ウソ?ホント?検証ビミョー

「ミツバチは一度刺すと死ぬ」は半分ホント。死ぬのは"人を刺した働きバチ"だけだった

「ミツバチは一度刺すと死ぬ」は半分ホント。死ぬのは"人を刺した働きバチ"だけだった

読む前に予想してみよう!

ハチはどの種類でも、一度刺すと死んでしまう

研究カード(どんな研究?)
対象
ミツバチ・スズメバチ類
規模
標本の構造観察・刺す実験・人での測定
研究の種類
実験研究・総説
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ミツバチの働きバチの針には返しがあり、人や動物の皮膚に刺すと針と毒袋がちぎれて死ぬ。でも虫を刺すときは抜けることが多く、女王バチやスズメバチは何度も刺せる。

ひとことで言うと死ぬのは"人を刺した働きバチ"。スズメバチは何度も刺せる!

もくじ
  1. 針に「返し」がついていた
  2. 「死ぬ」のは条件つきだった
  3. 自分の命と引きかえに巣を守る
  4. 刺されたら「すぐ抜く」が正解
  5. まとめ

「ミツバチは一度刺したら死んじゃうから、めったに刺さないんだよ」

小さいころ、こう教わった人も多いでしょう。「命がけで巣を守るなんて健気だ」と感じた人もいるかもしれません。

この話は半分ホントです。ただし、死ぬのは「どんなハチでも」「何を刺しても」ではありません。条件がそろったときだけでした。

01針に「返し」がついていた

ミツバチの働きバチの針をよく見ると、釣り針のような小さな返し(とげ)がたくさん並んでいます。

人や動物の皮膚は弾力があって繊維がからみ合っているので、ミツバチの針はしっかり食いこみます。ハチが飛び去ろうとすると、針と一緒に毒袋や内臓の一部がちぎれてしまうのです。その傷が原因で、ハチは死んでしまいます。

02「死ぬ」のは条件つきだった

ここからが「半分」の理由です。

  • 相手が虫の場合:ミツバチは、巣に侵入した他の虫を刺すこともあります。虫の体の表面は人の皮膚とは違うため、針を抜けることが多いとされています
  • 女王バチ:女王バチの針は返しがほとんどなく、何度でも刺せます(主にライバルの女王と戦うときに使います)
  • スズメバチやアシナガバチ:1992年の米国の研究で針を電子顕微鏡で調べたところ、スズメバチの仲間の針は、引っこめたときに返しが"さや"で守られる構造になっていました。だから抜けやすく、野外ではふつう何度でも刺せるとされています
ミツバチの針(左)は返しがむき出し。スズメバチの仲間の針(右)は抜けやすい構造
ミツバチの針(左)は返しがむき出し。スズメバチの仲間の針(右)は抜けやすい構造

つまり、「一度刺すと死ぬ」のは、主にミツバチの働きバチが、人や動物などの哺乳類を刺したときの話なのです。

03自分の命と引きかえに巣を守る

なぜ、こんな"自爆"のような仕組みが進化したのでしょうか。

働きバチは子どもを産まず、巣全体で生きる社会性の昆虫です。社会性昆虫の自己犠牲的な防衛をまとめたショーターとリュッペルの2012年の総説によると、こうした行動は、自分の遺伝子を共有する巣の仲間を守ることで進化しうると考えられています。

さらに、ちぎれた針と毒袋は、ハチが離れたあとも毒を送りこみ続け、仲間を呼ぶ警報フェロモンも出します。1匹の犠牲で、巣を狙う大きな動物に最大限のダメージを与える作戦なのです。

04刺されたら「すぐ抜く」が正解

では、ミツバチに刺されたらどうすればよいのでしょう。昔は「針をつまむと毒袋を押してしまうので、カードなどでこそげ落とせ」と言われてきました。

ところが、米国カリフォルニア大学リバーサイド校のヴィッシャーらが1996年に調べたところ、腫れの大きさは針を抜くまでの時間が長いほど大きくなり、数秒の違いでも差が出ました。一方、つまんでも、こそげても違いはありませんでした。大切なのは方法よりスピードだったのです。

05まとめ

  • ミツバチの働きバチの針には返しがあり、哺乳類の皮膚を刺すと針がちぎれて死ぬ
  • 虫を刺す場合や女王バチ、スズメバチなどは、何度も刺せる
  • 刺されたら、方法より「すぐに抜く」ことが大事

判定は「ビミョー」。「刺すと死ぬ」は、ミツバチの働きバチが私たちを刺したとき限定の話でした。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people believe that a honeybee always dies after stinging. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many people believe that a honeybee always dies after stinging. In fact, this happens only in certain cases. A worker honeybee's sting has many small barbs, like the point of a fishing hook. In a 2015 study, researchers found that this barbed sting is hard to pull out of soft, fibrous materials such as skin.

When a bee stings a person and flies away, its sting and venom sac are torn from its body, and the bee dies. However, when it stings other insects, it can often pull the sting out. Queen bees, and wasps such as hornets, can sting many times because their stings come out more easily.

109 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ミツバチは刺した後に必ず死ぬと信じている人はたくさんいます。実際には、これは特定の場合にしか起こりません。働きバチの針には、釣り針の先のような小さな返しがたくさんついています。2015年の研究で、研究者たちはこの返しのある針が、皮膚のようなやわらかく繊維質のものからは抜けにくいことを発見しました。

ハチが人を刺して飛び去ろうとすると、針と毒袋が体からちぎれ、ハチは死んでしまいます。しかし、ほかの虫を刺したときは、針を抜けることが多いのです。女王バチや、スズメバチなどのハチは、針がより抜けやすいので何度も刺すことができます。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Why is a worker bee's sting hard to pull out of skin?

Q3. A worker honeybee stings another insect. What will probably happen?

重要単語

  • stingB1
    名詞・動詞針、刺すこと/刺すThe bee left its sting in my arm. 活用は sting-stung-stung。米国では針そのものを stinger とも言う。
  • barbC1
    名詞(釣り針の)返し、とげThe barbs make the sting hard to pull out. barbed wire は「有刺鉄線」。形容詞 barbed は「とげのある、辛辣な」。
  • venomC1
    名詞(動物の)毒Bee venom can cause swelling. かまれたり刺されたりして入る毒。食べて害になる毒は poison。形容詞 venomous。
  • workerA2
    名詞働きバチWorker bees are all female. worker bee で「働きバチ」。queen(女王)、drone(雄バチ)とセットで。
  • colonyB2
    名詞(ハチなどの)集団、巣A honeybee colony can have tens of thousands of bees. 歴史では「植民地」。生物では同じ種が集まって暮らす集団を指す。
  • extractC1
    動詞引き抜く、取り出すThe sting is difficult to extract from skin. ex-(外へ)+tract(引く)。名詞では「抽出物・エキス」(vanilla extract)。

4コマでわかる

「ミツバチは一度刺すと死ぬ」は半分ホント。死ぬのは"人を刺した働きバチ"だけだったの4コマ漫画
「ミツバチは一度刺すと死ぬ」は半分ホント。働きバチの針には返しがあって、人の皮膚に刺さると針ごと毒袋がちぎれてしまう。でも虫が相手なら抜けることも多く、スズメバチの仲間は針が抜けやすい構造で何度でも刺せるらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Zhao et al. (2015) Structures, properties, and functions of the stings of honey bees and paper wasps: a comparative study, Biology Opendoi.org
  2. Mulfinger et al. (1992) Sting morphology and frequency of sting autotomy among medically important vespids and the honey bee, Journal of Medical Entomologydoi.org
  3. Shorter & Rueppell (2012) A review on self-destructive defense behaviors in social insects, Insectes Sociauxdoi.org
  4. Visscher, Vetter & Camazine (1996) Removing bee stings, The Lancetdoi.org