心理学ビミョー

ADHDの説明を「伝言ゲーム」で回すほど、「自分もそうかも」と思う人が増えた

ADHDの説明を「伝言ゲーム」で回すほど、「自分もそうかも」と思う人が増えた

読む前に予想してみよう!

この実験では、説明文が人づてに回るほど「専門家に相談したほうがいい」と勧める人も増えた

研究カード(どんな研究?)
対象
実験の参加者
規模
4つの実験
研究の種類
伝達連鎖実験(査読前プレプリント)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

ADHDの説明文を人から人へ書き直して回す実験で、回るほど読んだ人が自分や他人をADHDだと判断しやすくなった。査読前の研究。

ひとことで言うと話が人づてに回ると、「わたしもそうかも」が増えるみたい。

もくじ
  1. 心理学版「伝言ゲーム」とは?
  2. 回るほど「自己診断」が増えた
  3. 意外な面:「相談をすすめる」も増えた
  4. まとめ

SNSで「ADHDあるある」の動画を見て、「え、これ全部わたしだ…」と思ったことはありませんか?

2026年10月、心理学のプレプリント(査読前論文)サーバー「PsyArXiv」に、この現象のしくみに迫る研究が公開されました。使ったのは、なんと伝言ゲーム。ADHDの説明文を人から人へと書き直して回すと、回るほど、読んだ人が「自分もADHDかも」と判断しやすくなったのです。

01心理学版「伝言ゲーム」とは?

この研究で使われたのは「伝達連鎖(トランスミッション・チェーン)実験」という方法です。

1人目が文章を読み、自分の言葉で書き直して2人目へ。2人目がまた書き直して3人目へ……。情報が人づてに広がる過程を、実験室で再現する方法で、文化がどう変化していくかを調べる研究でよく使われてきました。

研究チームは、SNSでは心の健康に関する情報が「専門家→一般人」ではなく「一般人→一般人」で広がっている点に注目しました。

02回るほど「自己診断」が増えた

結果、説明が連鎖の先へ進むほど、

  • 読んだ人が自分をADHDだと判断する傾向が強まり
  • 特徴が軽い架空の人物までADHDだと判断する傾向も強まった

ことが分かりました。人づての書き直しの中で、説明の中身や伝わり方が変わっていったと考えられます。

さらに、書き直すときの条件でも結果が一部変わりました。

  • 形式:「具体例のリスト」にするか、「まとまった文章の要約」にするか
  • 動機:「いいねを最大化する」つもりで書くか、「正確さ」を重視して書くか

こうした条件が、一部の効果の大きさを左右していました。

情報は人づてに回るうちに、少しずつ形を変えていく
情報は人づてに回るうちに、少しずつ形を変えていく

03意外な面:「相談をすすめる」も増えた

おもしろいのは、悪い方向の変化だけではなかったこと。説明が回るほど、架空の人物に「専門家に相談したほうがいい」とすすめる傾向も強まったのです。

ADHDは実際に支援が必要な人が見逃されることもある特性です。情報が広がることには、「気づき」や「受診のきっかけ」になる良い面もあります。問題は、「かもしれない」が「そうに違いない」に変わってしまうことなのかもしれません。

04まとめ

情報は、人の手を渡るたびに少しずつ形を変えます。SNSで見た「あるある」に心当たりがあっても、それは入口にすぎません。気になったら、情報の出どころを確かめ、専門家に相談する。それが「伝言ゲーム」に振り回されないコツです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people today learn about mental health from social media, where information spreads from one ordinary… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many people today learn about mental health from social media, where information spreads from one ordinary person to another instead of coming directly from experts. A new study, which has not yet been peer-reviewed, tested what happens in this process. Using a method similar to the telephone game, participants read an explanation of ADHD, rewrote it in their own words and passed it on to the next person.

The further the explanation traveled along the chain, the more likely readers were to believe that they themselves had ADHD. They were also more likely to label a fictional person with only mild traits as having ADHD. On the other hand, they more often recommended seeing a professional.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

今日、多くの人がSNSから心の健康について学んでいます。そこでは情報が専門家から直接来るのではなく、一般の人から一般の人へと広がります。まだ査読を受けていない新しい研究が、この過程で何が起こるかを調べました。伝言ゲームに似た方法を使い、参加者はADHDの説明を読み、自分の言葉で書き直して次の人に渡しました。

説明が連鎖の先へ進むほど、読んだ人は自分自身がADHDだと信じやすくなりました。また、軽い特徴しかない架空の人物をADHDだと判断しやすくもなりました。その一方で、専門家に診てもらうことをすすめることも多くなりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What process did the study try to copy?

Q2. What happened as the explanation traveled further along the chain?

Q3. What does the phrase "On the other hand" introduce?

重要単語

  • self-diagnosisC1
    名詞自己診断Self-diagnosis based on short videos can be misleading. diagnosis の複数形は diagnoses。動詞 diagnose A with B「AをBと診断する」。
  • transmitC1
    動詞伝える、伝達するStories change as people transmit them. trans-(向こうへ)+mit(送る)。名詞 transmission。感染症を「うつす」の意味でも使う。
  • subclinicalC1
    形容詞診断基準に満たない程度のShe had subclinical symptoms of anxiety. sub-(下の)+clinical(臨床の)。「臨床的に問題とされるレベルの下」という意味。
  • preprintC1
    名詞査読前の論文A preprint has not been peer-reviewed yet. pre-(前の)+print(印刷)。雑誌掲載「前」の原稿。ニュースで見たら結果は暫定的と考える。
  • moderateB2
    動詞(効果の強さを)左右するAge may moderate the effect of the training. 形容詞 moderate は「適度な」。研究用語の moderator(調整変数)は「効果の大きさを変える要因」。
  • peer-reviewedC1
    形容詞査読済みのPeer-reviewed studies are checked by other experts. peer は「同等の仲間」。peer pressure(同調圧力)の peer と同じ。
  • traitB2
    名詞特徴、特性Being easily distracted is one possible trait of ADHD. personality traits(性格特性)が頻出。発音は /treɪt/(トレイト)。
ADHDの説明文を人から人へ「伝言ゲーム」のように書き直して回したら、回るほど「自分もADHDかも」と思う人が増えたらしい。「いいね」狙いで書く条件で変化が出る場面も。SNS時代の情報の広がり方を考えさせる(査読前)。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Katiyar et al. (2026) Peer Transmission of Mental Health Information Increases ADHD Self-Diagnosis, PsyArXiv(査読前)doi.org
  2. Mesoudi & Whiten (2008) The multiple roles of cultural transmission experiments in understanding human cultural evolution, Philosophical Transactions of the Royal Society Bdoi.org
  3. Yeung et al. (2022) TikTok and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Cross-Sectional Study of Social Media Content Quality, The Canadian Journal of Psychiatrydoi.org