まず原因を見立てる:4つのパターン
ペアワークが盛り上がらない時、次の4つのどれに当てはまるかを考えると、打つ手が見えてきます。
- 話す必然性がない:答えがすでに教科書に書いてあり、相手に聞く理由がない
- 何を言えばいいかわからない:使う表現や語彙が準備されていない
- すぐ終わってしまう:1往復で会話が終わり、続け方がわからない
- 相手との関係が気まずい:ペアの組み合わせや教室の雰囲気の問題
1つの活動に複数の原因が重なっていることもよくあります。授業の後に、「今日のペアワーク、どこで止まっていたか」を思い出してみてください。
ポイント:「盛り上がらない」をひとまとめにせず、原因を分けて考える。処方箋は原因によって違います。
処方箋①:話す必然性をつくる(インフォメーションギャップ)
人が話すのは、相手が自分の知らない情報を持っている時です。ペアのAとBで違う情報を持たせる「インフォメーションギャップ」は、この必然性を生み出す基本の仕掛けです。
活動例:時間割を完成させよう
- Aのシートには月・水・金の時間割、Bのシートには火・木の時間割が書いてある
- 互いに質問して、1週間分を完成させる
- A: What do you have on Tuesday, third period?
- B: I have music. What about Monday, second period?
活動例:違いを探せ
- AとBに、少しだけ違う部屋の絵を配る(見せ合うのは禁止)
- There is a cat under the table. / Is there a clock on the wall? などで、違いを5つ探す
活動例:本当のことを聞き出そう
- 自分についての文を3つ書く。うち1つはウソ(例:I have been to Hokkaido. / I can play the guitar. / I have two brothers.)
- 相手は質問を重ねて、どれがウソかを当てる
正解が相手の頭の中にしかないので、自然と質問が生まれます。
処方箋②:言うことを準備させる(型と語彙)
何を言えばいいかわからない生徒には、話し始める前の準備が必要です。
会話の型カードを配る
例えば、「週末の話」のペアワークなら、次のような型を示します。
- A: What did you do last weekend?
- B: I ___.
- A: Sounds fun! / Really? / That's nice. + Who did you go with? / How was it?
- B: I went with ___. It was ___.
- A: (自分の話に切り替える) I ___.
事前に30秒メモ
話す前に、自分が言いたいことを単語だけでメモさせます。文にする必要はありません。例:「Saturday / soccer / tired」だけでも、話す時の手がかりになります。
先生とのデモを見せる
ペアワークの前に、先生と生徒1人(またはALT)でやり取りを実演します。「こんなふうにやるんだ」というイメージがあるだけで、始めやすさが大きく変わります。
処方箋③:会話を続ける技を教える
会話が1往復で終わるのは、「続ける技」を知らないからです。これは明示的に教える価値があります。
続けるための3つの技
- 反応する(リアクション):Really? / Me too! / That's great. / Oh, I see.
- 質問を足す(フォローアップ):Why? / When? / Who with? / How was it?
- 自分の話を加える(シェア):I like it too. I went there last year.
この3つを「リアクション・クエスチョン・シェア」として掲示し、ペアワークのたびに意識させます。
時間で続ける:チャット形式
「1分間、会話を止めずに続ける」というルールで、タイマーを使って行います。
- 1分間チャット(テーマ:好きな食べ物)
- 使えなかった表現を先生と確認(1分)
- 相手を替えて、もう一度1分間チャット
2回目は1回目より長く話せることが多く、生徒自身が伸びを実感できます。回を重ねたら1分半、2分と延ばしていきます。
高校向け:ペアワークを深める活動
高校生になると、単純なやり取りでは物足りなく感じる生徒も出てきます。少し知的な負荷をかけると、かえって会話が続くことがあります。
意見が割れる問いを使う
答えが一つに決まらない問いは、話す理由を自然に生みます。
- Should students be allowed to use smartphones at school?
- Is it better to live in a city or in the countryside?
- Which is more important for learning English, reading or speaking?
最初に立場だけを決め(I agree. / I disagree.)、理由を1つ言い、相手の理由に Why do you think so? と質問する、という3ステップにすると、議論が深まりやすくなります。
教科書本文を使った再話(リテリング)
- Aが本文の前半を、キーワードだけを見ながら自分の言葉で説明する
- Bは聞きながら、抜けている情報があれば質問する(What happened after that?)
- 役割を交代して後半を行う
本文理解と話す練習を一度にでき、テスト前の復習にもなります。
処方箋④:ペアの関係と教室の雰囲気
活動の設計がよくても、ペアの相手と気まずいと会話は弾みません。
ペア替えの工夫
- いつも同じ隣の席にしない:前後、斜め、ランダムなど、授業ごとに変える
- 移動型のペアワーク:教室を立って歩き、合図で出会った人と話す。終わったら次の人へ。座ったままより活気が出やすい
- インサイド・アウトサイド・サークル:二重の輪をつくり、向かい合った人と話す。合図で外側の輪が1人分ずれて、相手が替わる
雰囲気づくりのひと工夫
- ペアワークの最初と最後に、Hello! / Thank you! と握手やハイタッチ(衛生面や生徒の気持ちに配慮して、手を振るだけでも)
- 先生が教室を回り、うまく話せているペアのよい表現を全体に紹介する
よくある失敗
- 指示が長すぎて、始める前に集中が切れる → 指示は短く、デモで見せる
- 時間を決めずに始める → 何分やるか、タイマーを見せてから始める
- 終わった後に何もしない → 数組に発表してもらう、使えなかった表現を確認するなど、必ず振り返る
1週間で試す処方箋プラン
- 月曜:いつものペアワークを観察し、4つの原因のどれが当てはまるかメモする
- 火曜:会話を続ける3つの技(リアクション・クエスチョン・シェア)を紹介し、掲示する
- 水曜:インフォメーションギャップの活動を1つ取り入れる
- 木曜:1分間チャットを、相手を替えて2回行う
- 金曜:移動型のペアワークに挑戦し、最後に生徒に「一番話しやすかった活動」を聞く
生徒の声を聞くと、「絵の違い探しが楽しかった」「立って話すほうが緊張しない」など、次の授業のヒントがたくさん得られます。
ポイント:ペアワークが盛り上がるかどうかは、「話す理由」「話す材料」「続ける技」「話しやすい関係」の4つで決まります。どれか1つを変えるだけでも、教室の声の量は変わります。



