英語の指導案セルフチェックリスト50 ― 提出前に見る「目標・評価・展開・配慮」の点検表
指導案を提出する前に、10の観点・50項目で自己点検しましょう。各項目に「よくあるNGと直し方」をつけました。チェックリストが効くとき・効かないときの研究も紹介し、「形だけの点検」にしない使い方まで解説します。
エビデンスの強さ:項目は学習指導要領解説・国研の参考資料・文科省のガイドラインと指導案研究にもとづく実践的な点検表。指導案の質を測る道具の研究はあるが、チェックリストを使うと授業や生徒の学びがよくなるかを直接確かめた研究はほとんどない。医療ではチェックリスト導入の効果が研究によって一致しないことも報告されている。

- 10観点×5項目=50項目。 まず★の必須15項目だけでも、提出前の赤ペンの多くは防げます。
- 項目ごとに「NG→直し方」。 引っかかった項目は、リンク先の解説ページで書き方を確認します。
- 形だけの点検にしない。 医療の研究でも、チェックリストを入れれば必ず効くとはかぎりませんでした。「考えるための道具」として使いましょう。
指導案チェックリストってなに? なぜ使うの?
ひとことで言うと、指導案チェックリストは、書き終えた指導案の「見落とし」(目標と評価のずれ、時間の合計など)を、提出前に自分で見つけるための点検表です。
指導案は、書く項目が多く、締め切り前は誰でも見落としが出ます。「本時の目標と評価規準がずれている」「時間の合計が50分になっていない」「評価の場面が書いていない」――指導教員や指導主事の赤ペンの多くは、知識不足より見落としです。見落としを減らす代表的な道具がチェックリストです。
飛行機のパイロットは、何千回飛んだベテランでも離陸前にチェックリストを読み上げます。腕が悪いからではなく、慣れた作業ほど、1つの抜けに気づきにくいからです。指導案のチェックリストも、新任の先生のためだけのものではありません。
「形だけの点検」と「考えるための道具」のちがい
| 形だけの点検 | 考えるための道具 | |
|---|---|---|
| 使い方 | 全部に✓をつけて満足する | 1つ1つの項目で「自分の授業ではどうか」を考える |
| 見る項目 | 50項目を毎回全部見て、疲れて形だけになる | ★15項目+自分がよく抜ける3項目から始める |
| 価値があるのは | ✓の数 | 引っかかった項目(そこを直すと授業が変わる) |
チェックリストを「持っている」ことと「使いこなしている」ことは別です 12(くわしくは下の「研究ではどうなってる?」)。
やり方を3ステップで
- 書いたあと、★15項目だけを自分で点検する。
- 同僚・実習生どうしで交換して点検する:相手の指導案で引っかかった項目に付箋を貼り、理由を一言書く。
- 授業後にもう一度チェックする:うまくいかなかったことと項目を照らし合わせ、自分の「よく抜ける項目」を3つ決める。
研究ではどうなってる?
- 8か国8病院で19項目の手術安全チェックリストを導入した研究では、導入前後で死亡率が1.5%から0.8%に、合併症の発生率が11.0%から7.0%に下がりました(前後比較の研究)1。
- ところが、カナダ・オンタリオ州で101病院が一斉にチェックリストを導入した前後を比べた研究では、死亡率・合併症率に有意な低下は見られませんでした 2。
- 教育実習生の指導案323本を17基準のルーブリックで分析した研究では、学習課題や教材づくりは強い一方、協働のための社会的な目標や、グループ活動のルール・約束事の記述が弱いという傾向が見られました 3。
- ドイツの言語科目の教育実習生の指導案を分析した研究では、本時の主な課題を学習集団の認知レベルに合わせる計画力を信頼性をもって測ることができ、その判断を教科の観点から行うことは、一般的な観点から行うより指導案に反映させるのが難しいこと、計画力は研修期間中に大きく伸びることが示されました 4。
- 中等教員17人を養成課程から着任2年目まで追った研究では、計画のしかたの学びは養成課程の後も続き、計画を通して授業を学び、授業を通して計画を学んでいました 5。
チェックリストは「配るだけ」では効かない
同じ手術のチェックリストでも、導入前後で死亡率が下がった研究と 1、州全体で一斉に導入しても有意な変化がなかった研究があります 2。どちらも前後比較で、病院や時代の条件も違うので単純には比べられませんが、少なくともチェックリストを「持っている」ことと「使いこなしている」ことは別だと考えられます。指導案のチェックリストも、提出用の書類として形式的に印をつけるだけでは、授業はよくなりません。1つ1つの項目で「自分の授業ではどうか」を考えるときに、はじめて役に立ちます。
指導案セルフチェックリスト50
★は必須15項目。各項目は、学習指導要領解説・国研の参考資料・文部科学省の資料と、上の指導案研究をもとに筆者が作成しました。
A 目標(本時・単元)
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| A1★ | 本時の目標は生徒が主語の「〜できる」になっているか | 「〜させる」→「〜することができる」 |
| A2★ | 本時の目標は1時間の終わりに確かめられるか | 「理解を深める」→「2つを比べ、理由をつけて好きな方を伝えることができる」 |
| A3 | 単元の目標に目的・場面・状況が入っているか(書き方) | 「比較級を使って話す」→「ALTに週末の過ごし方を提案するために…」 |
| A4 | 本時の目標が単元の目標のどの段階かがわかるか | 単元計画の表に本時の位置と役割を1行で |
| A5 | 学年のCAN-DOとのつながりが書かれているか(年間指導計画) | 単元観に「学年CAN-DO〇〇の段階」と明記 |
B 評価規準と評価場面
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| B1★ | 評価規準が3観点の語尾の型(〜理解している/〜技能を身に付けている/〜している/〜しようとしている)になっているか 6 | 「意欲的に取り組む」→「【目的等】に応じて、〜伝え合おうとしている」 |
| B2★ | 本時で記録に残す評価をするか・しないかが書いてあるか 6 | 全時間に3観点の◎→記録は単元に2〜3か所にしぼる(評価計画) |
| B3★ | 評価の方法(観察・ワークシート・録音・テスト)とb(おおむね満足)の具体的な姿が書いてあるか | 「様子を見る」→「理由を1つ以上述べて質問に答えている(観察)」 |
| B4★ | 「態度」を挙手や提出の回数で見ていないか 7 | 思考・判断・表現と対の形で、一定の学習の後に評価 6 |
| B5 | c(努力を要する)の生徒への手立てが書いてあるか 6 | 「個別に支援する」→「モデル文カードを渡し、先生と1往復練習する」 |
C 単元観・生徒観・指導観
単元観は「この単元で何を学ぶ価値があるか」、生徒観は「このクラスの実態(できること・課題)」、指導観は「だからどう教えるか」を書く欄です(様式によっては「教材観」などの名前です)。
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| C1 | 単元観に、題材と言語材料の学ぶ価値が書いてあるか | 教科書の要約だけ→「なぜこの題材でこの力が育つのか」を1〜2文 |
| C2★ | 生徒観に具体的な事実(テスト・活動の様子)があるか | 「明るく素直」→「理由を述べられた生徒は約3割(前単元のパフォーマンステスト)」 |
| C3 | 生徒観と指導観が対応しているか | 生徒観の課題が指導観で扱われていない→課題ごとに手立てを1つ |
| C4 | 前の学年・前の単元とのつながりが書いてあるか | 小学校で扱った表現、前の課の言語材料を明記 |
| C5 | 生徒の個人が特定できる情報を書いていないか | 実名・診断名→「読み書きに時間がかかる生徒」など困難さで書く |
D 本時の展開と時間
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| D1★ | 時間の合計が授業時間に合っているか | 50分の授業で合計55分→帯活動か導入を削る |
| D2★ | 展開の最も長い時間が本時の目標の活動に使われているか | 説明25分・活動10分→目標の言語活動に最も多くの時間を(50分の組み立て) |
| D3 | 各活動のねらい(なぜこの活動か)が書いてあるか | 活動名の羅列→「〇〇のために」を一言 |
| D4★ | 予想される生徒の反応と、それへの手立てがあるか | 「ペアで練習」だけ→「理由が出ないペアには Why? のカードを示す」 |
| D5 | まとめ・振り返りが本時の目標と対応しているか | 「感想を書く」→「目標の『理由を言えたか』を自己評価」 |
E 言語活動
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| E1★ | 本時に、英語を使って考えや気持ちを伝え合う活動があるか | 練習(ドリル)だけで終わる→短くても実際に伝え合う活動を |
| E2 | 活動に目的・場面・状況が設定されているか | 「ペアで会話」→「週末の予定を決めるために、相手の都合を聞く」 |
| E3 | やり取りと発表、読む・聞く・書くとのつながりがあるか 8 | 1つの領域だけ→読んだことを話す、話したことを書くなど |
| E4 | 活動の手順が、生徒の動き・時間・ペアの組み方まで書いてあるか | 「グループ活動」→「4人班、役割カード、3分×2回、席を移動」 |
| E5 | 協働の活動にルール・約束事が書いてあるか 3 | 「話し合う」→「1人1回は発言、相手の意見を言い換えてから反論」 |
F 先生の英語と指示
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| F1★ | (中・高)授業を英語で行うことを基本とし、生徒の理解の程度に応じた英語になっているか 8。小学校の解説にこの規定はないので、小学校では児童にわかる英語かを見る | 英語の指示が長く難しい→短い文・既習の語・ジェスチャーで |
| F2 | 主な指示とモデルの英語が展開に書いてあるか | 「英語で指示」→実際のセリフを書く |
| F3 | 日本語を使う場面と理由が決めてあるか | 何となく日本語→「文法の要点の確認は日本語で1分」など |
| F4 | 先生のモデル(デモンストレーション)があるか | いきなり「Start!」→先生とALT・代表の生徒でやって見せる |
| F5 | 発問に「本物の質問」(答えを先生が知らない質問)があるか | 答えの決まった質問だけ→「あなたならどうする?」を1つ |
G 個への配慮
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| G1★ | 学習活動で生じる困難さを予想し、手立てを書いたか 8 | 配慮欄が空欄→活動ごとに1つ(配慮のある指導案) |
| G2 | 手立てが「活動を外す」ではなく道具や手順の工夫か 8 | 「書かなくてよい」→「語群から選んで書く」 |
| G3 | 速く終わる生徒への発展課題があるか | 待ち時間ができる→「もう1つ理由を足す」「別の相手に話す」 |
| G4 | 本時の流れが見えるようになっているか | 口頭だけ→黒板の端に流れを掲示 |
| G5 | ペアやグループの組み方に配慮があるか 8 | 毎回くじ→対人関係に不安のある生徒は関わりのある相手と |
H ICT・教材
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| H1 | 端末を使うねらいが本時の目標と結びついているか | 「タブレットを使う」→「録音して聞き直し、自己修正するため」 |
| H2 | 端末を使わない場面が決めてあるか | 開きっぱなし→「ペア活動では閉じる」(ICTの指導案) |
| H3 | 生成AIを使う場合、使用の範囲とルールが書いてあるか 9 | 未記入→「初稿のあとのみ」「個人情報は入力しない」 |
| H4 | 機器トラブル時の代替があるか | 書いていない→「ペアの1台で交代」 |
| H5 | 教材・ワークシートの出典と著作物の扱いを確認したか | 出典なし→教科書・資料名を明記 |
I 板書・ワークシート
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| I1 | 板書計画が本時の目標とまとめを含んでいるか | 板書計画なし→目標・流れ・まとめの3つを必ず |
| I2 | 板書とワークシートの役割分担ができているか | 同じことを両方に→黒板は全体で考えること、紙は個人の作業 |
| I3 | ワークシートが1枚1目標になっているか | 何でも詰め込む→本時の目標に必要な欄だけ |
| I4 | 生徒の書く量が時間に見合っているか | 10分で100語→時間と語数を試しに自分で書いて確かめる |
| I5 | 文字の大きさ・行間・余白が読みやすいか | 小さい字でぎっしり→読みにくい生徒の立場で見直す |
J 書式・提出前
| No. | チェック項目 | よくあるNG → 直し方 |
|---|---|---|
| J1★ | 単元名・学年・日時・授業者・本時の位置(○/○時)が書いてあるか | 本時の位置なし→「本時 4/8」 |
| J2 | 単元計画の時数と本時の番号が一致しているか | 計画では5時間目、本時は4時間目→そろえる |
| J3★ | 本時の目標・評価規準・展開の評価欄の表現が一致しているか | 目標は「伝え合う」、評価は「書いている」→同じ行動で |
| J4 | 誤字脱字、英文のつづり・文法を声に出して確認したか | 英文の誤り→ALTや同僚に見てもらう |
| J5 | 誰かに読んでもらったか | 自分だけで提出→同僚に5分だけ見てもらう |
明日の授業でこうする
- 書いたあと、★15項目だけを自分で点検する:A1・A2・B1・B2・B3・B4・C2・D1・D2・D4・E1・F1・G1・J1・J3 の15項目です。慣れてきたら、自分がよく抜ける項目を3つ足します。
- 同僚・実習生どうしで交換して点検する:自分の指導案は「わかっているつもり」で読んでしまいます。相手の指導案で引っかかった項目に付箋を貼り、理由を一言書きます。
- 授業後にもう一度チェックする:授業で実際にうまくいかなかったことと、チェックリストの項目を照らし合わせ、自分用の「よく抜ける項目」を3つ決めます。計画のしかたの学びは養成課程の後も続き、授業を通して計画を学ぶという研究とも合う使い方です 5。
教育実習生の中2の指導案では、全時間の評価欄に3観点の◎が並び、本時は文法の説明が25分、言語活動が10分でした。B2で「記録に残す評価は単元末の第7時とパフォーマンステストにしぼる」、D2で「説明を10分に短縮し、ペアの伝え合いを2回で20分。1回目と2回目の間に、言えなかった表現をクラスで確かめる中間指導をはさむ」に直しました。協働の活動のルールが書かれていないのは実習生の指導案によく見られる弱点なので 3、E5の「1人1回は質問する」も足しました。
英語コミュニケーションⅠの指導案が、本文の内容理解の発問と音読だけで終わっていました。E3の点検で「読んだことについて意見を話す」活動を最後の15分に入れ、F5で「あなたが筆者ならどんな解決策を加えるか」という本物の質問を1つ用意しました。どの言語活動でどの力を育てるかは英語の指導案の中心なので、E列は特に丁寧に見ます。
外国語の授業で、活動が多く児童が途中で何をしているのかわからなくなっていました。G4で黒板の左端に本時の流れを絵カードで掲示し、F4で学級担任とALTのデモンストレーションを各活動の前に入れました。小学校の解説も、本時の活動の流れを黒板に書いておくといった配慮を例示しています 10。
❓ よくある質問
Q. 指導案のチェックリストはどんな観点で作られていますか?
目標、評価規準と評価場面、単元観・生徒観・指導観、本時の展開と時間、言語活動、先生の英語と指示、個への配慮、ICT・教材、板書・ワークシート、書式・提出前の10観点×5項目です。各項目に「よくあるNG→直し方」をつけています。
Q. 50項目を毎回全部見ないといけませんか?
全部を毎回見ると疲れて形だけになります。まず★印の必須15項目(本時の目標が生徒主語か、評価規準の語尾の型、記録に残す評価の有無、時間の合計、予想される生徒の反応など)だけを点検し、慣れてきたら自分がよく抜ける項目を3つ足します。
Q. 教育実習生の指導案で抜けやすいのはどこですか?
教育実習生の指導案323本を分析した研究では、学習課題や教材づくりは強い一方、協働のための社会的な目標や、グループ活動のルール・約束事の記述が弱い傾向が見られました 3。語学の実習生の研究では、教科固有の判断は一般的な判断より指導案に反映させるのが難しいことも示されています 4。
Q. チェックリストを使えば授業はよくなりますか?
使い方しだいです。医療の手術安全チェックリストでは、導入前後で死亡率が下がった研究と 1、州全体で一斉に導入しても有意な低下がなかった研究があります 2。指導案でも、印をつけるだけでなく、各項目で「自分の授業ではどうか」を考えるときに役立ちます。
Q. チェックリストはどう使うのが効果的ですか?
①書いたあと★15項目を自分で点検する、②同僚や実習生どうしで交換して点検し、引っかかった項目に付箋で理由を書く、③授業後にもう一度チェックし、自分用の「よく抜ける項目」を決める、の3段階です。計画のしかたは養成課程の後も、授業を通して学び続けるという研究とも合う使い方です 5。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モードチェックリスト研究が教えること ― 「持っている」と「使いこなす」は別
医療の研究者 Alex B. Haynes 氏らの研究は、19項目のチェックリストの導入と、死亡率・合併症率の低下が同時に起きたことを報告しました 1。一方、同じく医療の研究者 David R. Urbach 氏らは、政策として州全体で導入された後の実際の病院で、死亡率と合併症率に有意な低下を確認できませんでした 2。両研究とも前後比較であり、介入の効果を因果的に推定するには限界がありますが、この対比は、チェックリストの効果がチームの対話や実際の使い方といった実装の質に左右されうることを示唆しています(この解釈は筆者のもので、両研究が直接検証したことではありません)。
教育に置きかえると、指導案チェックリストを提出書類として義務化しても、それだけで授業の質が上がるとは限りません。同僚との相互点検や授業後の振り返りの中で、項目が「なぜ大事か」を言語化できたときに、チェックリストは思考の道具になります。
🎓院生モード指導案の質はどう測られてきたか
指導案の研究では、指導案そのものを評価する道具が作られてきました。理科教育の研究者 Christina L. Jacobs 氏らは、教師が書いた複数時間の理科の指導案を数量的に評価する道具を開発・検証し、研修の始めの実態把握と研修後の変化の追跡に使いました 12。教員養成を研究する Ilse Ruys 氏らは17基準のルーブリックで323本の指導案を分析し、協働学習の計画に特有の弱点を見いだしました 3。ドイツの教師教育の研究者 Johannes König 氏らは言語科目の教育実習生の研究授業の指導案から、主な課題を学習集団の認知レベルに合わせる判断を測定し、その判断を教科の観点から行うことの難しさを示しました(言語教育に固有の教え方までは扱っていません) 4。
これらの研究に共通する限界は、書かれた計画を評価しても、実際の授業や生徒の学びとの関係は別に確かめる必要があることです。指導案のチェックリストも同じで、50項目すべてを満たした指導案が良い授業を保証するわけではありません。チェックリストの項目を、授業の観察記録や生徒の学びの証拠と照らし合わせて改訂していくことが、研究的に誠実な使い方です。
🎓院生モード「直線的な計画モデル」とチェックリストの緊張
教師教育の研究者 Peter D. John 氏は、目標を立て、活動を選び、評価を決めるという合理的・技術的な計画モデルが、教育実習生の指導案の支配的なモデルになってきたことを批判し、文脈への依存を重視し、計画そのものを実践として捉える対話的なモデルを提案しました 11。イギリスの教員養成の研究者 Trevor Mutton 氏らの追跡研究も、計画の学びは養成課程をこえて続き、計画が「何を達成でき、何はできないか」への気づきも育っていくことを示しています 5。
チェックリストは本質的に「抜けを防ぐ」道具であり、直線的なモデルを強化する危険があります。その緊張をやわらげる方法は、D4(予想される生徒の反応)や C2(生徒の事実)のように、状況への応答を書かせる項目を必須に入れることです。本ページの★項目にそれらを含めたのは、チェックリストを技術的な合理性だけでなく、生徒を見て判断する力の練習にするためです。
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📑 出典(12件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Haynes, A. B., Weiser, T. G., Berry, W. R., Lipsitz, S. R., Breizat, A.-H. S., Dellinger, E. P., … (2009). A surgical safety checklist to reduce morbidity and mortality in a global population. New England Journal of Medicine, 360(5), 491-499. doi:10.1056/NEJMsa0810119 ✔ DOI照合済8か国8病院で19項目の手術安全チェックリストを導入した前後比較。死亡率と合併症率が下がった
- Urbach, D. R., Govindarajan, A., Saskin, R., Wilton, A. S., & Baxter, N. N. (2014). Introduction of surgical safety checklists in Ontario, Canada. New England Journal of Medicine, 370(11), 1029-1038. doi:10.1056/NEJMsa1308261 ✔ DOI照合済カナダ・オンタリオ州の101病院でチェックリストを一斉導入した前後比較。死亡率・合併症率に有意な低下は見られなかった
- Ruys, I., Van Keer, H., & Aelterman, A. (2012). Examining pre-service teacher competence in lesson planning pertaining to collaborative learning. Journal of Curriculum Studies, 44(3), 349-379. doi:10.1080/00220272.2012.675355 ✔ DOI照合済17基準のルーブリックで教育実習生の指導案323本を分析。課題や教材づくりは強いが、協働のための目標・ルールの記述が弱かった
- König, J., Bremerich-Vos, A., Buchholtz, C., Fladung, I., & Glutsch, N. (2020). Pre-service teachers' generic and subject-specific lesson-planning skills: On learning adaptive teaching during initial teacher education. European Journal of Teacher Education, 43(2), 131-150. doi:10.1080/02619768.2019.1679115 ✔ DOI照合済ドイツの言語科目の教育実習生が書いた研究授業の指導案を分析。主な課題を学習集団の認知レベルに合わせる計画力を測定し、その判断を教科の観点から行うほうが一般的な観点より指導案に反映させにくいことを示した研究(言語教育に固有の教え方は対象外)
- Mutton, T., Hagger, H., & Burn, K. (2011). Learning to plan, planning to learn: the developing expertise of beginning teachers. Teachers and Teaching, 17(4), 399-416. doi:10.1080/13540602.2011.580516 ✔ DOI照合済中等教員17人を養成課程から着任2年目まで追跡。授業計画の学びは養成期間をこえて続き、計画を通して授業を学び、授業を通して計画を学んでいた
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2020). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語の3観点の評価規準の作り方・単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語科の目標(5領域)・言語材料(語数・文法事項)・指導計画の作成(授業は英語で行うことを基本とする等)を説明した公式の解説
- 文部科学省 初等中等教育局 (2024). 初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver. 2.0) 公式ページ ✔ リンク確認済学校で生成AIを使う際の文部科学省のガイドライン(2024年12月)
- 文部科学省 (2017). 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済小学校の外国語活動(3・4年)と外国語科(5・6年)の目標・内容・語数・文字の扱いを説明した公式の解説
- John, P. D. (2006). Lesson planning and the student teacher: re-thinking the dominant model. Journal of Curriculum Studies, 38(4), 483-498. doi:10.1080/00220270500363620 ✔ DOI照合済目標→活動→評価の直線的な指導案モデルの限界を論じ、状況に応じた対話的な計画を提案した論文
- Jacobs, C. L., Martin, S. N., & Otieno, T. C. (2008). A science lesson plan analysis instrument for formative and summative program evaluation of a teacher education program. Science Education, 92(6), 1096-1126. doi:10.1002/sce.20277 ✔ DOI照合済教師が書いた複数時間の指導案を数量的に評価する道具(SLPAI)を開発・検証した研究
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら








