心理学ウソ

学校で「マインドフルネス」を習っても心の健康は変わらなかった。8000人超の大実験の衝撃

学校で「マインドフルネス」を習っても心の健康は変わらなかった。8000人超の大実験の衝撃

読む前に予想してみよう!

学校でクラス全員にマインドフルネスを教えると、生徒のうつのリスクが下がることが大実験で確かめられた

研究カード(どんな研究?)
対象
11〜14歳の中学生(英国)
規模
84校・8,376人
研究の種類
クラスター・ランダム化比較試験
確かさ
★★★★★
3秒でわかる

イギリスの84校・8000人超の中学生をくじ引きで分けた大実験で、学校でのマインドフルネス授業は、通常の授業と比べて1年後の心の健康を改善しなかった。

ひとことで言うと学校で全員にマインドフルネスを教えても、心の健康は変わらなかった。

もくじ
  1. 84校・8000人超をくじ引きで分けた
  2. 一部の生徒には「むしろ逆効果」の可能性も
  3. じゃあ、マインドフルネスは効かないの?
  4. まとめ

心を落ち着ける「マインドフルネス」。呼吸に意識を向けたり、今この瞬間の感覚に気づいたりする練習で、ストレスを和らげる方法として世界中で人気です。イギリスやアメリカでは、学校の授業に取り入れるところも増えてきました。

では、学校で生徒全員にマインドフルネスを教えると、10代の心の健康は良くなるのでしょうか。イギリスで行われた8000人超の大実験は、多くの人の期待とはちがう答えを出しました。

0184校・8000人超をくじ引きで分けた

規模も方法もしっかりした「くじ引き実験」で、しかも、マインドフルネス研究に長く取り組んできた研究者たちが行った試験でした。

02一部の生徒には「むしろ逆効果」の可能性も

同じ年に発表された詳しい分析(Montero-Marinさんら)では、さらに気になる結果が報告されています。

もともと心の不調のリスクが高い生徒では、マインドフルネス授業を受けたグループの方が、うつのリスクや幸福感のスコアがわずかに悪かったのです。差は小さく、医学的に意味のある大きさではありませんでしたが、研究チームは「全員向けのこの形式の授業は、すでに不調を抱えている生徒には向かない可能性がある」と述べています。

また、この授業では、生徒がマインドフルネスのスキル自体を、意味のあるレベルまでは身につけられていなかったこともわかりました。スキルや実行機能が伸びた生徒ほど1年後の結果は良かったので、「教え方」に課題があった可能性もあります。

同じ授業でも、一人ひとりの心に広がる波紋はちがう
同じ授業でも、一人ひとりの心に広がる波紋はちがう

03じゃあ、マインドフルネスは効かないの?

そう結論づけるのは早すぎます。Dunningさんらのメタ分析(2019年)は、子どもや10代を対象にした33のランダム化比較試験をまとめ、マインドフルネスにはうつや不安・ストレスに対する小さな効果があると報告しています。

ただし、これは何もしないグループなども含めた全研究をまとめた結果でした。ちゃんとした別の活動と比べた研究に限ると、効果が見られる項目は減りました。

つまり、マインドフルネスそのものが無意味なのではなく、

  • 全員に一律で教えるのか、希望する人や必要な人に教えるのか
  • 10回の授業で十分なのか、もっと練習が必要なのか
  • 比べる相手は「何もしない」なのか、「いつもの良い授業」なのか

によって、結果が大きく変わりうるのです。

04まとめ

学校で全員にマインドフルネスを教えても、1年後の心の健康は、いつもの授業と変わらなかった。大規模で信頼性の高い実験だからこそ、この結果は重く受け止める必要があります。

大事なのは、「流行っているから」ではなく、誰に、どんな形で、何と比べて効くのかを見極めること。科学は、ときに期待を裏切ることで、本当に役立つ道を教えてくれるのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMindfulness, which involves focusing on your breathing and the present moment, has become popular in… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Mindfulness, which involves focusing on your breathing and the present moment, has become popular in schools around the world. To test whether it improves teenagers' mental health, researchers at Oxford ran the MYRIAD trial. They divided 84 British secondary schools, with 8,376 students aged 11 to 14, into two groups by lottery.

One group received ten mindfulness lessons, and the other continued its usual lessons about mental health and relationships. After one year, there was almost no difference in depression risk, behavior problems or well-being. A further analysis found that students at higher risk of mental health problems did slightly worse after the mindfulness lessons. Many students also did not learn mindfulness skills well enough.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

呼吸や今この瞬間に意識を向けるマインドフルネスは、世界中の学校で人気になっています。それが10代の心の健康を良くするかどうかを確かめるため、オックスフォードの研究者たちはMYRIAD試験を行いました。彼らは、11〜14歳の生徒8,376人が通うイギリスの中学校84校を、くじ引きで2つのグループに分けました。

一方のグループはマインドフルネスの授業を10回受け、もう一方は心の健康や人間関係についてのいつもの授業を続けました。1年後、うつのリスク、行動の問題、幸福感のいずれにも、ほとんど差はありませんでした。さらに詳しい分析では、もともと心の不調のリスクが高い生徒は、マインドフルネスの授業の後でわずかに悪い結果になっていました。また、多くの生徒はマインドフルネスのスキルを十分に身につけられていませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What was the main result of the MYRIAD trial?

Q2. How were the schools divided into two groups?

Q3. What can be inferred from the last two sentences?

重要単語

  • mindfulnessC1
    名詞マインドフルネス(今この瞬間に注意を向けること)Mindfulness is popular in many schools. mindful(気を配る)+-ness。be mindful of ~「~に気を配る」も覚えたい。
  • universalB2
    形容詞全員を対象にした・普遍的なUniversal programs are given to every student. universe(宇宙)と同語源。universal design「誰もが使いやすいデザイン」。
  • trialB2
    名詞試験・裁判The trial included 84 secondary schools. 動詞 try の名詞形。clinical trial「臨床試験」、trial and error「試行錯誤」。
  • well-beingB2
    名詞心身の健康・幸福感The lessons did not improve well-being. wellbeing ともつづる。health より広く、心の満足や幸福まで含む語。
  • depressionB2
    名詞うつ・抑うつThe risk of depression was measured. 動詞 depress(落ち込ませる)。経済では「不況」の意味でも使われる(the Great Depression)。
  • implementationC1
    名詞実施・導入Implementation quality can affect results. 動詞 implement(実行する)。政策や計画を「実際に行う」ことを表す硬い語。

4コマでわかる

学校で「マインドフルネス」を習っても心の健康は変わらなかった。8000人超の大実験の衝撃の4コマ漫画
学校の授業でマインドフルネス(瞑想)を教えれば、10代の心の健康は良くなる? イギリスの84校・8000人超をくじ引きで分けた大実験では、1年後のうつのリスクや幸福感に差は出なかったらしい。期待が大きかっただけに衝撃。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Kuyken et al. (2022) Effectiveness and cost-effectiveness of universal school-based mindfulness training compared with normal school provision in reducing risk of mental health problems and promoting well-being in adolescence: the MYRIAD cluster randomised controlled trial, Evidence Based Mental Healthdoi.org
  2. Montero-Marin et al. (2022) School-based mindfulness training in early adolescence: what works, for whom and how in the MYRIAD trial?, Evidence Based Mental Healthdoi.org
  3. Dunning et al. (2019) Research Review: The effects of mindfulness-based interventions on cognition and mental health in children and adolescents – a meta-analysis of randomized controlled trials, Journal of Child Psychology and Psychiatrydoi.org