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動物・植物

南極の雪が緑色に。雪の中の藻を、ペンギンなど海鳥のフンの栄養が育てているらしい

南極の雪が緑色に。雪の中の藻を、ペンギンなど海鳥のフンの栄養が育てているらしい

読む前に予想してみよう!

南極の雪は、どこでも真っ白だ

研究カード(どんな研究?)
対象
西南極半島の海辺の雪(9地点)
規模
111サンプル(緑48・赤45・白18)
研究の種類
観察研究(1シーズンの現地調査)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

南極の海辺の雪は、雪の中の小さな藻が増えると緑や赤に染まる。緑の雪には、肥料にもなる栄養(リン酸)が白い雪の約70倍あった。リン酸は、ペンギンなどの野生動物の影響が強い場所ほど多かった。

ひとことで言うと南極の雪を緑にする藻は、ペンギンなどのフンの栄養で育っているらしい!

もくじ
  1. 雪が緑や赤に染まるのは「雪の中の藻」のせい
  2. 緑の雪には、白い雪の約70倍の"肥料"があった
  3. リン酸はどこから来た? 動物の影響が強い場所ほど多かった
  4. 緑の雪は、白い雪より解けやすいのか
  5. どんでん返し:「フンが藻を育てた」とはまだ言い切れない
  6. まとめ

南極の海辺には、緑色の雪があります。赤い雪もあります。絵の具をまいたわけではありません。雪の中で藻(も)が増えて、雪ごと色づいているのです。藻は、日の光で栄養を作る、植物に近い生き物です。雪の中の藻は、1つ1つが目に見えないほど小さなものです。

なぜ、場所によって緑になったり赤になったりするのでしょう。2026年10月7日、米国の研究チームがその手がかりを発表しました。南極の海辺で色のついた雪と白い雪を集めて、中に溶けている栄養を調べたのです。発表先は、学術誌『Journal of Geophysical Research: Biogeosciences』です。

注目したのはリン酸という栄養です。畑にまく肥料にも入っている、植物が育つのに大事な栄養です。緑の雪には、このリン酸が、色のついていない白い雪の約70倍ありました。リン酸は、ペンギンなどの野生動物の影響が強い場所ほど多い傾向もありました。ただし、雪を採って測っただけの研究です。フンが本当に藻を育てたのかは、まだ確かめられていません。

01雪が緑や赤に染まるのは「雪の中の藻」のせい

雪や氷の上で暮らす藻は、南極だけでなく、すべての大陸で見つかっています。雪を緑、赤、ピンク、オレンジなどに染めることが知られています。

今回の論文によると、雪の藻の多くは「緑藻(りょくそう)」という、もともと緑色の藻の仲間です。ところが、強い日差しを浴びたり、栄養が足りなくなったりすると、赤っぽく変わっていきます。体の中に、日焼け止めのような働きをする赤い色素をため込むからです。色素とは、色のもとになる物質のことです。

南極や北極は日の光が弱く、雪の奥までは届きにくくなります。そのため、藻が暮らすのは、おもに雪の表面から5cmほどまでです。

論文は、緑の雪と赤い雪の違いを、藻が今どんな状態にあるかの違いと見ています。緑のまま元気に増えているか、赤い色素をため込んで身を守っているか、という違いです。

02緑の雪には、白い雪の約70倍の"肥料"があった

リン酸の量は、緑・赤・白の雪ごとに「中央値」で比べました。中央値とは、サンプルを量の少ない順に1列に並べたとき、ちょうど真ん中にくる値です。飛び抜けて多いサンプルが少し混じっていても、それに引っ張られにくい比べ方です。

  • 緑の雪:114マイクロモル
  • 赤い雪:11.4マイクロモル
  • 白い雪:1.54マイクロモル

マイクロモルは、水に溶けている物質の量を表す単位です。ここでは、雪どけ水1リットルにリン酸がどれだけ溶けているかを表しています。数字が大きいほど、リン酸が多いということです。

緑の雪は赤い雪の10倍、白い雪の約70倍です。

次に研究チームは、サンプルを2つの組に分けました。境目は、111個全体の中央値です。それより多い組と、少ない組です。リン酸の多い組は、大半が緑の雪でした。そしてこの組の雪は、少ない組より藻の細胞の数が多く、細胞1つあたりの色素の量も多かったのです。

03リン酸はどこから来た? 動物の影響が強い場所ほど多かった

研究チームは、雪を採った場所ごとに、3つの影響の強さを1〜4の4段階で点数にしました。「動物の影響」「海の影響」「岩や砂ぼこりの影響」の3つです。

すると、動物の点数が高い場所ほど、リン酸も多い傾向がありました。リン酸とこうした関係が見られたのは、動物の影響だけでした。海や岩の点数とリン酸のあいだには、はっきりした関係は見られませんでした。

論文は、この結果から、鳥がもたらす栄養がリンの大事な出どころだと考えています。

論文が紹介している以前の研究によると、ペンギンは海でオキアミ(小さなエビのような生き物)を食べます。そして、オキアミから取り込んだ窒素やリンを含むフンを、海辺の雪や土の上に落とします。窒素も、リンと同じく植物が育つのに欠かせない栄養です。つまり、海の栄養が鳥の体を通って、雪の上に運ばれてくるわけです。

降ったばかりの南極の雪には、リンはほとんど含まれていません。そこへフンが落ちれば、藻にとっては貴重な肥料になります。

論文によると、フンに含まれる窒素の一部は、アンモニア(鼻をつくにおいの気体)になって空気中へ逃げていきます。ところがリンには、そうした逃げ道がありません。そのため、リンは雪に残りやすいといいます。

海のオキアミ → ペンギンなど海鳥 → フン → 雪の中の藻。海の栄養が鳥を通って雪に運ばれている、と研究チームは考えている(イメージ)
海のオキアミ → ペンギンなど海鳥 → フン → 雪の中の藻。海の栄養が鳥を通って雪に運ばれている、と研究チームは考えている(イメージ)

緑の雪がペンギンの近くに多いこと自体は、以前から知られていました。2020年の別の研究は、人工衛星から撮った画像で、南極半島の緑の雪を1,679か所見つけました。そのうち60%(10か所のうち6か所)は、ペンギンのコロニー(集団で子育てをする場所)から5km以内にありました。

今回の研究は、こうした海辺の色づいた雪を実際に採って、栄養の量を測ったことになります。

04緑の雪は、白い雪より解けやすいのか

色のついた雪は、白い雪より日の光をはね返しにくくなります。はね返されなかった光は熱になり、雪を解かす力になります。夏に黒い服を着ると、白い服より暑く感じるのと同じ仕組みです。

2021年には、別の論文が出ています。今回の論文のカーンさんが中心になった研究です。2018年1月、南極半島の北にある島々の3か所で、雪が目に見える光をどれだけはね返すかを測りました。

当たった光を100とすると、白い雪がはね返したのは平均で約85でした。赤い雪は約65、緑の雪は約44しかはね返しませんでした。緑の雪がはね返す光は、白い雪のおよそ半分です。

ただし、今回の論文は、雪がはね返す光の量も、雪が解ける速さも測っていません。論文が言っているのは、動物が運んだ栄養で、藻が雪を暗くする働きが強まるかもしれない、というところまでです。

カーンさんは、学会が出した発表文の中でこう話しています。「こうした生き物による雪の黒ずみを計算に入れないと、海辺の雪が解ける速さを小さく見積もってしまうだろう」。これは研究者の見通しです。今回の測定で分かったことではありません。

05どんでん返し:「フンが藻を育てた」とはまだ言い切れない

  • 雪を採って測ったのは、1回の夏だけ。分かったのは「リン酸が多い場所に、藻も多い」という結びつきまで。肥料をまいて、藻が増えるかを試したわけではない
  • 論文自身が、別の読み方もありうると書いている。藻は増えるとき、窒素を先に使い切ってしまう。すると、使われずに余ったリン酸が雪に残る。だから測ったときにリン酸が多く見えている、という可能性だ。どちらなのかを見分けるには、同じ場所を時間を追って調べる必要がある
  • 「動物の影響」の点数は、研究者が場所ごとにつけた4段階の目安。フンの量をそのまま測ったものではない
  • リン酸の多い組にも、赤い雪が11個あった。論文には、ペンギンの繁殖地(子育てをする場所)の近くで見つかった赤い雪の写真も載っている。動物の近くなら必ず緑になる、という単純な話ではない

06まとめ

南極の雪を緑に染める藻の周りには、普通の雪の何十倍ものリン酸がありました。その量は、ペンギンなどの野生動物の影響が強い場所ほど多い傾向がありました。海で食べた栄養を、鳥がフンにして雪の上へ運んでいる。そんな姿が浮かび上がります。

論文は最後に、ペンギンの変化にも触れています。南極半島では、ジェンツーペンギンが子育てする場所を南へ広げています。一方で、アデリーペンギンやヒゲペンギンが減っている地域もあります。どの種類のペンギンが、どこに、どれだけいるか。それによって雪の上のリンの量も変わり、緑の雪が増えるか減るかも変わってくるかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSnow on the coast of the Antarctic Peninsula is not always white. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Snow on the coast of the Antarctic Peninsula is not always white. Tiny algae living near the surface can turn it green or red. A team from two US universities collected 111 samples from nine coastal sites during the 2024–2025 Antarctic summer and measured the nutrients in the melted snow.

Green snow held about ten times as much phosphate as red snow and about 70 times as much as clean snow. Samples rich in phosphate, most of them green, also had more algae cells, and each cell carried more pigment. Phosphate levels were highest at sites where wildlife, such as penguins and other seabirds, had the most influence. The researchers think bird droppings carry nutrients from the sea onto the snow.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

南極半島の海岸の雪は、いつも白いわけではない。表面の近くにすむ小さな藻が、雪を緑や赤に変えることがある。米国の2つの大学のチームは、2024〜25年の南極の夏に、海岸の9か所で111のサンプルを集め、とけた雪の中の栄養を測った。

緑の雪には、赤い雪の約10倍、きれいな雪の約70倍のリン酸があった。リン酸の多いサンプル(その多くは緑)は、藻の細胞も多く、1つ1つの細胞がもつ色素も多かった。リン酸がいちばん多かったのは、ペンギンやほかの海鳥などの動物の影響が最も強い場所だった。研究者たちは、鳥のフンが海の栄養を雪の上に運んでいると考えている。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Where were phosphate levels highest?

Q3. What can we infer about the birds in this study?

重要単語

  • algaeB2
    名詞藻(そう)、藻類Tiny algae can turn snow green or red. 複数形の扱いがふつう。単数形は alga。発音は「アルジー」に近い。algal bloom で「藻の大発生」
  • nutrientB1
    名詞栄養分、栄養素Plants need nutrients from the soil to grow. nourish(養う)と同じ語源。nutrition(栄養)とセットで覚える。rich in nutrients(栄養が豊富な)
  • phosphateC1
    名詞リン酸(リンをふくむ栄養分)Green snow held far more phosphate than clean snow. phosphorus(リン)から。ギリシャ語で「光を運ぶもの」。肥料の成分としてよく出てくる
  • droppingsB2
    名詞(鳥や動物の)フンBird droppings can carry nutrients from the sea to the land. drop(落とす)から。ふつう複数形で使う。海鳥のフンがたまったものは guano とも言う
  • pigmentB2
    名詞色素Each cell carried more pigment in phosphate-rich snow. paint(絵の具)と同じ語源のラテン語 pingere(描く)から。chlorophyll(葉緑素)も pigment の一つ
  • wildlifeB1
    名詞野生生物、野生の動物The coast is home to a lot of wildlife, including penguins and seals. 数えられない名詞なので wildlifes とはしない。wildlife protection(野生生物の保護)は入試頻出
  • reflectB1
    動詞(光などを)はね返す、反射する/反映するClean white snow reflects a lot of sunlight. re-(元へ)+ flect(曲げる)。名詞は reflection。「意見を反映する」の意味でも使う

4コマでわかる

南極の雪が緑色に。雪の中の藻を、ペンギンなど海鳥のフンの栄養が育てているらしいの4コマ漫画
南極には緑色の雪がある。正体は雪の中の小さな藻。9か所で採った雪111個を調べると、緑の雪には肥料にもなる栄養(リン酸)が白い雪の約70倍あった。ペンギンなどの野生動物の影響が強い場所ほど多かった。フンが"肥料"になっているらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Ryan & Khan (2026) Phosphate Enrichment From Wildlife Inputs Shapes the Distribution and Pigmentation of Green and Red Snow Algae Along the West Antarctic Peninsula, Journal of Geophysical Research: Biogeosciencesdoi.org
  2. Khan et al. (2021) Spectral characterization, radiative forcing and pigment content of coastal Antarctic snow algae: approaches to spectrally discriminate red and green communities and their impact on snowmelt, The Cryospheredoi.org
  3. Gray et al. (2020) Remote sensing reveals Antarctic green snow algae as important terrestrial carbon sink, Nature Communicationsdoi.org
  4. Hoham & Remias (2020) Snow and Glacial Algae: A Review, Journal of Phycologydoi.org