シャドーイングとは? 何に効くの?
シャドーイング(shadowing)は、流れてくる英語の音声を聞きながら、ほんの少し遅れて同じように声に出していく練習法です。もともとは同時通訳者の訓練法として知られていましたが、今では一般の英語学習でも広く使われています。日本でも、門田修平氏をはじめとする研究者によって、シャドーイングと英語学習の関係が研究されてきました。
シャドーイングで期待できる主な効果は次のとおりです。
- 音を正確に聞き取る力:自分で声に出すためには、一つひとつの音を注意深く聞く必要があります。
- 英語のリズム・イントネーションの習得:強弱や抑揚、区切り方をまねることで、英語らしい話し方が身につきます。
- 聞いた英語を処理するスピード:聞いてすぐ口に出す練習をくり返すことで、英語の音をすばやく処理する力が鍛えられると考えられています。
一方で、シャドーイングは万能ではありません。語彙や文法の知識がないまま、難しい音声でシャドーイングをしても、ただ音をまねるだけになりがちです。また、シャドーイングをするだけで自由に話せるようになるわけではありません。「聞く力と発音の土台を作る練習」と位置づけるのがよいでしょう。
ポイント:シャドーイングは「耳と口をつなぐ筋トレ」。単語・文法の学習や、実際に話す練習と組み合わせることで力を発揮します。
いきなりやらない! シャドーイングの5段階
シャドーイングで挫折する人の多くは、いきなり本番から始めています。次の5段階で、少しずつステップアップしていきましょう。
段階1:リスニング(内容をつかむ)
まずはスクリプトを見ずに、何度か音声を聞きます。どんな内容か、どこが聞き取れないかを確認します。
段階2:スクリプトで意味を確認する
スクリプトを読んで、知らない単語や文の構造を確認します。意味がわからないままシャドーイングをしても効果は薄いので、ここは大切なステップです。
段階3:マンブリング(ぶつぶつ言う)
音声に合わせて、小さな声でぶつぶつとつぶやく練習です。はっきり発音しなくてもいいので、音声の流れについていく感覚をつかみます。
段階4:オーバーラッピング(文字を見ながら重ねる)
スクリプトを見ながら、音声にぴったり重ねて声に出します。スピード、リズム、強弱、ポーズの位置を完全にまねることを目指します。
段階5:シャドーイング(文字を見ずに追いかける)
スクリプトを閉じ、音声を少し遅れて追いかけます。最初は、音をまねることに集中する「プロソディ・シャドーイング」、慣れてきたら意味を意識しながら言う「コンテンツ・シャドーイング」へと進みます。
- プロソディ・シャドーイング:音の高さ、リズム、強弱などをまねることに集中
- コンテンツ・シャドーイング:話の意味を理解しながら追いかける
ポイント:1つの音声で段階1〜5をすべて通るのが理想。1日で全部やらなくても、数日かけて進めればOKです。
教材の選び方:「やさしすぎる」くらいがちょうどいい
シャドーイングの効果は、教材選びで大きく変わります。
選ぶときの条件
- スクリプトがあること:答え合わせと意味の確認ができないと、練習になりません。
- 長さは30秒〜2分程度:長すぎると集中が続きません。1分前後の音声を何度もくり返すのがおすすめです。
- スクリプトを読んで9割以上わかること:意味がわからない英文は、音もまねにくいものです。少しやさしいと感じるくらいの教材を選びましょう。
- スピードが速すぎないこと:最初は学習者向けのゆっくりめの音声から。
- 自分が好きな内容・声であること:何十回も聞くので、聞いていて心地よい音声を選びましょう。
教材の例
- 教科書や単語帳・問題集に付いている音声(スクリプトと和訳がある)
- 英検・TOEIC・共通テストなどのリスニング問題の音声
- 学習者向けの英語ニュースやポッドキャスト(スクリプトつきのもの)
- TEDやTED-Edなどの動画(公式サイト・公式チャンネルの字幕を使う)
受験生や資格試験を受ける人は、手持ちの問題集や過去問の音声を使うのがいちばん手軽です。すでに内容を理解している英文なので、段階2の負担も少なくてすみます。
1日15分のシャドーイング・ルーティン
シャドーイングは、1日に長時間やるより、短時間を毎日続けるほうが効果的です。1分程度の音声を使った、1日15分のルーティン例を紹介します。
1日目(新しい音声)
- 2分:スクリプトを見ずに2回聞く
- 5分:スクリプトで意味と単語を確認
- 3分:マンブリング×3回
- 5分:オーバーラッピング×5回
2日目
- 3分:オーバーラッピング×3回
- 7分:シャドーイング×5回(言えないところはスクリプトで確認)
- 5分:シャドーイングを録音し、音声と聞き比べる
3日目以降
- 10分:シャドーイング×5〜7回。意味を意識するコンテンツ・シャドーイングに挑戦
- 5分:録音して、1日目の録音と聞き比べる
同じ音声で3〜5日続けたら、次の音声へ進みます。スムーズに言えるようになった音声は「卒業」でOKです。
ポイント:1分の音声を1週間でやりきれば、1か月で4本。4本の英文がスラスラ言えるようになるだけで、耳の感覚はかなり変わります。
録音チェックで上達を「見える化」する
シャドーイングの効果を高めるカギは、自分の声を録音して聞くことです。シャドーイング中は、声を出すことに必死で、自分がどう発音しているかに気づきにくいからです。
録音でチェックするポイント
- 抜けている単語はないか:a、the、to などの小さな単語が抜けやすい
- 音がつながっているか:たとえば check it out は、1語ずつ区切らずに「チェキラウ」のようにつながって発音されることが多い
- 強弱がついているか:大事な単語を強く、そうでない単語を弱く言えているか
- イントネーション:疑問文の上がり調子などをまねできているか
聞き比べのコツ
一度に全部を直そうとせず、「今日は小さな単語が抜けていないか」「今日は強弱」のように、1回に1つのポイントに絞ってチェックしましょう。
スマホのボイスメモ機能で十分です。1日目と1週間後の録音を聞き比べると、成長がはっきりわかって、やる気がぐんと上がります。
たとえば、次のような短い文で練習してみましょう。(例文は編集部の作例です)
- I'm going to talk about it later.
- What do you want to do this weekend?
- Could you tell me how to get there?
going to が「ゴナ」、want to が「ワナ」、tell me が「テルミ」のようにつながる感覚を、録音で確認してみてください。
よくある失敗と対策
失敗1:難しすぎる教材を選ぶ
ニュースや映画などの速い英語で始めると、ほとんどついていけず、挫折しやすくなります。まずは、スクリプトがスラスラ読める、少しやさしい教材から始めましょう。
失敗2:意味を確認しないまま始める
音だけをまねしていると、「なんとなく言えている」けれど、実際には英語を処理していない状態になりがちです。段階2の意味確認は必ず行いましょう。
失敗3:毎回違う音声を使う
毎日新しい音声でシャドーイングすると、いつまでたってもうまく言えるようにならず、達成感がありません。同じ音声を何日かくり返し、「言えるようになった」を体験することが大切です。
失敗4:声が小さすぎる、口が動いていない
恥ずかしさから小声でもごもご言うだけだと、発音の練習になりにくくなります。家では、はっきりした声で練習しましょう。電車などではマンブリング程度にとどめ、本格的な練習は声を出せる場所で。
失敗5:長時間やりすぎる
シャドーイングはとても集中力を使う練習です。1時間ぶっ通しでやると、後半は質が落ちてしまいます。1回15〜20分を目安に、毎日続けるほうが効果的です。
失敗6:完璧を求めすぎる
ネイティブスピーカーの音声と100%同じに言える必要はありません。「前より言えるようになった」を目標にしましょう。
まとめ:段階を踏めば、シャドーイングは怖くない
シャドーイングは、正しい手順で取り組めば、リスニング力と発音を一緒に鍛えられる効果的な練習法です。
- いきなりやらず、リスニング→意味確認→マンブリング→オーバーラッピング→シャドーイングと段階を踏む
- 教材は、スクリプトつきで、少しやさしい30秒〜2分の音声を選ぶ
- 同じ音声を数日くり返し、録音して聞き比べる
- 1日15分程度を毎日続ける
「ついていけない」のは、あなたの能力が足りないからではなく、段階や教材が合っていないだけかもしれません。まずは1分の音声1本から、今日始めてみましょう。



