受験生の睡眠チートシート(記憶と睡眠の科学)

覚えた単語を定着させるのは、勉強の後の睡眠。研究でわかっている範囲で、睡眠と記憶の関係、徹夜の害、朝型への切り替え、昼寝、寝る前のスマホを整理する。

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まずはこの3つ

  1. 睡眠は記憶の「保存ボタン」。削るのは最後の手段
  2. 中高生の目安は8〜10時間。起きる時刻から固定する
  3. 寝る前は覚える時間。スマホの画面は遠ざける
睡眠は記憶の「保存ボタン」

寝ている間、脳は休んでいるだけではない。その日に覚えたことを整理し、長く残る形にしていると考えられている(記憶の固定・定着)。特に深い睡眠が、単語や知識のような記憶の定着に関わるとされる(Diekelmann & Born, 2010)。睡眠を削って勉強時間を増やすと、覚えた分が残りにくくなるおそれがある。

研究でわかっている睡眠と記憶4

  1. 1眠った方が忘れにくい
    覚えた後に眠った場合は、起きていた場合より忘れ方が少なかった(Jenkins & Dallenbach, 1924。参加者2人の古典的な実験で、後の研究でも同じ方向の結果が多い)。
  2. 2寝る前の暗記は残りやすい
    高校生が外国語の単語を夜に覚えて間もなく眠ったグループは、朝に覚えて起き続けたグループより、後のテストの成績が良かった(Gais ほか, 2006)。
  3. 3徹夜の翌日は覚えにくい
    一晩眠らなかった人は、翌日に新しいことを覚えるテストの成績が下がり、記憶に関わる海馬の働きも弱まっていた(Yoo ほか, 2007)。
  4. 4長く起き続けると飲酒時並みに
    17〜19時間起き続けると、一部の課題の成績が、血中アルコール濃度0.05%の時と同じかそれ以下に落ちた(Williamson & Feyer, 2000)。

何時間寝ればいい?

資料中高生の目安
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」中学・高校生 8〜10時間
米国睡眠医学会の合意声明(2016年)13〜18歳 8〜10時間
編集部の考え8時間を下回る日が続いたら生活を見直す合図。6時間未満は避けたい
10代は夜型になりやすい

寝る・起きる時刻は10代にかけて遅く(夜型に)なり、20歳前後を境に早い方向へ変わる傾向が、大規模な調査で示されている(Roenneberg ほか, 2004)。夜に眠くならないのは怠けではなく、体の仕組みの面もある。だからこそ朝の光・決まった起床時刻で時計を合わせる工夫が効いてくる。

夜型から朝型へ:2〜3週間以上かけて少しずつ5

本番の朝に頭が働くように、直前期より前から始める

  1. 1
    起きる時刻から決める寝る時刻より起きる時刻を先に固定する。数日ごとに15〜30分ずつ早めるのが目安(編集部)。
  2. 2
    起きたら光を浴びるカーテンを開け、窓辺やベランダで朝の光を浴びる。体内時計が朝に合わせて動き出す。
  3. 3
    朝食をとる決まった時刻の朝食も、体のリズムを整える助けになる。
  4. 4
    昼間に体を動かす通学で歩く・休み時間に階段を使うなど。日中の活動は夜の眠気につながる。
  5. 5
    休日も起床時刻をそろえる休日の寝坊は平日との差を小さく。差が大きいと月曜の朝がつらくなる(社会的時差ぼけ)。

昼寝のコツ3

  1. 1短く・早めに
    昼寝は午後の早い時間に、20〜30分以内が目安とされることが多い。長く・遅い昼寝は夜の睡眠に響く。
  2. 2深く眠りこまない
    机に伏せる・いすにもたれる程度で。ベッドで横になると寝過ごしやすい。
  3. 3昼寝の後に伸びた課題も
    60〜90分の昼寝で、視覚の学習課題が一晩眠った時と同じくらい伸びたという研究がある(Mednick ほか, 2003)。受験生はまず夜の睡眠を優先。

寝る前1時間の使い方4

  1. 1暗記の見直しに使う
    その日の単語・ミスノートを軽く見直してから寝る。翌朝すぐに確認テストをすると定着の確認になる。
  2. 2画面を遠ざける
    寝る前に約4時間、光る端末で読書した人は、紙の本の人より寝つきが遅く、眠気のホルモン(メラトニン)が抑えられ、翌朝も眠かった(Chang ほか, 2015)。
  3. 3入浴は寝る1〜2時間前
    寝る1〜2時間前の温かい入浴・シャワーで寝つきが早くなったという研究のまとめがある(Haghayegh ほか, 2019)。
  4. 4カフェインは控えめに
    カフェインは量を控え、夕方以降はとらない(寝つきを妨げやすい)。エナジードリンクはなるべく避ける。

睡眠のよくある失敗5

  • ✕試験前夜に徹夜で詰め込む
    ○いつもの時刻に寝る
    徹夜は注意力と記憶の両方を下げる
  • ✕休日に昼まで寝だめ
    ○起床時刻の差を小さく
    体内時計がずれて平日がつらくなる
  • ✕眠れないのに布団で粘り続ける
    ○一度起きて薄暗い所で静かに過ごす
    布団=眠れない場所と覚えてしまう
  • ✕前夜だけ早く寝る
    ○ふだんの時刻に寝る
    早すぎる就寝はかえって寝つけない
  • ✕布団の中でスマホで単語
    ○紙の単語帳か、画面を見ない音声で
    画面の光と通知が眠りを妨げる
こんな時は医師に相談

眠れない日が何週間も続く、十分寝ても日中に強い眠気がある、家族に大きないびきや呼吸が止まっていると言われた――こうした時は、自己流で対処せず医師に相談する。睡眠のための薬やサプリメントも、自己判断で使わない。

確認テスト

  1. 1
    厚生労働省の睡眠ガイド2023で、中学・高校生の睡眠時間の目安は?
  2. 2
    Gais ほか(2006)で単語テストの成績が良かったのは?
  3. 3
    夜型を朝型に変える時、最初に固定するのは?
  4. 4
    昼寝の目安としてよく言われるのは?
  5. 5
    眠れない時の対処として勧められるのは?

参考にした資料

睡眠と記憶を一覧にまとめ、A4 2枚で印刷できる無料PDFにしました。Web版は赤シート・覚えたチェック・カード・4択テストつき。

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