「植物に話しかけると元気に育つ」説を、論文ベースで本気で検証してみた

読む前に予想してみよう!
ハチの羽音に似た音を聞かせると、蜜の糖度を上げる花がある
2019年の研究で、マツヨイグサの仲間の花は、ハチの羽音を流すと数分で蜜の糖度が上がった。
- 対象
- シロイヌナズナ・マツヨイグサの仲間ほか
- 規模
- 数十株規模(各研究)
- 研究の種類
- 振動・音の再生実験と総説
- 確かさ
- ★★☆☆☆
植物が振動や音に反応する研究はある。でも人の話しかけで育つという確かな証拠はない。効くとしたら「世話が増える」効果かも。
ひとことで言うと植物は言葉はわからない。でも話しかける人は、お世話もていねい!
「おはよう、今日も元気だね」
鉢植えにやさしく声をかける。そうすると植物がよく育つ——園芸好きの間では、昔からよく聞く話です。
本当だったら素敵ですよね。でも、科学の目で見るとどうなのでしょうか。論文をたどって、真面目に検証してみました。
01植物は「音」に反応するのか?
まず大前提として、植物に耳はありません。ただし、振動を感じる仕組みは持っています。
音の正体は、空気のふるえ(振動)です。そして植物の葉や茎は、ふるえると細胞の中で信号が流れることがわかっています。だから「植物が音に反応する」こと自体は、ありえない話ではないのです。
実際に、こんな研究があります。
植物は振動の「種類」まで区別しているらしいのです。ほかにも2017年には、エンドウの根が、パイプの中を流れる水の音(振動)のほうへ伸びていく傾向がある、という実験も報告されています(ただし再現性の検証はこれからです)。
02花は、ハチの羽音で蜜を甘くする
もう一つ、ワクワクする研究があります。
2019年に『Ecology Letters』に載ったイスラエル・テルアビブ大学の研究(Veits ら)では、海辺に咲くマツヨイグサの仲間(Oenothera drummondii)の花に、ハチが飛ぶ音を聞かせました。すると、わずか数分で、花の蜜の糖度が上がったのです。
研究チームは、おわん形の花びらが「耳」のように振動を受け止めている可能性を考えています。ハチが近くにいるときだけ甘い蜜を出せば、ムダなく花粉を運んでもらえる、というわけです。

03じゃあ「人の声」はどうなの?
ここが本題です。結論から言うと、人が話しかけることで植物がよく育つ、という確かな証拠は見当たりません。
2024年に『New Phytologist』に載った総説(Son ら)は、植物と音の研究を整理し、こうまとめています。
- スピーカーをすぐ近くに置いて、低くて大きな音を流すと、成長などに影響が出たという研究はある
- でも、植物が空気中の音を「聞いている」という研究の多くは、実は土や体を伝わる振動の話
- 植物どうしが音でやり取りしている証拠は、今のところない
人のふつうの話し声は、それに比べるとずっと小さくて弱い振動です。言葉の意味を植物が理解する、というのはもちろんありえません。
04それでも「話しかける人の植物」が元気な理由
とはいえ、話しかけている人の植物が元気に見えるのは、気のせいとも限りません。
毎日声をかける人は、毎日植物をよく見ている人です。土の乾き具合、葉の色、虫の気配。小さな変化にすぐ気づいて、水やりや置き場所を調整できます。
つまり効いているのは「声」ではなく、「気にかける時間」なのかもしれません。
05まとめ
植物は振動を感じ、ハチの羽音や虫のかじる音に反応することまでわかってきました。でも、人の話しかけで育つという証拠はありません。
話しかけるあなたの「まなざし」こそが、植物にとっていちばんの栄養なのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany gardeners believe that talking to plants helps them grow.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people talk to their plants. They believe it helps the plants grow. Is it true? Plants do not have ears, but they can feel vibrations, or small shakes. In one study, flowers made sweeter nectar after they heard the sound of bees.
But scientists have found no good evidence that a human voice helps plants grow. People who talk to plants often look at them every day. Maybe that care is what really helps.
75 words ・ CEFR A2
和訳を見る
多くの人が植物に話しかけます。そうすると植物がよく育つと信じているのです。本当でしょうか。植物に耳はありませんが、振動、つまり小さなゆれを感じることはできます。ある研究では、花はハチの羽音を聞いたあとで、より甘い蜜を作りました。
しかし、人の声が植物の成長を助けるという確かな証拠を、科学者たちは見つけていません。植物に話しかける人は、毎日植物をよく見ていることが多いです。本当に役立っているのは、そのお世話なのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「植物に話しかけると育つのは本当か」が全体の問いなので D。
Q2. What did flowers do after they heard bees?
flowers made sweeter nectar after they heard the sound of bees とあるので B。
Q3. In the passage, "evidence" means ...
evidence は「証拠」。no good evidence=確かな証拠がない、なので A。
Many gardeners believe that talking to plants helps them grow. Plants have no ears, but scientists know they can sense vibrations. In a 2014 study, researchers played the vibrations of caterpillars chewing leaves to small plants.
Later, when real caterpillars attacked, those plants produced more chemicals to defend themselves. Vibrations from wind had no such effect. In 2019, another team found that some flowers made their nectar sweeter within minutes of hearing the sound of a flying bee. However, there is no reliable evidence that a normal human voice makes plants grow better. The real reason may be simple: people who talk to their plants also check the soil and leaves more often.
113 words ・ CEFR B1
和訳を見る
多くの園芸好きは、植物に話しかけるとよく育つと信じています。植物に耳はありませんが、振動を感じられることを科学者たちは知っています。2014年の研究では、研究者たちがイモムシが葉をかじるときの振動を小さな植物に再生して聞かせました。
その後、本物のイモムシが襲ってきたとき、その植物は身を守るための化学物質をより多く作りました。風の振動ではそのような効果はありませんでした。2019年には別のチームが、ある種の花はハチの飛ぶ音を聞いてから数分以内に蜜を甘くすることを発見しました。しかし、人のふつうの声が植物の成長をよくするという信頼できる証拠はありません。本当の理由は単純かもしれません。植物に話しかける人は、土や葉の様子もよく確認しているのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What happened in the 2014 study?
噛む振動を聞かせた植物は、後で本物のイモムシに襲われたとき produced more chemicals to defend themselves とあるので B。風の振動では効果なし。
Q2. According to the passage, what is true about the human voice?
there is no reliable evidence that a normal human voice makes plants grow better とあるので C。
Q3. What does the writer suggest is the real reason plants of "talkers" do well?
最終文で、話しかける人は土や葉をよく確認している、と述べているので、世話の差が理由だと示唆している。A。
In a 2014 experiment, researchers played the recorded vibrations of chewing caterpillars to small laboratory plants. When the plants were later attacked, they produced more defensive chemicals. Vibrations from wind did not have this effect, so the plants seem able to tell one kind of vibration from another. Plants have no ears, but their leaves and stems can sense mechanical vibration, and sound is a form of vibration.
In a 2019 study, a beach evening primrose raised the sugar concentration of its nectar within minutes of hearing a bee buzz. Do results like these mean gardeners should chat with their houseplants? Probably not. Both experiments used specific signals that matter in nature, and a 2024 review pointed out that many so-called sound studies actually measured vibrations moving through soil or plant tissue.
Ordinary human speech is much weaker. Studies claiming that kind words help plants grow have usually lacked blinding, randomization, and replication, and no reliable peer-reviewed study supports the idea. If talking seems to help, the likely reason is the talker's behavior. People who chat with their plants tend to notice dry soil or pests sooner.
187 words ・ CEFR B2
和訳を見る
2014年の実験で、研究者たちは実験用の小さな植物に、イモムシがかじるときの振動の録音を聞かせました。その植物は後で襲われたとき、身を守る化学物質をより多く作りました。風の振動ではこの効果は起きなかったので、植物は振動の種類を区別できるようです。植物には耳がありませんが、葉や茎は機械的な振動を感じることができ、音は振動の一種です。
2019年の研究では、海辺のマツヨイグサの仲間が、ハチの羽音を聞いてから数分以内に蜜の糖度を上げました。こうした結果は、園芸好きが観葉植物とおしゃべりすべきだという意味でしょうか。おそらく違います。どちらの実験も自然の中で意味をもつ特定の信号を使っており、2024年の総説は、いわゆる音の研究の多くが、実際には土や植物の組織を伝わる振動を測っていたと指摘しました。
人のふつうの話し声ははるかに弱いものです。やさしい言葉が植物の成長を助けると主張する研究は、たいてい盲検化・無作為化・反復を欠いており、この考えを支持する信頼できる査読研究はありません。話しかけることが役に立っているように見えるなら、その理由はおそらく話しかける人の行動にあります。植物とおしゃべりする人は、乾いた土や害虫に早く気づく傾向があるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the 2014 experiment suggest?
噛む振動には反応し風の振動には反応しなかったことから、the plants seem able to tell one kind of vibration from another とあるので C。
Q2. Why does the author doubt studies claiming that kind words help plants grow?
have usually lacked blinding, randomization, and replication と研究デザインの不備を指摘しているので B。
Q3. Which statement best summarizes the author's conclusion?
最後の2文で、効果があるように見えるなら理由は the talker's behavior(話しかける人の行動)であり、話しかける人は乾いた土や害虫に早く気づく、と述べているので D。
重要単語
- vibrationB2名詞振動Plants can respond to vibrations in their leaves.
動詞 vibrate。スマホの「バイブ」はこの語から。sound is a vibration of the air は理科の定番表現。 - herbivoreC1名詞草食動物(植物を食べる虫なども含む)Caterpillars are herbivores that chew leaves.
herb(草)+-vore(食べるもの)。carnivore(肉食動物)、omnivore(雑食動物)とセットで覚える。 - nectarB2名詞(花の)蜜The flowers made sweeter nectar after hearing bees.
ギリシャ神話の「神々の飲み物」が語源。ジュースの「ネクター」も同じ語。 - pollinatorC1名詞送粉者(花粉を運ぶ生き物)Bees are important pollinators.
pollen(花粉)→ pollinate(受粉させる)→ pollinator。環境問題の長文で頻出。 - evidenceB1名詞証拠There is no strong evidence that talking helps plants grow.
不可算名詞なので an evidence は×。a piece of evidence と数える。入試の正誤問題で狙われる。 - plausibleC1形容詞もっともらしいA more plausible explanation is better care.
反対語は implausible。more plausibly explained のように副詞形でも論説文で頻出。 - replicationC1名詞(実験の)再現、反復Good science needs replication of results.
動詞 replicate(再現する)。replica(複製品)と同語源。研究の信頼性を語る文脈のキーワード。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
このネタ、誰かに教えたくなった?
「植物に話しかけると元気に育つ」、論文を調べると、人の声で育つという確かな証拠は見当たらなかった。ただ、花がハチの羽音を聞きつけて蜜を甘くする、という研究はあるらしい。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(5件)タップで表示
- Appel & Cocroft (2014) Plants respond to leaf vibrations caused by insect herbivore chewing, Oecologiadoi.org
- Veits et al. (2019) Flowers respond to pollinator sound within minutes by increasing nectar sugar concentration, Ecology Lettersdoi.org
- Gagliano et al. (2017) Tuned in: plant roots use sound to locate water, Oecologiadoi.org
- Son et al. (2024) Is plant acoustic communication fact or fiction?, New Phytologistdoi.org
- Mishra et al. (2016) Plant acoustics: in the search of a sound mechanism for sound signaling in plants, Journal of Experimental Botanydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













