チョウの派手な羽は「動くだまし絵」らしい。羽ばたくと速さや向きを見誤らせる錯覚が生まれる

読む前に予想してみよう!
チョウの羽の模様には、飛んでいるときに捕食者の目をだます働きがあるらしい
羽ばたきと模様が組み合わさると、進む向きや速さを見誤らせる「動く錯覚」が生まれることが示された。
- 対象
- 欧州のチョウ397種・人間100人
- 規模
- チョウの模様757タイプ+人間100人の実験
- 研究の種類
- 高速度撮影・視覚モデル解析・行動実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
チョウの羽の模様は、羽ばたきと組み合わさると「進む向きや速さ」を見誤らせる錯覚を生むらしい。英エクセター大などがNatureで報告。
ひとことで言うとチョウの羽の模様は、飛ぶと鳥の目をだます「動くだまし絵」になるみたい!
チョウって、なぜあんなに派手なのでしょう。
鳥に食べられる側なのに、くっきりした模様でひらひらと目立つ。毒をもつ種なら「まずいぞ」という警告になりますが、ヨーロッパには毒のないチョウも多いのです。
この謎に、新しい答えが出ました。2026年9月30日、英エクセター大学と英エセックス大学のチームが『Nature』で研究を発表しました。チョウの模様は羽ばたくことで「動く錯覚」を生み、鳥の狙いを外させているらしいのです。チームはヨーロッパの397種(757タイプ)のチョウの模様を調べ、100人の人間を「捕食者」役にした実験でも確かめました。
01床屋のくるくる看板と同じしくみ
床屋さんの前で回る、しま模様の看板。その場で回転しているだけなのに、しまは上へ流れていくように見えます。
研究チームによると、チョウでも似たことが起きています。チョウの翅(はね)は飛ぶたびに曲がったり、閉じたり開いたりします。するとしま模様の向きが次々と変わり、見る側の目には「本当に進んでいる向き」とは違う動きが浮かび上がるのです。
エクセター大学のトロシアンコ(Jolyon Troscianko)さんは、最初にチョウのスロー映像を「鳥の目のコンピュータモデル」にかけたとき、チョウは上に飛んでいるのに、モデルは「下向きに動いている」という反応を強く出したといいます。最初は、上と下を取り違えたプログラムのミスを疑ったそうです。
024つの方法で確かめた
錯覚の強さは鳥の目をまねた「動き検出モデル」で計算されました。翅のコントラストが強いこと、縦方向のしま、一本だけの太い帯、後ろ翅の尾のような突起などが、錯覚を強めていました。アゲハチョウの仲間は軒並み高い値でした。

03人がチョウを狙う実験でも、狙いが後ろにずれた
人間の捕食者実験では、錯覚の強いチョウほど、タッチした位置がチョウの後ろ側へずれる傾向がありました。速さを実際より遅く見積もってしまったと考えられます。いちばん錯覚の強いチョウと弱いチョウでは、狙いの中心が体長の約38%ぶんも違いました。
コンピュータ内進化の実験は、ランダムな模様から出発しました。「実際より遅く見える」錯覚の強い模様ほど生き残るようにすると、模様は本物のヨーロッパのチョウとよく似たものに近づいていきました。逆に「前へ進む動きを強く見せる」模様を選んでいくと、真っ白なチョウができあがりました。白い翅で知られるモンシロチョウの仲間(シロチョウ科)の作戦に似ています。こちらは、速さを実際より速く見せて、狙いを前に外させると考えられます。
04「しま模様は敵の目をくらます」説を後押し
動物のしま模様が捕食者の目をくらませる、という「モーション・ダズル」の考え方は昔からありました。シマウマやヘビでも研究されてきましたが、はっきりした証拠はなかなか得られていませんでした。
今回は翅が形を変えるという生き物らしい動きまで含めて調べ、この説を強く後押ししました。
05まとめ
目立つことは弱点とは限りません。チョウは「見つからない」のではなく、見つかっても捕まらないように模様を進化させてきた可能性があります。
次にチョウを見かけたら、翅の模様をよく見てください。鳥の目をだます仕掛けが隠れているかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany European butterflies are not poisonous, so why are their wings so colorful?
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Why do many butterflies have bright patterns? A new study from the United Kingdom has an answer. When a butterfly flaps its wings, the patterns move and change. This can trick the eyes of birds.
Birds may think the butterfly is slower or is going in a different direction. In a test, 100 people tried to catch flying butterflies on a screen. They often touched behind the butterflies.
68 words ・ CEFR A2
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なぜ多くのチョウは派手な模様をもっているのでしょうか。イギリスの新しい研究に、その答えがあります。チョウが羽ばたくと、模様が動いて変化します。これが鳥の目をだますことがあるのです。
鳥は、チョウが実際より遅い、あるいは違う方向へ進んでいると思うかもしれません。あるテストで、100人が画面上を飛ぶチョウを捕まえようとしました。彼らはよく、チョウの後ろ側にタッチしてしまいました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
羽ばたくと模様が変化して鳥の目をだます(This can trick the eyes of birds)という話なので C。
Q2. Where did people often touch on the screen?
最終文 They often touched behind the butterflies. とあるので A。
Q3. In this passage, "trick" means ...
鳥が実際と違う速さや方向を思い込む、という文脈なので「だます」= D。
Many European butterflies are not poisonous, so why are their wings so colorful? Researchers from the Universities of Exeter and Essex in the UK suggest that the patterns create a moving illusion. As a butterfly flaps, its wings bend, open, and close, so the stripes keep changing direction.
A computer model of a bird's motion vision showed that this can make the butterfly seem to move in a different direction or more slowly than it really does. In an experiment, 100 people tried to tap flying butterflies on a touch screen. For butterflies with strong illusions, their taps tended to land behind the insect. The study was published in Nature.
110 words ・ CEFR B1
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ヨーロッパのチョウの多くは毒をもっていないのに、なぜ翅がこれほどカラフルなのでしょうか。イギリスのエクセター大学とエセックス大学の研究者たちは、模様が「動く錯覚」を生み出していると提案しています。チョウが羽ばたくと、翅は曲がったり、開いたり閉じたりするので、しま模様の向きが変わり続けます。
鳥の動きの見え方を再現したコンピューターモデルでは、これによってチョウが実際とは違う方向へ、あるいは実際よりゆっくり動いているように見えることが示されました。ある実験では、100人がタッチ画面上で飛んでいるチョウをタップしようとしました。錯覚の強いチョウでは、タップした位置が虫の後ろ側にずれる傾向がありました。この研究は『Nature』に発表されました。
4択リーディングクイズ
Q1. What do the researchers suggest about butterfly patterns?
suggest that the patterns create a moving illusion とあるので B。冒頭で多くは毒がないと述べている。
Q2. How was the illusion measured?
A computer model of a bird's motion vision showed that ... とあるので D。
Q3. Why did people's taps tend to land behind the butterflies?
錯覚でチョウが実際より slowly に動いて見えるため、狙いが後ろにずれたと推測できる。正解は A。
Bold stripes make a butterfly conspicuous to birds, and for species that are not toxic, that looks like a bad deal. A study in Nature by researchers at the Universities of Exeter and Essex offers an explanation called motion dazzle. Butterfly wings bend and fold as they flap, so the orientation of the stripes changes rapidly. Like a rotating barber's pole, the pattern sends false motion signals.
The team filmed real butterflies at about 1,000 frames per second and simulated the flight of 757 pattern types from 397 European species. They then estimated illusion strength with a model of how birds detect motion. High contrast, vertical stripes and single broad bands made the effect stronger. When 100 human participants tried to catch virtual butterflies, they tended to aim behind the ones with strong illusions.
The team also let 57,600 patterns evolve on a computer to maximize the speed illusion, and the results came to resemble real European butterflies. No wild bird was tested, though. Illusion strength came from a model, and the "predators" in the catching game were people. Bold wings may also do other jobs, such as sending warning signals or controlling temperature.
194 words ・ CEFR B2
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はっきりしたしま模様があるとチョウは鳥の目に目立ってしまい、毒のない種にとっては損な取り引きに見えます。エクセター大学とエセックス大学の研究者による『Nature』の研究は、「モーション・ダズル(動きによる目くらまし)」という説明を示しています。チョウの翅は羽ばたくときに曲がったり折りたたまれたりするので、しま模様の向きがすばやく変わります。回転する床屋の看板のように、模様が偽の動きの信号を送るのです。
チームは本物のチョウを毎秒約1,000コマで撮影し、ヨーロッパの397種から757の模様タイプの飛行をシミュレーションしました。そして、鳥が動きを検出するしくみのモデルで錯覚の強さを推定しました。強いコントラスト、縦のしま、一本の太い帯が効果を強めていました。100人の参加者が仮想のチョウを捕まえようとすると、錯覚の強いチョウでは狙いが後ろ側にずれる傾向がありました。チームはさらに、57,600通りの模様を速さの錯覚が最大になるようにコンピューター上で進化させました。
すると、その結果は本物のヨーロッパのチョウに似ていきました。ただし、野生の鳥では試されていません。錯覚の強さはモデルで計算したもので、捕まえるゲームの「捕食者」は人間でした。目立つ翅には、警告の信号を送ったり体温を調節したりと、ほかの役目もあるのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the study propose?
an explanation called motion dazzle とあり、羽ばたきでしま模様が偽の動きの信号を送ると説明しているので C。
Q2. What happened when patterns were evolved on a computer to maximize the speed illusion?
the results came to resemble real European butterflies とあるので B。
Q3. Which of the following is a limitation of the study?
No wild bird was tested, though. ... the "predators" in the catching game were people とあるので A。397種を調べ、モデルも使っているので他は誤り。
重要単語
- illusionB2名詞錯覚、幻想The lines look curved, but it is only an illusion.
optical illusion「目の錯覚」。be under the illusion that ~「~と思い込んでいる」。 - predatorB2名詞捕食者Birds are the main predators of butterflies.
反対は prey「獲物」。形容詞 predatory。 - flapB1動詞(翼などを)ばたばた動かすThe bird flapped its wings and flew away.
flap one's wings がセット。名詞では「(封筒の)ふた、垂れぶた」の意味もある。 - conspicuousC1形容詞目立つ、人目を引くThe red sign was conspicuous from far away.
con-(すっかり)+spic(見る)。inconspicuous「目立たない」とペアで。 - stripeB1名詞しま、筋Zebras have black and white stripes.
形容詞 striped「しま模様の」。strip(細長い切れ端)とは別の語。 - contrastB1名詞・動詞対比、コントラスト/対比するThe black text shows good contrast on a white page.
名詞は第1音節、動詞は第2音節にアクセント。in contrast「対照的に」は論説文の定番。 - resembleB2動詞~に似ているThe computer patterns resembled real butterflies.
他動詞なので resemble with ~ とはしない。名詞は resemblance。
実物を見に行こう
この話につながる展示がある、全国のミュージアムです。
- 石川県ふれあい昆虫館石川県白山市
「昆虫の知恵」のコーナーで、枯れ葉に化ける虫や、はねの目玉模様で敵をだます虫の標本を展示しています。温室では南国のチョウ約10種類が飛んでいます。
- 群馬県立ぐんま昆虫の森群馬県桐生市
45ヘクタールの敷地に雑木林や小川などの里山を再現しています。ふれあい温室では、滝が流れる中を「オオゴマダラ」などのチョウが飛び交っています。
- 信州昆虫資料館長野県青木村
信州のチョウ全156種の標本を展示しています。青木村の十観山、標高1,000mの地点にある、昆虫標本と本の資料館です。
- 北杜市オオムラサキセンター山梨県北杜市
網を張った建物「びばりうむ長坂」でオオムラサキを飼育しています。野外では見つけにくい卵や小さな幼虫まで、季節ごとの姿を観察できます。
館の情報は 全国ミュージアムマップ(Culture+Commons)より。開館日や料金は各館の公式サイトでご確認ください。
公式・一次情報をチェック
- Butterflies use optical illusions to dodge predators(エクセター大学)news.exeter.ac.uk
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チョウの派手な羽、目立つだけで損じゃない? 実は羽ばたくと模様が「動く錯覚」を生み、鳥に進む向きや速さを見誤らせているらしい。コンピュータの中で模様を進化させたら、本物そっくりのデザインに行き着いたとか。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Hancock et al. (2026) Butterfly wing patterns in flight create powerful illusory motion cues, Naturedoi.org
- University of Exeter: Butterflies use optical illusions to dodge predatorsnews.exeter.ac.uk
- Stevens et al. (2011) Motion dazzle and camouflage as distinct anti-predator defenses, BMC Biologydoi.org
- How & Zanker (2014) Motion camouflage induced by zebra stripes, Zoologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










