まずはこの3つ
- ドキドキは「体が本番の準備をしている合図」と捉え直す
- 「落ち着け」より「ワクワクしてきた」と言い換える
- 試験前に不安を紙に書き出し、頭の余力を取り戻す
心臓が速くなる・呼吸が浅くなる・手が冷たくなるのは、体が筋肉や脳に血液と酸素を送り、力を出す準備をしている反応。危険信号ではなく準備完了の合図とも読める。本番で崩れる原因は、緊張そのものより「緊張している=もうダメだ」という受け止め方にあることが多い。体の反応は同じでも、意味づけを変えれば使い方が変わる。
研究で試された4つの方法4
どれも短時間・特別な道具なしでできる。効果は平均的な傾向で、全員に効くとは限らない
- 1高ぶりを味方と捉え直す大学院入試(GRE)の模擬試験の前に「緊張による高ぶりは成績を助けることがある」と説明された学生は、説明されなかった学生より数学の得点が高かった(Jamieson ほか, 2010)。
- 2「ワクワクしてきた」と言うスピーチの前に I am excited. と口にした人は I am calm. と言った人より、カラオケでも I am anxious. と言った人より成績が良かった。計算でも「ワクワクしよう」と促された人の成績が良かった(Brooks, 2014)。
- 3不安を10分書き出す試験の直前に、試験への心配を10分間自由に書いた学生は、特に不安の強い学生で成績が上がった(Ramirez & Beilock, 2011。実験室と高校の教室で実施)。
- 4自分を名前で呼んで考える「私は〜」ではなく自分の名前や「あなた」を主語にして考えた人は、一連の実験で、スピーチ前の不安が小さい・スピーチの出来が良いなどの結果が出た(Kross ほか, 2014)。
不安と興奮は、どちらも心拍が上がった「高ぶった」状態。高ぶりを一気に静けさへ変えるのは難しいが、「不安」を「興奮」と呼び直すのは、高ぶったまま意味だけを変えればよい(Brooks, 2014 の考え方)。また、考えを無理に抑えようとすると、かえってその考えが浮かびやすくなることも知られている(Wegner ほか, 1987 の「シロクマ実験」)。消すより、向きを変える。
本番直前の90秒リアプレイザル5
模試のたびに同じ順番で練習し、本番でも同じ動きをする
- 1体の反応を実況する心の中で「心臓が速い、手が冷たい」と、見たままを言葉にする。良い悪いの判断はしない。
- 2意味を言い換える「体がエネルギーを準備している。準備完了の合図だ」と言い直す。
- 3名前を主語にする「〇〇はここまでやってきた。〇〇ならいつも通りでいい」と、自分の名前を主語にして心の中で言う。
- 4吐く息を長く吸うより吐く方を長くした呼吸を3〜4回。肩の力を抜く。
- 5最初の1手を決める「大問1の設問から読む」など、開始直後の動きを1つだけ決めておく。手が動けば頭もついてくる。
筆記開示(書き出し)のやり方4
- 1いつ書く研究では試験の直前。受験生なら前日の夜・当日の朝・長めの休み時間が使いやすい。
- 2何を書く試験で心配なことを、正直にそのまま。「長文で時間が足りなくなりそう」「落ちたら親に何と言おう」など。字や文のきれいさは気にしない。
- 3どれくらい研究では10分。時間がない日は、心配を全部出し切ることを目標に短くてもよい(編集部の考え)。
- 4書いたら閉じる書いた紙はたたんでしまう。読み返して分析し始めない。目的は頭の外へ出すこと。
タイミング別:緊張とのつき合い方
| いつ | やること |
|---|---|
| 1か月前〜 | 模試を本番の練習の場と考え、上の90秒リアプレイザルを毎回くり返す |
| 前日の夜 | 不安を書き出してから、いつもの時刻に寝る。眠れなくても横になって休む |
| 会場に着いたら | 席・トイレ・時計の位置を確認し、決めておいた見直しノート1冊だけを開く |
| 開始5分前 | 吐く息を長く。心の中で I'm excited.(ワクワクしてきた) |
| 開始直後に真っ白 | 鉛筆を置いて2〜3呼吸→受験番号を確かめる→一番やさしい設問から |
| 休み時間 | 答え合わせはしない。次の科目の1枚だけ見る |
緊張対策のよくある誤解5
- ✕本番に強い人は緊張しない人○緊張したまま力を出せる人高ぶりは力を出す準備でもある
- ✕「緊張するな」と自分に言い聞かせる○「ワクワクしてきた」と言い換える抑えるほど緊張に意識が向きやすい
- ✕不安は考えないように封じ込める○紙に書き出して頭の外に出す抑えた考えはかえって浮かびやすい
- ✕パワーポーズでホルモンが変わり強くなる○ホルモンの変化は追試で確認されなかったRanehill ほか 2015。気分の変化の報告はある
- ✕本番だけ特別な準備をする○模試で練習した手順を本番でも慣れた手順は迷いを減らす
このシートは試験前の一時的な緊張への工夫。眠れない・食べられない・気分の落ち込みが何週間も続くなど、毎日の生活に支障がある時は、一人で抱えずに保護者・学校の先生・スクールカウンセラー・医師に相談する。相談するのは弱さではなく、立て直すための手段。
確認テスト
- 1Brooks(2014)で成績が良かったのは、課題の前に何と言った人?正解は I am excited.。高ぶりを興奮と呼び直す
- 2Ramirez & Beilock(2011)で、試験直前に学生がしたことは?正解は 不安を10分間書き出す。不安の強い学生で効果
- 3Kross ほか(2014)で不安が小さかったのは、自分を何と呼んで考えた人?正解は 自分の名前や「あなた」。自分と少し距離を取る
- 4考えを無理に抑えようとすると?正解は かえって浮かびやすくなる。シロクマ実験
- 5パワーポーズについて追試でわかったことは?正解は ホルモンの変化は確認されなかった。Ranehill ほか 2015
参考にした資料
- Jamieson, Mendes, Blackstock & Schmader (2010) Turning the knots in your stomach into bows: Reappraising arousal improves performance on the GRE. Journal of Experimental Social Psychology 46(1)
- Brooks (2014) Get excited: Reappraising pre-performance anxiety as excitement. Journal of Experimental Psychology: General 143(3)
- Ramirez & Beilock (2011) Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom. Science 331(6014)
- Kross ほか (2014) Self-talk as a regulatory mechanism: How you do it matters. Journal of Personality and Social Psychology 106(2)
- Wegner, Schneider, Carter & White (1987) Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology 53(1)
- Ranehill ほか (2015) Assessing the robustness of power posing. Psychological Science 26(5)
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