音読の段階練習 ― 聞く→コーラス→バズ→ペア→顔を上げて言う、の5段階
いきなり「はい、読んで」ではなく、先生のお手本から、文字を見ずに自分で言う段階まで、小さな階段をのぼります。教科書1ページで10分。毎時間の定番にできる音読の型です。
- ⏱ 時間
- 10-15分
- 🧰 準備
- なし
- 👥 形態
- 全体→ペア→個人
- 🎯 技能
- リーディング・発音
- 📶 CEFR
- A1-B1

- 意味のわかった本文を、正しい音・まとまり・リズムで読めるようにする。
- 「できない状態で人前で読まされる」不安を減らし、全員が声を出せる時間をつくる。
- 最後は文字から少し離れて言う練習をし、そのあとの話す活動への橋渡しにする。
音読の段階練習ってなに?
ひとことで言うと、意味のわかった教科書の本文を、「お手本を聞く → 全員で → 各自のペースで → ペアで → 顔を上げて言う」の小さな段階に分けて、少しずつ自分の力で読んだり言ったりできるようにしていく音読の型です。
自転車の練習です。補助輪つき、後ろを押してもらう、ひとりで、と段階を上がっていきます。いきなり補助輪を外して「はい、乗って」とは言いません。大事なのは、前の段階が「できた」状態になってから次へ進むことです。
5つの段階のちがい
| 段階 | 何をする | ねらい |
|---|---|---|
| Listen | 音声やお手本を、文字を指で追いながら聞く | どこで区切り、どこを強く読むかを知る |
| Chorus(日本の教室でいうコーラス・リーディング) | 先生のあとについて、全員で区切りごとにくり返して読む | 正しい音・区切り・リズムをまねる |
| Buzz(バズ・リーディング) | 全員が同時に、自分のペースで小声で読む | 一人ひとりの練習量をかせぐ |
| Pair(ペア・リーディング) | 隣の人と1文ずつ交代で読む | 人に聞かせる。詰まったら助け合う |
| Read & Look up | 1文を黙読し、顔を上げて相手に言う | 文字から少し離れて言う |
用語の注意:日本の教室では「先生のあとについて全員でくり返す」ことをコーラス・リーディングと呼ぶことが多いのですが、英語圏の choral reading は「全員が同時に声をそろえて読む」ことを指し、あとについてくり返す読み方(echo reading、リピーティング)とは区別されます。このページの Chorus は、後者の「あとについてくり返す」読み方です。
やり方を3ステップで
- まねる:お手本を聞き(Listen)、先生のあとについて全員で読む(Chorus)。
- 練習する:各自のペースで読み(Buzz)、ペアで交代しながら読む(Pair)。
- 自分で言う:1文ずつ黙読してから顔を上げて、相手に言う(Read & Look up)。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 段階 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|---|
| 0:00〜1:30 | 1 Listen | 音声か範読を1回 | 文字を指で追いながら聞く |
| 1:30〜4:00 | 2 Chorus | チャンクごとに読み、全員にくり返させる | 先生のあとについて読む |
| 4:00〜6:00 | 3 Buzz | タイマーで約1分半。全体を見て回る | 座ったまま自分のペースで2回読み、終わったらもう1回小声で |
| 6:00〜8:30 | 4 Pair | ペアの組み方と交代の合図を出す | 1文ずつ交代で読む |
| 8:30〜11:00 | 5 Read & Look up | 1文ずつ「Read」「Look up」の合図 | 黙読→顔を上げて言う |
| 11:00〜12:00 | 振り返り | 家庭での音読を予告 | チェックシートに✓ |

- 前提:本文の意味を確認し、新出語の発音をコーラスで確かめておく。本文にはスラッシュ(意味の切れ目)を入れておく。
- Listen:音声か先生の範読を1回、文字を指で追いながら聞く。先生は教室を回り、指が音声の位置にあるかを見る。
- Chorus:先生がスラッシュごとに読み、全員がくり返す。長い文は区切りを短く、慣れたら1文ずつに。
- Buzz:座ったまま、各自が自分のペースで2回読む。教室がハチの羽音(buzz)のようにざわざわするのが正解。2回読み終えた生徒は、もう1回小さな声で読むか、読みにくかった文に印をつけて待つ。終わりは共通のタイマーで全員そろえて区切る(だれが読み終わっていないかが目立たないようにする)。
- Pair:隣どうしで1文ずつ交代で読む。相手が詰まったら、その文を一緒に読んであげる。終わったら役割を替えてもう1回。
- Read & Look up:1文ずつ「黙読→顔を上げて相手に言う」(Read & Look up)。文字から離れて言えるかを確かめる。
- 板書:黒板の端に「1 Listen → 2 Chorus → 3 Buzz → 4 Pair → 5 Look up」と書き、今どの段階かをマグネットで示すと、生徒が見通しを持てます。
ワークシートの本文(Our Class Garden)のほかに使えるオリジナルの音読素材です。スラッシュで区切った形で示します。
中1レベル(現在形・can)
- My name is Aya. / I live in a small town / near the sea.
- I have a dog. / His name is Kuro. / He can run very fast.
- On Sundays, / I walk with Kuro / on the beach.
中2レベル(過去形・未来・不定詞) 4. Yesterday / I went to the library / to study for the test. 5. I'm going to visit my grandmother / next weekend. 6. She will show me / how to make rice balls.
中3〜高1レベル(現在完了・関係代名詞・受動態) 7. I have lived in this city / since I was five. 8. The book that my friend lent me / was really exciting. 9. This bridge was built / about a hundred years ago.
高校レベル(長めの文) 10. If we want to protect the ocean, / we need to use less plastic / in our daily lives. 11. Many students say / that they feel nervous / when they speak English in class. 12. What surprised me most / was that the old man / still remembered my name.
- 小学校:文字を追うのが難しい段階では、1〜2の「聞いてまねる」だけで十分。絵本の決まり文句をコーラスで言うのが楽しい入り口です。
- 中学:毎時間、新出本文で1〜4、前時の本文で5、と「新しい本文」と「復習の本文」をずらすと時間が節約できます。
- 高校:長い本文は1段落だけを選んで段階練習し、残りは黙読で読ませる。3の前にスラッシュを入れさせると、チャンクで読む力も育ちます。
- 大人数クラス:バズ・リーディングは全員が同時に読めるので、40人でも一人ひとりの練習量を確保できます。先生は列の間を回って、何人かの声を聞きます。ペア読みは列ごとに時間差でスタートすると騒がしくなりすぎません。
- 苦手な生徒が多いクラス:2(コーラス)を長めにとり、区切りを2〜3語まで短くする。5は無理せず「最初の1文だけ Look up」でも合格に。
- オンライン・タブレット:1・2は音声をミュート解除なしで。各自が録音を提出し、先生は数人分だけ聞いてフィードバックする形に。
- 見るところ(形成的に):意味のまとまり(スラッシュ)で区切って読めるか、強く読む語がはっきりしているか、つまずかずに読めるか。
- 知識・技能:本文を正しい発音・区切り・リズムで音読できる(音読テストで)。
- 思考・判断・表現:音読テストそのものはこの観点の根拠にしません。この観点を見るなら、「読む目的」を決めて本文の概要・要点を捉える課題や、読んだ内容を自分の言葉で相手に伝える活動を別に設けます。
- 主体的に学習に取り組む態度:自分の録音を聞いて「次はここを直す」と目標を決め、練習のしかたを変えているか、を複数の時点で見ます。家庭での練習回数は、家庭の事情にも左右されるので評定には直結させません。
| 段階 | 目安(音読テスト) |
|---|---|
| A | 区切り・強弱が自然で、内容が伝わる読み方ができる |
| B | つまずきは少ないが、一語一語を同じ調子で読む |
| C | つまずきが多く、区切りが意味のまとまりと合っていない |
- 意味がわからないまま音読させてしまう → 声に出すだけになり、内容を考えながら読むことにつながりにくくなります。原則として、概要や場面を確認してから音読に入ります。迷ったら「この文はどういう意味?」と1問だけ確認します。
- 毎回コーラスで終わってしまう → コーラスでも音・区切り・リズムの練習はできますが、一人で読めるかは確かめにくくなります。時間がない日も、最後の1文だけは「自分で読む・言う」まで。
- バズで声が出ない・読んだふりをする → 「2回は声に出して読む」をはっきり言い、先生は声が小さい列の近くで一緒に読みます。
- できない生徒を指名して読ませ、恥をかかせる → 一人で読む場面は、バズとペアで十分練習してから。指名するなら、ペアで練習した文を選ばせます。
- 速く読むことだけを目指す → 速さより区切りと強弱。「物語を聞かせるように」と声をかけます。
外国語の授業での音読は「ただ声を出しているだけ」と軽く見られがちでしたが、音読には文字と音の対応を強める、英語のリズムやイントネーション(プロソディ)を身につける、不安の強い生徒が声を出す練習になる、などの役割があると整理されています 1。
段階の最初にお手本を聞くのには理由があります。英語を外国語として学ぶ生徒75人の、もとからある2つのクラスを比べた研究では、先生が物語を読み聞かせたクラスの方が、黙って読んだだけのクラスより理解のテストの点が高くなりました 2。ただし担当の先生がちがうなど条件が完全にはそろっておらず、読み聞かせだけの効果とは言い切れません。また、これは内容の理解についての研究で、区切りや強く読む所が身につくかを調べたものではありません。お手本の音声で区切りや強弱を示すのは、実践上のねらいです。
日本の大学生を対象にした研究では、音声のお手本を聞きながら同じ文章をくり返し読む練習が、多読と同じくらい黙読の速さを伸ばしました 3。ただしこれは録音を聞きながら文章を読む練習で、このページのように声に出して読む段階練習そのものを調べたものではありません。また、日本の大学生101人を1年間追った研究では、多読・タイムド・リーディングに加えて「チャンクとプロソディを意識した音読のくり返し」をしたグループが、読む速さの伸びで最も大きくなりました(理解度は保ったまま)4。ただし、もとからあるクラスを使った準実験で、このグループは複数の練習を組み合わせていたため、音読のくり返しだけの効果とは言い切れません。
段階を細かく分けるのは、なるべく多くの生徒が「できた」状態になってから次に進むためです。ただし、この5段階の順番そのものの効果を比べた研究はまだ少なく、ここは実践の知恵に支えられた部分です。
❓ よくある質問
Q. 音読の5段階の手順は?
①Listen:文字を指で追いながら音声を聞く ②Chorus:先生のあとについて区切りごとにくり返す ③Buzz:座ったまま自分のペースで2回読む ④Pair:隣どうしで1文ずつ交代で読む ⑤Read & Look up:黙読してから顔を上げて言う、の順に進めます。
Q. バズ・リーディングでは、何に気をつけますか?
「2回は声に出して読む」とはっきり言い、教室がハチの羽音のようにざわざわするのが正解だと伝えます。読み終えた生徒はもう1回小声で読み、終わりは共通のタイマーで全員そろえて区切ります(読み終わっていない生徒が目立たないように)。声が小さい列の近くでは先生が一緒に読みます。
Q. コーラスだけで終わってしまう日があります。
コーラスでも音・区切り・リズムの練習はできますが、一人で読めるかは確かめにくくなります。時間がない日も、最後の1文だけは「自分で読む・言う」まで進めます。一人で読む場面で指名するのは、バズとペアで十分練習してから、ペアで練習した文を選ばせます。
Q. 最初にお手本を聞かせるのはなぜですか?
外国語の学習者の実験では、先生が物語を読み聞かせたグループの方が、黙って読んだだけのグループより理解のテストの点が高くなりました 2。お手本は、どこで区切りどこを強く読むかを教えてくれます。なお、5段階の順番そのものの効果を比べた研究はまだ少ないです。
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📑 出典(4件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Gibson, S. (2008). Reading aloud: A useful learning tool?. ELT Journal, 62(1), 29-36. doi:10.1093/elt/ccm075 ✔ DOI照合済外国語の授業での音読の役割を見直した論文(文字と音の対応・プロソディ・不安の軽減など)
- Amer, A. A. (1997). The effect of the teacher's reading aloud on the reading comprehension of EFL students. ELT Journal, 51(1), 43-47. doi:10.1093/elt/51.1.43 ✔ DOI照合済先生が物語を読み聞かせると、黙読だけより理解が高まったという実験(75人)
- Taguchi, E., Takayasu-Maass, M., & Gorsuch, G. J. (2004). Developing reading fluency in EFL: How assisted repeated reading and extensive reading affect fluency development. Reading in a Foreign Language, 16(2), 70-96. doi:10.64152/10125/66783 ✔ DOI照合済日本の大学生。音声つきリピーテッド・リーディングは、多読と同じくらい黙読の速さを伸ばした
- Shimono, T. R. (2023). The effects of extensive reading, timed reading, and repeated oral reading on Japanese university L2 English learners' reading rates and comprehension over one academic year. Reading in a Foreign Language, 35(2), 190-221. doi:10.64152/10125/67447 ✔ DOI照合済日本の大学生101人を1年追跡。多読+タイムド・リーディング+チャンク・プロソディ練習つきの音読を組み合わせた群が最も伸びた
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






