ミツバチは「ゼロ」がわかる? 脳の小さな虫が「何もない」を数の一番下に置いた

読む前に予想してみよう!
ミツバチは「何もない」状態を、1より小さい数のように扱えることが実験で示された
「少ないほう」を学んだハチは、空っぽのカードを1個のカードより少ないと判断した。
- 対象
- 自由飛行するミツバチの個体
- 規模
- 小規模(個体ごとに多数の試行)
- 研究の種類
- 訓練と選択テストの行動実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
「少ないほうを選ぶ」と学んだミツバチは、何も描かれていない図を「1より少ない」と判断した。ゼロを数の並びの一番下に置けたことを示す実験だ。
ひとことで言うとミツバチは「なにもない」が「1より少ない」とわかるらしい!
「ゼロ」は、人類の発明の中でもかなり新しいほうです。何もないことを“数”として扱うのは、じつはとても抽象的な考え方。子どもがゼロを数として理解するのも、ほかの数より遅いと言われます。
ところが2018年、ミツバチがその「ゼロ」の感覚をもっているらしい、という研究が『Science』に載りました。脳の神経細胞は100万個にも満たない小さな虫が、です。
01「少ないほうを選んで」を覚えさせる
ハチが「少ないほう」をしっかり覚えたところで、ある日、初めて見るカードを混ぜます。それは何も描かれていない、真っ白なカードです。
02空っぽのカードを「1より少ない」と判断した
もしハチが「1、2、3……」のように、目に見える“もの”しか数えられないなら、空っぽのカードは「数ではない」ので、どう扱っていいかわからないはず。
ところがハチは、図形1個のカードと空っぽのカードを比べると、空っぽのほうを「少ない」として選んだのです。つまり、「何もない」を数の並びのいちばん下、1よりさらに下に置いていたことになります。
研究チームは、これを「ゼロを数の並びの中に位置づける力」とし、アフリカの灰色オウムやサル、そして就学前の子どもに近い理解だと述べています。

03足し算・引き算までできた
同じチームは2019年、さらに一歩進んだ実験をしました(『Science Advances』)。青色は「1を足す」、黄色は「1を引く」という“記号”の意味をハチに学ばせたのです。
すると、ハチは初めて見る問題でも、青なら1つ多いほう、黄色なら1つ少ないほうを選べるようになりました。記号を使った足し算・引き算の初歩です。
ミツバチは、花の数や場所を覚えて効率よく蜜を集める必要があります。「何もない(=蜜がない)」を判断できるのは、生きていくうえでも役に立つのかもしれません。
04まとめ
ミツバチは、「何もない」ことを、ただの“無”ではなく1より小さい量として扱えるらしい――。ゼロの理解は人間の特権ではなかったのかもしれません。
小さな脳でも、工夫しだいで驚くほど抽象的なことができる。次に花にとまるミツバチを見かけたら、「この子、ゼロがわかるんだよな」と、ちょっと尊敬のまなざしを向けてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHumans took a long time to develop the idea of zero.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Zero is a difficult idea. Even young children learn it later than other numbers. But a 2018 study showed that honeybees may understand it.
Scientists showed bees cards with one to six black shapes. The bees learned to choose the card with fewer shapes and got sugar water as a reward. Then the scientists showed them a new, empty card. The bees chose the empty card as "less than one."
70 words ・ CEFR A2
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ゼロは難しい考えです。小さな子どもでさえ、ほかの数より遅れてゼロを学びます。しかし、2018年の研究で、ミツバチがゼロを理解しているかもしれないことが示されました。
科学者たちは、黒い図形が1〜6個描かれたカードをハチに見せました。ハチは図形が少ないほうのカードを選ぶことを覚え、ごほうびとして砂糖水をもらいました。次に科学者たちは、初めて見る何も描かれていないカードを見せました。ハチはその空っぽのカードを「1より少ない」として選んだのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ミツバチがゼロを理解しているかもしれないことを示した実験の話なので D。
Q2. What did the bees get when they chose correctly?
got sugar water as a reward とあるので B。
Q3. In this passage, "empty" means ...
empty は「空の・何もない」。何も描かれていないカードのことなので C。
Humans took a long time to develop the idea of zero. Treating "nothing" as a number is very abstract. So a 2018 study caught many people by surprise. It suggests that honeybees, whose brains contain fewer than a million nerve cells, may understand it.
Researchers in Australia trained free-flying bees to choose cards showing fewer black shapes. The shapes changed in size, form and position, so the bees had to focus on number.
Then the bees saw an empty card for the first time. When it was paired with a card showing one shape, they chose the empty card as the smaller amount. That means the bees put zero below one. The next year, the same team taught bees to add and subtract one using colors.
126 words ・ CEFR B1
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人類はゼロという考えを発展させるのに長い時間がかかりました。「何もない」を数として扱うのは、とても抽象的なことです。そのため、2018年のある研究は多くの人を驚かせました。神経細胞が100万個にも満たない脳をもつミツバチが、ゼロを理解しているかもしれないというのです。
オーストラリアの研究者たちは、自由に飛び回るハチに、黒い図形が少ないほうのカードを選ぶよう訓練しました。図形の大きさ・形・配置は変えられたので、ハチは数に注目しなければなりませんでした。
次に、ハチは初めて空っぽのカードを見ました。それが図形1個のカードと並べられると、ハチは空っぽのカードを少ないほうとして選びました。つまり、ハチはゼロを1の下に置いたのです。翌年、同じチームは色を使って、ハチに1を足したり引いたりすることを教えました。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did the researchers change the size, form and position of the shapes?
so the bees had to focus on number とあるので A。面積や形ではなく数で選ばせる工夫。
Q2. What did the bees do when the empty card was paired with a one-shape card?
they chose the empty card as the smaller amount とあるので C。
Q3. What does "the bees put zero below one" mean?
直前の「空っぽのカードを少ないほうとして選んだ」の言い換えで、「何もない」を1より少ないと扱ったという意味なので B。
Researchers at RMIT University in Australia trained free-flying honeybees to pick whichever card showed fewer black elements, using between one and six shapes, and rewarded correct choices with sugar water. The shapes varied in form, size and position, so the bees could not rely on simple cues such as total area. After training, the bees were shown something they had never seen, a blank card.
Offered a choice between this empty set and a card with one element, they chose the empty card as the lesser quantity, in effect placing zero below one. Critics have raised objections. Low-level visual cues may not have been fully controlled. Putting an empty set in order is not the same as understanding the symbol 0. And the bees took many training trials to learn the task, so how they might use such an ability in nature is an open question.
Even so, the 2018 study, published in Science, drew wide attention. Zero is a fairly recent human invention, and even children grasp it as a number later than other quantities. The authors compared the bees' performance with that of gray parrots, monkeys and preschool children. A honeybee has fewer than a million neurons.
199 words ・ CEFR B2
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オーストラリアのRMIT大学の研究者たちは、自由に飛び回るミツバチに、1〜6個の図形を使って、黒い要素が少ないほうのカードを選ぶよう訓練し、正しい選択には砂糖水を与えました。図形の形・大きさ・配置が変えられたため、ハチは総面積のような単純な手がかりに頼ることができませんでした。訓練の後、ハチはそれまで一度も見たことのないもの、つまり白紙のカードを見せられました。
この空集合と要素1個のカードのどちらかを選ばせると、ハチは空のカードを少ない量として選び、実質的にゼロを1の下に位置づけました。批判する人たちは、疑問を挙げています。低次の視覚的な手がかりが完全には統制されていなかった可能性があります。空集合を順序づけることは、記号としての0を理解することと同じではありません。また、ハチがこの課題を覚えるには多くの訓練試行が必要だったため、自然の中でこうした能力をどう使うのかはわかっていません。
それでも、『Science』に発表されたこの2018年の研究は大きな注目を集めました。ゼロは比較的新しい人類の発明で、子どもでさえ、ほかの量より遅れてゼロを数として理解するからです。著者たちは、ハチの成績を灰色オウム、サル、就学前の子どもの成績と比べています。ミツバチの神経細胞は100万個にも満たないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did the 2018 finding attract so much attention?
人間でも理解が遅いゼロを、神経細胞100万個未満のハチが扱えたらしいことが注目の理由なので C。
Q2. What does "in effect placing zero below one" refer to?
空のカードを1個のカードより少ない量として選んだことを指すので D。
Q3. Which of the following is NOT mentioned as an objection to the study?
視覚手がかりの統制、記号の0との違い、多くの訓練試行(took many training trials)は挙げられているが、冬だけ実験したという記述はないので A。
重要単語
- zeroA2名詞ゼロThe concept of zero took humans a long time to develop.
アラビア語 sifr(空)が語源で、cipher(暗号)も同じ語源。 - numerosityC1名詞数量(いくつあるか)Bees can compare the numerosity of shapes.
numerous(多数の)と同語源。認知科学の専門語。 - empty setC1名詞(句)空集合An empty card represents an empty set.
数学用語。set は「集合」。empty は「空の」。 - rewardB1名詞・動詞ごほうび/報酬を与えるBees received a sugar reward for correct choices.
reward A with B「AにBで報いる」。award(賞)と混同しない。 - extrapolateC1動詞(学んだことを)未知の範囲に当てはめるThe bees extrapolated the rule to zero.
extra-(外へ)。範囲の外へ推し広げるイメージ。interpolate(内挿する)と対。 - abstractB2形容詞抽象的なZero is a very abstract idea.
反対は concrete(具体的な)。名詞では「論文の要旨」の意味もある。
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図形が1〜6個描かれたカードで「少ないほうを選べばごほうび」と覚えたミツバチ。初めて見る「何も描かれていないカード」を出すと、1個のカードより“少ない”ほうとして選んだ。ゼロを数の一番下に置ける虫がいたなんて。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Howard et al. (2018) Numerical ordering of zero in honey bees, Sciencedoi.org
- Howard et al. (2019) Numerical cognition in honeybees enables addition and subtraction, Science Advancesdoi.org
- Pepperberg & Gordon (2005) Number comprehension by a grey parrot (Psittacus erithacus), including a zero-like concept, Journal of Comparative Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。














