南極の雪が緑色に。雪の中の藻を、ペンギンなど海鳥のフンの栄養が育てているらしい

読む前に予想してみよう!
南極の雪は、どこでも真っ白だ
海辺では雪の中の藻が増えて、雪が緑や赤に色づく。緑の雪の栄養(リン酸)は白い雪の約70倍あった(2026年、米国の研究チーム)。
- 対象
- 西南極半島の海辺の雪(9地点)
- 規模
- 111サンプル(緑48・赤45・白18)
- 研究の種類
- 観察研究(1シーズンの現地調査)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
南極の海辺の雪は、雪の中の小さな藻が増えると緑や赤に染まる。緑の雪には、肥料にもなる栄養(リン酸)が白い雪の約70倍あった。リン酸は、ペンギンなどの野生動物の影響が強い場所ほど多かった。
ひとことで言うと南極の雪を緑にする藻は、ペンギンなどのフンの栄養で育っているらしい!
もくじ
南極の海辺には、緑色の雪があります。赤い雪もあります。絵の具をまいたわけではありません。雪の中で藻(も)が増えて、雪ごと色づいているのです。藻は、日の光で栄養を作る、植物に近い生き物です。雪の中の藻は、1つ1つが目に見えないほど小さなものです。
なぜ、場所によって緑になったり赤になったりするのでしょう。2026年10月7日、米国の研究チームがその手がかりを発表しました。南極の海辺で色のついた雪と白い雪を集めて、中に溶けている栄養を調べたのです。発表先は、学術誌『Journal of Geophysical Research: Biogeosciences』です。
注目したのはリン酸という栄養です。畑にまく肥料にも入っている、植物が育つのに大事な栄養です。緑の雪には、このリン酸が、色のついていない白い雪の約70倍ありました。リン酸は、ペンギンなどの野生動物の影響が強い場所ほど多い傾向もありました。ただし、雪を採って測っただけの研究です。フンが本当に藻を育てたのかは、まだ確かめられていません。
01雪が緑や赤に染まるのは「雪の中の藻」のせい
雪や氷の上で暮らす藻は、南極だけでなく、すべての大陸で見つかっています。雪を緑、赤、ピンク、オレンジなどに染めることが知られています。
今回の論文によると、雪の藻の多くは「緑藻(りょくそう)」という、もともと緑色の藻の仲間です。ところが、強い日差しを浴びたり、栄養が足りなくなったりすると、赤っぽく変わっていきます。体の中に、日焼け止めのような働きをする赤い色素をため込むからです。色素とは、色のもとになる物質のことです。
南極や北極は日の光が弱く、雪の奥までは届きにくくなります。そのため、藻が暮らすのは、おもに雪の表面から5cmほどまでです。
論文は、緑の雪と赤い雪の違いを、藻が今どんな状態にあるかの違いと見ています。緑のまま元気に増えているか、赤い色素をため込んで身を守っているか、という違いです。
02緑の雪には、白い雪の約70倍の"肥料"があった
リン酸の量は、緑・赤・白の雪ごとに「中央値」で比べました。中央値とは、サンプルを量の少ない順に1列に並べたとき、ちょうど真ん中にくる値です。飛び抜けて多いサンプルが少し混じっていても、それに引っ張られにくい比べ方です。
- 緑の雪:114マイクロモル
- 赤い雪:11.4マイクロモル
- 白い雪:1.54マイクロモル
マイクロモルは、水に溶けている物質の量を表す単位です。ここでは、雪どけ水1リットルにリン酸がどれだけ溶けているかを表しています。数字が大きいほど、リン酸が多いということです。
緑の雪は赤い雪の10倍、白い雪の約70倍です。
次に研究チームは、サンプルを2つの組に分けました。境目は、111個全体の中央値です。それより多い組と、少ない組です。リン酸の多い組は、大半が緑の雪でした。そしてこの組の雪は、少ない組より藻の細胞の数が多く、細胞1つあたりの色素の量も多かったのです。
03リン酸はどこから来た? 動物の影響が強い場所ほど多かった
研究チームは、雪を採った場所ごとに、3つの影響の強さを1〜4の4段階で点数にしました。「動物の影響」「海の影響」「岩や砂ぼこりの影響」の3つです。
すると、動物の点数が高い場所ほど、リン酸も多い傾向がありました。リン酸とこうした関係が見られたのは、動物の影響だけでした。海や岩の点数とリン酸のあいだには、はっきりした関係は見られませんでした。
論文は、この結果から、鳥がもたらす栄養がリンの大事な出どころだと考えています。
論文が紹介している以前の研究によると、ペンギンは海でオキアミ(小さなエビのような生き物)を食べます。そして、オキアミから取り込んだ窒素やリンを含むフンを、海辺の雪や土の上に落とします。窒素も、リンと同じく植物が育つのに欠かせない栄養です。つまり、海の栄養が鳥の体を通って、雪の上に運ばれてくるわけです。
降ったばかりの南極の雪には、リンはほとんど含まれていません。そこへフンが落ちれば、藻にとっては貴重な肥料になります。
論文によると、フンに含まれる窒素の一部は、アンモニア(鼻をつくにおいの気体)になって空気中へ逃げていきます。ところがリンには、そうした逃げ道がありません。そのため、リンは雪に残りやすいといいます。

緑の雪がペンギンの近くに多いこと自体は、以前から知られていました。2020年の別の研究は、人工衛星から撮った画像で、南極半島の緑の雪を1,679か所見つけました。そのうち60%(10か所のうち6か所)は、ペンギンのコロニー(集団で子育てをする場所)から5km以内にありました。
今回の研究は、こうした海辺の色づいた雪を実際に採って、栄養の量を測ったことになります。
04緑の雪は、白い雪より解けやすいのか
色のついた雪は、白い雪より日の光をはね返しにくくなります。はね返されなかった光は熱になり、雪を解かす力になります。夏に黒い服を着ると、白い服より暑く感じるのと同じ仕組みです。
2021年には、別の論文が出ています。今回の論文のカーンさんが中心になった研究です。2018年1月、南極半島の北にある島々の3か所で、雪が目に見える光をどれだけはね返すかを測りました。
当たった光を100とすると、白い雪がはね返したのは平均で約85でした。赤い雪は約65、緑の雪は約44しかはね返しませんでした。緑の雪がはね返す光は、白い雪のおよそ半分です。
ただし、今回の論文は、雪がはね返す光の量も、雪が解ける速さも測っていません。論文が言っているのは、動物が運んだ栄養で、藻が雪を暗くする働きが強まるかもしれない、というところまでです。
カーンさんは、学会が出した発表文の中でこう話しています。「こうした生き物による雪の黒ずみを計算に入れないと、海辺の雪が解ける速さを小さく見積もってしまうだろう」。これは研究者の見通しです。今回の測定で分かったことではありません。
05どんでん返し:「フンが藻を育てた」とはまだ言い切れない
- 雪を採って測ったのは、1回の夏だけ。分かったのは「リン酸が多い場所に、藻も多い」という結びつきまで。肥料をまいて、藻が増えるかを試したわけではない
- 論文自身が、別の読み方もありうると書いている。藻は増えるとき、窒素を先に使い切ってしまう。すると、使われずに余ったリン酸が雪に残る。だから測ったときにリン酸が多く見えている、という可能性だ。どちらなのかを見分けるには、同じ場所を時間を追って調べる必要がある
- 「動物の影響」の点数は、研究者が場所ごとにつけた4段階の目安。フンの量をそのまま測ったものではない
- リン酸の多い組にも、赤い雪が11個あった。論文には、ペンギンの繁殖地(子育てをする場所)の近くで見つかった赤い雪の写真も載っている。動物の近くなら必ず緑になる、という単純な話ではない
06まとめ
南極の雪を緑に染める藻の周りには、普通の雪の何十倍ものリン酸がありました。その量は、ペンギンなどの野生動物の影響が強い場所ほど多い傾向がありました。海で食べた栄養を、鳥がフンにして雪の上へ運んでいる。そんな姿が浮かび上がります。
論文は最後に、ペンギンの変化にも触れています。南極半島では、ジェンツーペンギンが子育てする場所を南へ広げています。一方で、アデリーペンギンやヒゲペンギンが減っている地域もあります。どの種類のペンギンが、どこに、どれだけいるか。それによって雪の上のリンの量も変わり、緑の雪が増えるか減るかも変わってくるかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSnow on the coast of the Antarctic Peninsula is not always white.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Antarctica, some snow is green. Some snow is red. The color comes from very small algae that live in the snow.
Scientists collected 111 snow samples from nine places on the coast. Green snow had about 70 times more phosphate than clean white snow.
Phosphate is a nutrient. It helps plants and algae grow. There was more phosphate in places with more birds and other animals. Their droppings may work like food for the algae.
76 words ・ CEFR A2
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南極には、緑色の雪がある。赤い雪もある。その色は、雪の中にすむとても小さな藻から来ている。
科学者たちは、海岸の9か所で111の雪のサンプルを集めた。緑の雪には、きれいな白い雪の約70倍のリン酸があった。
リン酸は栄養の一つだ。植物や藻が育つのを助ける。鳥やほかの動物が多い場所ほど、リン酸が多かった。動物のフンが、藻のえさのような働きをしているのかもしれない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
南極の緑の雪の色の正体(藻)と、その藻を育てる栄養の話なので、正解は B。
Q2. How much phosphate did green snow have compared with clean white snow?
「Green snow had about 70 times more phosphate than clean white snow.」とあるので、正解は C。9は場所の数、111はサンプルの数。
Q3. In the passage, "nutrient" means something that ___.
「Phosphate is a nutrient. It helps plants and algae grow.」と説明されているので、正解は A。
Snow on the coast of the Antarctic Peninsula is not always white. Tiny algae living near the surface can turn it green or red. A team from two US universities collected 111 samples from nine coastal sites during the 2024–2025 Antarctic summer and measured the nutrients in the melted snow.
Green snow held about ten times as much phosphate as red snow and about 70 times as much as clean snow. Samples rich in phosphate, most of them green, also had more algae cells, and each cell carried more pigment. Phosphate levels were highest at sites where wildlife, such as penguins and other seabirds, had the most influence. The researchers think bird droppings carry nutrients from the sea onto the snow.
121 words ・ CEFR B1
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南極半島の海岸の雪は、いつも白いわけではない。表面の近くにすむ小さな藻が、雪を緑や赤に変えることがある。米国の2つの大学のチームは、2024〜25年の南極の夏に、海岸の9か所で111のサンプルを集め、とけた雪の中の栄養を測った。
緑の雪には、赤い雪の約10倍、きれいな雪の約70倍のリン酸があった。リン酸の多いサンプル(その多くは緑)は、藻の細胞も多く、1つ1つの細胞がもつ色素も多かった。リン酸がいちばん多かったのは、ペンギンやほかの海鳥などの動物の影響が最も強い場所だった。研究者たちは、鳥のフンが海の栄養を雪の上に運んでいると考えている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
雪の中のリン酸という栄養と、緑の雪の藻との結びつきを調べた研究の話なので、正解は B。
Q2. Where were phosphate levels highest?
「Phosphate levels were highest at sites where wildlife, such as penguins and other seabirds, had the most influence.」とあるので、正解は C。
Q3. What can we infer about the birds in this study?
最後の文で、鳥のフンが海の栄養を雪の上に運んでいると研究者が考えていると述べているので、正解は B。
Penguins eat krill at sea and leave their droppings on land, and a new study suggests that this habit may be helping to paint Antarctic snow green. Researchers from Western Washington University and the University of Colorado Boulder sampled snow at nine coastal sites along the West Antarctic Peninsula during one summer.
Across 111 samples, the median phosphate level in green snow was 114 micromoles per liter, compared with 11.4 in red snow and 1.54 in clean snow. Samples with more phosphate tended to contain more algae, with more pigment packed into each cell. When the team scored the sites for the influence of wildlife, the sea and rocks, only the wildlife score tracked phosphate. The survey was a single snapshot.
Nobody added fertilizer to test the idea, and the authors offer another reading: fast-growing algae may use up nitrogen first and leave extra phosphate behind. The study also did not measure how fast the snow melted. A 2021 study led by Alia Khan, the senior author of the new paper, measured how much visible light snow reflects. Clean snow reflected about 85 percent, red patches about 65 percent and green patches only about 44 percent.
196 words ・ CEFR B2
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ペンギンは海でオキアミを食べ、陸にフンを残す。新しい研究は、この習性が南極の雪を緑に塗る手助けをしているのかもしれないと示している。
ウェスタン・ワシントン大学とコロラド大学ボルダー校の研究者たちは、ひと夏の間に、西南極半島の海岸の9か所で雪を採った。111のサンプル全体で、リン酸の量の中央値は、緑の雪で1リットルあたり114マイクロモル、赤い雪で11.4、きれいな雪で1.54だった。リン酸の多いサンプルほど藻が多く、1つの細胞により多くの色素が詰まっている傾向があった。チームが地点ごとに、動物・海・岩の影響の強さを点数づけしたところ、リン酸と連動していたのは動物の点数だけだった。この調査は、ある時点を切り取っただけのものだ。
この考えを確かめるために肥料をまいた人はおらず、著者らは別の解釈も示している。速く増える藻が窒素を先に使い切り、余ったリン酸が残るのかもしれない、というものだ。また、この研究は雪の解ける速さを測っていない。新しい論文の責任著者であるアリア・カーンさんが率いた2021年の研究は、雪が目に見える光をどれだけはね返すかを測った。きれいな雪は約85%をはね返したが、赤い部分は約65%、緑の部分は約44%しかはね返さなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
動物の影響と結びついたリン酸が緑の雪に多いという研究と、肥料の実験をしていない・解ける速さを測っていないなどの残された点を述べているので、正解は B。
Q2. What was the median phosphate level in red snow?
「compared with 11.4 in red snow and 1.54 in clean snow」とあるので、正解は B。114は緑の雪、111はサンプルの数。
Q3. Why can the study not prove that bird droppings make algae grow?
「The survey was a single snapshot. Nobody added fertilizer to test the idea」と、藻が窒素を先に使い切ってリン酸が余るという別の解釈が書かれているので、正解は B。
重要単語
- algaeB2名詞藻(そう)、藻類Tiny algae can turn snow green or red.
複数形の扱いがふつう。単数形は alga。発音は「アルジー」に近い。algal bloom で「藻の大発生」 - nutrientB1名詞栄養分、栄養素Plants need nutrients from the soil to grow.
nourish(養う)と同じ語源。nutrition(栄養)とセットで覚える。rich in nutrients(栄養が豊富な) - phosphateC1名詞リン酸(リンをふくむ栄養分)Green snow held far more phosphate than clean snow.
phosphorus(リン)から。ギリシャ語で「光を運ぶもの」。肥料の成分としてよく出てくる - droppingsB2名詞(鳥や動物の)フンBird droppings can carry nutrients from the sea to the land.
drop(落とす)から。ふつう複数形で使う。海鳥のフンがたまったものは guano とも言う - pigmentB2名詞色素Each cell carried more pigment in phosphate-rich snow.
paint(絵の具)と同じ語源のラテン語 pingere(描く)から。chlorophyll(葉緑素)も pigment の一つ - wildlifeB1名詞野生生物、野生の動物The coast is home to a lot of wildlife, including penguins and seals.
数えられない名詞なので wildlifes とはしない。wildlife protection(野生生物の保護)は入試頻出 - reflectB1動詞(光などを)はね返す、反射する/反映するClean white snow reflects a lot of sunlight.
re-(元へ)+ flect(曲げる)。名詞は reflection。「意見を反映する」の意味でも使う
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公式・一次情報をチェック
- Penguin poop is melting Antarctic snow by keeping algae green(米国地球物理学連合 AGU の発表文・2026年10月7日。見出しは「ペンギンのフンが南極の雪を解かしている」だが、今回の論文は雪の解ける速さを測っていない。文中の「緑の雪は40%多くエネルギーを吸収する」も今回の測定ではない。出典の書かれていない数字で、2021年の別の論文で測った「雪が光をはね返す割合」の下がり方と同じ値。本記事は2021年の論文の測定値を使用)eurekalert.org
- AntarcticNutrients(研究チームが公開したデータとプログラム・Zenodo)doi.org
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南極には緑色の雪がある。正体は雪の中の小さな藻。9か所で採った雪111個を調べると、緑の雪には肥料にもなる栄養(リン酸)が白い雪の約70倍あった。ペンギンなどの野生動物の影響が強い場所ほど多かった。フンが"肥料"になっているらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Ryan & Khan (2026) Phosphate Enrichment From Wildlife Inputs Shapes the Distribution and Pigmentation of Green and Red Snow Algae Along the West Antarctic Peninsula, Journal of Geophysical Research: Biogeosciencesdoi.org
- Khan et al. (2021) Spectral characterization, radiative forcing and pigment content of coastal Antarctic snow algae: approaches to spectrally discriminate red and green communities and their impact on snowmelt, The Cryospheredoi.org
- Gray et al. (2020) Remote sensing reveals Antarctic green snow algae as important terrestrial carbon sink, Nature Communicationsdoi.org
- Hoham & Remias (2020) Snow and Glacial Algae: A Review, Journal of Phycologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













