授業ディベートは「簡易ルール」から
大会で行われるディベートには、細かいルールや形式があります。しかし授業で最初から大会形式を目指す必要はありません。まずは、次のようなシンプルな形から始めましょう。
- チーム:肯定側(Affirmative)と否定側(Negative)、各2〜4人
- 流れ:立論 → 作戦タイム → 反論 → 作戦タイム → まとめ
- 時間:各パート1〜2分程度
- 判定:聞いている生徒(審判役)が、どちらの主張に説得力があったかを判断する
大切なのは、「自分の本当の意見とは関係なく、割り当てられた立場で論じる」というディベートの特徴を生徒に伝えることです。これにより、生徒は物事を複数の視点から考える練習ができます。
ポイント:授業ディベートの目的は勝ち負けではなく、「理由を挙げて主張する」「相手の主張に応える」経験をすること。ルールは最小限から始めます。
論題の選び方
論題(motion / resolution)選びは、ディベートの成否を大きく左右します。
よい論題の条件
- 両方の立場で理由が考えられる:どちらかが明らかに有利な論題は避ける
- 生徒に身近である:知識がなくても、自分の経験から理由を考えられる
- 表現がシンプル:論題の英文そのものが難しいと、議論に入れない
身近な論題の例
- Students should wear school uniforms.
- Junior high school students should have smartphones.
- Homework should be banned.
- It is better to live in the countryside than in a city.
- Our school should have a longer summer vacation.
高校生向けの論題の例
- Japan should accept more foreign workers.
- Online classes are better than face-to-face classes.
- Plastic bags should be banned in all stores.
社会的な論題は、調べ学習の時間を十分にとれる時に使います。最初は身近な論題で、ディベートの流れに慣れることを優先しましょう。
準備:理由を考えるシートと表現
準備シートの型
チームで次の項目を埋めていきます。
- 主張:We agree / disagree with the motion.
- 理由1:First, ___.
- 根拠・具体例1:For example, ___.
- 理由2:Second, ___.
- 根拠・具体例2:For example, ___.
- 予想される相手の主張:They may say ___.
- それへの反論:But ___.
特に6と7が大切です。相手の主張を予想しておくと、試合で慌てずに反論できます。
例:Students should wear school uniforms.(肯定側)
- First, school uniforms save time in the morning. Students don't have to think about what to wear.
- Second, uniforms make students feel like a team. For example, at sports events, everyone looks united.
- They may say uniforms are expensive. But students can wear the same uniform for three years, so it may be cheaper than buying many clothes.
立場を両方準備させる
時間があれば、肯定・否定の両方の準備をさせてから、試合直前にくじで立場を決める方法もあります。両方の視点で考える力がさらに鍛えられます。
反論の型と英語表現
ディベートで生徒が最も苦労するのが反論です。型を示して練習させましょう。
反論の4ステップ
- 相手の主張を引用する:They said that ___.
- 反論を示す:However, we disagree.
- 理由を述べる:Because ___.
- 結論:So, their point is not strong.
例
- They said that smartphones are dangerous for students.
- However, we disagree.
- Because students can learn how to use smartphones safely at school and at home.
- So, their point is not strong.
使える表現リスト
- 確認:Could you repeat your second point?
- 反論:That may be true, but ___. / We don't think so because ___.
- 比較:Our point is more important because ___.
- まとめ:In conclusion, we believe ___.
反論のパートは、最初は作戦タイムを長めにとり、チームで反論を一文ずつ書いてから発表させます。慣れてきたら、メモだけで話すように移行します。
試合の進め方と審判役の生徒
1試合の流れ(例:約20分)
- 肯定側 立論(1分)
- 否定側 立論(1分)
- 作戦タイム(3分)
- 否定側 反論(1分)
- 肯定側 反論(1分)
- 作戦タイム(2分)
- 否定側 まとめ(1分)
- 肯定側 まとめ(1分)
- 審判の判定と講評(3〜5分)
審判役の生徒にも役割を
試合に出ていない生徒には、フローシート(両チームの主張をメモする表)を配ります。
- 左の列に肯定側の主張、右の列に否定側の主張を書く
- 反論された主張には線でつなぐ
- 最後に、どちらの主張が残ったかで判定する
聞く側も、英語を聞き取り、要点をメモする練習になります。判定では、Which team was more convincing? Why? と理由も言わせましょう。
評価とよくある失敗
評価の観点の例
- 内容:理由と具体例があるか
- 反論:相手の主張に正面から応えているか
- 伝え方:聞き手に伝わる声の大きさ、視線
- チームワーク:作戦タイムで協力しているか
ルーブリックを事前に配っておくと、生徒は何を目指せばよいかがわかります。
よくある失敗
- いきなり本格的な試合をする:まずは「一つの理由を言う」「一つの反論をする」練習から段階的に
- 論題が難しすぎる:知識がないと理由が浮かばず、議論が止まります
- 勝ち負けにこだわりすぎる:負けたチームが意欲をなくさないよう、講評ではよかった点を必ず伝えます
- 相手への人格攻撃になる:ディベートは主張への反論であり、人への攻撃ではないことを最初に確認します。Attack the idea, not the person. を掲示しておくのもよいでしょう
- 日本語のディベートになる:準備は日本語も可、発表は英語、と区別するとバランスがとれます
3時間で始める導入プラン
- 1時間目:ディベートとは何かを説明。身近な論題で、ペアで理由を一つずつ言い合う練習(I agree because ___. / I disagree because ___.)
- 2時間目:チームで準備シートを作成。反論の4ステップを練習する
- 3時間目:簡易ルールで試合。審判役の生徒はフローシートを使う。最後に振り返り
3時間でディベートの基本的な流れを体験できます。一度経験すると、次の単元では準備の時間を短くでき、論題を少しずつ難しくしていけます。
ポイント:英語ディベートは、生徒が「理由を言う」「相手に応える」力を伸ばす絶好の機会。完璧なルールより、まず一度やってみることが大切です。



