TBLTの「タスク」とは何か
TBLTでいう「タスク」は、単なる練習問題ではありません。研究者によって定義に幅はありますが、一般的には次のような条件を満たす活動を指します。
- 意味が中心:どの文法を使うかより、何を伝えるかが大事
- 情報や意見の「ギャップ」がある:相手の知らないことを伝える、意見の違いを調整する
- 学習者が自分の言語資源を使う:決められた文型ではなく、知っている英語を総動員する
- 言語以外の成果物がある:「旅行プランが決まる」「ランキングができる」など、ゴールがはっきりしている
たとえば「過去形を使って文を5つ書く」はエクササイズ(練習)です。一方、「ALTの先生に、自分の町でおすすめの週末の過ごし方を1つ提案して選んでもらう」はタスクです。
ポイント:タスクかどうかは「英語を使った結果、何かが決まる・完成するか」で判断すると分かりやすくなります。
授業の基本の流れ:プレタスク→タスク→ポストタスク
TBLTの授業は、大きく3つの段階で組み立てるのが一般的です。
1. プレタスク(5〜10分)
テーマへの関心を高め、必要そうな語彙を少しだけ確認します。ここで文法を長く説明しないのがポイントです。モデルとなるやり取りを先生が見せたり、短い音声を聞かせたりします。
2. タスク(15〜20分)
ペアやグループで課題に取り組みます。先生は机間を回り、困っているグループにヒントを出しますが、答えは教えません。その後、代表グループが結果を発表する「レポート」の段階を入れることもあります。
3. ポストタスク/言語フォーカス(10〜15分)
タスク中に先生がメモしておいた「言いたかったけど言えなかった表現」や「よく出た誤り」を取り上げ、ここで初めて文法や表現を整理します。最後に、同じタスクをもう一度(ペアを変えて)行うタスクの繰り返しを入れると、表現が改善されていくのを生徒自身が実感できます。
授業例①:中学2年「修学旅行の自由行動プランを決めよう」
比較表現を学ぶ単元に合わせたタスク例です。
タスク:4人グループで、京都の自由行動(3時間)の行き先を2か所決める。条件は「予算1人1,000円以内」「移動は30分以内」。
配布物:観光地カード6枚(写真、入場料、移動時間、おすすめポイントが英語で書いてある)。カードは4人で分けて持ち、自分のカードは見せずに英語で説明するルールにします。
生徒から出てくる英語の例です。
- My place is Kinkakuji. It costs 500 yen.
- Is it far from the station?
- Fushimi Inari is cheaper than Kinkakuji.
- I think Nijo Castle is more interesting.
成果物:Our plan: We will go to ___ and ___ because ___. を書いて提出。
ポストタスクでは、グループ活動で先生が拾った more cheap のような誤りを取り上げ、比較級の作り方を整理します。生徒は「さっき言いたかったこと」を学ぶので、説明が頭に入りやすくなります。
授業例②:高校1年「学校の新ルールを提案しよう」
意見を述べる表現を使う、高校向けのタスクです。
タスク:「生徒会に提案する新しい学校のルール」をグループで1つ決め、理由を2つ添えて1分で発表する。
進め方は次のとおりです。
- 個人で、あったらいいルールを英語で2つメモ(3分)
- グループで出し合い、1つに絞る(8分)。使う表現例:I think we should be allowed to use smartphones at lunch. / I agree, but what about...? / How about...?
- 発表原稿を作る(7分)
- 別のグループと発表し合い、質問を1つずつする(7分)
発表の型をスクリーンに出しておくと、英語が苦手な生徒も参加しやすくなります。
- Our idea is ___.
- First, ___. Second, ___.
- So we think ___.
ここでは「正しいルールを作ること」ではなく、相手を説得できたかを成功の基準にします。聞き手に「賛成か反対か」を手で示してもらうと、話し手の達成感が生まれます。
40人クラスでの運営のコツと評価
グループタスクを40人で回すときのポイントです。
- 役割カードを配る:司会(Leader)、時間係(Timekeeper)、書記(Writer)、英語チェック係(English Checker)。英語チェック係は「日本語が出たら英語で言い直そう」と声をかける役です
- 成果物を必ず残す:発表だけでなく、1枚の紙やスライドに結論を書かせると、評価の材料にもなります
- タイマーと合図を固定:One minute left! / Time's up! を毎回同じ言い方で
- 発表は全グループでなくていい:時間がなければ、グループ同士で発表し合う形にすれば10グループが同時に発表できます
評価は、タスクの達成(条件を満たしたプランになっているか)と、英語の使用(伝わる英語で話せたか)の2観点のシンプルなルーブリックで十分です。毎回全員を評価しようとせず、単元の最後のタスクだけを記録に残す評価にするなど、負担を分けましょう。
タスクの難易度を調整する方法
同じタスクでも、条件を少し変えるだけで難易度を上げ下げできます。クラスの実態に合わせて調整しましょう。
やさしくする方法
- 選択肢を減らす(観光地カード6枚→4枚)
- 準備時間を与える(話す前に2分間、個人でメモを書く)
- 使える表現をリストで示す
- 成果物を「表を埋める」程度の軽いものにする
難しくする方法
- 条件を増やす(予算に加えて「雨の日でも楽しめること」)
- 意見が分かれるように情報を設計する(どの選択肢にも長所と短所がある)
- 準備時間なしで即興で話す
- 成果物を「説得力のある提案文」にする
生徒への指示の例です。
- You have two minutes to plan. You can write notes, but not full sentences.
- Your group must agree on one answer.
- If you disagree, give a reason.
最初はやさしめの設定で成功体験を作り、同じ型のタスクを繰り返す中で少しずつ条件を増やしていくと、生徒は「前よりできるようになった」と実感できます。タスクの繰り返しと難易度の調整は、TBLTを長く続けるための大事な工夫です。
よくある失敗と改善のヒント
- タスクが難しすぎる:語彙が足りずに日本語だらけになるなら、プレタスクで使えそうな単語を5つだけ提示する
- 一部の生徒だけが話す:情報を分けて持たせる(ジグソー形式)と、全員が話さないと完成しない構造になる
- 言語フォーカスが抜ける:楽しかったで終わらないよう、最後の10分は必ず表現の整理にあてる
- 毎回新しいタスクを作ろうとして疲れる:同じ型のタスクを、テーマだけ変えて使い回す(旅行プラン→文化祭の出し物→遠足の行き先)
まずは1単元に1回、単元の最後に「まとめのタスク」を置くところから始めてみてください。教科書の文法単元の順番はそのままに、出口にタスクを置くだけで、生徒の「何のために学ぶのか」がはっきりします。



