スピーチと暗唱の違いを押さえる
コンテストには、大きく分けて2つの種類があります。
- 暗唱(レシテーション):決められた文章や、有名な文章などを覚えて発表する。内容を「どう伝えるか」が中心
- スピーチ(弁論):生徒が自分で書いた原稿を発表する。「何を伝えるか」と「どう伝えるか」の両方が問われる
どちらも、発音の正確さだけでなく、聞き手に内容が伝わるかどうかが大切です。コンテストによって、制限時間、題材の指定、審査の観点が異なるので、指導を始める前に必ず実施要項を確認しましょう。原稿の語数や時間の上限、質疑応答の有無などは、準備の仕方に大きく影響します。
ポイント:指導を始める前に、実施要項で「時間・題材・審査の観点」の3つを確認。ここを外すと、どれだけ練習しても評価につながりません。
スピーチ原稿のつくり方
スピーチ原稿は、生徒自身の経験や考えから生まれたものが一番伝わります。先生が書いた立派な文章より、生徒の等身大の言葉のほうが聞き手の心に届きます。
テーマ探しの質問
生徒と面談しながら、次のような質問でテーマの種を探します。
- 最近、心が動いた出来事は?
- 考えが変わった経験は?
- 周りの人に知ってほしいことは?
- 自分にとって大切な人やものは?
原稿の型
- つかみ:問いかけや、印象的な場面から始める。例:Have you ever felt alone in a crowded room?
- 経験:具体的なエピソードを語る
- 気づき:その経験から何を学んだか
- メッセージ:聞き手に伝えたいこと。例:So, if you see someone sitting alone, just say "Hi." It can change their day.
生徒の英語をどこまで直すか
原稿は、まず生徒に日本語か英語で書かせ、先生が英文を整えます。この時、生徒が知らない難しい語彙や構文に置き換えすぎないことが大切です。本人が意味を理解し、自分の言葉として話せる英語であることを優先しましょう。ALTにネイティブチェックを依頼する場合も、「この生徒のレベルで自然な表現に」と伝えます。
暗唱文の選び方と読み込み
暗唱では、題材を選べる場合と、指定される場合があります。選べる場合は、生徒が内容に共感できるもの、声に出して気持ちよく読めるリズムのものを選ぶと、練習が続きやすくなります。
読み込みのステップ
- 意味を完全に理解する:一文ずつ意味を確認し、どこに感情の山があるかを話し合う
- 場面を想像する:この文章は、誰が、誰に、どんな状況で語っているのかを考える
- 区切りと強調を書き込む:意味のまとまりでスラッシュを入れ、強く読む語に下線を引く
- お手本の音声を聞く:音声がある場合は繰り返し聞き、リズムやイントネーションをまねる
意味がわかっていないと、どれだけ発音が正確でも、聞き手には棒読みに聞こえます。暗記に入る前に、内容理解に十分な時間をかけましょう。
発音・間・ジェスチャーの練習
発音
すべての音を完璧にしようとすると、生徒も先生も疲れてしまいます。優先順位をつけましょう。
- 意味の違いに関わる音:r と l、th、語末の子音など
- 強勢(アクセント):単語の強く読む位置。photograph と photographer のように、位置で聞こえ方が大きく変わる
- 文の強弱:内容語(名詞・動詞・形容詞など)を強く、機能語(冠詞・前置詞など)を弱く
間(ポーズ)
スピーチで最も効果的な技術の一つが、間の取り方です。
- 大事なメッセージの前に、1〜2秒の間を置く
- 問いかけの後に間を置き、聞き手に考えさせる
- 早口になりがちな生徒には、原稿に「/(ポーズ)」の印を書き込ませる
ジェスチャーと視線
- 視線は会場の左・中央・右をゆっくり見渡す
- ジェスチャーは、原稿の中で意味のある場所に2〜3か所だけ。多すぎると不自然になる
- 手の置き場がわからない生徒には、「基本は体の横、強調の時だけ動かす」と決めておく
録画で確認
スマートフォンやタブレットで練習を録画し、生徒と一緒に見ます。自分の姿を客観的に見ると、先生が何度言っても直らなかった癖に、生徒自身が気づくことがあります。
6週間の練習スケジュール例
本番までの6週間を想定したスケジュールの例です。
- 1週目:実施要項の確認、テーマ決め(スピーチ)/題材選び(暗唱)
- 2週目:原稿作成・英文の整え(スピーチ)/意味の理解と読み込み(暗唱)
- 3週目:原稿を見ながら音読。発音と強勢の確認。毎日5回音読
- 4週目:暗記。段落ごとに覚える。「1段落目だけ原稿なしで」から始める
- 5週目:通し練習。間・視線・ジェスチャーを加える。録画して確認
- 6週目:本番を想定したリハーサル。他の先生や生徒の前で発表する
暗記のコツ
- 一度に全部覚えようとせず、段落ごとに区切る
- 各段落の最初の語をキーワードとしてメモし、それを手がかりに思い出す
- 寝る前と朝に1回ずつ通す
- 覚えた段落は、毎日最初から通して確認する(前の段落を忘れないように)
ポイント:本番直前の1週間は、新しい修正を加えないのが鉄則。「今できていること」に自信を持たせる期間にします。
本番直前・当日の関わり方
緊張への声かけ
緊張しない生徒はいません。「緊張するな」ではなく、緊張とうまく付き合う方法を伝えます。
- 「緊張しているのは、真剣に準備してきた証拠だよ」
- 「最初の一文だけ、ゆっくり言おう。そこでリズムができる」
- 「もし忘れても、止まって深呼吸すればいい。聞いている人は待ってくれる」
忘れた時の対処を練習しておく
本番で言葉が出てこなくなった時のために、練習の段階で「忘れたら、その段落の最初に戻る」「次のキーワードまで飛ばす」などの対処法を決めておき、実際に練習しておきます。
よくある失敗
- 先生の理想を押しつける:演技が大げさになり、生徒らしさが失われる
- 直前まで原稿を修正する:暗記が崩れ、不安が大きくなる
- 発音ばかり指導する:内容の伝わり方や、聞き手への意識が後回しになる
- 結果だけを評価する:入賞しなくても、準備の過程で伸びた力を具体的に伝える
本番が終わったら、結果にかかわらず「準備を通してできるようになったこと」を一緒に振り返りましょう。その経験は、授業での発表や、次の挑戦につながります。
授業にも生かすために
コンテストの指導で得たノウハウは、授業にも生かせます。
- 教科書の本文を使ったミニ暗唱発表(1段落だけ)を、学期に一度行う
- スピーチの型(つかみ・経験・気づき・メッセージ)を、授業のスピーチ活動で使う
- 録画して振り返る方法を、ペアでの発表練習に取り入れる
コンテストに出る一部の生徒だけでなく、クラス全体が「人前で英語を伝える」経験を積めるようにすると、次のコンテストに挑戦したいと手を挙げる生徒も増えていくはずです。
ポイント:コンテストの指導は、生徒の「伝えたい」を形にする仕事。まずは今日、出場する生徒と「本当に伝えたいことは何か」を話すところから始めてみてください。



