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📝 指導案・単元づくり★☆☆議論あり小学校中学校高校📖 約14分

特別な配慮が必要な生徒を想定した英語の指導案 ― 「困難さ→手立て」とUDLで書く

通常の学級にも、読み書きや聞き取り、注意の集中に困難のある生徒がいます。学習指導要領解説が示す「困難さに応じた指導の工夫」とUDLの視点で、指導案の「配慮」欄をどう書くか、評価で何を変えてよいかを記入例つきで整理します。

エビデンスの強さ:配慮の考え方は学習指導要領解説と文部科学省の手引にもとづく制度上の枠組み。読み上げ支援などの個別の手立てにはメタ分析で小〜中程度の効果がある一方、UDLの学習成果への効果は研究の質も含めて評価が分かれている。

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特別な配慮が必要な生徒を想定した英語の指導案 ― 「困難さ→手立て」とUDLで書くのイメージ
💡3行まとめ
  • 書くのは「障害名」ではなく「困難さ」と「手立て」。 「読み書きに時間がかかる生徒には、〜する」の形で書きます。
  • 2段で考える。 まずクラス全員にやさしい授業の工夫、次に一人一人への配慮。目標と評価規準は安易に変えず、道すじと表し方を増やします。
  • 研究は「手立てごと」に見る。 読み上げ支援には効果が報告されていますが、UDLという枠組み全体の効果はまだはっきりしません。

配慮を想定した指導案ってなに?

ひとことで言うと、配慮を想定した指導案は、「この活動で、どの生徒に、どんな困難が起きそうか」を先に予想し、その手立てを授業の流れの中に書き込んだ指導案です。

文部科学省の2022年の調査では、小中学校の通常の学級で、担任などの回答から「学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒は推定 8.8% でした。また、全体の 3.5% は「読む」又は「書く」に著しい困難を示すとされました 1。8.8% は、40人学級なら3〜4人ほどにあたる計算です。ただしこれは医師の診断ではなく、担任などの回答にもとづく推定である点に注意が必要です 1。

中学校の学習指導要領解説は、通常の学級にも発達障害を含む障害のある生徒が在籍している可能性を前提に、見えにくさ、聞こえにくさ、発音のしにくさ、心理的な不安定、人間関係形成の困難さ、読み書きの困難さ、注意の集中を持続することが苦手であることなど、学習活動で生じる困難さに応じて指導内容や指導方法を工夫するよう求めています 2。そして、学校では個別の指導計画を作成して必要な配慮を記載し、他教科の担任と共有したり翌年度に引き継いだりすることが必要だとしています 2。

🎈たとえるなら

駅のスロープとエレベーターを思い浮かべてください。スロープ(クラス全員への工夫)があれば、車いすの人だけでなく、ベビーカーや大きな荷物の人も助かります。それでも足りない人には、駅員さんが個別に手伝います(個別の配慮)。行き先(目標)は全員同じで、たどり着く道すじが増えるのです。

「全員への工夫」と「個別の配慮」のちがい

全員への工夫 個別の配慮
誰のため? クラス全員(困難のある生徒だけでなく、多くの生徒が学びやすくなる) 困難のある一人一人
例 本時の流れを黒板に掲示、新出表現を音声+文字+絵で示す、活動を区切る 書くことに困難のある生徒は表に丸をつけるだけでよい形に、座席を前方に
指導案のどこに書く? 展開の「全員への工夫」の列 展開の「個別の配慮」の列(実名や診断名ではなく、学習上の困難さで書く)

通常の学級で学ぶ場合、どちらでも単元の目標と評価規準は安易に変えません。変えるのは、そこへたどり着く道すじと、学んだことの表し方です。解説も、学習内容の変更や学習活動の代替を「安易に」行わないよう求めています 2。なお、特別支援学級の特別の教育課程では、教科の目標や内容を下の学年のものに替えることもあり 2、その場合はその目標に合わせて評価規準を決めます。

やり方を3ステップで

  1. 本時の目標と評価規準を先に確定する:ここは配慮で安易に変えない。
  2. 活動ごとに「起きそうな困難」を予想し、全員への工夫を先に入れる:流れの掲示、音声+文字+絵、活動の区切り。
  3. 個別の手立てと、評価場面での調整を書く:個別の指導計画に書かれている配慮を本時の場面に当てはめ、時間・方法・場所の調整が「測りたい力」を変えないかを確かめる。

合理的配慮と基礎的環境整備

文部科学省の手引は、中央教育審議会の報告にもとづき、合理的配慮を、障害のある子どもが他の子どもと平等に教育を受ける権利を享有・行使できるよう、学校の設置者と学校が行う必要かつ適当な変更・調整で、一人一人の状況に応じて個別に必要とされるもの、かつ体制面・財政面で均衡を失した又は過度の負担を課さないもの、と説明しています 3。合理的配慮は、学校全体の基礎的環境整備を土台に個別に決まるので、環境整備の状況によって提供される配慮は異なります 3。

制度面では、学習指導要領の総則が、通常の学級でも個別の指導計画を作成し活用することに努めること、特別支援学級の生徒や通級による指導を受ける生徒については個別の教育支援計画と個別の指導計画を作成し効果的に活用することを定めています 4。

気をつけたい一文:「安易な代替」をしない

解説は、外国語科の目標や学習活動のねらいを踏まえ、学習内容の変更や学習活動の代替を安易に行うことがないよう留意しつつ、生徒の学習負担や心理面にも配慮する必要がある、とも書いています 2。「書くのが苦手だから書く活動はなし」ではなく、「書くことのねらいに届くための道具や手順を工夫する」が基本です。

研究ではどうなってる?

🔬研究ではこう
  • 読みに困難のある生徒への読み上げ支援(音声合成など)のメタ分析では、読解に小〜中程度のプラスの効果(d = .35)が見られました。ただし研究デザインによって効果にばらつきがありました 5。
  • 障害のある生徒へのテストでの配慮の研究を整理したレビューでは、結果は研究ごとにばらばらでしたが、時間延長は全員の点を上げ、障害のある生徒の伸びがより大きい傾向がありました 6。学習障害のある青年への時間延長のメタ分析は、答えより多くの疑問が残ったと結論しています 7。
  • 読み書き障害などの特異的学習困難は人口の5〜15%に影響するとされ、追加の言語の習得のしかたにも影響することが多い、と総説は整理しています 8。
  • UDL(学びのユニバーサルデザイン)の18研究のメタ分析では、学習のプロセスの改善は示されましたが、学習成果への効果は示されませんでした 9。2015〜2021年の13研究のメタ分析では大きな効果が出たものの、ばらつきが大きく、1群の前後比較の研究が中心でした 10。

「その子だけの配慮」が、全員を助けることがある

時間延長が障害のある生徒だけでなく全員の点を上げていた、という結果は 6、時間延長のように、一部の配慮は「特別な子のためのもの」にとどまらず、多くの生徒の学びやすさにもつながりうることを示しています。黒板に本時の流れを書いておく、手拍子でリズムを示すといった小学校の解説の例も 11、クラス全員にとってわかりやすい授業の工夫です。一方で、テストでの配慮が「測りたい力」まで変えてしまわないかは、別に考える必要があります(下の大学院レベルの解説を参照)。

明日の授業でこうする

「困難さ→手立て」の表で考える

解説の例(英語の発音と綴りの関係が不規則なことに強い不安を持つ生徒には、その場で発音を求めずに安心して取り組めるようにする、似た規則の語を選んで扱う) 2 と、小学校の解説の例(手拍子や手の上下でリズムを示す、本時の流れを黒板に書く、字体をそろえる、線上に文字を書く、カードを貼る位置と順番に配慮する) 11 を土台に、英語の授業で起きやすい困難を表にしました(右の2列は筆者作成)。

学習活動で生じる困難さ 英語の授業で起きやすい場面 手立ての例
読み書きの困難 長い単語を写す、本文を音読する 語のまとまりで色分け・スラッシュ、行をそろえた拡大版、音声を先に聞かせる
聞こえにくさ・聞き取りの困難 リスニング、先生の英語の指示 指示は1回に1つ、板書やカードで視覚的にも示す、座席を前方に
発音のしにくさ・不安 1人での音読、準備した発表 その場で求めず練習してから、録音での提出も選べるように 2(即興で話す力を測る場面では録音に替えず、準備時間をそろえて先生と1対1で行うなど即興性は保つ)
注意の集中の持続 長い説明、20分の個人作業 活動を5〜10分に区切る、残り時間を見せる、立って動く活動を挟む
人間関係形成の困難 ペアワーク・グループワーク 日頃関わりのある生徒をペアにする、先生やALTとペアを組む 2
見通しの持ちにくさ 活動の切りかえ、急な予定変更 本時の流れを黒板の端に常に掲示し、終わった項目に印をつける

UDLの3原則で「全員への工夫」を点検する

CASTのUDLガイドライン(3.0版)は、学びへの関わり方、情報の示し方、行動と表出のしかた(取り組み方や操作のしかた、学習の進め方、学んだことの表し方)の3つの原則で、多様な手段を用意するよう示しています 12。英語の授業に当てはめると、次のような点検になります(例は筆者作成)。

原則 点検の問い 英語の授業の例
関わり方 生徒が「やってみたい」と思える入り口と、選べる余地があるか 話題を2つから選べる、ゴールの活動を最初に見せる
示し方 情報が音声・文字・絵など複数の形で示されているか 新出表現を音声+文字+絵で、指示を口頭+板書で
行動と表出 取り組み方や、目標に届いたことの示し方を選べるか 準備した発表を「その場で」か「録音で」選べる、書く課題で語群を使える

ただし、UDLという枠組み全体の効果については研究の評価が分かれています 910。表は「効果が証明された手順」ではなく、指導案を見直すための点検表として使ってください。

評価で変えてよいもの・変えてはいけないもの

文部科学省・国研のハンドブックは、障害のある児童生徒の学習評価についても、学習評価の基本的な考え方は変わらず、障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を行ったうえで評価を適切に行う必要があるとしています 13。整理すると次のようになります。

原則として変えない 変えてよい(調整する)
単元の目標・評価規準 問題文の文字の大きさ・行間・レイアウト
測りたい力(例:読んで要点を捉える力) 解答の時間、解答の方法(選択・指さし・口頭など)
A・B・C の判断の基準 受験する場所、休憩の入れ方、指示の伝え方

注意したいのは、調整が「測りたい力」そのものを変えてしまう場合です。たとえば「読むこと」の思考・判断・表現を測る問題で本文を読み上げると、測っているのは「聞いて理解する力」に近づきます。どの調整が許されるかは、その問題で何を測るかによって決まります。

✏️配慮のある指導案を書く6ステップ
  1. 本時の目標と評価規準を先に確定する(ここは配慮で安易に変えない)。
  2. 活動ごとに「起きそうな困難」を予想する:上の表の左の列を見ながら、展開の各段階を点検します。
  3. 全員への工夫を先に入れる:流れの掲示、音声+文字+絵、活動の区切り。これで多くの困難が軽くなります。
  4. 個別の手立てを書く:個別の指導計画に書かれている配慮を確認し、本時の場面に当てはめます 2。
  5. 評価場面での調整を書く:時間・方法・場所。測りたい力を変えないかを確かめます。
  6. 授業後に記録して引き継ぐ:効いた手立て・効かなかった手立てを個別の指導計画に書き足し、次年度に引き継ぎます 2。

記入例:本時の展開の「配慮」列(中学1年・50分、筆者作成)

公開する指導案では、生徒の実名や診断名は書かず、「読み書きに時間がかかる生徒」のように学習上の困難さで書きます。

時間 学習活動 全員への工夫 個別の配慮
0〜5 帯活動(毎時間のはじめの短い活動):Small Talk 本時の流れを黒板の左端に掲示 見通しを持ちにくい生徒:流れのカードを手元にも
5〜15 新出表現の導入(Can you 〜?) 音声→絵→文字の順で示す 聞き取りに困難のある生徒:座席を前方に、指示は板書も
15〜25 ペアで質問し合う 質問の型をカードで配る 対人関係に不安のある生徒:日頃関わりのある生徒とペアに
25〜40 3人にインタビューし表に書く 表の欄を大きく、語群を下に 書くことに困難のある生徒:表は丸をつけるだけでよい形に
40〜50 分かったことを1文で書く 書き出しの型を示す 同上:語群から選んで写す形を選べる
🏫実例:中学校 ― 音読が苦手な生徒への手立て

本文を1人で音読させる前に、先生の範読(手本として読んで聞かせる)→全員で声をそろえて読む→ペアで1文ずつ交互に読む、と段階を踏みます。スラッシュで区切った本文と、音声を何度でも聞ける環境を用意し、1人での音読発表は「その場」か「録音」かを選べるようにします。読み上げ支援には読解への効果が報告されていますが 5、音読そのものを評価する場面では、録音の時間に余裕を持たせるなど、測りたい力を変えない調整にとどめます。

🏫実例:高校 ― 時間延長と問題のレイアウト

定期テストの読解問題で、読み書きに困難のある生徒に、行間を広げたレイアウトの問題用紙と時間延長を用意します。時間延長は全員の点を上げる傾向もあるため 6、学校として「誰に、何分、どの手続きで」を決め、記録に残します。どの配慮をするかは、本人・保護者と話し合いながら学校が個別に判断するものです 3。

🏫実例:小学校 ― リズムと文字の見せ方

音声を聞き取ることが難しい児童には、手拍子や手の上下で強弱を示し、本時の流れを黒板に書いておきます。文字を読むことが難しい児童には、字体をそろえ、線の上に文字を書き、カードを貼る位置や順番にも気を配ります 11。外国語活動でも同じ考え方が示されています 11。

🗣️先生の英語(安心して取り組める声かけ)
TYou don't have to read aloud now. Listen first, and try when you are ready.
TYou can choose. Speak to me now, or record it at home.
TLook at the board. We are here. Two more activities today.
TTake your time. Use the word cards if you need them.
TNice try! Your idea was clear. Let's practice one more time together.
⚠️よくある失敗
  • 障害名で書く:「ADHDの生徒には〜」ではなく、「注意の集中を持続することが苦手な生徒には〜」と、学習活動で生じる困難さで書きます 2。
  • 活動そのものを外す:書く活動をなくすのは「安易な代替」になりかねません 2。道具と手順の工夫が先です。
  • 評価規準まで安易に下げる:目標や評価規準を変えると、何ができたのかがわからなくなります。変えるのは方法です 13。
  • 手立てが担当者の頭の中だけにある:個別の指導計画に記載し、他教科と共有・次年度へ引き継ぐことが求められています 2。
  • UDLを「効果が証明された方法」として掲げる:研究の評価は分かれています 9。点検の視点として使います。

❓ よくある質問

Q. 指導案の配慮欄には障害名を書くのですか?

書きません。「注意の集中を持続することが苦手な生徒には〜」のように、学習活動で生じる困難さと、その手立てで書きます 2。公開する指導案では、生徒の実名や診断名も書かず、「読み書きに時間がかかる生徒」のように学習上の困難さで示します。

Q. 合理的配慮とは何ですか?

障害のある子どもが他の子どもと平等に教育を受けられるよう、学校の設置者と学校が行う必要かつ適当な変更・調整で、一人一人の状況に応じて個別に必要とされ、過度の負担を課さないものと説明されています 3。学校全体の基礎的環境整備を土台に、個別に決まります 3。

Q. 書くのが苦手な生徒は、書く活動をなくしてもいいですか?

安易に代替しないのが基本です。解説は、外国語科の目標や学習活動のねらいを踏まえ、学習内容の変更や学習活動の代替を安易に行うことがないよう留意するよう求めています 2。語群を使える形や、表に丸をつけるだけの形など、ねらいに届くための道具や手順を工夫します。

Q. 評価で変えてよいことと変えてはいけないことは?

単元の目標・評価規準、測りたい力、A・B・Cの判断の基準は変えません。問題文の文字の大きさやレイアウト、解答の時間や方法、受験する場所などは調整できます。学習評価の基本的な考え方は障害のある児童生徒でも変わらないとされています 13。調整が測りたい力そのものを変えないかに注意します。

Q. UDLは効果が証明された方法ですか?

研究の評価は分かれています。18研究のメタ分析では学習のプロセスの改善は示されましたが、学習成果への効果は示されませんでした 9。大きな効果を報告したメタ分析もありますが、1群の前後比較の研究が中心でした 10。UDLは、指導案の盲点を見つけるための点検の視点として使います。

🎓 もう一歩深く(大学院レベル)

🎓院生モード配慮は「構成概念と無関係な障壁」を取り除けているか ― 相互作用仮説

テストでの配慮は、測りたい知識や技能とは関係のない障壁(construct-irrelevant barriers)を取り除くために行われます。この正当化の鍵とされてきたのが相互作用仮説です。配慮が障害のある生徒の点だけを上げ、障害のない生徒の点は上げないなら、配慮は障壁を取り除いただけだと解釈できます。教育測定の研究者 Stephen G. Sireci 氏らのレビューでは、時間延長は全員の点を上げ、障害のある生徒の伸びがより大きい傾向でした 6。この結果は仮説を厳密には支持せず、時間延長が一部「全員に有利な条件」として働いている可能性を示します。学習障害のある青年の時間延長のメタ分析が「答えより多くの疑問」を残したのも 7、配慮の妥当性が条件ごとに検証されなければならないことを示しています。

英語の授業に置きかえると、問いは「その調整は、評価規準が測ろうとしている力を変えていないか」です。読む力を測る問題の読み上げは構成概念を変えうる一方、聞く力や書く力を測る問題での問題文の読み上げは、障壁の除去にとどまる可能性が高い。配慮の判断は、評価規準の文言にまでさかのぼって行う必要があります。

🎓院生モード第二言語の読み書きの困難は、どこまで「特別」か

外国語学習と学習困難を研究する Judit Kormos 氏は、特異的学習困難(SLD)が人口の5〜15%に影響し、追加の言語の習得のしかたに影響することが多いとしながらも、こうした学習者の研究は長く第二言語習得研究と言語教育の周辺に置かれてきたと述べています 8。日本の調査の 8.8% という数字も、担任などの判断にもとづく推定で、診断の有病率ではありません 1。日本の高校に通う16歳の日英バイリンガルの事例研究では、漢字・かなの読みは大学生並みなのに、英語の読み書きと音韻処理の課題だけが著しく苦手でした。著者らは、文字が表す音の単位の「粒の大きさ」と、文字と音の対応の「透明さ」によって、読みの困難の現れやすさが変わるという仮説を提案しています 14。1例の事例研究なので一般化には慎重さが要りますが、母語の読み書きで目立たなかった困難が英語で表面化しうるという見方は、解説が「明確な規則にこだわって強い不安を抱く生徒」の例を挙げていることとも響き合います 2。

研究上の課題は、困難を「障害か否か」の二分法でなく連続体として捉え、どの手立てが、どの困難に、どの条件で効くのかを、外国語の教室で検証することです。その意味で、学校の個別の指導計画に蓄積される「効いた手立て・効かなかった手立て」の記録は、実践研究の貴重なデータにもなります。

🎓院生モードUDL研究の読み方 ― 「枠組み」の効果は測れるのか

UDL は特定の指導法ではなく、授業を設計するための枠組みです 12。そのため研究では、介入の中身が研究ごとに大きく異なります。インクルーシブ教育の研究者 Matthew J. Capp 氏のメタ分析は学習のプロセスへの効果を示しつつ学習成果への効果は示せず 9、教育研究者の Qais I. Almeqdad 氏らのメタ分析は大きな効果を報告したものの、1群の前後比較の研究が多く、ばらつきも大きいものでした 10。比較群のない前後比較は、成熟や練習の効果を介入の効果と区別できません。さらに心理学者の Guy A. Boysen 氏は、CASTがガイドラインの根拠として挙げる研究の多くが、選択肢を与えることや学習そのものを測っておらず、根拠は弱いと批判しています 15。

現時点での妥当な態度は、UDL を「効果の証明された方法」ではなく、指導案の盲点を見つけるための設計の視点として使い、効果は個々の手立て(読み上げ支援、時間の構造化など)の研究で確かめることでしょう。UDLの根拠をめぐる論争は 個に応じた指導の解説 でも扱っています。

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📑 出典(15件)

本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。

  1. 文部科学省 初等中等教育局 特別支援教育課 (2022). 通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について 公式ページ ✔ リンク確認済小中学校の通常の学級で「学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒は推定8.8%(担任等の回答による。診断ではない)
  2. 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語科の目標(5領域)・言語材料(語数・文法事項)・指導計画の作成(授業は英語で行うことを基本とする等)を説明した公式の解説
  3. 文部科学省 初等中等教育局 特別支援教育課 (2021). 障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~ 公式ページ ✔ リンク確認済就学や学びの場の判断、合理的配慮と基礎的環境整備の考え方などをまとめた文科省の手引(2021年)
  4. 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示) 公式ページ ✔ リンク確認済中学校の学習指導要領。外国語科の目標(5領域)・言語材料・指導計画の作成と内容の取扱いを示している
  5. Wood, S. G., Moxley, J. H., Tighe, E. L., & Wagner, R. K. (2018). Does use of text-to-speech and related read-aloud tools improve reading comprehension for students with reading disabilities? A meta-analysis. Journal of Learning Disabilities, 51(1), 73-84. doi:10.1177/0022219416688170 ✔ DOI照合済読みに困難のある生徒の読み上げ(音声合成など)の効果のメタ分析。読解に小〜中程度のプラス(d = .35)
  6. Sireci, S. G., Scarpati, S. E., & Li, S. (2005). Test accommodations for students with disabilities: An analysis of the interaction hypothesis. Review of Educational Research, 75(4), 457-490. doi:10.3102/00346543075004457 ✔ DOI照合済障害のある生徒へのテスト配慮の研究のレビュー。時間延長は全員の点を上げたが、障害のある生徒の伸びがより大きい傾向
  7. Gregg, N., & Nelson, J. M. (2012). Meta-analysis on the effectiveness of extra time as a test accommodation for transitioning adolescents with learning disabilities: More questions than answers. Journal of Learning Disabilities, 45(2), 128-138. doi:10.1177/0022219409355484 ✔ DOI照合済学習障害のある青年への時間延長のメタ分析。答えより多くの疑問が残り、さらなる研究が必要とした
  8. Kormos, J. (2020). Specific learning difficulties in second language learning and teaching. Language Teaching, 53(2), 129-143. doi:10.1017/S0261444819000442 ✔ DOI照合済読み書き障害などの特異的学習困難と外国語学習の研究を年表形式でまとめた総説
  9. Capp, M. J. (2017). The effectiveness of universal design for learning: A meta-analysis of literature between 2013 and 2016. International Journal of Inclusive Education, 21(8), 791-807. doi:10.1080/13603116.2017.1325074 ✔ DOI照合済UDLの研究18本のメタ分析。学習プロセスの改善は示されたが、学習成果への効果は示されなかった
  10. Almeqdad, Q. I., Alodat, A. M., Alquraan, M. F., Mohaidat, M. A., & Al-Makhzoomy, A. K. (2023). The effectiveness of universal design for learning: A systematic review of the literature and meta-analysis. Cogent Education, 10(1). doi:10.1080/2331186X.2023.2218191 ✔ DOI照合済2015〜2021年のUDL研究13本の系統的レビューとメタ分析。効果は大きく出たが、ばらつきが大きく、1群の前後比較の研究が中心
  11. 文部科学省 (2017). 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済小学校の外国語活動(3・4年)と外国語科(5・6年)の目標・内容・語数・文字の扱いを説明した公式の解説
  12. CAST (2024). Universal Design for Learning Guidelines version 3.0 公式ページ ✔ リンク確認済UDLの公式ガイドライン(3.0版)。関わり方・示し方・表し方の3つの原則
  13. 文部科学省・国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2019). 学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別評価の考え方をQ&Aで短くまとめた文科省・国研の冊子(記録に残す評価は場面を精選、障害のある児童生徒の評価の考え方など)
  14. Wydell, T. N., & Butterworth, B. (1999). A case study of an English-Japanese bilingual with monolingual dyslexia. Cognition, 70(3), 273-305. doi:10.1016/S0010-0277(99)00016-5 ✔ DOI照合済日本語(かな・漢字)の読みは優秀なのに、英語の読み書きだけに困難がある日英バイリンガルの16歳の事例研究
  15. Boysen, G. A. (2024). A critical analysis of the research evidence behind CAST's universal design for learning guidelines. Policy Futures in Education, 22(7), 1219-1238. doi:10.1177/14782103241255428 ✔ DOI照合済CASTがUDLの根拠として挙げる研究を検証し、ガイドラインの根拠は弱いと批判した論文

最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら