聞き読み(リーディング・ホワイル・リスニング)― 音声を聞きながら目で文字を追う
音声を流しながら、生徒は本文を目で追うだけ。声は出しません。音声の区切りが手がかりになり、読むのが苦手な生徒も物語についていきやすくなります。多読・音読・リスニングのつなぎ役になる活動です。
- ⏱ 時間
- 5-15分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 個人(全体で一斉に)
- 🎯 技能
- リーディング・リスニング
- 📶 CEFR
- A1-B1

- 音声の区切り・リズムを手がかりに、英文を意味のまとまりで処理する感覚をつかむ。
- 文字と音を同時に入れて、つづりと発音を結びつける機会をつくる。
- 読むのが苦手な生徒も、音声の助けで「物語を最後まで味わう」体験をする。
聞き読みってなに?
ひとことで言うと、音声を流しながら、生徒は声を出さずに本文を目で追う読み方です。
カラオケで、流れる歌詞を目で追いながら曲を聞くようなものです。曲(音声)がどんどん進むので、1語ずつ止まって訳しているひまはありません。声は出さず、耳と目を同時に使って、音声の速さについていくことが大事です。
似た活動とのちがい
| 聞き読み | オーバーラッピング | 黙読 | |
|---|---|---|---|
| 音声 | 流す | 流す | 流さない |
| 声 | 出さない | 音声と同時に声を出す | 出さない |
| 読む速さ | 音声の速さ | 音声の速さ | 自分のペース |
やり方を3ステップで
- ルールを示す:「声は出さない」「指で文字をなぞる」「わからない語で止まらない」。
- 目で追う:音声に合わせて本文を目で追い、内容の質問に1〜2問答える。
- もう一度:2回目は、音声も手がかりにして、意味のまとまりの切れ目と思う所にスラッシュを入れる(時間がなければ省いてよい発展の活動)。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜1:00 | 絵やタイトルで話題を紹介。ルール説明 | 予想する |
| 1:00〜3:00 | 音声を流し、教室を回って指の位置を見る | 1回目:指で文字をなぞりながら聞く |
| 3:00〜4:00 | 日本語で内容を1〜2問 | 答える |
| 4:00〜6:00 | 音声をもう一度 | 2回目:区切りにスラッシュを入れる |
| 6:00〜8:00 | スラッシュの位置を全体で確認 | 自分の印と比べる |
| 8:00〜10:00 | 質問の答え合わせ | 質問に答える・振り返り |

- 素材を選ぶ:生徒にとってやさしく、音声つきの文章(教科書本文・音声つきの学習者向け読み物、または先生が読み上げツールで作った音声)。新出語が多い文章は向きません。
- ルール説明:「声は出さない」「指で文字をなぞる」「わからない語で止まらない」の3つを黒板に書く。
- 1回目:音声を流し、全員が目で追う。先生は教室を回り、指が音声の位置にあるかだけを見る。
- 内容を1〜2問:日本語でOK。「ハナはなぜ鶴を折った?」
- 2回目(発展。時間がなければ省いてよい):同じ音声をもう一度。今度は、音声も手がかりにしながら、意味と文の組み立てから「ここで意味が切れる」と思う所にスラッシュを入れる。間が聞こえない切れ目もあると先に伝える。
- 確認:スラッシュの位置を全体で確かめる。話し手の間(ポーズ)は意味のまとまりの切れ目と重なることが多いものの、息つぎや強調で入る間もあるので、区切り方は1つに決めず、意味が通る区切りなら正解にします。音声は前もって先生が聞き、自然で区切りのはっきりしたものを選びます。次の時間の 段階音読 の準備にもなります。
ワークシートの物語(The Paper Crane)のほかに、聞き読み用のオリジナル短文です。先生が読み上げるか、読み上げツールで音声を作って使えます。
中1レベル
- This is my room. There is a bed, a desk, and a big window. I can see Mt. Fuji from the window on clear days.
- Lucy has a brother and a sister. Her brother likes baseball. Her sister likes music. Lucy likes both.
中2レベル 3. Last year, I went to Okinawa with my family. The sea was blue and clear. We swam with colorful fish. 4. My father wanted to be a pilot when he was young. Now he works at an airport, and he is happy.
中3レベル 5. The library has been closed since last month because it is too old. A new one will open next spring. 6. The girl sitting next to me on the bus was reading a book I had read before.
高校レベル 7. Although the weather was terrible, thousands of people came to watch the marathon. 8. Even though she was tired after the long trip, she called her parents as soon as she arrived at the hotel.
スラッシュの入れ方の目安(生徒への説明用)(区切りは意味と文の組み立てで決め、音声の間は手がかりの1つにします。下は意味の切れ目になりやすい所の例で、音声ではいつも間が聞こえるとはかぎりません) 9. 長い主語のあと(The girl sitting next to me / was reading ...。音声では間が入らないこともある) 10. 前置詞のまとまりの前後(with my family / on clear days) 11. 接続詞の前(, so / , but / because) 12. 文と文のつなぎ目・カンマのある所(After school, / I went to the library.)
- 小学校:3・4年は、大型絵本やスクリーンに文字を映し、先生が読みながら指し棒で文字を指す程度にします。文字は音声によるやり取りを補助するものとして扱うので、子どもは聞くことが中心で、文字があることに気づければ十分です 1。5・6年は、歌や会話で先に音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や表現を、聞きながら絵本などの文字の中で見つけて確かめる活動にします 1。小学生には、知らない物語の本文を1語ずつ目で追うことは求めません。
- 中学:教科書の本文を、内容理解の「前」に1回聞き読み。全体の流れをつかんでから細部に入ると、精読が楽になります。
- 高校:多読用の音声つき本で、家庭学習に。授業では最初の章だけを全員で聞き読みし、続きは各自で。
- 大人数クラス:教室のスピーカーで一斉に。準備は音源だけで、人数に関係なくできます。
- 苦手な生徒が多いクラス:少し遅くした音声(例:0.8〜0.9倍。音質が不自然にならない範囲で)と、単語が光る表示を使う。スラッシュ記入は省略し、1回目の「最後まで追えた」を目標にします。
- オンライン・タブレット:音声つきの電子書籍や、単語が光る読み上げツールを各自のイヤホンで。速さを自分で調整できるのが利点です。
聞き読みは「たくさん入れる」活動なので、毎回の評価より、取り組みの様子と記録を見ます。
- 知識・技能:音声と文字を対応させながら読み、話の流れを理解できる(内容の質問への答え)。
- 意味のまとまりで区切れるか(スラッシュの位置)は、知識・技能の参考として、指導に生かす評価に使います。
- 思考・判断・表現:聞く目的を示した内容の質問(例:「Hana はなぜ鶴を折ったの?」)で、話の概要や要点を捉えられているかを見ます。
- 主体的に学習に取り組む態度:音声の速さや本の難しさを自分で調整しながら、読み続けようとしている(多読の記録とふり返りを、時間をかけて見る)。3つの観点を毎回すべて評価する必要はありません。
| 見るところ(指導に生かす目安) | 目安 |
|---|---|
| 文字を追えているか | 最後まで追えたか、どこで見失ったか(支えが必要かを判断する材料) |
| 区切り(スラッシュ) | 意味のまとまりで区切れているか(正解の数ではなく、指導の参考) |
| 内容(思考・判断・表現につなげるとき) | 目的を示した質問で、概要・要点を捉えられているか |
記録に残す評価をするときは、文字を追えたかどうかではなく、観点ごとに規準を分けて、内容の質問や別の課題で見ます。
- 音声が速すぎて文字を見失う → ただ音を浴びるだけになります。音質が不自然にならない範囲で、生徒が文字を追える速さに落とし(例:0.8〜0.9倍)、単語が光る表示を使います。慣れたら元の速さに戻します。
- 難しい文章で長時間やる → 集中が切れます。やさしい文章を短く、が原則です。
- いつまでも音声に頼る → 補助輪は外すためのもの。慣れた文章は、黙読や音読に移ります。
- 指でなぞるのを恥ずかしがる(高校生) → しおりや定規を行に当てる方法でもOK。目的は「今どこか」を見失わないことです。
- 聞き読みを語彙学習だと思ってしまう → 1冊を1回聞き読みしただけでは、意味を自分で言えるまで残る語は少ないことを伝えます。大事な語は意図的に学ぶ時間で補い、読む量を重ねて同じ語に何度も出会わせます。
日本の大学で英文学を学ぶ18〜21歳の35人(初中級〜中級)が、学習者向けの物語を「読むだけ」「聞きながら読む」「聞くだけ」の3つの方法で読んだ研究があります。3つの中でいちばん多くの学生が「聞きながら読む」を好みました。研究のあとで一部の学生に行った非公式の聞き取りでは、ナレーターが文を意味のまとまりで区切ってくれるので、自分で区切る手間がなく、内容に集中できたことが主な理由として挙がりました。これは参加者の感じ方で、区切りの処理を実験で測ったものではありません 2。
語彙の面では、1冊(約5,500語)を1回読んだすぐあと、28の語の意味を自分で書くテストでは(この28語は、物語の中の book・happy のような、学生がすでに知っている基本語のつづりを、架空の語に置きかえたもの)、「読むだけ」「聞きながら読む」がおよそ15〜16%だったのに対し、「聞くだけ」はわずか2%でした。選択肢から選ぶテストでは、それぞれ45%・48%・29%でした。ヒントなしで意味を思い出すテストでは、3か月後まで残った語はごくわずかでした 2。本物の未知語を覚える量とそのまま同じには考えられませんが、入れ方(読む・聞き読み・聞くだけ)によって語の残り方がちがうことは示しています。著者たちは、語が身につくには、たくさんの文章で同じ語に何度も出会うことが必要だと述べています。聞き読みは「単語をどんどん覚える活動」ではなく、わかる英語を、音と文字の両方からたくさん入れる活動と考えるのが正確です。
エジプト(カイロ)の6年生の2クラス(75人)を比べた研究では、先生の朗読を聞きながら物語を読んだクラスが、黙読だけのクラスより理解テストの点が高くなりました。ただし、2クラスは別の先生が担当していたので、朗読だけの効果とは言い切れず、著者も「効果があるかもしれない」と慎重に述べています 3。また日本の大学生では、お手本の音声を聞きながらのくり返し読みが、多読と同じくらい黙読の速さを伸ばしました 4。音声は、読むのが苦手な生徒にとっての「補助輪」になります。
❓ よくある質問
Q. 聞き読みは、どう進めますか?
「声は出さない」「指で文字をなぞる」「わからない語で止まらない」の3つのルールを示し、音声を流して全員で目で追います。内容の質問を1〜2問したあと、時間があれば、2回目は音声も手がかりにして、意味のまとまりの切れ目と思うところにスラッシュを入れ、その位置を全体で確かめます(間が聞こえない切れ目もあるので、意味が通る区切りなら正解にします)。
Q. 聞き読みで、単語は覚えられますか?
1回聞き読みしただけでは、あまり期待できません。日本の大学生35人が物語を1冊読んだ研究では、すでに知っている基本語のつづりを架空の語に置きかえた28語について、すぐあとに意味を自分で書けた語は「読むだけ」「聞きながら読む」でおよそ15〜16%、「聞くだけ」は2%(選択式のテストでは45%・48%・29%)で、3か月後まで残った語はごくわずかでした 2。本物の未知語を覚える量とそのまま同じではありませんが、入れ方による残り方の違いを示しています。大事な語は意図的に学ぶ時間で補い、読む量を重ねて同じ語に何度も出会わせます。
Q. 音声だけを聞かせるのではなく、文字を見せるのはなぜですか?
日本の大学生の研究で、いちばん好まれたのが「聞きながら読む」でした。研究のあとの非公式の聞き取りでは、ナレーターが文を意味のまとまりで区切ってくれるので内容に集中できた、という声が主な理由として挙がりました(参加者の感じ方で、実験で測ったものではありません)2。音声は、読むのが苦手な生徒にとっての「補助輪」になります。
Q. 音声が速くて、文字を見失う生徒がいます。
音質が不自然にならない範囲で、文字を追える速さに落とし(例:0.8〜0.9倍)、単語が光る表示を使います。慣れたら元の速さに戻します。苦手な生徒が多いクラスではスラッシュ記入を省き、「最後まで追えた」を目標にします。指でなぞるのを恥ずかしがる高校生には、しおりや定規を行に当てる方法でもかまいません。
Q. 聞き読みには、どんな文章を選べばいいですか?
生徒にとってやさしく、音声つきの文章(教科書本文、音声つきの学習者向け読み物、先生が読み上げツールで作った音声など)を選びます。新出語が多い文章や、難しい文章を長時間というのは向きません。
🎁 玉手箱で使えるツール
原田英語の「英語の先生の玉手箱」の無料ツール。登録なしで授業にそのまま使えます。
📑 出典(4件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2017). 小学校学習指導要領(平成29年告示) 公式ページ ✔ リンク確認済小学校の学習指導要領。外国語活動(3・4年)と外国語科(5・6年)の目標・内容を示している
- Brown, R., Waring, R., & Donkaewbua, S. (2008). Incidental vocabulary acquisition from reading, reading-while-listening, and listening to stories. Reading in a Foreign Language, 20(2), 136-163. doi:10.64152/10125/66816 ✔ DOI照合済日本の大学生35人。読む・聞きながら読む・聞くだけの3つで物語を読み、語彙の習得と好みを比べた。聞きながら読むが最も好まれ、聞くだけは語彙がほとんど残らなかった
- Amer, A. A. (1997). The effect of the teacher's reading aloud on the reading comprehension of EFL students. ELT Journal, 51(1), 43-47. doi:10.1093/elt/51.1.43 ✔ DOI照合済先生が物語を読み聞かせると、黙読だけより理解が高まったという実験(75人)
- Taguchi, E., Takayasu-Maass, M., & Gorsuch, G. J. (2004). Developing reading fluency in EFL: How assisted repeated reading and extensive reading affect fluency development. Reading in a Foreign Language, 16(2), 70-96. doi:10.64152/10125/66783 ✔ DOI照合済日本の大学生。音声つきリピーテッド・リーディングは、多読と同じくらい黙読の速さを伸ばした
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






