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動物・植物

恐竜の時代の"哺乳類の親戚"に、もう「お乳を吸って飲み込めるのど」があったらしい

恐竜の時代の"哺乳類の親戚"に、もう「お乳を吸って飲み込めるのど」があったらしい

読む前に予想してみよう!

お乳を吸って飲み込むための「のどの仕組み」は、今の哺乳類が現れてから初めてできた

研究カード(どんな研究?)
対象
中国の中期ジュラ紀の地層から出た化石
規模
1体(岩が割れて表と裏の2枚)
研究の種類
化石の形の観察(CTスキャン)と、今の動物・ほかの化石との比較
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

恐竜がいた時代の中国の化石1体に、今の哺乳類に似たのどの骨が残っていた。舌の根元を支える骨と、のどの天井を作る骨だ。研究者はその形から、お乳を吸って飲み込むのどの仕組みが、この頃にはもうあったと推定。

ひとことで言うと恐竜の時代の哺乳類の親戚は、もう"お乳を飲むのど"を持っていたらしい!

もくじ
  1. 化石の主は、哺乳類にとても近い"いとこ"
  2. 見つかったのは「舌を支える骨」と「のどの天井の骨」
  3. 「お乳を吸うのど」は、恐竜の時代にはもうあった?
  4. カモノハシのように泳ぐ、ジュラ紀の"狩人"
  5. 気をつけたいこと:「最古の水中生活」とは言い切れない
  6. まとめ

人の赤ちゃんも、子イヌも、子ネコも、お乳を吸って飲み込みます。当たり前に見えますが、口とのどに特別な作りがあるからできることです。ドイツのボン大学の発表は、これをワニと比べて説明しています。ワニは獲物を飲み込むとき、頭を上に向けます。そして重力で、獲物をのどへ滑り落とします。

では、哺乳類(人やイヌのように、お乳で子を育てる動物の仲間)の「お乳を吸って飲み込むのど」は、いつできたのでしょう。2026年10月7日、イギリスの科学雑誌『Nature』に、その手がかりになる化石の論文が載りました。化石が出たのは、中国の「ジュラ紀」の中ごろの地層です。ジュラ紀は、恐竜がいた時代の一つ。地層は、長い年月をかけて積み重なった土や砂の層のことです。化石の主は、哺乳類の親戚にあたる動物でした。

この化石には、舌の根元を支える骨と、のどの天井を作る骨が残っていました。どちらも今の哺乳類に似た形です。 研究チームはこの骨の形から、骨の周りにあったはずのやわらかい部分を推し量りました。飲み込む、水を飲む、お乳を吸う。そのためのやわらかい作りは、今の哺乳類が広がるずっと前にもうできていた、という推定です。ただし化石は1体だけで、お乳を吸う姿が見つかったわけではありません。また研究チームは、この動物がカモノハシのように、水の中を泳いでえさをとっていたらしいとも考えています。

01化石の主は、哺乳類にとても近い"いとこ"

新しく名前がついたこの動物は、メガカウダ・スンゲイ(Megacauda sungei)です。メガカウダは「大きなしっぽ」という意味。スンゲイは、Sun Ge教授の名前から取りました。化石を保管している、中国・遼寧古生物博物館の名誉館長です。

この動物は、ドコドン類というグループの一員です。ドコドン類は、恐竜の時代に生きていた動物のグループで、哺乳類にとても近い親戚です。ただし、今の哺乳類の直接のご先祖ではありません。家族でたとえると、もっと昔に同じご先祖がいて、そこから分かれた"いとこ"のような関係です。この、両方にとってのおおもとのご先祖を「共通の祖先」と呼びます。

発表によると、大きさは鼻からしっぽの先まで約50cm、体重は約2kgです。2kgは、500mLのペットボトル4本分ほどの重さです。論文によると、ジュラ紀に生きていた哺乳類とその近い親戚の中で、一番大きい種です。当時のこの仲間は、数グラム(1円玉数枚分)しかないものが多かった、と発表は書いています。

02見つかったのは「舌を支える骨」と「のどの天井の骨」

手がかりの一つ目は、舌骨(ぜっこつ)です。名前のとおり「舌の骨」で、のどの奥で舌の根元を支えています。小さな骨のセットで、人ののどにもあります。

2019年には、同じ研究者たちの多くが、別のドコドン類の化石で舌骨を報告していました。哺乳類へつながる、もっと古い動物たちの舌骨は、単純な棒のような形でした。のどは今の爬虫類(トカゲやワニの仲間)のように広く、筋肉が少なかったと考えられています。

今の哺乳類の舌骨は、そうではありません。いくつもの小さな骨が、動かせる関節でつながっています。この骨組みがあるので、のどの筋肉を使って、かみ砕いた食べ物や水を食道(のどから胃へ続く管)へ送り込めます。これが哺乳類の「力強い飲み込み」です。2019年の化石の舌骨は、すでにこの哺乳類のタイプでした。

手がかりの二つ目は、のどの天井の骨です。口の天井は、奥へいくと、そのままのどの通り道の天井につながっています。今回の化石には、舌骨に加えて、この天井を作る骨も残っていました。

そこには、小さなフック(かぎ)の形の骨がありました。その位置が、今の哺乳類と同じように、奥の内側に寄っていました。そのわきには、筋肉が通るくぼみもありました。

今の哺乳類では、ここを通る筋肉が軟口蓋(なんこうがい)を動かします。軟口蓋は、口の天井の一番奥にある、やわらかい部分です。舌の先で口の天井を前から奥へなぞると、奥のほうでやわらかくなります。そこが軟口蓋です。

ワニは頭を上げて、重力で飲み込む。哺乳類は、のどの骨組みと、口の奥のやわらかい天井(軟口蓋)を使って、お乳を吸って飲み込む(イメージ)
ワニは頭を上げて、重力で飲み込む。哺乳類は、のどの骨組みと、口の奥のやわらかい天井(軟口蓋)を使って、お乳を吸って飲み込む(イメージ)

03「お乳を吸うのど」は、恐竜の時代にはもうあった?

発表によると、哺乳類が安全に飲み込めるのは、軟口蓋と、複雑な作りの舌骨のおかげです。軟口蓋は、口の中とのどの間を仕切ります。そのため、お乳を鼻に入れずに飲み込めます。重力に逆らって飲み込むこともできます。発表は、人が逆立ちしていてもストローで飲み物を飲めるのはこのためだ、と説明しています。

軟口蓋そのものはやわらかいので、化石には残りません。そこで研究チームは、化石の骨の形を、今の動物の骨や筋肉のつき方と比べました。そして、この動物にも軟口蓋と、それを動かす筋肉があったと考え、その形を推し量って復元しました。

論文は、さらにこう推定しています。飲み込む、水を飲む、お乳を吸う。そのための大事なやわらかい体の作りは、ドコドン類と今の哺乳類の共通の祖先の時点で、もうできていた。つまり、"いとこ"どうしが分かれる前の、おおもとのご先祖の段階です。今の哺乳類が広がるより、ずっと前のことです。

04カモノハシのように泳ぐ、ジュラ紀の"狩人"

この化石には、泳ぐための特徴もたくさんありました。

  • 名前のとおり、しっぽの幅が広い
  • 後ろ足は、足首を外側へ大きく曲げられる形。外側の指が長く、水をかくのに向いている
  • あばら骨の先が平たい板のようになり、重なり合っている。これは今のカモノハシにも見られる特徴(カモノハシの毛が紫外線で光る話はこちらの記事)

また、初期の哺乳類の仲間は、骨盤(腰の骨)や後ろ足の骨がよく分かっていませんでした。今回の化石は、その空白も埋めました。

歯は、目立つ犬歯(きばのようにとがった歯)と、ハサミのように切り裂く奥歯です。ほかの動物を食べていたと考えられます。発表によると、歯の先は後ろ向きに曲がっていて、ぬるぬるした獲物を逃がしにくい形です。また発表は、犬歯に根が3本あることも紹介しています。

研究チームは、この動物は水辺で暮らし、水の中を泳いでえさをとる、カモノハシのような暮らしをしていたと解釈しています。

ドコドン類の仲間には、ほかにも木に登るもの(2015年報告)、モグラのように地中で暮らすもの(2015年報告)、泳ぐもの(2006年報告)がいたことが分かっています。恐竜の時代に、この小さなグループの中で、木の上・地中・水辺と、いくつもの暮らし方がもう現れていたことになります。

05気をつけたいこと:「最古の水中生活」とは言い切れない

ボン大学の発表の中で、マーティン教授は今回の化石を「哺乳類の水中生活の最も古い証拠」と話しています。ただ、泳ぐドコドン類は、これが初めてではありません。

2006年に、「カストロカウダ」という泳ぐドコドン類が報告されています。ビーバーのような平たいしっぽを持ち、同じ中国の、同じジュラ紀の中ごろの化石です(今回の著者のルオさんも、その論文の著者の一人です)。メガカウダとカストロカウダのどちらが古いかは、論文の要旨(論文の最初にある短いまとめ)と発表からは確かめられません。

論文の要旨も「最古」とは書いていません。「水辺の暮らしなど、さまざまな暮らし方をしたドコドン類が複数いた、という証拠を一つ加えた」という書き方です。

  • 見つかった化石は1体だけ
  • お乳を吸う姿が見つかったわけではない。のどの仕組みは、残った骨の形から推定したもの。この動物がお乳を出していたかどうかも、化石からは分からない
  • 約1億6500万年前・約50cm・約2kg・犬歯の根3本はボン大学の発表の数字で、論文の要旨には書かれていない

06まとめ

赤ちゃんがお乳を吸って、鼻に入れずに飲み込む。その土台になるのどの作りは、恐竜がいたジュラ紀、哺乳類にとても近い親戚にもう現れていたらしい、というのが今回の推定です。

ただし証拠は化石1体の骨の形です。ほかのドコドン類や、もっと古い哺乳類の親戚で、同じのどの骨が見つかるかどうか。「お乳を吸うのど」がいつ始まったのかは、次の化石が教えてくれるはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCrocodiles swallow food by lifting their heads and letting it slide down. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Crocodiles swallow food by lifting their heads and letting it slide down. Mammals do it differently. They have a set of small throat bones that support strong throat muscles, and a soft part at the back of the mouth helps keep milk out of the nose. A new study in Nature asks when this system began.

Scientists described a Middle Jurassic fossil from China. The animal, Megacauda sungei, belonged to the docodonts, a group of close relatives of mammals. Its throat bones and the bony roof of its throat were shaped much like those of living mammals.

So the team thinks the soft parts used for swallowing, drinking and suckling already existed in a shared ancestor of docodonts and mammals. It probably swam and hunted like a platypus.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ワニは頭を持ち上げ、食べ物をすべり落とすことで飲み込む。哺乳類のやり方は違う。哺乳類には、のどの強い筋肉を支える小さな骨のセットがあり、口の奥のやわらかい部分が、お乳が鼻に入らないようにするのを助けている。『Nature』に載った新しい研究は、このしくみがいつ始まったのかを問うている。

科学者たちは、中期ジュラ紀の中国の化石について報告した。その動物メガカウダ・スンゲイは、哺乳類の近い親戚のグループであるドコドン類の一員だった。そののどの骨と、のどの天井の骨は、今の哺乳類のものとよく似た形をしていた。

そこでチームは、飲み込む・水を飲む・乳を吸うのに使うやわらかい部分は、ドコドン類と哺乳類の共通の祖先にすでにあったと考えている。この動物は、カモノハシのように泳ぎ、狩りをしていたらしい。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. According to the passage, how do crocodiles swallow food?

Q3. Why do the scientists think the milk-drinking system existed in a shared ancestor?

重要単語

  • fossilB1
    名詞化石Only one fossil of this animal is known so far. ラテン語 fossilis(掘り出された)から。a living fossil は「生きた化石」
  • relativeB1
    名詞・形容詞親戚、近い仲間/相対的なDocodonts were close relatives of mammals. a close relative(近い親戚)の形でよく使う。形容詞 relative は「相対的な」
  • swallowB1
    動詞・名詞飲み込む/ツバメCrocodiles lift their heads to swallow food. 名詞では鳥の「ツバメ」。swallow one's pride(自尊心を抑える)という言い方もある
  • suckleC1
    動詞乳を吸う、乳を飲ませるBaby mammals suckle from their mothers. suck(吸う)の仲間。母親が主語なら「乳を飲ませる」、赤ちゃんが主語なら「乳を吸う」
  • ancestorB2
    名詞祖先The throat may go back to a shared ancestor of both groups. ante-(前に)+ cedere(行く)が語源で「前を行く者」。common ancestor(共通の祖先)は入試頻出
  • evolveB2
    動詞進化する、発達するMammal-style swallowing may have evolved long ago. 名詞は evolution。evolve from ~(~から進化する)の形でよく使う
  • semiaquaticC1
    形容詞半水生の(陸と水の両方で暮らす)The platypus is a semiaquatic mammal. semi-(半分)+ aquatic(水の)。aquarium(水族館)と同じ aqua(水)が入っている
恐竜がいた時代の"哺乳類の親戚"の化石。そののどの骨が、今の哺乳類に似た形だった。研究者は、お乳を吸って飲み込むのどの仕組みが、今の哺乳類が広がるずっと前にもうあったと推定。カモノハシのように泳いで暮らしていたらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Li et al. (2026) A Jurassic mammaliaform swimmer and transformation of the mammalian pharynx, Naturedoi.org
  2. Zhou et al. (2019) New Jurassic mammaliaform sheds light on early evolution of mammal-like hyoid bones, Sciencedoi.org
  3. Ji et al. (2006) A swimming mammaliaform from the Middle Jurassic and ecomorphological diversification of early mammals, Sciencedoi.org
  4. Meng et al. (2015) An arboreal docodont from the Jurassic and mammaliaform ecological diversification, Sciencedoi.org
  5. Luo et al. (2015) Evolutionary development in basal mammaliaforms as revealed by a docodontan, Sciencedoi.org