TikTokで人気のADHD動画、心理学者が見ると症状の説明の半分以上がズレていた

読む前に予想してみよう!
ADHDの誤情報の動画を見た大学生は、ADHDの知識が減ったのに、自分の知識への自信は高まった
アメリカの実験で、誤情報を見たグループは正答が減る一方、自信は上がっていた。
- 対象
- TikTokの人気ADHD動画100本と大学生843人
- 規模
- 2つの事前登録研究
- 研究の種類
- 動画の内容分析+アンケート(相関)
- 確かさ
- ★★★☆☆
人気のADHD動画100本を心理学者が調べると、症状の説明で診断の手引きと合うのは半分以下。よく見る学生ほど「ADHDの人は多い」と見積もっていた。
ひとことで言うとSNSの「ADHDあるある」は、半分くらいズレているかも。
もくじ
SNSで「ADHDあるある」の動画を見て、「え、これ全部わたしだ…」と思ったことはありませんか?
その動画、どこまで正しいのでしょうか。カナダのブリティッシュコロンビア大学などの研究チームが、TikTokで人気のADHD動画を、ADHDにくわしい心理学者にチェックしてもらいました。2025年に科学誌『PLOS ONE』に載った結果は、症状の説明のうち、診断の手引きと合っていたのは半分以下というものでした。
01人気のADHD動画100本を、心理学者がチェック
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意、落ち着きのなさ、衝動的な行動などが続き、生活に困りごとが出る特性です。
結果、手引きの症状と合うと判断された主張は48.7%。半分以上は、ADHDの症状とは言えない内容でした。中には、ADHDではない人にもよくある、ふつうの体験として説明できるものもありました。また、動画を投稿した人の半数が、自分の商品やサービスを宣伝したり、寄付を呼びかけたりしていました。
2022年に別の研究チームが同じくTikTokのADHD動画100本を調べた研究でも、医師の評価で52%が「誤解を招く」、「役に立つ」は21%だけでした。誤解を招く動画の多くは、医療の専門家ではない人が投稿したものでした。
02よく見る学生ほど「ADHDの人は多い」と見積もった
同じ論文の2つ目の研究では、カナダの大学生843人にアンケートをしました。このうち421人が「自分はADHDだ」と自己診断していて、医師の診断を受けていたのは198人でした。
学生たちに「世の中の何%の人がADHDと診断されうるか」とたずねると、平均の答えは約34%。3人に1人という見積もりです。論文が紹介している大人の割合(約3〜7%)よりずっと高い数字でした。
そして、ADHDの動画をよく見る学生ほど、
- 世の中のADHDの割合を高く見積もり
- 心理学者が最も低く評価した5本の動画まで、人に勧めたいと答えやすい
という傾向がありました。ただし、これはアンケートで見つかった関係です。動画を見たせいでそう思うようになったのか、もともとADHDに関心がある人が動画をよく見るのかは、この研究では区別できません。

03誤情報を見ると「知識は減るのに自信は増える」
では、誤った動画を見ると、人の考えは変わるのでしょうか。アメリカのシラキュース大学の研究チームが、実験で確かめました(2025年)。
対象は、ADHDの症状に2つ以上心当たりがあるものの、診断も治療も受けたことのない大学生490人です。研究チームはこの学生たちを、くじ引きのように3つのグループに分けました。研究チームが作ったTikTok風の動画(約12分)を、グループごとに見てもらいます。中身は「ADHDの誤情報」「正しいADHDの情報」「ADHDと関係のない内容」の3種類です。
その結果、誤情報を見たグループは、
- ADHDについての知識の正答が減ったのに
- 自分の知識への自信は高まった
のです。さらにこのグループは、ADHDと関係のない動画を見たグループより「治療を受けたい」という気持ちが強めでした。医学的な根拠のある治療だけでなく、根拠のない方法についても同じでした。正しい情報を見たグループは、見る前より知識も自信も増えていました。
04人づての「伝言ゲーム」では、中身が消えて「こわさ」だけが残る
SNSでは、情報が人から人へ伝わるうちに形を変えることもあります。
2015年にドイツの研究チームが科学誌『PNAS』で発表した実験を見てみましょう。最初の人だけが、ある抗菌成分(トリクロサン)の良い点と悪い点を書いた記事を読みます。その内容を次の人に会話で伝え、聞いた人がまた次の人へ……と、10人ほどがリレーしました。すると、話は回るほど短く、不正確になりました。一方、「どのくらい危ないか」という感じ方は、薄れずに次の人へ伝わりました。伝える人が、自分のもともとの思い込みに合うように話を変えていたからです。
健康の情報も、人づてに回るうちに、細かい条件が抜けて印象だけが残るおそれがあります。
05まとめ
人気のADHD動画でも、専門家が見ると症状の説明の半分以上がズレていました。そして誤った情報は、知識を減らしながら自信だけを高めることがあります。SNSで見た「あるある」に心当たりがあっても、それは入口にすぎません。気になったら、情報の出どころを確かめ、専門家に相談する。それが動画に振り回されないコツです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerADHD videos are very popular on TikTok, but are they correct?
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people watch videos about ADHD on social media. In one study, two psychologists checked the 100 most popular ADHD videos on TikTok. Fewer than half of the claims about ADHD matched the official list of symptoms.
Some videos described things that happen to almost everyone. The same team also found that students who watched these videos more often thought that ADHD was more common. Videos can be helpful, but it is good to check who made them.
78 words ・ CEFR A2
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多くの人がSNSでADHDについての動画を見ています。ある研究で、2人の心理学者がTikTokで最も人気のあるADHD動画100本を調べました。ADHDについての主張のうち、公式の症状の一覧と合っていたのは半分以下でした。
ほとんどの人に起こることを説明している動画もありました。同じ研究チームは、こうした動画をよく見る学生ほど、ADHDの人は多いと考えていることも見つけました。動画は役に立つこともありますが、誰が作ったのかを確かめるとよいでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
人気のADHD動画がどのくらい正確かを調べた研究の話なので A が正解。
Q2. How many of the claims matched the official list of symptoms?
Fewer than half of the claims about ADHD matched the official list of symptoms. とあるので C。
Q3. What did students who watched these videos more often think?
students who watched these videos more often thought that ADHD was more common とあるので B。
ADHD videos are very popular on TikTok, but are they correct? Researchers in Canada asked two psychologists to check the claims in the 100 most popular #ADHD videos.
Together, these videos had almost half a billion views. Only 48.7% of the claims matched the symptoms in the official diagnostic manual. Half of the people who made the videos were also selling something or asking for money. In a second study, the team asked 843 university students about ADHD.
On average, the students guessed that about one in three people could be diagnosed with ADHD. Students who watched ADHD videos more often gave higher guesses. They were also more willing to recommend even the videos that the psychologists rated as the worst.
121 words ・ CEFR B1
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TikTokではADHDの動画がとても人気ですが、それは正しいのでしょうか。カナダの研究者たちは、2人の心理学者に、最も人気のある#ADHD動画100本の主張を調べてもらいました。
これらの動画の再生回数は合わせて約5億回でした。公式の診断の手引きにある症状と合っていた主張は、48.7%だけでした。動画を作った人の半数は、何かを売ったり、お金を求めたりもしていました。2つ目の研究で、研究チームは843人の大学生にADHDについてたずねました。
学生たちは平均で、3人に1人くらいがADHDと診断されうると見積もりました。ADHDの動画をよく見る学生ほど、高い数字を答えました。また、心理学者がいちばん悪いと評価した動画でさえ、人に勧めたいと答えやすい傾向がありました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the two psychologists do?
asked two psychologists to check the claims in the 100 most popular #ADHD videos とあるので B。
Q2. What did the students guess on average?
the students guessed that about one in three people could be diagnosed with ADHD とあるので A。
Q3. What was true of students who watched ADHD videos more often?
Students who watched ADHD videos more often gave higher guesses. とあるので C。いちばん悪い動画まで勧めたがったので D は逆。
Short videos about ADHD attract huge audiences on TikTok, and several research teams have now asked how accurate they are. In a study published in PLOS ONE in 2025, two clinical psychologists compared the claims in the 100 most popular #ADHD videos with the symptoms listed in the DSM-5, the standard diagnostic manual.
Fewer than half of the claims matched. Some described ordinary experiences that most people have from time to time. An earlier study had rated 52% of popular ADHD videos as misleading. A separate experiment in the United States looked at what such content does to viewers.
Researchers randomly assigned 490 college students to watch TikTok-style videos containing ADHD misinformation, accurate information, or unrelated material. Those who saw the misinformation answered fewer knowledge questions correctly, yet they felt more confident about what they knew. They also reported stronger intentions than the control group to seek treatment, including treatments without scientific support. Students who saw the accurate videos, by contrast, improved in both knowledge and confidence.
167 words ・ CEFR B2
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TikTokではADHDについての短い動画が大勢の視聴者を集めており、いくつかの研究チームがその正確さを調べ始めています。2025年に『PLOS ONE』に載った研究では、2人の臨床心理学者が、最も人気のある#ADHD動画100本の主張を、標準的な診断の手引きであるDSM-5にのっている症状と比べました。
合っていた主張は半分以下でした。ほとんどの人がときどき経験する、ふつうのことを説明している主張もありました。それより前の研究では、人気のADHD動画の52%が誤解を招くと評価されていました。アメリカで行われた別の実験は、こうした内容が見る人に何をもたらすかを調べました。
研究者たちは490人の大学生を無作為に分け、ADHDの誤情報、正しい情報、関係のない内容のいずれかを含むTikTok風の動画を見てもらいました。誤情報を見た人は、知識の問題に正しく答えられた数が減りましたが、自分の知識にはより自信をもつようになりました。また、関係のない動画を見たグループと比べて、科学的な裏付けのない方法を含めて、治療を受けたいという気持ちも強くなりました。対照的に、正しい動画を見た学生は、知識と自信の両方が伸びました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2025 PLOS ONE study compare?
compared the claims in the 100 most popular #ADHD videos with the symptoms listed in the DSM-5 とあるので B。
Q2. What happened to students who saw the misinformation?
answered fewer knowledge questions correctly, yet they felt more confident とあるので D。
Q3. What does "randomly assigned" mean in this passage?
randomly assign は「無作為に(くじ引きのように)割り当てる」。偶然でグループに分けたので B。
重要単語
- self-diagnosisC1名詞自己診断Self-diagnosis based on short videos can be misleading.
diagnosis の複数形は diagnoses。動詞 diagnose A with B「AをBと診断する」。 - misleadingB2形容詞誤解を招くThe video was popular but misleading.
mis-(誤って)+lead(導く)。misinformation(誤情報)の mis- と同じ。 - claimB2名詞主張The doctor checked each claim in the video.
動詞では「(根拠なしに)主張する」。日本語の「クレーム(苦情)」は英語では complaint。 - prevalenceC1名詞(病気などの)有病率、広がりの度合いThe students overestimated the prevalence of ADHD.
形容詞 prevalent「広く見られる」。医学ニュースで頻出。 - confidenceB1名詞自信Wrong information can still raise your confidence.
形容詞 confident「自信がある」。be confident about ...「…に自信がある」。 - randomly assignC1動詞句無作為に割り当てるThe students were randomly assigned to three groups.
くじ引きのように偶然でグループ分けすること。原因と結果を確かめる実験の基本。 - traitB2名詞特徴、特性Being easily distracted is one possible trait of ADHD.
personality traits(性格特性)が頻出。発音は /treɪt/(トレイト)。
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TikTokで人気のADHD動画100本を心理学者がチェックしたら、症状の説明で診断の手引きと合っていたのは半分以下だったらしい。カナダの大学生は平均で「3人に1人はADHDと診断されうる」と見積もっていた。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Karasavva et al. (2025) A double-edged hashtag: Evaluation of #ADHD-related TikTok content and its associations with perceptions of ADHD, PLOS ONEdoi.org
- Yeung et al. (2022) TikTok and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Cross-Sectional Study of Social Media Content Quality, The Canadian Journal of Psychiatrydoi.org
- Schiros et al. (2025) Misinformation mayhem: the effects of TikTok content on ADHD knowledge, stigma, and treatment-seeking intentions, European Child & Adolescent Psychiatrydoi.org
- Moussaïd et al. (2015) The amplification of risk in experimental diffusion chains, PNASdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











