50分の英語授業の組み立て方 ― 帯活動・導入・展開・まとめの時間配分
「あいさつ→帯活動→復習→導入→展開→まとめ」。英語の授業の定番の流れには、それぞれ理由があります。中学・高校の50分の時間配分の例と、崩れやすいポイントを研究とあわせて整理します。
エビデンスの強さ:授業の部品(毎時間の短い復習・思い出す小テスト・理解の確認)は教室での研究でもおおむね効果が確かめられている。ただし「この時間配分が最適」という研究はなく、配分は目安。

- 基本の型は「あいさつ・帯活動→復習→導入→展開→まとめ」。 型そのものより、すべてが「本時の目標」に向かっていることが大事です。
- 毎時間の短い復習と、思い出す小テストは効く。 研究の裏づけがある部品を、帯活動に入れましょう。
- まとめの5〜8分は「先に確保」。 時間が足りなくなったら、削るのは展開の活動の回数です。
50分の授業の「型」ってなに?
ひとことで言うと、50分の授業の型は「英語モードに切り替える → 昨日を思い出す → 今日のめあてに出会う → 使ってみる → 明日につなぐ」という、多くの学校で共有されている定番の流れです。
日本の英語の授業には、多くの学校で共有されている定番の流れがあります。名前は学校や地域で少しずつ違いますが、だいたい次の5つです。
| 段階 | 目安 | 何をする? | ひとことで言うと |
|---|---|---|---|
| あいさつ・帯活動 | 5〜12分 | Small Talk、単語クイズ、歌、音読など毎時間くり返す活動 | 英語モードに切り替える |
| 前時の復習 | 3〜5分 | 前の時間の表現を使う短いやり取り | 昨日を思い出す |
| 導入 | 5〜10分 | 今日のめあての提示、新しい表現や話題との出会い | 今日の「なぜ」を作る |
| 展開 | 15〜25分 | 練習→意味のある言語活動(ペア・グループ) | 使ってみる |
| まとめ・振り返り | 5〜8分 | 何ができたか確かめ、ひとこと書く | 明日につなぐ |
帯活動(おびかつどう)は、毎時間の決まった時間に、数週間〜1学期くらい同じ形でくり返す短い活動のことです。時間割の「帯」のように、何時間にもまたがって続くのでこう呼ばれます。
50分の授業は、部活の練習に似ています。準備運動(帯活動)、昨日の動きの確認(復習)、今日のテーマの説明(導入)、練習試合(展開)、ミーティング(まとめ)。準備運動だけで終わる部活も、いきなり試合だけの部活も、うまくなりません。それぞれの時間に役割があります。
「帯活動」と「前時の復習」のちがい
| 帯活動 | 前時の復習 | |
|---|---|---|
| 何を使う? | もう知っている英語(前の単元や先週の表現もまぜる) | 前の時間に習った表現 |
| 形 | 数週間〜1学期、同じ形でくり返す(Small Talk、単語クイズ、歌、音読など) | 前の時間の表現を使う短いやり取りで、昨日を思い出す |
| 時間 | 5〜12分(あいさつをふくむ) | 3〜5分 |
帯活動の Small Talk は、新しいことを教えず、知っている表現を「いつもより速く、たくさん」使うよう設計すれば、流暢さの練習になります。新しい表現の練習が中心なら、それは流暢さとは別の活動です(くわしくは下の「流暢さの時間」がない授業が多い)。
やり方を3ステップで
- まとめの時間から先に書きこむ:指導案の最後の行(42〜50分)を最初に決めると、チャイムで消えない。
- 帯活動は「3週間同じ形」にする:形を変えないから、生徒は中身(英語)に集中できる。前の単元の表現を混ぜて、間隔をあけた復習にする。
- 展開は「練習 → 使う」の2段にする:練習の正答率が低いときは、使う活動に進む前にもう一度モデルを見せる。
なぜこの順番なの? 研究ではどうなってる?
- 認知科学と「成績がよく伸びたクラスの先生」の観察研究をまとめた10原則では、授業の最初に前時の短い復習、新しい内容は小さなステップで示して練習をはさむ、全員の理解を確かめる、などが挙げられています 1。
- 同じまとめでは、よく伸びたクラスでは練習中の正答率が高く、目安は8割ほどとされています。正答率が低い練習では、まちがいを練習して覚えてしまうおそれがあります 1。
- 317実験をまとめたメタ分析では、同じ量の学習でも、間隔をあけてくり返すほうが記憶に残りました。覚えておきたい期間が長いほど、最適な間隔も長くなります 2。
- 教室での小テスト(思い出す練習)の効果をまとめたメタ分析(222研究・約4万8千人)では、成績を中程度(g = 0.50)高めました。正解のフィードバックがある場合などで効果が変わります 3。
- 語学の授業時間は「意味中心のインプット」「意味中心のアウトプット」「言語に焦点を当てた学習」「流暢さの練習」の4つの柱に、だいたい均等に配分するのがよいという提案があります 4。
効果量 g = 0.50 は、「小テストを入れたクラスの平均的な生徒が、入れなかったクラスでは上位3分の1くらいに入る」イメージです 3。
ここから言えるのは、帯活動は「時間つなぎ」ではないということです。前の単元や先週の表現を、間隔をあけて思い出させる場所として使うと、研究で効果が確かめられている「間隔をあけたくり返し」と「思い出す小テスト」を、毎時間の授業に無理なく入れられます 23。
「流暢さの時間」がない授業が多い
言語教育研究者ポール・ネーション(Paul Nation)氏の4つの柱のうち、見落とされやすいのが流暢さの練習です。これは「新しいことは何も教えず、もう知っている英語を、速く・なめらかに使う」時間です。ネーション自身、多くの語学コースでこの柱が不足しがちで、その理由は新しい項目を学ばないので「前に進んでいる感じがしない」からだろうと述べています 4。教科書を進める授業はどうしても「言語に焦点を当てた学習」に偏りがちです。帯活動の Small Talk や、同じ話をペアを替えてくり返す活動は、すでに知っている表現を使い、内容に注意を向け、時間制限やくり返しで「いつもより速く、たくさん」話すよう設計すれば、この柱を担えます 4。新しい表現を練習させたり、正確さを確かめたりするのが中心なら、それは流暢さではなく別の柱(アウトプットや言語に焦点を当てた学習)の活動です。
学習指導要領の解説も、やり取りでは最初から流暢で正確な応答を求めず、即興的なやり取りの機会を十分に確保するよう述べています 5。国研の評価資料の事例でも、帯活動で Small Talk に取り組ませ、パフォーマンステストにつなげる計画が示されています 6。
明日の授業でこうする
中学校の50分の例
| 時間 | 段階 | 活動 | 4つの柱 |
|---|---|---|---|
| 0〜2分 | あいさつ | あいさつ、今日のめあてを黒板で確認 | ― |
| 2〜12分 | 帯活動 | Small Talk 2分×2回(ペア替え)、単語の小テスト3分 | 流暢さ/言語 |
| 12〜17分 | 復習 | 前の時間の表現(最上級)で、ペアで1問ずつ質問 | アウトプット |
| 17〜27分 | 導入 | 先生が2つの町の写真を比べて話す(オーラル・イントロダクション)→形と意味を確認 | インプット/言語 |
| 27〜42分 | 展開 | 口頭練習→「どっちが好き?」の理由つきインタビュー | 言語→アウトプット |
| 42〜50分 | まとめ | 振り返りカードに「今日言えるようになった文」を1つ書く | ― |
| 時間 | 段階 | 活動 |
|---|---|---|
| 0〜10分 | あいさつ・帯活動 | Small Talk、前のレッスンのリテリング(1分) |
| 10〜15分 | 導入 | 絵を見せながら、先生が本文の話題について話す |
| 15〜30分 | 展開① | 概要をつかむ発問→詳しく読む発問(ペアで答えを確認) |
| 30〜40分 | 展開② | 音読(意味を思い浮かべながら、段階的に) |
| 40〜46分 | 展開③ | 本文について、自分の考えをペアで伝え合う |
| 46〜50分 | まとめ | 振り返り、次回予告 |
高校の50分の例
| 時間 | 段階 | 活動 |
|---|---|---|
| 0〜8分 | 帯活動 | 前の時間に読んだ本文の要約を、ペアで1分ずつ口頭で(リテリング) |
| 8〜13分 | 導入 | 写真とグラフで話題への関心を作る。今日の問い(例:Why is food waste a problem?)を示す |
| 13〜28分 | 展開① | 時間を区切って概要・要点を読む→ペアで確認 |
| 28〜38分 | 展開② | 詳細の発問、キーワードの意味と使い方 |
| 38〜46分 | 展開③ | 今日の問いへの自分の答えを、本文を引用しながらグループで述べ合う |
| 46〜50分 | まとめ | Exit Ticket:今日の問いへの答えを英語1〜2文で |
| 時間 | 段階 | 活動 |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 帯活動 | 即興で賛成・反対を30秒ずつ(テーマはくじ引き) |
| 5〜15分 | 導入 | モデルの意見文を読み、主張・理由・例に色分けする |
| 15〜25分 | 展開① | 理由をつなぐ表現(First, ... / For example, ...)の練習 |
| 25〜40分 | 展開② | 4人組のミニ・ディベート(立論1分・質疑1分) |
| 40〜50分 | まとめ | ディベートで使った自分の主張を1段落で書く |
小学校は1単位時間が45分です。5・6年なら「あいさつ・歌(5分)→ Small Talk(7分)→聞く活動(13分)→やり取りの活動(13分)→振り返り(7分)」のような配分が一例です。学校によっては、10〜15分の短時間学習や、45分と15分を組み合わせた授業で時数を確保する工夫もあります 7。
- 帯活動がふくらむ:盛り上がって15分、20分と延びると、本時の目標の時間がなくなります。タイマーで区切りましょう。
- 導入の日本語の説明が長い:説明より、先生が英語で話して見せるほうが、生徒の英語にふれる時間が増えます。解説も、授業は英語で行うことを基本とし、生徒の理解の程度に応じた英語を使うよう求めています 5。
- 活動の指示が通じない:指示は短く、まず先生とALT(またはよくできる生徒)でモデルを見せてから始めます。
- 展開が練習だけで終わる:ドリルで終わると「使う」場面がありません。最後の5分でもいいので、自分のことを言う活動を入れます。
- 毎時間まったく同じ流れにする:型は便利ですが、単元の段階(導入期・練習期・発表期)によって配分は変えてかまいません。
❓ よくある質問
Q. 英語の授業の基本の流れは?
「あいさつ・帯活動(5〜12分)→前時の復習(3〜5分)→導入(5〜10分)→展開(15〜25分)→まとめ・振り返り(5〜8分)」が、多くの学校で共有されている型です。型そのものより、すべての段階が本時の目標に向かってつながっていることが大事です。配分は目安で、単元の段階によって変えてかまいません。
Q. 帯活動とは何ですか?
毎時間の決まった時間に、数週間〜1学期くらい同じ形でくり返す短い活動です。Small Talk、単語クイズ、歌、音読などがあります。前の単元や先週の表現を、間隔をあけて思い出させる場所として使うと、研究で効果が確かめられている「間隔をあけたくり返し」と「思い出す小テスト」を、毎時間の授業に無理なく入れられます 23。
Q. 授業の最初の小テストに効果はありますか?
教室での小テスト(思い出す練習)の効果をまとめたメタ分析(222研究・約4万8千人)では、成績を中程度(g = 0.50)高めました 3。正解のフィードバックがある場合などで効果の大きさが変わるので、答え合わせをつけるのが基本です。
Q. まとめの時間がいつもなくなります。どうすればいいですか?
指導案の最後の行(42〜50分)を最初に決め、まとめの5〜8分を先に確保します。時間が足りなくなったら、削るのは展開の活動の回数です。帯活動が15分、20分と延びると本時の目標の時間がなくなるので、タイマーで区切りましょう。
Q. 小学校の45分はどう配分しますか?
5・6年なら「あいさつ・歌(5分)→Small Talk(7分)→聞く活動(13分)→やり取りの活動(13分)→振り返り(7分)」が一例です。学校によっては、10〜15分の短時間学習や、45分と15分を組み合わせた授業で時数を確保する工夫もあります 7。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モードRosenshine の原則を英語の授業に移すときの注意
教育研究者の Barak Rosenshine 氏の10原則は、認知科学、教室観察にもとづく過程‐成果研究(process-product research)、認知的支援の研究という3つの流れを統合したものです 1。過程‐成果研究の多くは母語での算数・読解などを対象にしており、「新しい内容を小さなステップで明示的に教え、十分に練習させてから応用的な活動へ」という順序を、そのまま第二言語の授業に当てはめてよいかは議論があります。
第二言語の教え方では、タスクを先に与えて必要に応じて形式に注意を向ける考え方(TBLT)と、提示・練習・産出(PPP)の順序の是非が長く論争されてきました(PPP とタスク を参照)。タスク中心の指導は、従来の形式重視の指導の「代わり」ではなく、組み合わせて使えるという整理もあります 8。
🎓院生モード分散学習と小テストの研究を、帯活動に読みかえる
分散学習のメタ分析は、主に言語材料の記憶課題(単語リストなど)の再生を扱っており、学習と最終テストの間隔が長いほど、最適な学習間隔も長くなるという関係を示しました 2。教室での小テストのメタ分析でも、効果は中程度で、フィードバックの有無、練習と本番の形式の一致、くり返しの回数などで大きさが変わりました 3。
これを帯活動に読みかえると、①同じ表現を日をあけて何度も思い出させる、②原則として答え合わせ(正解のフィードバック)をつける(効果の大きさは訂正フィードバックの有無でも変わります 3)、③本番(単元末のタスクや定期テスト)と近い形で思い出させる、という3点が設計の指針になります。一方で、単語の再生と、即興のやり取りのような技能の自動化は同じではありません。Small Talk のような活動の効果は、記憶研究からの類推にとどまる部分があることも意識しておきましょう。
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📑 出典(8件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Rosenshine, B. (2012). Principles of instruction: Research-based strategies that all teachers should know. American Educator, 36(1), 12-19, 39. 公式ページ ✔ リンク確認済認知科学と「よく伸びるクラスの先生」の観察研究から、授業の10原則(前時の復習・小さなステップ・確認・練習など)をまとめた解説
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354-380. doi:10.1037/0033-2909.132.3.354 ✔ DOI照合済分散学習(間をあけた復習)の効果を心理学の317実験でまとめたメタ分析
- Yang, C., Luo, L., Vadillo, M. A., Yu, R., & Shanks, D. R. (2021). Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin, 147(4), 399-435. doi:10.1037/bul0000309 ✔ DOI照合済教室での小テスト(思い出す練習)の効果のメタ分析。成績を中程度(g = 0.50)高めた
- Nation, I. S. P. (2007). The four strands. Innovation in Language Learning and Teaching, 1(1), 2-13. doi:10.2167/illt039.0 ✔ DOI照合済授業の活動を「意味中心のインプット・意味中心のアウトプット・言語に焦点を当てた学習・流暢さの養成」の4つに分け、ほぼ同じ時間を配分するよう提案した論文
- 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語科の目標(5領域)・言語材料(語数・文法事項)・指導計画の作成(授業は英語で行うことを基本とする等)を説明した公式の解説
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2020). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語の3観点の評価規準の作り方・単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- 文部科学省 (2017). 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済小学校の外国語活動(3・4年)と外国語科(5・6年)の目標・内容・語数・文字の扱いを説明した公式の解説
- Ellis, R. (2009). Task-based language teaching: Sorting out the misunderstandings. International Journal of Applied Linguistics, 19(3), 221-246. doi:10.1111/j.1473-4192.2009.00231.x ✔ DOI照合済タスク中心の指導への批判を整理。タスクは文法を重視する従来型の指導と組み合わせて使えると論じる
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら








