オーバーラッピング ― 音声にぴったり重ねて読み、英語のリズムを体に入れる
本文を見ながら、流れる音声と同時に声を重ねて読みます。速さ・区切り・強弱をまるごとまねるので、自分の読み方とお手本のリズムのずれに気づき、まねる練習になります。シャドーイングに入る前の導入としても使いやすい練習です。
- ⏱ 時間
- 5分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 個人(全体で一斉に)
- 🎯 技能
- 発音・リーディング・リスニング
- 📶 CEFR
- A2-B1

- 英語の速さ・区切り・強弱・抑揚を、音声にぴったり重ねることで体ごとまねる。
- 文字を見ながらできるので、シャドーイング(文字なしで追いかける)への橋渡しにする。
- 自分の読み方と音声との「ずれ」に気づき、そこだけを集中して直す。
オーバーラッピングってなに?
ひとことで言うと、本文の文字を見ながら、流れる英語の音声と「同時に」声を重ねて読む練習です。速さ・区切り・強弱・抑揚(プロソディ)を、お手本にぴったり合わせてまねます。
カラオケで、歌詞を見ながら原曲に合わせて歌うのと同じです。メロディー(リズム・抑揚)を、歌手と同時になぞります。大事なのは、一つひとつの音の正しさより、全体のリズムに乗ること。ずれたら止まらずに、次の文から合流します。
シャドーイング・音読とのちがい
| 音読 | オーバーラッピング | シャドーイング | |
|---|---|---|---|
| 文字 | 見る | 見る | 見ない |
| 音声 | なし(自分のペース) | 同時に重ねる | 少し遅れて追いかける |
| 主なねらい | 文字と音を結びつけ、なめらかに読む | お手本のリズム・抑揚をまねる | 聞いた音をすぐ声に出す(聞く力・発音) |
やり方を3ステップで
- 口パク:音声に合わせて、声を出さずに口だけ動かし、速さを体で感じる。
- ささやき → ふつうの声:音声と同時に小声で、次にふつうの声で重ねる。ずれた所に下線を引く。
- 直して確かめる:下線を引いた生徒が多かった1文を先生が選び、区間リピートで全員が重ね、最後に音声なしで読んで、リズムが残っているか確かめる。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜0:30 | 音声を1回流す(聞くだけ) | 文字を目で追う |
| 0:30〜1:30 | 「口パクで」と指示して再生 | 声を出さずに口を動かす |
| 1:30〜2:30 | 「ささやき声で」と指示して再生 | 小声で重ねる |
| 2:30〜3:30 | 「ふつうの声で」と指示して再生 | 声を重ねる。ずれた所に下線 |
| 3:30〜4:30 | 挙手で下線の多かった1文を選び、区間リピート | その1文を全員で2回重ねる |
| 4:30〜5:00 | 音声を止める | 音声なしで1回読み、リズムが残っているか確認 |

- 前提:意味を理解し、何度か音読した本文を使う。新出語の発音はコーラスで確認ずみに。教科書付属の音声を使えば、準備は再生の確認だけです。このページの練習文を使うときは、大文字の表示と合う音声を先に作っておきます。速さを変える再生や、1文だけくり返す再生ができるかも事前に確かめます。
- 1回目:口パク(リップシンク):声は出さず、音声に合わせて口だけ動かす。速さを体で感じる。
- 2回目:小声で重ねる:音声と同時に、ささやき声で読む。遅れたら、追いつこうとせずに次の区切りから合流。
- 3回目:ふつうの声で重ねる:音声が目立たせて読むところ(強さ・長さ・高さ)を、同じように目立たせる。ずれた所に鉛筆で下線。
- ずれた1文だけ:先生が挙手で「下線を引いた人が多い1文」を選び、区間リピートで全員が2回重ねる(端末で各自が練習できるなら、自分の下線の文を各自で2回でもよい)。
- 音声なしで1回:最後に音声を止めて自分だけで読み、リズムが残っているか確かめる。
大文字=文の中で目立たせて読む語の、強い音節(ふつうの読み方での目安。英語では強さ・長さ・音の高さを組み合わせて目立たせます。どの語を目立たせるかは文脈で変わることがあります)。先生が読み上げ音声を作るときは、音声と表示を合わせてください(すべてオリジナル)。
中2レベル
- I WENT to the MOVies with my FRIENDS last SATurday.
- It was a FUNny STOry about a DOG and a CAT.
- We ATE POPcorn and LAUGHED a LOT.
中3レベル 4. Have you EVer been to NAra? 5. I've BEEN there TWICE with my FAMily. 6. The TEMples were BEAUtiful in the FALL.
高校レベル 7. ONE of the BIGgest PROBlems in our TOWN is the LACK of PUBlic TRANSport. 8. MANy OLder PEOple CAN'T get to the HOSpital EAsily. 9. I THINK we should START a comMUnity BUS SERvice.
会話文(役を分けて重ねる) 10. A: WHAT are you DOing this WEEKend? 11. B: I'm THINKing of going CAMPing. WANT to COME? 12. A: SOUNDS GREAT! WHERE are you GOing?
- 小学校:歌やチャンツの歌詞カードを見ながら、音源に合わせて一緒に言うのが、いちばん自然なオーバーラッピングです。
- 中学:教科書の会話文で、登場人物ごとにパートを分けて重ねる(素材10〜12)。速い音声なら0.8倍速から。
- 高校:スピーチやニュースの短い一節で。強く読む語に丸をつけてから重ねると、内容語と機能語のメリハリが見えます。
- 大人数クラス:教室のスピーカーで一斉に。先生は教室を回って、口が動いているかだけを見ます(声の大きさは問わない)。
- 苦手な生徒が多いクラス:1文だけを0.7〜0.8倍速で、口パク→ささやきまででOK。単語が光る読み上げツールで「今どこか」を見失わないようにします。
- オンライン・タブレット:音声ファイルを配り、各自イヤホンで。1回分を録音して提出し、音声と聞き比べる自己チェックに。
- 知識・技能:強く読む音節・弱く読む音節の区別、文末の上げ下げを、音声に近い形で再現できる。
- 思考・判断・表現:お手本の抑揚をまねて再現することは、主に知識・技能の練習です。この観点を見るなら、会話文で「誘いを断るときの気持ち」などの場面と相手を設定し、どの語を強く読むか・どんな抑揚にするかを自分で選び、その理由を言わせる課題にします。
- 主体的に学習に取り組む態度:ずれた所を自分で見つけ、区間リピートで直そうとしている(ワークシートのメモで見る形成的な評価(様子を見て次の指導に生かすもの)。これだけで評定せず、単元の発表ややり取りに向けて、録音の聞き比べや振り返りをもとに練習のしかたを選び直した過程を、何回かの記録で見ます)。
| 段階 | 目安(音声なしの4回目で判断) |
|---|---|
| A | 強弱・区切り・文末の抑揚が音声に近く、自然なリズムで読める |
| B | 強弱はあるが、ところどころ一語ずつ均等な読み方に戻る |
| C | すべての語を同じ強さで読み、区切りが意味と合わない |
音読テストの「リズム・イントネーション」の観点の練習として位置づけ、評価は録音やテストで行います。
- 最初から等倍速でついていけない → 早口の棒読みになります。遅めの音声(0.8倍速)から始め、口パクで速さに慣れてから声を出します。
- 一度ずれると止まってしまう → 「ずれたら、次の文から合流」をルールに(本文にスラッシュを入れておけば、次の区切りからでもよい)。止まらないことが大事です。
- 意味を考えていない → 何度も重ねるうちに音だけになりがち。最後に「どんな話だった?」と1問聞くと、意味に戻れます。
- 声が小さく、自分の声が聞こえない → ささやき声の段階では問題ありません。3回目だけは片耳だけイヤホン、または音量を少し下げて自分の声も聞こえるようにします。
- 発音の細部ばかり気にして疲れる → この活動のねらいはリズムと抑揚。個々の音は ミニマルペア など別の時間に回します。
日本の大学生20人が、シャドーイングと音読を組み合わせた練習を10週間続けた研究では、練習後の音読を音響分析すると、分析した2つの節で、となり合う強く読む音節と弱く読む音節の対比が強まる傾向が見られ、節の最後の語(核アクセントのある語)の部分が長く読まれるようになっていました(音の高さの幅がはっきり広がったのは、2語のうち1語でした)。英語らしいリズムとイントネーションに近づく傾向が見られたということです 1。ただし、この研究には比べるグループ(対照群)がなく、練習以外の影響を完全には除けません。
この研究の練習は、文字をなるべく見ずに行うシャドーイングと、お手本の音声なしの音読を組み合わせたもので、オーバーラッピング(文字を見ながら音声と同時に読む)は含まれていません。お手本の音声をまねることと音読を組み合わせるとプロソディが変わりうる、という間接的な根拠として参考にしてください。音読の大事な役割のひとつは、英語のプロソディ(リズム・抑揚)を身につけることだと指摘されています 2。
また、シャドーイングについては、聞いた音を頭の中で保持する働きや、話すときの口の動きの段取りを「なぞる」効果があると説明されています 3。文字を見ながらできるオーバーラッピングは、実践上はシャドーイングより取り組みやすい入り口として使われますが、同じ効果がオーバーラッピングで生じるかは確かめられていません。
❓ よくある質問
Q. オーバーラッピングとシャドーイングの違いは?
オーバーラッピングは、文字を見ながら音声にぴったり重ねて読む練習です。シャドーイングは文字を見ずに音声を追いかけます。文字を見ながらできるので、実践上はシャドーイングより取り組みやすく、橋渡しとして使えます。
Q. オーバーラッピングの進め方は?
音声を1回聞いたあと、①口パクで口だけ動かす ②ささやき声で重ねる ③ふつうの声で重ね、ずれた所に下線を引く、の3段階で読みます。最後に下線の1文だけを区間リピートで2回重ね、音声を止めて自分だけで1回読み、リズムが残っているか確かめます。
Q. 音声が速すぎて、ついていけない生徒には?
0.8倍速の遅めの音声から始め、口パクで速さに慣れてから声を出します。一度ずれたら追いつこうとせず、「次の文から合流」をルールにします。止まらないことが大事です。
Q. 音声に重ねて読む練習で、発音は変わりますか?
日本の大学生がシャドーイングと音読を組み合わせた練習を10週間続けた研究では、となり合う強く読む音節と弱く読む音節の対比が強まる傾向が見られ、英語らしいリズムとイントネーションに近づく傾向がありました 1。ただし比べるグループのない研究で、練習にはオーバーラッピングそのものは含まれていないので、間接的な根拠です。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Mori, Y. (2011). Shadowing with oral reading: Effects of combined training on the improvement of Japanese EFL learners' prosody. Language Education & Technology, 48, 1-22. 公式ページ ✔ リンク確認済日本の大学生20人。シャドーイングと音読を組み合わせた10週の練習で、リズム・イントネーションが改善した(DOI 10.24539/let.48.0_1・J-STAGE)
- Gibson, S. (2008). Reading aloud: A useful learning tool?. ELT Journal, 62(1), 29-36. doi:10.1093/elt/ccm075 ✔ DOI照合済外国語の授業での音読の役割を見直した論文(文字と音の対応・プロソディ・不安の軽減など)
- Kadota, S. (2019). Shadowing as a Practice in Second Language Acquisition: Connecting Inputs and Outputs. Routledge doi:10.4324/9781351049108 ✔ DOI照合済門田修平によるシャドーイングの理論と研究をまとめた英語の専門書
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






