【録音成功】水不足のトマトは「超音波」でポツポツ鳴いていた

読む前に予想してみよう!
水不足のトマトは、人間の耳には聞こえない超音波を出している
2023年のCell論文で、乾燥や切断のストレスを受けたトマトとタバコが超音波を出すことが記録された。
- 対象
- トマト・タバコほか
- 規模
- 数十株規模の録音
- 研究の種類
- 実験室・温室での録音+機械学習
- 確かさ
- ★★★☆☆
水不足や茎を切られたトマトやタバコは、人に聞こえない超音波を出していた。音だけで植物の状態をAIが当てられた。
ひとことで言うと植物はのどがかわくと、人には聞こえない「プチッ」という音を出す!
部屋の隅で、水やりを忘れたトマトの鉢。実はその鉢、ずっと音を出していたかもしれません。
ただし人間には聞こえません。鳴っていたのは、2万ヘルツより高い「超音波」。コウモリやネズミ、一部の昆虫なら聞き取れる高さの音です。
「植物がしゃべる」なんてオカルトっぽく聞こえますが、これは2023年に生物学のトップ誌『Cell』に載った、れっきとした研究の話です。
01防音箱にトマトを入れて、マイクを向けてみた
音は、ポップコーンがはじけるような短いクリック音。水不足のトマトでは、1時間に数十回ほど鳴ったと報告されています。
さらに面白いのは、ザワザワした本物の温室の中でも録音できたこと。研究チームはこの音を機械学習(大量のデータからパターンを覚えるAI)に学ばせ、「乾燥している株」か「切られた株」かを音だけで当てることに成功しました。

02音の正体は「茎の中の小さな泡」?
では植物はどうやって音を出すのか。のどや声帯はありません。
有力なのはキャビテーションという現象です。かんたんに言うと「茎の中の水の柱に、プチッと気泡ができる現象」。
植物は根から吸った水を、細いストローのような管(道管)で葉まで引き上げています。水不足になると管の中の水がピンと引っ張られすぎて、ある瞬間に水の柱が切れ、小さな泡ができます。そのとき「パチッ」と振動が出る、というわけです。
実はこの「乾いた植物から超音波が出る」現象自体は、何十年も前から知られていました。2024年の総説(Nardini ら)は、植物の茎や枝にセンサーをつけて、乾燥のときに出る音(振動)を測る研究が1960年代から続いてきたことを紹介しています。2023年の研究が新しかったのは、植物に何もくっつけず、空気中を伝わる音として離れた場所から録れたことです。
03植物は「助けて」と叫んでいるの?
研究チームは「この音を、虫や動物が聞いて利用しているかもしれない」と考えています。たとえば卵を産む場所を探すガが「この株は弱っているからやめよう」と判断する、といった可能性です。
ただし、2024年に『New Phytologist』に載った検証論文(Son ら)は慎重です。植物の超音波は高くて小さい音で、遠くまでは届きにくい。そして植物どうしが音で会話している証拠は今のところない、とまとめています。
つまり「植物は鳴る」はホント。「植物が音でおしゃべりしている」は、まだ仮説です。
04未来の農家は、畑に「聞き耳」を立てる?
この研究がワクワクするのは、実用の可能性があるからです。
畑や温室にマイクを置いておけば、葉がしおれるより先に「この列、のどがかわいてるよ」と音で教えてくれるかもしれません。水のムダを減らす、新しいスマート農業の道具になりえます。
05まとめ
水不足のトマトは、人に聞こえない超音波を出していました。原因は茎の中の小さな泡と考えられています。
「叫び」というよりは「体のきしむ音」。でも、その音で植物の状態がわかるなら、植物の声を聞く時代はもう始まっているのかもしれません。次に水やりを忘れたら、聞こえない「ポツッ」を想像してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDo plants really make noise?
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Can plants make sounds? A team in Israel put tomato plants in a quiet box and listened with microphones. Plants with no water made many short clicks. Plants with cut stems clicked too.
But healthy plants were almost silent. People cannot hear these sounds because they are ultrasound, a very high sound. A computer learned the sounds and could tell if a plant was dry or cut. Small bubbles in the stem probably make the clicks.
76 words ・ CEFR A2
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植物は音を出せるのでしょうか。イスラエルのチームが、トマトの株を静かな箱に入れ、マイクで聞いてみました。水をもらえない株は、短いクリック音をたくさん出しました。茎を切られた株もクリック音を出しました。
しかし、元気な株はほとんど音を出しませんでした。これらの音は、とても高い音である超音波なので、人には聞こえません。コンピューターがその音を学習し、株が乾いているのか切られたのかを当てることができました。おそらく、茎の中の小さな泡がクリック音を生んでいます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
水不足や茎を切られた植物がクリック音(超音波)を出すことが全体のテーマなので C。
Q2. Which plants were almost silent?
But healthy plants were almost silent. とあるので C。
Q3. In the passage, "silent" means ...
silent は「音を出さない、静かな」。many short clicks と対比されているので A。
Do plants really make noise? In 2023, a research team at Tel Aviv University published a study showing that they do. The researchers placed tomato and tobacco plants in soundproof boxes and recorded them with microphones about 10 cm away. Plants that were not watered and plants whose stems had been cut produced many more ultrasonic clicks than untouched plants, which made almost none.
Humans cannot hear these sounds, but they could be recorded even in a noisy greenhouse. A machine-learning program was then able to tell whether a plant was dry or cut just from its sounds. The clicks are probably caused by tiny air bubbles forming in the plant's water tubes.
113 words ・ CEFR B1
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植物は本当に音を出すのでしょうか。2023年、テルアビブ大学の研究チームが、出すことを示す研究を発表しました。研究者たちはトマトとタバコの株を防音箱に入れ、約10cm離れたマイクで録音しました。水を与えられなかった株と茎を切られた株は、何もされていない株よりもはるかに多くの超音波のクリック音を出し、何もされていない株はほとんど音を出しませんでした。
人間にはこれらの音は聞こえませんが、騒がしい温室の中でも録音することができました。さらに機械学習のプログラムが、音だけで株が乾燥しているのか切られたのかを見分けることができました。クリック音はおそらく、植物の水の管の中に小さな気泡ができることで生じています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the researchers do in the study?
placed tomato and tobacco plants in soundproof boxes and recorded them with microphones とあるので B。
Q2. Which statement is true according to the passage?
A machine-learning program was then able to tell whether a plant was dry or cut just from its sounds. とあるので C。温室でも録音でき、人には聞こえない。
Q3. What can we infer from the passage?
音だけで「乾燥している」と判別できるので、水やりの時期を知る手がかりになりうると推論できる。意図的に鳴らしているとは書かれていないので B。
Inside soundproof boxes at Tel Aviv University, researchers recorded tomato and tobacco plants under three conditions. Some had gone without water, some had their stems cut, and some were left alone. The results, published in Cell in 2023, showed that the stressed plants gave off far more ultrasonic clicks, while the untreated controls made almost none. The sounds traveled through the air.
The team picked them up without attaching any sensor to the plants, even against the background noise of a greenhouse. A machine-learning model trained on the recordings could then tell a thirsty plant from a cut one. The most likely cause is cavitation, the sudden formation of air bubbles in the water columns of the xylem. The basic effect is not entirely new, since contact sensors have measured vibrations from drying stems since the 1960s.
What was new was hearing the plants from a distance. Headlines about plants "screaming" in pain go well beyond the evidence. The clicks look like a physical by-product, and a 2024 review found no proof that plants use sound to communicate with one another. A more practical use may be acoustic monitoring, with microphones listening for crops that are short of water.
199 words ・ CEFR B2
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テルアビブ大学の防音箱の中で、研究者たちはトマトとタバコの株を3つの条件で録音しました。水を与えなかった株、茎を切った株、何もしなかった株です。2023年に『Cell』に発表された結果では、ストレスを受けた株ははるかに多くの超音波のクリック音を出し、何もしなかった対照株はほとんど音を出しませんでした。音は空気中を伝わりました。
チームは植物にセンサーを一切取りつけずに、しかも温室の騒音の中でもその音を捉えました。録音で訓練された機械学習モデルは、水不足の株と切られた株を聞き分けることができました。最も有力な原因はキャビテーション、つまり木部の水の柱に突然気泡ができる現象です。この現象そのものはまったく新しいわけではなく、乾いていく茎の振動は1960年代から接触型センサーで測定されてきました。新しかったのは、離れた場所から植物の音を聞きとったことです。
植物が痛みで「叫んでいる」という見出しは、証拠をはるかに超えています。クリック音は物理的な副産物とみられ、2024年の総説は、植物が音でお互いに伝え合っている証拠は見つからなかったとしています。より実用的な使い道は音響モニタリングかもしれません。マイクで、水が足りない作物の音を聞きとるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What was new about the 2023 study?
乾燥時の振動は1960年代から知られていたが、What was new was hearing the plants from a distance.(離れた場所から聞きとったことが新しかった)とあるので B。
Q2. According to the passage, what most likely causes the clicks?
The most likely cause is cavitation, the sudden formation of air bubbles in the water columns of the xylem とあるので C。
Q3. What is the author's attitude toward reports that plants "scream"?
Headlines about plants "screaming" in pain go well beyond the evidence.(証拠をはるかに超えている)と述べているので、誇張だと考えている。A が正解。
重要単語
- ultrasoundB2名詞超音波Humans cannot hear ultrasound, but bats can.
ultra-(超えて)+sound。形容詞は ultrasonic。医療の「エコー検査」も ultrasound。 - droughtB2名詞干ばつ、水不足The tomatoes made more sounds under drought.
発音は /draʊt/(ドラウト)。gh は読まない。dry と関連づけて覚えよう。 - cavitationC1名詞キャビテーション(液体中の気泡の発生)Cavitation in the stem may cause the clicks.
cavity(空洞、虫歯の穴)と同語源。「穴=泡ができること」とイメージ。 - xylemC1名詞木部、道管Water moves up through the xylem.
発音は /ˈzaɪləm/(ザイレム)。ギリシャ語 xylon(木)から。栄養を運ぶ phloem(師部)とセットで出る。 - machine learningB2名詞(句)機械学習Machine learning classified the plant sounds.
AI 関連の長文で頻出。train a model(モデルを訓練する)とセットで覚える。 - emitB2動詞(音・光・ガスなどを)出す、放出するStressed plants emit ultrasonic clicks.
e-(外へ)+mit(送る)。名詞 emission は「排出」で、CO2 emissions は入試頻出。 - depriveC1動詞奪うPlants deprived of water made more sounds.
deprive A of B「A から B を奪う」の型が入試頻出。sleep deprivation(睡眠不足)も。
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水をもらえないトマト、実は人間には聞こえない超音波で「ポツッ、ポツッ」と鳴いていたらしい。しかも音だけでAIが「のどカラカラ」か「切られた」かを当てられる。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Khait et al. (2023) Sounds emitted by plants under stress are airborne and informative, Celldoi.org
- Robert (2023) Plant bioacoustics: The sound expression of stress, Celldoi.org
- Nardini et al. (2024) Talk is cheap: rediscovering sounds made by plants, Trends in Plant Sciencedoi.org
- Son et al. (2024) Is plant acoustic communication fact or fiction?, New Phytologistdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













