目標・評価規準・CAN-DOリストの書き方 ― 「〜できる」の作り方と3観点
学年のCAN-DOリスト、単元の目標、本時の目標、そして3観点の評価規準。似た言葉がたくさん出てきて混乱しがちな「目標と評価」を、階段の図と書き方の型、例文で整理します。
エビデンスの強さ:目標と評価規準の書き方は、文部科学省の手引きと国研の参考資料にもとづく制度上の枠組み。CAN-DOの自己評価については研究(メタ分析)があり、その結果も紹介する。

目標と評価規準ってなに? ― 段階で考える
ひとことで言うと、目標は「生徒にこうなってほしい姿」(〜することができる)で、評価規準は「その姿が見えた」と判断するための目印(〜している)です。
英語の授業には、いろいろな「目標」が出てきます。まず全体像を整理しましょう。文部科学省の手引きは、学校が卒業時の学習到達目標と学年ごとの学習到達目標を設定し、それを年間指導計画・単元計画に反映させる構造を示しています 1。このページでは、そこに本時の目標を加えた「学年→単元→本時」の3段階で考えます(制度で決められた階層ではなく、説明のためのモデルです)。
| 段階 | 名前 | 誰が決める? | 書き方 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 学年・卒業時 | 学習到達目標(CAN-DOリスト) | 学校(英語科全員で) | 5領域ごとに「〜することができる」 | 日常的な話題について、メモを見ながら1分程度で話し、質問に答えることができる |
| 単元 | 単元の目標 | 担当の先生(学年で共有) | 目的・場面・状況を入れて「〜することができる」 | ALTに週末の過ごし方を提案するために、町のおすすめを比べて伝え、質問に答えることができる |
| 1時間 | 本時の目標 | 担当の先生 | 1時間で確かめられる「〜できる」 | 2つを比べて、どちらが好きか理由とともに伝え合うことができる |
それぞれの目標に対して、「どんな姿が見えたら達成と判断するか」を書いたのが評価規準(ひょうかきじゅん)です。
学校のCAN-DOリストと評価規準の関係について、国研の参考資料は、学年ごとの目標は5領域ごとに1文の能力記述文で示し、それに対応する評価規準は3観点で書く、という二重の形を示しています 2。
目標は「行き先」、評価規準は「着いたかどうかを判断する目印」、ルーブリックは「どこまで近づいたかを測る目盛り」です。行き先が「駅」だけだとあいまいですが、「北口の改札を出て、時計台の前に立っている」と書けば、着いたかどうかを誰でも同じように判断できます。
目標・評価規準・評価基準のちがい
| 何を書く? | 語尾・形 | たとえ | |
|---|---|---|---|
| 目標(CAN-DO・単元・本時) | 生徒にこうなってほしい姿 | 「〜することができる」 | 行き先 |
| 評価規準(きじゅん) | その姿が見えたと判断する目印。3観点で書く | 「〜している」「〜しようとしている」など | 着いたかどうかを判断する目印 |
| 評価基準(きじゅん) | 点数の線引き | ― | ― |
| ルーブリック | 評価規準を「A・B・C」の具体的な姿に書き分けたもの | 段階ごとの姿の記述 | どこまで近づいたかを測る目盛り |
「規準」と「基準」は読み方が同じなので、区別して使われることが多い言葉です。
やり方を3ステップで
- 学年のCAN-DOから単元の目標を書く:「【目的・場面・状況】ために、【話題】について、【言語材料など】を用いて、【行為】することができる。」の型に当てはめる。
- 本時の目標を1つ書く:1時間の終わりに確かめられること、生徒が主語、多くても2つ。
- 評価規準を3観点の語尾で書く:知識・技能は「〜を理解している/〜技能を身に付けている」、思考・判断・表現は「〜している」、主体的に学習に取り組む態度は「〜しようとしている」。
CAN-DOリストの書き方
文部科学省の手引き(2013年)は、各学校が学習到達目標を「〜することができる」という能力記述文の形で設定するよう示しています 1。能力記述文には、次の2つの要件が望ましいとされています 1。
- ある言語の具体的な使用場面での言語活動を表していること
- 学習活動の一環として行う言語活動で、学校が適切な方法で評価できること
学年ごとの段階をつけるときは、学習指導要領の目標を「どのような条件の下でできるか」「どの程度できるか」「どのような内容であればできるか」で分けることが、代表的な軸として例に挙げられています 1。
| 学年 | 能力記述文の例 | 変えた軸 |
|---|---|---|
| 中1 | 自分の好きなことについて、簡単な質問をしたり答えたりして、1分程度やり取りを続けることができる | 内容:自分のこと |
| 中2 | 日常的な話題について、メモを見ながら、理由を加えて考えを伝え、相手の質問に答えることができる | 条件:メモあり/程度:理由つき |
| 中3 | 社会的な話題について、読んだことをもとに、メモを見ずに賛否と理由を述べ合うことができる | 内容:社会的な話題/条件:メモなし |
単元の目標・本時の目標・評価規準の書き方
単元の目標
国研の参考資料は、単元の目標を学年の目標をふまえて設定し、題材・言語材料・中心となる言語活動の目的や場面、状況などに即して書くよう示しています 2。型にすると次のようになります。
【目的・場面・状況】ために、【話題】について、【言語材料など】を用いて、【行為】することができる。
本時の目標
- 1時間の終わりに確かめられることだけを書く(「理解を深める」のように確かめようがない書き方は避ける)
- 生徒が主語(「〜させる」ではなく「〜できる」)
- 1つ、多くても2つ
評価規準(3観点)
国研の参考資料の「基本的な形」の語尾をまとめると、次のとおりです 2。
| 観点 | 語尾 | 何を見る? |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 〈知識〉〜を理解している/〈技能〉〜技能を身に付けている | 言語材料の理解と、それを使う技能 |
| 思考・判断・表現 | 【目的等】に応じて、〜している | 目的や場面に合わせて考え、伝えているか |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 【目的等】に応じて、〜しようとしている | 粘り強さと、自分の学習の調整 |
主体的に学習に取り組む態度は、性格や行動の傾向(挙手の回数など)ではなく、粘り強く取り組もうとする側面と自らの学習を調整しようとする側面の2つを見る、とされています 2。
研究ではどうなってる? CAN-DOの自己評価
- 自己評価と実際の言語能力の関係を調べた67研究(97サンプル・6万8千人超)のメタ分析では、相関は全体で r = .47 でした。評価の基準の種類や示し方、自己評価の道具、事前の練習(トレーニング)などで相関の強さが変わりました 3。
- 1998年のメタ分析と実証研究では、自己評価の当たりやすさは技能によって異なり、学習者がその技能をどれだけ経験しているかが関係していました 4。
- ルーブリックを形成的に使った21研究のレビューでは、学習や自己調整にプラスの可能性がある一方、効果は使い方しだいでした 5。
- 授業中のこまめな評価とフィードバック(形成的評価)を強めると、学習が大きく伸びるという研究の蓄積があります 6。
相関 r = .47 は、「自己評価が高い生徒ほど実力も高い傾向がはっきりあるが、一人ひとりで見るとずれも大きい」くらいの強さです 3。だから、CAN-DOの自己評価は学びの振り返りと、先生の指導の見直しに使うのが向いています。
CAN-DOの自己評定は、そのまま「成績の材料」にできない
手引きは、CAN-DOを生徒と共有して自己評価に使うと、振り返りや意欲、自信につながる効果が期待できるとする一方、生徒の自己評価の結果を教員が行う評価の資料として使うことはできないと明記しています。また、外部の検定試験の結果で評定につながる評価をすることもできないとしています 1。
ただし、自己評価がすべて評価と無関係というわけではありません。現行の国研の参考資料は、「主体的に学習に取り組む態度」の総括で、自己評価(振り返りの記述内容)を参考にする例を示しています 2。区別したいのは、「CAN-DOに付けた自己評定の数値」と「学習の調整の様子がわかる振り返りの記述」です。前者をそのまま成績にすることはせず、後者は先生の観察などとあわせて、主体的態度を評価するときの参考にできます。
自己評価は「当てるための道具」ではなく、「自分の現在地を知るための道具」と考えましょう。メタ分析でも、自己評価と実力の相関の強さは、評価の基準の種類や示し方、事前のトレーニングの有無などによって変わっていました 3。基準を具体的に示し、自己評価のしかたを練習させることは、精度を上げる工夫として試す価値があります(回数を増やせば必ず上がる、という結果ではありません)。
明日の授業でこうする
- 英語科の全員で作る。 手引きは、英語科の教員全員(できればALTも)が参加し、育てたい生徒像や評価の方法を共有する体制を求めています 1。
- 卒業時の目標から決め、学年に分ける。 学習指導要領の5領域の目標を、条件・程度・内容で段階づけます 1。
- 各領域の「学年ごとの目標」は、原則1文で書く。 国研の参考資料は、5領域それぞれの学年ごとの目標を1文の能力記述文で示すことを基本の形としています 2。手引きも、細かくしすぎると年間計画や単元計画と結びつけにくくなると注意しています 1。学校独自に、補助的な下位のCAN-DOを複数置くことはありえますが、基本の形とは区別しておきましょう。
- 年間指導計画の各単元に、どのCAN-DOを担当させるかを書きこむ。 担当のないCAN-DOがあれば、計画を見直すサインです。
- 生徒用の自己評価表を作り、年度末に見直す。 生徒向けにわかりやすく書き下した自己評価表が提案されています 1。見直しは原則として年度末に行います 1。
| 領域 | 能力記述文の例 |
|---|---|
| 聞くこと | 社会的な話題についての2〜3分の説明を聞いて、要点をメモし、ペアに伝えることができる |
| 読むこと | 社会的な話題についての説明文を読んで、筆者の主張と根拠を表に整理することができる |
| 話すこと[やり取り] | 読んだ話題について、自分の意見と理由を述べ、相手の意見に質問することができる |
| 話すこと[発表] | 読んだ話題について、メモをもとに1分程度で要約と自分の意見を話すことができる |
| 書くこと | 読んだ話題について、意見と理由を1段落(80語程度)で書くことができる |
- CAN-DOリストが壁に貼ってあるだけ:年間計画・単元計画・評価と結びついていなければ、作った意味がありません 1。
- 「理解する」「親しむ」など、確かめようのない動詞:手引きは、学校が評価できる言語活動を表すことを要件にしています 1。「〜について、〜を使って、〜できる」まで書きましょう。
- 知識の羅列になっている:「比較級が使える」は言語材料の目標です。CAN-DOは「どんな場面で、何ができるか」を書きます。
- CAN-DOの自己評定の数値をそのまま成績に入れる:手引きで明確に否定されています 1。振り返りの記述は、主体的態度を評価するときの参考にとどめます 2。
- 主体的態度を挙手やノート提出の回数で評価する:国研の資料が示す2つの側面(粘り強さ・学習の調整)とずれます 2。
❓ よくある質問
Q. CAN-DOリストはどう書けばいいですか?
「〜することができる」という能力記述文で書きます。手引きは、具体的な言語の使用場面での言語活動を表していること、学校が適切な方法で評価できることの2つを要件として示しています 1。学年の段階づけには「条件・程度・内容」の軸が代表的です 1。
Q. 評価規準と評価基準のちがいは?
評価規準は、目標に対して「どんな姿が見えたら達成と判断するか」を書いた目印です。読み方は同じでも、点数の線引きを表す「評価基準」とは区別して使われることが多い言葉です。評価規準は3観点で、「〜している」「〜しようとしている」などの形で書きます 2。
Q. 生徒のCAN-DO自己評価を成績に使ってもいいですか?
自己評定の数値をそのまま成績の根拠にはしません。手引きは、生徒の自己評価の結果を教員が行う評価の資料として使うことはできないと明記しています 1。一方、振り返りの記述は、主体的に学習に取り組む態度を評価するときの参考にできるとされています 2。
Q. 生徒の自己評価はどのくらい当たりますか?
67研究のメタ分析では、自己評価と実際の言語能力の相関は全体で r = .47 でした 3。自己評価が高い生徒ほど実力も高い傾向ははっきりあるが、一人ひとりで見るとずれも大きい、くらいの強さです。相関の強さは基準の示し方や事前の練習などで変わりました。
Q. 学年ごとの目標は何文くらいで書けばいいですか?
国研の参考資料は、5領域それぞれの学年ごとの目標を1文の能力記述文で示すことを基本の形としています 2。手引きも、細かくしすぎると年間計画や単元計画と結びつけにくくなると注意しています 1。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モード能力記述文の妥当性と、自己評価研究の読み方
CAN-DO形式の能力記述文は、CEFR に代表される「言語を使って何ができるか」という行為志向の考え方にもとづきます。学習指導要領の解説も、CEFR を学習者・教授者・評価者が同じ基準で熟達度を判断できるよう開発されたものとして紹介しています 7。ただし、学校が独自に作るCAN-DOは、記述の難易度の順序が実証的に確かめられているとは限りません。段階づけの妥当性を、生徒のパフォーマンスのデータで確かめ、年度ごとに見直すことが重要です 1。
自己評価研究では、相関の大きさが道具や基準の示し方、練習の有無によって変わることが繰り返し示されています 3。言語テストの研究者 Steven Ross 氏は、学習者が実際に経験した技能ほど自己評価の妥当性が異なり得ることを指摘しました 4。これは、CAN-DOの自己評価を「授業で実際にやった活動」に結びつけて書くことの理論的な根拠になります。
🎓院生モード「できる」の目標と、理解・転移の目標
逆向き設計の提唱者は、知識・技能の習得そのものではなく、学んだことを新しい場面で使う転移(transfer)を最終目標に置くよう主張しています 8。英語教育に置きかえると、CAN-DOの能力記述文のうち、既習事項を新しい目的・場面で自立的に使うことを求める記述は、転移の目標と相性がよいといえます。ただし学校のCAN-DOには、授業で練習した特定の活動ができることを表すものも含まれます。手引きも、教室での特定の活動ができることと、実生活で使える長期的な言語力とは必ずしも同じではないと注意しています 1。評価規準の「知識」を習得の目標と見る対応も、理解を助けるための大まかな対応関係です。
日本の制度では、行為志向のCAN-DO(5領域ごとの1文)と、資質・能力の3観点による評価規準という2つの記述体系が並存しています 2。同じ活動を2つの体系で記述する負担は小さくありませんが、「できること(パフォーマンス)」と「それを支える知識・思考・態度」を区別して見るための枠組みと考えると、両者の役割分担が見えてきます。
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📑 出典(8件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 初等中等教育局 (2013). 各中・高等学校の外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定のための手引き 公式ページ ✔ リンク確認済中・高で学習到達目標を「〜することができる」の形で作り、年間・単元計画と評価に生かす手順を示した文科省の手引き(2013年3月)
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2020). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語の3観点の評価規準の作り方・単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- Li, M., & Zhang, X. (2021). A meta-analysis of self-assessment and language performance in language testing and assessment. Language Testing, 38(2), 189-218. doi:10.1177/0265532220932481 ✔ DOI照合済自己評価と実際の言語能力の相関のメタ分析(67研究・6万8千人超)。全体の相関は r = .47。基準の示し方や練習で変わる
- Ross, S. (1998). Self-assessment in second language testing: A meta-analysis and analysis of experiential factors. Language Testing, 15(1), 1-20. doi:10.1177/026553229801500101 ✔ DOI照合済英語の自己評価がテストの成績とどのくらい一致するかを60の相関でまとめたメタ分析
- Panadero, E., & Jonsson, A. (2013). The use of scoring rubrics for formative assessment purposes revisited: A review. Educational Research Review, 9, 129-144. doi:10.1016/j.edurev.2013.01.002 ✔ DOI照合済ルーブリックを形成的に使った21研究のレビュー。学習と自己調整にプラスの可能性があるが、使い方しだい
- Black, P., & Wiliam, D. (1998). Assessment and classroom learning. Assessment in Education: Principles, Policy & Practice, 5(1), 7-74. doi:10.1080/0969595980050102 ✔ DOI照合済形成的評価(学習の途中のフィードバック)が大きな学習効果につながることを示した総説
- 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語科の目標(5領域)・言語材料(語数・文法事項)・指導計画の作成(授業は英語で行うことを基本とする等)を説明した公式の解説
- McTighe, J., & Wiggins, G. (2012). Understanding by Design framework 公式ページ ✔ リンク確認済逆向き設計(UbD)の3段階(求める結果→評価の証拠→学習計画)を著者自身が短くまとめた解説(ASCD)
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら







