プレゼン指導は「構成」から始める
英語の表現や発音の練習から始めたくなりますが、先に教えたいのは聞き手が迷わない構成です。構成がしっかりしていれば、英語が多少たどたどしくても内容は伝わります。
基本の3部構成です。
- Introduction:あいさつ、テーマ、なぜ大切か、発表の流れの予告
- Body:ポイントを2〜3つ。各ポイントに理由と具体例
- Conclusion:要点のまとめ、聞き手へのメッセージ、質問の受付
構成を考える段階では、英語で文章を書かせる前に、キーワードだけのアウトラインを作らせます。
- Topic: Why students should use the university library more
- Point 1: Quiet space to focus
- Point 2: Free access to databases
- Point 3: Support from librarians
- Message: Try one new library service this month
ポイント:「ポイントは3つまで」と制限すると、学生は情報を選ぶ過程で、自分が本当に伝えたいことを考えるようになります。
サインポスティング表現を「型」として渡す
サインポスティングとは、発表のどこにいるのかを聞き手に示す道案内の表現です。英語のプレゼンでは特に重視され、これが入るだけで発表がぐっと聞きやすくなります。
場面別の表現例
始める
- Today I'm going to talk about ...
- My presentation is divided into three parts.
次に進む
- Let's move on to my second point.
- Now I'd like to turn to ...
例を示す・強調する
- Let me give you an example.
- This is the most important point.
スライドに注目させる
- As you can see in this graph, ...
- Please take a look at the left side of the slide.
まとめる
- To sum up, ...
- The key message I want you to remember is ...
これらを1枚の表にして配布し、アウトラインのどこに入れるかを学生に書き込ませます。内容の英語は自分で考え、つなぎの表現は型を使うという役割分担にすると、英語が苦手な学生でも発表全体の形が整います。
スライド作りの原則:「読む」から「見せる」へ
スライドに文章をびっしり書くと、学生はそれを読み上げ、聞き手もスライドを読むことに集中してしまいます。スライドは原稿ではなく視覚資料だと伝えましょう。
スライドのルール例
- 1枚に伝えることは1つ
- 文章ではなくキーワードか短いフレーズで
- 文字は教室の後ろから読める大きさに
- 図や写真を使う場合は出典を示す(著作権への配慮も指導する)
- 枚数の目安は「発表時間(分)+2枚」程度に抑える
例えば、次のような書き換えを見せるとわかりやすいです。
- 変更前:The university library has many databases that students can use for free, and it is very useful.
- 変更後:Free databases — journals & e-books
発表者用のメモは、スライドとは別にカードやノートに書かせます。メモには文章ではなく、キーワードとサインポスティング表現だけを書くと、顔を上げて話す習慣がつきやすくなります。
リハーサルと質疑応答の練習
リハーサルの3段階
- ひとりで録画:スマホで1回録画し、時間と「えー」の回数を確認する
- ペアで練習:聞き手はチェックリストで1つだけ改善点を伝える
- 小グループで本番形式:3〜4人の前で発表し、質問を必ず1つもらう
ペアで使うフィードバックの文型です。
- Your introduction was clear. Maybe you can slow down a little in Point 2.
- I liked your example. Could you look at the audience more often?
質疑応答は「型」と「予想」で準備する
質疑応答が怖いのは、何を聞かれるかわからないからです。事前に予想質問を3つ書き、答えを準備させましょう。答えに詰まったときの表現も教えておきます。
- That's a good question. Let me think for a moment.
- Could you say that again, please?
- I'm not sure about that, but I think ...
- I haven't looked into that yet, but it's an interesting point.
ポイント:「わからない」と正直に言える表現を持っていると、学生は質問を怖がらなくなります。
大人数クラスでの運営と評価
30〜40人のクラスで全員が教室の前で発表すると、それだけで数回分の授業が終わってしまいます。発表の場を分散させる工夫が必要です。
- 教室内で4〜5グループに分かれ、同時に発表する
- 先生は各グループを巡回し、評価は録画提出で補う
- 前半組と後半組に分け、聞き手は評価シートに記入する
- ポスター形式にして、聞き手が回る方式にする
ルーブリックの観点例
- 構成:導入・本論・結論が明確か
- 内容:主張に理由と具体例があるか
- 言語:サインポスティング表現を適切に使っているか
- 伝え方:聞き手を見て、聞き取りやすい速さで話しているか
- 質疑応答:質問に誠実に答えようとしているか
聞き手用の評価シートは、観点を2つ程度に絞り、「よかった点を1つ」「質問を1つ」書く欄を設けると、記入に追われず発表に集中できます。集めたシートは発表者に返却し、振り返りの材料にさせましょう。
- One thing I liked: ...
- One question I have: ...
各観点を3〜4段階にして事前にLMSで公開し、リハーサルでも同じ表を使います。本番と練習で同じ基準を使うことで、評価の根拠を説明しやすくなり、学生も何を改善すればよいかがわかります。
4回で仕上げる指導スケジュールとよくある失敗
プレゼン単元のスケジュール例(4回)
- 第1回:モデル発表を見て構成を分析、テーマ決め、アウトライン作成
- 第2回:サインポスティング表現の練習、スライドの原則、スライド作成
- 第3回:録画リハーサル、ペア練習、予想質問づくり
- 第4回:グループ別の本番発表、相互評価、振り返り
授業外の課題として、第2回と第3回の間にスライドの下書きをLMSに提出させると、第3回を練習に集中させられます。
よくある失敗
- 原稿を全文書かせ、暗記させる:棒読みになり、質問に対応できなくなります
- スライドの指導をせず、文字だらけのスライドが並ぶ
- 本番だけを評価し、準備の過程が評価に入っていない
- 聞き手が何もしない時間が長く、教室の集中が途切れる
- 質疑応答を「時間があれば」扱いにして、練習しない
ポイント:聞き手にも「質問を1つする」「評価シートを書く」という役割を与えると、発表の時間が全員の学びの時間になります。



