なぜ大人数だと話す時間が減るのか
単純に計算してみましょう。50分の授業で、先生が説明に20分、生徒一人ひとりを指名して話させる時間が20分あったとします。40人で割ると、1人あたり30秒です。
一方、ペアで同時に話す活動を5分入れれば、半分の生徒が同時に話しているので、1人あたり約2分半の発話時間になります。ペア活動を3回(合計15分)入れると、単純計算で1人あたり7分以上になります。
- 一斉指名:1人あたり約30秒
- ペア活動15分:1人あたり約7分
もちろん、ペア活動では先生が全員の英語を聞けないという弱点があります。だからこそ、話す量を増やす活動と質を確認する仕組みをセットで考えることが大切です。
ポイント:大人数クラスの最大の味方は「同時に話す」ことです。
すぐ使える活動①:ペア替えQ&Aとインサイド・アウトサイド
ペア替えQ&A(5分)
同じ質問を、相手を変えて3回繰り返す活動です。
- 先生が質問を1つ示す。例:What is your favorite season? Why?
- 隣の人と60秒で話す
- Change partners! の合図で、前後の人と組み直す
- さらに斜めの人と組む
同じ内容を3回話すので、1回目はたどたどしくても、3回目には驚くほどスムーズになります。
インサイド・アウトサイド・サークル
教室の広さに余裕があるときや、廊下・体育館が使えるときの活動です。内側の円と外側の円に分かれて向かい合い、1回話すごとに外側の人が1つずれます。机を動かせないときは、縦の列ごとに前へ1つずつずれる方式にすると教室内でもできます。
指示の英語例です。
- Stand up and face your partner.
- Outside circle, move one step to the right.
- Say one more thing than last time.
すぐ使える活動②:4-3-2トークと情報のリレー
4-3-2トーク
同じ話を、相手を変えながら4分→3分→2分と時間を短くして話す活動で、流暢さを伸ばす練習として知られています。中学生には長すぎるので、90秒→60秒→45秒のように調整すると使いやすくなります。
テーマ例:
- My best memory of this year
- A person I respect
- If I had one million yen...
聞き手には「質問を1つする」係を任せると、聞き手も受け身になりません。
情報のリレー
列の一番前の人だけに英文カード(例:Tom visited his grandmother in Osaka last Sunday.)を見せ、後ろの人に口頭で伝えていきます。最後の人が書いた文と元の文を比べます。正確に伝えようとして何度も聞き返すので、聞き返し表現(Could you say that again?)の練習にもなります。
ワンポイント:聞き手の役割を決める
ペア活動では、話し手だけでなく聞き手にも役割を与えると、2人とも集中します。たとえば「相づちを3回打つ」「最後に質問を1つする」「相手の話を1文で要約して返す」などです。Listener, ask one question at the end. と指示するだけで、やり取りが一方通行になるのを防げます。
質を確認する仕組み:録音・モニター・フィードバック
同時に話す活動の弱点は、先生が全員の英語を聞けないことです。次の方法で補いましょう。
- 1人1台端末で録音:ペア活動の最後の1回だけを録音して提出。全員分を毎回聞く必要はなく、毎回5人ずつ抽出して聞くだけでも、クラス全体の傾向がつかめます
- 生徒同士のチェックリスト:聞き手が「目を見て話したか」「理由を言えたか」などに○をつける
- 先生のモニタリングメモ:机間を回りながら、良い表現と、よく出た誤りを1つずつメモ。活動後に全体で共有します
フィードバックの英語例です。
- I heard a great sentence: "I like summer because I can swim in the sea."
- Many of you said "I very like...". Let's say "I really like..." instead.
全体へのフィードバックは「良い例を先に、直したい点は1つだけ」を原則にすると、生徒が話すことを怖がらなくなります。
よくある失敗と対策
日本語の雑談になってしまう
- 活動時間を短くする(60〜90秒)
- 話すための「型」を黒板に書いておく
- 最後に「相手が言ったことを1文で書く」課題を付けると、真剣に聞くようになります
騒がしくなりすぎる
- 始めと終わりの合図を固定する(手を挙げたら静かにする、チャイムの音など)
- 声の大きさの目安を示す:Use your "pair voice", not your "classroom voice."
話せない生徒が固まってしまう
- 単語だけの答えでもOKとする
- ペアの相手が質問でリードする役割を与える
- 事前に1分間、話す内容をメモする時間を取る
毎回同じペアで飽きる
- 座席以外のペア(誕生月が同じ人、など)を時々使うと、新鮮さが出ます
スピーキングを増やす「質問の出し方」の工夫
教師が投げかける質問の種類を変えるだけでも、生徒が話す量は大きく変わります。
閉じた質問(Yes/Noや1語で終わる)
- Do you like dogs? — Yes.
開いた質問(理由や説明が必要)
- What kind of pets do you think are good for students? Why?
一斉授業での質問は、開いた質問を増やし、さらにすぐに当てずにペアで考えさせる「Think-Pair-Share」を組み合わせると効果的です。
- Think:質問を出し、20秒間1人で考える
- Pair:ペアで1分間、意見を言い合う
- Share:2〜3人を指名し、ペアで話した内容を発表してもらう
この方法だと、指名される前に全員が一度英語で話しているので、発表の質も上がります。指名するときも What did your partner say? と「相手の意見」を聞けば、自分の意見を言うのが恥ずかしい生徒も答えやすくなります。
もう1つの工夫は、答えにFollow-up question(追加の質問)を1つ足すルールです。相手の答えに対して Why? / When? / Really? What else? と聞き返すだけで、やり取りが1往復から3往復に伸びます。
1週間で「話す時間」を倍にするプラン
- 月:授業の最初に、ペア替えQ&Aを3分入れる
- 火:教科書本文の内容について、ペアで質問を出し合う(5分)
- 水:90秒→60秒→45秒のトークを試す
- 木:ペア活動の最後の1回を端末で録音し、5人分だけ聞いてみる
- 金:録音から見つけた良い表現をクラスで共有し、同じ活動をもう一度
先生が話す時間を少し削り、そのぶん生徒同士が話す時間に回す。それだけで、クラスの空気は大きく変わります。



