィードバック(metalinguistic feedback) Yesterday... so, past tense? 自分で直す
引き出し(elicitation) Yesterday, you...? 自分で完成させる
くり返し(repetition) I go to Kyoto yesterday? (上がり調子) 自分で気づいて直す

下の4つ(明確化要求・メタ言語的フィードバック・引き出し・くり返し)は、正解を言わずに生徒自身に直させるので、まとめてプロンプト(prompts)とよばれます 2。つまり実際には、誤り訂正は「正しい形を言ってあげる」だけではなく、正解を言わずに、生徒が自分で直すきっかけを出す返し方もふくむ、ということです。

🎈たとえるなら

リキャストは「正しい道を代わりに歩いてみせるガイド」、プロンプトは「この先、分かれ道があるよ」とヒントだけ出すコーチです。ガイドについて歩くと楽ですが、道を覚えたかはわかりません。コーチのヒントで自分で選んだ道は、記憶に残りやすいのです。大事なのは、まだ歩いたことのない道(習っていない形)では、ヒントを出しても選べないので、そのときは道を見せることです。

似たものとのちがい:リキャストとプロンプト

リキャスト プロンプト 明示的訂正
先生がすること 正しい形で、さりげなく言い直す 正解を言わず、ヒントを出す 「ちがう、こう言う」とはっきり正す
生徒がすること 言い直さなくても会話は続く 自分で直す 正解を受け取る
ポイント 相づちと区別がつかず、直されたと気づかないことがある まだ知らない形は自力では直せない 正解を示すので、その形をまだ知らない生徒にも使える
教室研究のメタ分析の効果量 2 d = 0.53 d = 0.83 d = 0.84

やり方を3ステップで

  1. 目的を決める:正確さをねらう練習か、自由に話す活動かを決め、直す項目を1〜2個にしぼる。
  2. 返し方を選ぶ:既習で自分で直せそうならプロンプト("Yesterday, you...?")、難しそうなら直す部分を強調した短いリキャストか明示的訂正。
  3. 自由に話す活動では止めない:会話を止めない短いリキャストにするか、メモして活動後にまとめて扱う。

研究ではどうなってる?

🔬研究ではこう
  • 最初の研究では、先生は圧倒的にリキャストを多く使っていたのに、リキャストのあとに生徒が自分で言い直すことはまれでした。ほかの4種類(引き出し・メタ言語的フィードバック・明確化要求・くり返し)は、生徒自身の修正につながりやすかったと報告されています 1。
  • 世界の教室での誤り訂正をまとめたメタ分析では、訂正全体の57%がリキャスト、30%がプロンプトで、訂正される誤りは文法が43%と最多でした 3。
  • 誤り訂正の効果のメタ分析(33研究)では、全体として中程度の効果があり、時間がたっても持続していました。実験室の研究の方が教室の研究より効果が大きく、EFL(日本のような外国語環境)の研究の方が効果が大きい傾向でした 4。
  • 教室研究だけ(15研究・827人)を集めたメタ分析では、効果量は d = 0.74。種類別ではリキャスト d = 0.53、プロンプト d = 0.83、明示的訂正 d = 0.84で、平均の効果量はプロンプトの方が大きくなりました(ただし、訂正なしのグループと比べた群間の値では両者の信頼区間が重なり、プロンプトの有意な優位がはっきり示されたのは事前・事後の比較〔群内〕です)。効果は、自由に話す・書くタイプのテストで最も効果が見えました。年齢の低い学習者ほど恩恵が大きい傾向もありました 2。
  • フランス語を母語とする小学6年生64人が英語の his/her を学んだ4週間の実験では、全体としてプロンプトの方がリキャストより効果的で、習熟度の高い生徒はどちらでも伸びたが、低い生徒はプロンプトの方がはるかに伸びたと報告されています 5。
  • 日本の大学の英語クラス4つ(167人)で、ペアで互いに訂正し合う方法を教えた実験では、1学期後、訂正の練習をしたグループは正確さと流暢さの両方が伸びました 6。

生徒は「直してほしい」と思っている

「まちがいを直すと生徒が萎縮する」と心配する先生は多いでしょう。ところが調査をまとめたレビューでは、学習者は先生が思うより多くの訂正を望んでいる傾向が示されています 7。395人の生徒と46人の先生を比べた調査でも、生徒は先生よりずっと訂正を望み、明示的な訂正にも肯定的で、訂正を受けたときに前向きな気持ちを感じていました 8。もちろん言い方しだいですが、「直さない方が親切」とは限らないのです(間違いは直さない方がいい?)。

リキャストがダメなわけではない

ただし、リキャストが「効かない」わけではありません。4つの国・環境の教室を比べた研究では、韓国の EFL 教室では訂正の83%がリキャストで、しかもリキャストのあとに生徒が反応・修正する割合が、カナダの教室より高かったのです。生徒がもともと形に注意を向ける授業に慣れていて、リキャストが短く、直す部分が目立つ形だと気づかれやすい、と考えられています 9。

日本語イマージョンの小学校とフランス語イマージョンの小学校を比べた研究でも、日本語イマージョンではリキャストのあとの修正が最も多く見られました。ここから、授業のふだんの傾向とは反対向きのフィードバック(形中心の授業なら意味中心寄りの、意味中心の授業なら形に注目させる)が生徒の反応や言い直しを引き出しやすい、という「カウンターバランス仮説」が提案されています 10。ただしこの研究と上の4環境の比較 9 が測ったのは、訂正直後の反応(アップテイク)と言い直しで、長期的な習得効果ではありません。

明日の授業でこうする

✏️誤り訂正の5つのルール
  1. 目的を決めてから直す:正確さをねらう練習なら、既習のねらいの項目を優先して直す。自分で直せそうならプロンプトで気づかせ、難しそうなら短いリキャストや明示的訂正に切り替える。自由に話す活動なら、全部は直さず、会話を止めない短いリキャストか、メモして活動後にまとめて扱う。
  2. 既習で、自分で直せそうな誤りにはプロンプトを試す:答えを言うより、"Yesterday, you...?" と途中まで言って引き出す。フランス語母語の小学6年生が his/her を学んだ実験では、習熟度の低い生徒でプロンプトがリキャストよりはるかに有効でした 5。ただし、その形をまだ知らない生徒は自力では直せないので、そのときは正しい形を示します。
  3. リキャストは短く、直す部分を強調:文全体を長く言い直すより、"You WENT to Kyoto?" のように、直す部分を中心に短く言い直す(部分的リキャスト)方が、訂正だと気づかれやすい可能性があります。ただし根拠の研究 9 は教室どうしを比べた観察研究で、測ったのは主に直後の反応(アップテイク)と言い直しです。
  4. 一度に1〜2項目にしぼる:その単元のねらいの文法を中心に、毎回同じように直す。生徒も「何を直されているか」がわかりやすくなります。
  5. ペアで直し合うスキルを教える:「Pardon?」「Past tense?」などのプロンプトの言い方を生徒に教えると、先生一人では届かない量の訂正が生まれます 6。
🗣️先生の英語(そのまま使える)
TYesterday, you...? (引き出し)
T"I go to Kyoto yesterday"? (くり返し・上がり調子)
TIs that past or present? Think about "yesterday." (メタ言語的フィードバック)
TSorry? Can you say that again? (明確化要求)
TYou WENT to Kyoto? Nice! Who did you go with? (短いリキャスト+会話を続ける)
TGood job! You fixed it yourself.
🏫実例
  • 小学校:年齢の低い学習者ほど訂正の恩恵が大きい傾向がありますが 2、まだ文法の説明は難しい時期です。先生が正しい形を自然にくり返す短いリキャストや、"Pardon?" で言い直しのチャンスを与える程度にとどめ、楽しい雰囲気を優先しましょう。
  • 中学校:やり取りの活動中は、先生は机の間を回りながら、耳にしたまちがいを3つだけメモする。活動後に「今日よく聞こえてきた英語」として板書し、クラス全体で「どこを直す?」と考えさせます。
  • 高校:スピーチ練習の録音を聞き直させ、自分のまちがいを3つ見つけて直す。ペアで "Past tense?" "Plural?" などのヒントを出し合う時間も作ります 6。
⚠️よくある失敗
  • リキャストばかりで、生徒は直されたことに気づいていない:会話の相づちと区別がつかないことがあります 1。直す部分を強調するか、プロンプトにしましょう。
  • 全部のまちがいを直す:会話が止まり、伝えたい気持ちがしぼみます。ねらいの項目にしぼって。
  • 「訂正すると萎縮する」と考えて何も直さない:生徒は訂正を望んでいることが多いのです 78。
  • 生徒が言い直したかどうか(アップテイク)だけで成功を判断する:その場で言い直せても、身についたとは限りません。効果は後のテストで見ましょう 7。

❓ よくある質問

Q. リキャストとは何ですか?

生徒の誤りを、先生が正しい形で言い直して返す訂正のしかたです。"I go to Kyoto yesterday." に "Oh, you went to Kyoto yesterday." と返すのが例で、生徒が直さなくても会話は続きます。世界の教室での誤り訂正の57%がリキャストだったというメタ分析もあります 3。

Q. プロンプトとは何ですか?

正解を言わずに、生徒自身に直させる訂正の総称です。明確化要求(Pardon?)、メタ言語的フィードバック(Past tense?)、引き出し(Yesterday I...?)、くり返し(誤りを上がり調子でくり返す)の4種類があります 2。

Q. リキャストとプロンプトは、どちらが効果的ですか?

教室研究だけを集めたメタ分析では、リキャスト d = 0.53、プロンプト d = 0.83 で、平均の効果量はプロンプトの方が大きくなりました。ただし訂正なしと比べた群間の値では信頼区間が重なっています 2。研究の場や学習者の習熟度によって変わる、というのが妥当な読み方です。

Q. 誤りを訂正すると、生徒は萎縮しませんか?

調査をまとめたレビューでは、学習者は先生が思うより多くの訂正を望む傾向が示されています 7。生徒395人と先生46人を比べた調査でも、生徒は先生よりずっと訂正を望み、訂正を受けたときに前向きな気持ちを感じていました 8。

Q. 話す活動中の誤りは、全部直すべきですか?

全部直すと会話が止まります。正確さをねらう練習では既習のねらいの項目を中心に直し、自由に話す活動では、会話を止めない短いリキャストにするか、メモして活動後にまとめて扱います。一度に直す項目は1〜2つにしぼるのがコツです。

🎓 もう一歩深く(大学院レベル)

🎓院生モードリキャスト vs プロンプト論争

Lyster & Ranta (1997) 以降、「リキャストは曖昧で、生徒が訂正だと気づかない」という主張と、「リキャストは正しいインプットを与え、会話を止めない」という主張が対立してきました 17。メタ分析の結果も単純ではありません。教室研究だけを対象にした Lyster & Saito (2010) ではプロンプトが有利でしたが 2、Li (2010) では実験室研究の効果の方が大きく、暗示的なフィードバックの方が効果が長く持続するという結果も出ています 4。

実験研究では、リキャストとメタ言語的説明を比べ、メタ言語的説明の方が、暗示的知識を測るとされるテスト(口頭の模倣)でも有利だったという報告があります 11。どちらが効くかは、研究の場(教室か実験室か)や学習者の習熟度 5 によって変わる、というのが現在の妥当な読み方です。授業のふだんの性格によって、訂正直後の反応や言い直しの起こりやすさが変わることも観察されていますが 109、それが長期的な習得の差になるかは、遅延テストを使った研究で確かめる必要があります。

🎓院生モードアップテイクは習得の証拠か

第二言語習得研究者の Roy Lyster 氏と Leila Ranta 氏 (1997) は、訂正の直後に生徒が反応すること(アップテイク uptake)と、その中で誤りが修正された反応(修正 repair)に注目しました。repair には、先生が示した正しい形の繰り返しも含まれます 1。しかしその後のレビューでは、アップテイクを習得の指標とみなすことには議論があり、また訂正の目的が「新しい知識を身につけさせること」なのか「すでにある知識を使えるようにすること」なのかという問いも整理されています 7。

日本の大学生の研究は、学習者どうしの訂正がモニタリング(自分と相手の発話を監視する力)を鋭くし、ペアでのくり返しの産出練習が手続き化を促すと解釈しています 6。先生一人が40人を直すには限界がある日本の教室で、「訂正のしかたを教える」ことは現実的な選択肢です。

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📑 出典(11件)

本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。

  1. Lyster, R., & Ranta, L. (1997). Corrective feedback and learner uptake: Negotiation of form in communicative classrooms. Studies in Second Language Acquisition, 19(1), 37-66. doi:10.1017/S0272263197001034 ✔ DOI照合済教室の誤り訂正を6種類に分類し、生徒の反応(アップテイク)を調べた古典的研究
  2. Lyster, R., & Saito, K. (2010). Oral feedback in classroom SLA: A meta-analysis. Studies in Second Language Acquisition, 32(2), 265-302. doi:10.1017/S0272263109990520 ✔ DOI照合済教室での口頭の誤り訂正のメタ分析(15研究・827人)。リキャストよりプロンプトの効果が大きい
  3. Brown, D. (2016). The type and linguistic foci of oral corrective feedback in the L2 classroom: A meta-analysis. Language Teaching Research, 20(4), 436-458. doi:10.1177/1362168814563200 ✔ DOI照合済教室で先生がどんな誤り訂正をしているかを集計したメタ分析。訂正の57%がリキャスト
  4. Li, S. (2010). The effectiveness of corrective feedback in SLA: A meta-analysis. Language Learning, 60(2), 309-365. doi:10.1111/j.1467-9922.2010.00561.x ✔ DOI照合済誤り訂正(フィードバック)のメタ分析(33研究)。全体として中程度の効果で、効果は持続する
  5. Ammar, A., & Spada, N. (2006). One size fits all? Recasts, prompts, and L2 learning. Studies in Second Language Acquisition, 28(4), 543-574. doi:10.1017/S0272263106060268 ✔ DOI照合済小学6年生で、リキャストとプロンプトの効果を習熟度別に比べた実験
  6. Sato, M., & Lyster, R. (2012). Peer interaction and corrective feedback for accuracy and fluency development: Monitoring, practice, and proceduralization. Studies in Second Language Acquisition, 34(4), 591-626. doi:10.1017/S0272263112000356 ✔ DOI照合済日本の大学生に、ペアで互いに訂正し合う方法を教えた実験
  7. Lyster, R., Saito, K., & Sato, M. (2013). Oral corrective feedback in second language classrooms. Language Teaching, 46(1), 1-40. doi:10.1017/S0261444812000365 ✔ DOI照合済口頭の誤り訂正研究の総説。学習者は先生が思うより訂正を望んでいる傾向がある
  8. Roothooft, H., & Breeze, R. (2016). A comparison of EFL teachers' and students' attitudes to oral corrective feedback. Language Awareness, 25(4), 318-335. doi:10.1080/09658416.2016.1235580 ✔ DOI照合済誤り訂正について、先生より生徒の方が訂正を望んでいる傾向を示した調査
  9. Sheen, Y. (2004). Corrective feedback and learner uptake in communicative classrooms across instructional settings. Language Teaching Research, 8(3), 263-300. doi:10.1191/1362168804lr146oa ✔ DOI照合済4つの国・環境の教室で、誤り訂正の種類と生徒の反応を比べた研究(韓国のEFLを含む)
  10. Lyster, R., & Mori, H. (2006). Interactional feedback and instructional counterbalance. Studies in Second Language Acquisition, 28(2), 269-300. doi:10.1017/S0272263106060128 ✔ DOI照合済日本語イマージョンとフランス語イマージョンの教室を比べ、授業の性格によって効くフィードバックが違うと論じた研究
  11. Ellis, R., Loewen, S., & Erlam, R. (2006). Implicit and explicit corrective feedback and the acquisition of L2 grammar. Studies in Second Language Acquisition, 28(2), 339-368. doi:10.1017/S0272263106060141 ✔ DOI照合済過去形 -ed の誤りに、言い直し(リキャスト)とルールの説明(メタ言語的説明)を比べた実験。説明の方が有利

最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら